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シェアリング。少しは追いついてきたのかな

『経済大変動』より ⇒ シェア社会に進むための情報を探している。まだまだ、先が読めていない

情報技術によって実現したシェアリングエコノミー

 情報技術が経済社会を大きく変えつつある。そうした実感を持っている人は多いだろう。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、ビッグデータなどの用語がちまたにあふれている。金融、医療、教育、コマース、物流、モノづくり、交通など、あらゆるものが情報化の波によって変化をとげようとしているのだ。

 そうした中でいろいろ興味深い概念が提起されている。たとえばシェアリングエコノミーなど、その代表例だろう。情報技術を駆使すれば、いろいろなモノを多くの人がシェアリングできる。それによって生み出される費用削減は大きなものである。

 自動車などはその典型だ。多くの自動車は車庫に眠っている時間が大半だろう。週に一時間しか乗らない人は、自動車の稼働率は〇・五%ということになる。二時間でも一%だ。そのために大枚をはたいて自動車を購入する価値があるだろうか。それでも多くの人が車を購入するのは、いざというときに乗れる自動車を手元に置いておきたいからだ。

 しかし情報技術を駆使すれば、誰でも必要なときだけ自動車を確保することが可能となるはずだ。海外で急拡大しているウーバーは、運転手つきの自動車をシェアリングしようというものだ。このような形でシェアリングできるものは自動車だけではない。

 旅行者に部屋を提供するエアビーアンドビーは、部屋という資産を多くの人でシェアリングしようという仕組みだ。自動車も住宅も大きな金額を投じる耐久財である。そのサービスをできるだけ多くの人でシェアリングしようというのは合理的な動きでもある。情報技術の進展がそうしたことを可能にしている。

 さて、シェアリングエコノミーの動きは、さらにどのような分野に広がっていくのだろうか。価値のあるもの、みんなで共同利用できるものは、すべてシェアリングエコノミーの対象となる。考えてみれば、情報化をすすめる原動力になっているクラウドコンピューティングも、サーバーという資産をシェアリングしている。

 シェアリングの対象となりうる資源として重要なものに労働力がある。それも専門的なスキルを持った労働力だ。弁護士や医師などの労働力は、多くの顧客や患者がシェアリングして使うことができた。標準化されたサービスだからだ。

 しかし、特殊な技能となるとそうはいかない。多くの場合は、そうした技能を持った労働者は企業の中に従業員として囲い込まれることになる。その人の技能を他の人が利用することは難しい。兼業禁止をかけている企業が多いことも、そうした技能労働のシェアリングを難しくしている。

 最近は、いろいろなスキルの人をスポットで活用できる仕組みを提供しているサービスがある。そのようなサービスに対するニーズは少なくないはずだ。特殊な技能やノウハウを持つ人材のシェアリングもインターネットを利用して可能になる。

勢いを増す「読み放題・見放題サービス」はコンテンツホルダーにとって福音となるか

 雑誌や書籍で、定額読み放題のサービスが広がっている。最近では、アマゾンが「キンドル・アンリミテッド」を日本でも導入し、注目された。月額九八〇円で、コミックや書籍を五万点以上読めるという。同様のサービスは他の企業が先行しており、たとえばNTTドコモは月額四〇〇円で一六○誌以上の雑誌が読み放題となるdマガジンのサービスを提供しており、すでに会員数は三〇〇万人を超えているという。

 デジタルコンテンツ・サービスでは、すべての分野で定額料金が広がっている。映像サービスではネットフリックスやHuluが定額で映画やテレビ番組を見放題できるサービスを提供している。アマゾンはプライム会員向けに、映像や音楽を無料で聴けるサービスを提供している。無料とは究極の定額料金である。

 言うまでもなく、こうしたデジタルサービスで定額料金が広がる背景には、これらのサIビスを提供するための限界費用が限りなくゼロに近いということがある。書籍を出版するには、それなりに費用と時間がかかる。ただ、費用の多くは固定費と呼ばれるものだ。書籍のデジタル版を追加的に提供する限界費用は、限りなくゼロに近くなっている。音楽や映像も、この点では同じだ。

 限界費用がゼロに近い商品の価格はどのように設定されるのだろうか。これは大問題である。旧来は平均費用に利益マージンを乗せたものが価格となった。それによって書籍を出版するための固定費用をカバーするのだ。ただ、難しいのは、平均費用の水準そのものが販売数によって動くということだ。たくさん販売できれば平均費用もそれだけ安くなり、価格を低く設定できる。強気の企業は、思い切り低い価格を提示し、より多く売ることで利益を上げようとする。

 定額料金サービスの特徴は、できるだけ多くの種類のコンテンツを取り込むことで、定額料金を低くできるということだ。こうした価格設定で最も利益を受けるのは、価格弾力性の高いコンテンツだろう。ドコモのdマガジンでサービス提供されている雑誌類はその典型だ。安いから気軽に購入するというものは、価格を下げればより多くの人が購読する。

 問題は、価格弾力性の低いコンテンツだ。一定の人は高い料金を払ってくれるが、価格を安くしても需要は増えない。そういう性格を持った書籍や音楽もあるだろう。そうしたコンテンツは定額サービスの中に入れるよりも、個別に高い料金を設定した方が良いとも考えられる。実際、本当に価値の高い映画や値段の高い書籍は定額サービスの中に入らないケースも多いようだ。

 ただ、アマゾンのように定額サービスを提供する側から見れば、そうした価値の高いコンテンツが入ることで定額サービス全体の価値も高められる。そこで少し高い費用を払っても、価値の高いコンテンツを入れようという動きもありうる。いずれにしても、定額サービスに入るかどうかは個々のコンテンツにとっては重要な決断事項となる。
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