未唯への手紙
未唯への手紙
なぜLINEに疲れるのか
『クローズアップ「メディア」』より クローズドコミュニケーション
・LINEがモバイルメールよりも好まれる理由--LINEの特徴とメリット
ところで、LINEを使用することにより、携帯やスマートフォンによるメールのやりとりが減少しているというが、なぜLINEのほうが好まれるのであろうか。 LINEの利用が無料であることや、メッセージの送信や送り先の選択などが携帯やスマートフォンのメールよりも簡単であるという使い勝手のよさも大きな理由であると考えらえる。しかし、コミュニケーションの観点からとらえると、LINEには、携帯電話やスマートフォンのメールにはない、ノンバーバル(非言語的)とライト(軽い)という2つの特徴があるという。それぞれの特徴とそのメリットをみてみる。
(1)LINEスタンプは高度な非言語的コミュニケーション
LINEが好まれる理由として、トークを表情豊かに行える“スタンプ”の価値が大きいであろう。最初のほうで述べたように、スタンプは、エモティコンや絵文字よりも種類も表現も豊富であり、個性豊かなキャラクターがそろっている。表情豊かなスタンプを使うことによって、チャットによるメッセージはテンポよくすすみ、ノリのよいコミュニケーションを楽しめる。また、文字を入力せずスタンプのみで連続してトークを成立させられることから、スタンプにおける非言語的コミュニケーションとしての役割は大きい。
さらには、他者の目から解放されつつ、携帯電話やスマートフォンのメールよりも表情豊かな自己表現ができるLINEは、対面でのコミュニケーションが苦手な人にとっても、簡潔かつ豊かに自己を表現できる有用なツールであると考えられる。表情豊かでユニークなスタンプは、ことばでは表しづらい気持ちを代弁し、対面時にはうまく表現できない相手に与えたい自己イメージをコントロールすることに役立つのかもしれない。すなわち、コミュニケーションに適した、その場で相手に印象づけたい顔面表情や視線、声の抑揚、しぐさ、“ノリ”などの非言語的コミュニケーションの要素を、スタンプを通じて効果的に相手に送信しうるとも考えられる。
(2)“つかす離れず”と“ライト”なコミュニケーションとの合致
LINEにおけるスタンプは、現代における“ライト”なコミュニケーションにフィットしたコミュニケーション・スタイルであるといえる。スマートフォンやパソコンを用いた間接的なコミュニケーション形態が多様化する中で、ライトなコミュニケーションが活性化しているといわれる。ライトなコミュニケーションの典型例は、Twitterの「お気に入り」やFacebookの「いいね!」、mixiの「イイネ!」である。かつては、投稿や日記を読んだ人は、送信者・投稿者に対して読んだ感想等を述べていた(濃い/重いコミュニケーション)。しかし、近年では、単に「よい」という思いだけを伝え受け取るというライトな(軽い)コミュニケーションが多くの間接的コミュニケーションの中でみられるようになった。
また、ケータイやネットは、現代の若者の「っかず離れず」といった人間関係に柑|生のよいメディアであるといわれる。前述したスタンプのみで成立する会話もライトなコミュニケーションとしてとらえるこができ、つながっていたい、でも束縛もされたくないという“つかず離れず”の人間関係に適しているため、多くの人に受け入れられたのであろう。
・なぜLINEに疲れるのか
LINEが現代の人間関係に適したコミュニケーション・ツールであるにもかかわらず、LINE疲れは実際に生じている。その背景には、「間接的なコミュニケーションにおけるメリットの喪失」とクローズドコミュニケーションに特有のユーザー同士の「仲のよさ」が関与していると考えられる。
(1)“既読”がもたらす間接的コミュニケーション・メリットの喪失
