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謎のモザイク国家 レバノン 豊かさが戦争を防ぐ

『沸騰現場を通じて考える「ニッポン再発見」』より

謎のモザイク国家 レバノン 謎のモザイク国家 ⇒ ソホクリスの関係しているレバノンのワイナリーで夕食の時に、シリアのミサイルが飛んでいくのが見える、と今日、禮子が話していた。平和であることの難しさと平和であることの安全保障。

復活した「中東のパリ」

 しかし今、内戦のイメージを覆すような光景がある。空爆で何もなくなった場所には、美しい街並みがよみがえり、高級ブランド店が軒を連ねている。路上には高級車がズラリ。かつての「中東のパワ」を彷彿とさせる姿を取り戻していた。

 街を歩いて気づくのは、人々が親日的なこと。そして開放的な女性の姿。実はレバノンは、「世界の隠れた宝石」とも呼ばれ、中東一美人が多いと言われている。

 外資系の高級ホテルも続々オープンしていた。2010年に開業したフォーシーズンズホテルは1泊400ドルから。自慢は最上階のテラス。目の前には穏やかな地中海が広がる。欧米からの観光客も戻り始めているという。

 長い歴史と豊かな自然を持つレバノンには魅力的な観光資源がふんだんにある。狭い国土に5つもの世界遺産があった。ティルスは紀元前10世紀頃、古代フェニキア人が建設。都市国家の首都として使われた。世界最大級の鍾乳洞、ジェイダ鍾乳洞も人気のスポットだ。地底湖が広がり、ボートに乗って見学できる。

 そんなレバノン復活を象徴する場所へ重信メイさんが案内してくれるという。

 ミュージックホールの中に入ると、老いも若きも熱狂的に踊っている。夜ごと繰り広げられるという熱狂。レバノンの人たちが一時みせる感情の爆発なのだとメイさんはいう。

 「内戦時代の影響だと思うけど、今しか生きてられないという感覚。できるだけ今日を楽しもうという感覚だと思う」

 地中海に面したビーチに、地元の人たちが集まり始めた。願いを込めて、ランタンを飛ばすという。「国が良くなることを願っています」「平和になってほしいです」。平和への願いが空高く飛んで行った。

フエニキア人の末裔

 そんなレバノンが復活してきています。世界的な不動産投資会社のレポートでは、「注目すべき投資先の一つ」に選ばれるほどになりました。サウジアラビアからのオイルマネーも入り、現在、地中海のビーチ沿いにはマンションやホテル、ショッピングモールなどが続々と建てられています。

 さらには海外にいるレバノン人からの資金も支えになっているんです。日産自動車のカルロス・ゴーン氏は父親がレバノン人。今もレバノンとフランスの両方の国籍を持っています。ゴーン氏のみならず、レバノン人は非常に商才に長けていて、海外進出し大活躍している人が大勢いるんです。そして、彼らが故郷レバノンに投資をしているというわけです。

 紀元前10世紀頃に地中海貿易で繁栄したフエニキア人を先祖に持つレバノン人ですが、その国旗にはレバノン杉があしらわれています。フェニキア人は、以前この辺りにたくさん生えていたレバノン杉で船をつくり、地中海貿易に乗り出していきました。その血を引くレバノン人も商売上手。そうした成功者のお金がどんどん入ってくる、という状況なんです。

食の大国レバノン

 数ある中東の国の中でクックパッドがレバノンを選んだのには理由があった。実はレバノンは世界でも指折りの「食大国」なのだ。

 その視察のため、レストランヘ来たクックパッドの一行。レバノン料理の最大の特徴は、「メゼ」と呼ばれる小皿料理の豊富さにある。チーズや野菜、ひよこ豆を使い、レモンやハーブ、オリーブオイルでさっぱりとした味わい。さらにご存知、肉の串焼き「ケバブ」。イタリアンパセリをオリーブオイルであえたサラダ「タブーレ」なども有名だ。

 世界三大料理とされるフレンチ、中華、トルコ料理に加えて世界「四大」料理とも称される。

 だが、クックパッドのターゲットはレストランではない。翌日、一行が訪ねたのはレバノンの一般家庭。食の国の家庭料理事情を調べに来た。さっそく、夕食どきのキッチンを見せてもらう。

 レバノンでは夕食を毎日奥さんが作るのが普通だという。「献立をどうやって決めてるんですか?お子さんに聞きますか?それとも本やネットからですか?」と、質問をぶつける。

 「そんなに毎日発想豊かじやないわ。時間もないし。本当は手を掛けたいけど」

 本当はいろいろな料理を作りたいが、共働きのためあまり時間を取れないのが悩みの夕半だという。

 「繰り返し言っていたのが、考える時間もないし、料理する時間もないということ。クックパッドは料理する時間を短くすることはできるかなと」(保田マネージャ-)

 レバノンでもクックパッドのニーズは大いにありそうだ。

 翌日。さっそく現地サイトの改良が始まった。

 まずは、サイトで使用する色を減らして、料理の写真が目立つように変更。忙しい利用者でも、レシピがすぐ見つかるようにした。ロゴも日本でおなじみのコック帽のマークに。アラビア版のクックパッドだ。

アラビア語圏のアンテナ

 ラマダンの夜に大勢で集まって食べる「イフタール」には、企業の経営者が社員を招きごちそうするという習慣があります。実はラマダンの月は、食料消費量が年間で最大になるといわれています。

 また、アラブ世界の中ではレバノン料理は最も洗練された料理というイメージがあり、周辺のイラクやエジプトのアラブ料理はレバノン料理がお手本になっているんです。そのため、レバノンで新しい食の動きがあれば皆が注目します。ですから、日本のクックパッドがレバノンから始めたというのはなかなかの戦略。つまリクックパッドは、レバノンに拠点を置きながらアラビア語圏2億人に情報発信をしていることになるんです。

 もちろん、いい話ばかりではありません。レバノンの隣はシリア。シリアは内戦中であり、自称『イスラム国』の紛争問題があります。シリアでは内戦が5年以上も続いています。その結果、シリアから大勢の難民が平和になったレバノンにやって来ているんです。その数は約150万人ともいわれています。レバノンの人口は450万もいません。つまり、その3分の1の雌民が新たに加わりた卜いうことになります。こうした実態も、新たなモザイクのピースの一つになっていくというわけです。

豊かさが戦争を防ぐ

 中東に行くと「日本は70年前に戦争に負けて、廃墟から豊かになった。そんな日本を見習いたい」とよく言われます。

 悲惨な内戦が終わると、海外から投資が入ってくるんです。それによって経済が成長し、豊かになり始めると「戦争を止めるのはいいことなんだ¨とあらためて気づく。今、まさにレバノンはそうなっているのだと思います。ただし、悲惨な戦争を体験した人たちがいなくなった時にどうなるのか。平和をどう継承していくのかということが大事です。戦争をしたら、それがすべて失われてしまうということを知ってほしいし、日本がさまざまな形で進出することで経済が豊かになっていけば、長い目で見れば、それが戦争を防ぐことにもなるんじやないかなと思います。


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