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ソドムとゴモラはなぜ滅びたのか

『旧約聖書入門2』より アブラハムの執り成しとソドムの滅亡 ⇒ 豊田市で傲慢に走っていくクルマを見ていると、ここはソドムの町と思えてくる。

アブラハムの切実な執り成しにもかかわらず、ソドムとゴモラは神の裁きによって灰塵に帰します(一九章)。ソドムとゴモラの滅亡の背景には、ヨルダン地溝地帯、死海の南方にかつて存在した町が、おそらく地震によって地下に埋もれることなったという、民間説話があったと考えられます。そこから、客人をもてあそんだ人々が滅び、客人をもてなしたゆえに災害を免れた家族があったという物語が生じたのかもしれません。

しかし今日のアブラハム=ロト・ツィクルスは、アブラハムの執り成しにもかかわらず、ソドムの人々は災禍に飲み込まれて死に、ロト一族だけが助け出されたことを伝えています。ロトは客人二人がソドムに着いたとき、これを歓待し、ソドムの住民の乱暴狼籍から客人を守ろうとするのですが、すでに神の裁きの災禍が降ることとなって、客人から町を出て逃げるよう促されます。しかしためらってぐずぐずするロトを、客人は妻、娘共々むりやりに手を取って、逃します。しかしロトの妻は、決して後ろを振り向いてはならないという神の命令に背いたがゆえに、凍り付いて塩の柱となります。ですから、ロト一族の救出はロトが義人であるが故のものではなく、アブラハムに連なるが故の神の配慮というべきものでしょう。つまり、ソドムにはアブラハムの執り成しにもかかわらず、十人の義人もいなかったので、滅亡したと言えます。

ロトと二人の娘は、近くのツォアルの山中に住んで、父親の種を得、子をなして、アンモン人とモアブ人の祖となります。アンモソ人とモアブ人は、アブラハムにゆかりのロトの子孫であるにもかかわらず、イスラエル人から宗教的に忌避されます。その理由として、近親相姦によって生まれた民であること、イスラエル人がエジプト脱出後、約束の地に赴く途中、水を求めたのに拒んだこと、イスラエルを呪わせようと預言者バラムを雇ったことを、申命記は揚げています(二三章四―七節、および一節)。

創世記一八章一六節ロ-一九章三八節は人間の悪と神の義、裁きと赦し、人間的生活の喪失状況と神による全面的滅亡、そして執り成しの問題を記しています。そこに描かれている人間生活は退廃的で息をのみますが、神による審判の様相も、実際にあったことを叙述したものです。その意味で高をくくって、読んでぱならないものです。

しかし、この記述は、一つの到来を待ち望んでいます。待ち望まずにはいられないのです。十人の義人がいればとの問いは、一人の義人がいればに至るまで問い続けうるものです。そして一人の義人がいれば、滅ぼさないとの神の全き憐れみが示されたに違いありません。しかし、ソドムには一人の義人もいませんでした。そして新約聖書の時代が到来するまで、実際には一人の義人もいなかったのです。「義人なし、一人だになし」(ローマの信徒への手紙三章一〇節、文語訳聖書)とパウロは書いています。

しかし、その現実なればこそ、この現実の中に、完全な一人の義人が到来することになります。神が自ら、その人となります。旧約聖書が鶴首している人です。完全な義人です。この方は実際においでになりました。この義人は、世の人すべての罪を背負い、これを贖いました。この人の義は、この人を受け入れる人に転嫁されていきます。そして世を義としていきます。人がこの人の生に合わせられますと、その人は滅びの道、呪わしい退廃の道ではなく、祝福に満ちた建徳の道、救いの道を行くことが許されるようになります。その光の中に立ってくださる方。それがイエス・キリストです。私たちはこの方の執り成しによって赦され、義とされて、この世界に祝福をもたらすべく派遣されていくのです。

現代は地球滅亡へのカウントダウンが始まっている時代だと言われます。アラン・ワイズマンの『滅亡へのカウントダウン』(鬼沢忍訳)という本は世界の人口が七〇億人を超えたことをテーマに、人口抑制を強い口調で訴え、そのために何か必要かを論じています。一九二〇年ごろの世界の全人口は二〇億人であったのに対し、今日では七〇億人を越えているというのですから、考えなければならないでしょう。それでも「滅亡へのカウントダウン」というと大げさに聞こえるかもしれません。でも、問題は人口問題に限ったことではありません。多方面にわたって、滅亡の危険性を胚胎しているのが、人間を中心にすえた今日の文化にあるとおもいます。
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