自分の好きなタイミングでメールや書き込みを行うことのできる非同期性は、間接的コミュニケーションにおける特徴であり長所でもある。しかしながら、LINEのトークはチャット形式で進められるため、携帯電話やスマートフォンによるメールメッセージよりも、コミュニケーションの連続性を意識しやすい。つまり、スマートフォンを用いた間接的なコミュニケーションでありながら、同期的コミュニケーションの特徴が大きい。既読表示によって、間接的コミュニケーションにおける非同期性はさらに脅かされ、すみやかに返信しなければならないという空気を生み出す。それはプレッシャーや焦りにつながり、メッセージの内容を考える時間(編集可能性)も余裕も減少してしまう。結果として、間接的コミュニケーションのメリットは失われ、最初は楽しかったLINEが、いつの間にか、話しやすくなくなってしまう。
(2)「仲のよさ」のデメリット
LINEには、1対1の個人だけでなく、親しいメンバーがグループでメッセージの送受信を行うことのできるグループトーク機能がある。このようなグループトークでは、クローズドな「仲のよさ」がLINE疲れをもたらす一因であると考えられる。
メンバー間の親密性が高いグループには、「集団凝集性」という、メンバーをグループに引き付ける力が働く。集団凝集性の高いグループには、グループ独白の集団規範(メンバーが守るべきルール)が生まれやすい。誰かがトークを始めたら、みんながそれに応じる、誰かがトークを始めたとしても、応じられる人が応じればよい。どちらも、集団にできあがったLINE利用に関する集団規範である。ひとたび集団規範ができあがると、メンバーがその規範を守るよう、グループやメンバーに対して集団圧力が生じる。すなわち、凝集性の高い集団において、トークで話しかけられたらすみやかに返信するという規範ができあがってしまった場合、その集団規範を守らなければ、グループからの逸脱であり、グループにおける自分の立場が危うくなる。
未成年においては、LINEトラブルは深刻ないじめにつながりやすく、2013年10月には、“既読スルー”(自分の送ったトークが既読になったにもかかわらず、返信の返ってこない状態のこと)を発端とした殺人未遂事件まで生じている。中学生から大学生の青年期においては、仲間とのつながりは重要な発達課題であることから、仲間意識が裏目に出て、返信義務が生じやすいとも考えられる。
・LINEがモバイルメールよりも好まれる理由--LINEの特徴とメリット
ところで、LINEを使用することにより、携帯やスマートフォンによるメールのやりとりが減少しているというが、なぜLINEのほうが好まれるのであろうか。 LINEの利用が無料であることや、メッセージの送信や送り先の選択などが携帯やスマートフォンのメールよりも簡単であるという使い勝手のよさも大きな理由であると考えらえる。しかし、コミュニケーションの観点からとらえると、LINEには、携帯電話やスマートフォンのメールにはない、ノンバーバル(非言語的)とライト(軽い)という2つの特徴があるという。それぞれの特徴とそのメリットをみてみる。
(1)LINEスタンプは高度な非言語的コミュニケーション
LINEが好まれる理由として、トークを表情豊かに行える“スタンプ”の価値が大きいであろう。最初のほうで述べたように、スタンプは、エモティコンや絵文字よりも種類も表現も豊富であり、個性豊かなキャラクターがそろっている。表情豊かなスタンプを使うことによって、チャットによるメッセージはテンポよくすすみ、ノリのよいコミュニケーションを楽しめる。また、文字を入力せずスタンプのみで連続してトークを成立させられることから、スタンプにおける非言語的コミュニケーションとしての役割は大きい。
さらには、他者の目から解放されつつ、携帯電話やスマートフォンのメールよりも表情豊かな自己表現ができるLINEは、対面でのコミュニケーションが苦手な人にとっても、簡潔かつ豊かに自己を表現できる有用なツールであると考えられる。表情豊かでユニークなスタンプは、ことばでは表しづらい気持ちを代弁し、対面時にはうまく表現できない相手に与えたい自己イメージをコントロールすることに役立つのかもしれない。すなわち、コミュニケーションに適した、その場で相手に印象づけたい顔面表情や視線、声の抑揚、しぐさ、“ノリ”などの非言語的コミュニケーションの要素を、スタンプを通じて効果的に相手に送信しうるとも考えられる。
(2)“つかす離れず”と“ライト”なコミュニケーションとの合致
LINEにおけるスタンプは、現代における“ライト”なコミュニケーションにフィットしたコミュニケーション・スタイルであるといえる。スマートフォンやパソコンを用いた間接的なコミュニケーション形態が多様化する中で、ライトなコミュニケーションが活性化しているといわれる。ライトなコミュニケーションの典型例は、Twitterの「お気に入り」やFacebookの「いいね!」、mixiの「イイネ!」である。かつては、投稿や日記を読んだ人は、送信者・投稿者に対して読んだ感想等を述べていた(濃い/重いコミュニケーション)。しかし、近年では、単に「よい」という思いだけを伝え受け取るというライトな(軽い)コミュニケーションが多くの間接的コミュニケーションの中でみられるようになった。
また、ケータイやネットは、現代の若者の「っかず離れず」といった人間関係に柑|生のよいメディアであるといわれる。前述したスタンプのみで成立する会話もライトなコミュニケーションとしてとらえるこができ、つながっていたい、でも束縛もされたくないという“つかず離れず”の人間関係に適しているため、多くの人に受け入れられたのであろう。
・なぜLINEに疲れるのか
LINEが現代の人間関係に適したコミュニケーション・ツールであるにもかかわらず、LINE疲れは実際に生じている。その背景には、「間接的なコミュニケーションにおけるメリットの喪失」とクローズドコミュニケーションに特有のユーザー同士の「仲のよさ」が関与していると考えられる。
(1)“既読”がもたらす間接的コミュニケーション・メリットの喪失
自分の好きなタイミングでメールや書き込みを行うことのできる非同期性は、間接的コミュニケーションにおける特徴であり長所でもある。しかしながら、LINEのトークはチャット形式で進められるため、携帯電話やスマートフォンによるメールメッセージよりも、コミュニケーションの連続性を意識しやすい。つまり、スマートフォンを用いた間接的なコミュニケーションでありながら、同期的コミュニケーションの特徴が大きい。既読表示によって、間接的コミュニケーションにおける非同期性はさらに脅かされ、すみやかに返信しなければならないという空気を生み出す。それはプレッシャーや焦りにつながり、メッセージの内容を考える時間(編集可能性)も余裕も減少してしまう。結果として、間接的コミュニケーションのメリットは失われ、最初は楽しかったLINEが、いつの間にか、話しやすくなくなってしまう。
(2)「仲のよさ」のデメリット
LINEには、1対1の個人だけでなく、親しいメンバーがグループでメッセージの送受信を行うことのできるグループトーク機能がある。このようなグループトークでは、クローズドな「仲のよさ」がLINE疲れをもたらす一因であると考えられる。
メンバー間の親密性が高いグループには、「集団凝集性」という、メンバーをグループに引き付ける力が働く。集団凝集性の高いグループには、グループ独白の集団規範(メンバーが守るべきルール)が生まれやすい。誰かがトークを始めたら、みんながそれに応じる、誰かがトークを始めたとしても、応じられる人が応じればよい。どちらも、集団にできあがったLINE利用に関する集団規範である。ひとたび集団規範ができあがると、メンバーがその規範を守るよう、グループやメンバーに対して集団圧力が生じる。すなわち、凝集性の高い集団において、トークで話しかけられたらすみやかに返信するという規範ができあがってしまった場合、その集団規範を守らなければ、グループからの逸脱であり、グループにおける自分の立場が危うくなる。
未成年においては、LINEトラブルは深刻ないじめにつながりやすく、2013年10月には、“既読スルー”(自分の送ったトークが既読になったにもかかわらず、返信の返ってこない状態のこと)を発端とした殺人未遂事件まで生じている。中学生から大学生の青年期においては、仲間とのつながりは重要な発達課題であることから、仲間意識が裏目に出て、返信義務が生じやすいとも考えられる。
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