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柔軟で、モダンで、化石燃料後の交通手段

『交通政策』より 徒歩と自転車交通--柔軟で、モダンで、化石燃料後の交通手段
徒歩と自転車交通についての議論
 徒歩と自転車利用はヨーロッパの多くの国で、この15~20年の間に評価を高めている。問題はその際にどのような変化が起こったかということである。世論の受け止め方、意識、促進戦略あるいは機関別分担率の実際の増加などについてである。
 徒歩と自転車交通の環境負荷軽減の可能性は高く、同時によりよい条件のための投資コストは比較的小さい。そのためにこの10年において、徒歩と自転車交通を地域、国内あるいは国際的に促進しようとする政策的なコンセンサスがみられる。これは政党を超えたコンセンサスであるが、まだ流れの転換をもたらしてはいない。その前提の議論には、細部に肖点がある。質が高く密度のあるインフラやサービスを創出するためには、利川月・の必要性や要望を詳しく知る必要がある。さらに、インフラやサービスだけではなくコミュニケーションの課題も含めた、統合的な計画が必要という面もある。
 徒歩と自転車利用の意義が挟められているもう1つの理由は、徒歩と自転車交通の利用が長い間、いわゆる声なきグループ(子供、若者、高齢者、女性)によるものであったためである、と批判的な交通経済学の側からは指摘されている。つまり、それはさほど暇要でないものとして扱われ、徒歩については依然としてそのままだというのである。
徒歩と自転車によるモビリティの発展と現状
 徒歩と自転車利用は、馬の利用や馬車による移動を除けば、長い間個人のモビリティの主要な手段であった。自転車は大衆的交通手段として、工業製品として誰でもが手の届くものになった時期に、その最盛期をむかえている。
 徒歩と自転車交通の重要性は、1960年代から特に徒歩のシェアの低下によって小さくなっていった。自転車利用と徒歩は、この時期新たに生まれた自動車指向の構造において、時代に合わず快適でないとみなされた。 1990年代まで、一部は今日でも、計画策定者や政治家は、徒歩と自転車交通の経済的な意味について認めていなかった。交通機関別分担率で、徒歩が大幅に減少し自転車は低い水準にとどまっていたのは、こうした動向によるものである。自転車の割合の減少は1950年代からはじまり、1960年代には本格的に減少していった。ドイツではここ10年くらいで初めて、徒歩と自転車輸送は再度評価されるようになった。
 Roeはこうした動向には、政策、社会的および調査手法的な要因があるとしている。徒歩と自転車交通は、すでに言及した声なき層が主に利用している。モータリゼーションによる乗用車輸送の発展と計画は、ほとんどが男性によって行われている。こうした不均衡と、多くの投資や調査研究が、自動車による交通の部門で行われてきたことにつながっている。Roeは、交通経済学は1990年代まで、ほとんどが標準化された方法で行われてきたとしている。こうした数理統計的な調査方法は、自動車交通の分析には適しているかもしれないが、徒歩や自転車については充分ではない。
 1日のトリップにおける徒歩の交通量は、現在24%であり、自転車は10%であるのに対して、公共交通は自転車より少なく、自動車交通は同乗者を含めると58%であった。全体で2億8、100万トリップであり、その半分は3km以下のトリップであった。自動車を利用するトリップも1/4は3km以下であり、1/2は5km以下であった。ここに転換の可能性がある。徒歩の場合、85%が3km以下であり、自転車では75%が3km以下であった。都市部では短い距離の割合はもっと大きい。
 ドイツ国民の20%は毎日あるいはほぼ毎日自転車を使っている。さらに20%が週に1日から3日自転車を使っている。地方では、自転車の利用率は人口密集地よりも多くなっている。学生・生徒や自動車を保有しない勤労者は、自転車を利用する層であり、毎日使う人は学生・生徒で36%、勤労者で37%である。大部分が高齢者である非就労者は最も自転車を使わない層である。
 ドイッの世帯で自動車を保有していないのは18%である。大都市ではこの割合は明らかに大きくなる。車を保有しない勤労者においては、マルチモーダルの組み合わせが、最も大きな割合となっている。トリップのうちの44%が徒歩で、25%が公共交通で、17%が自転車で行われ、自動車は14%に過ぎない。公共交通と自転車の組み合わせも5%程度である。公共交通の利用には必ず徒歩を伴っている。すべての移動の多くには、徒歩の区間が含まれふ)。
 徒歩と自転車利用は、余暇や買い物、通学および私用において割合が大きくなっている。
 買い物目的の例では、近隣や都市の中心部に行く際に徒歩や自転車を利用するというのが明らかである。近隣へは44%が徒歩、12%が自転車となっている。
 機関別分担率における徒歩の割合は、近年ゆっくりであるが減少してきている。計画実務や調査研究においては、徒歩交通は常に隅に追いやられている。歩道や公共空間の高質な計画は、必要性が主張されているが、ぜいたくであるとして切り詰められている。歩道のネットワークは市街地に集中し、島のように孤立している。ベルリン州は例外で、2010年にヨーロッパの都市として初めて歩行者交通戦略が策定され、案はすでに作られている。しかし国全体での徒歩交通計画やマスタープランはない。交通を利用する側も、徒歩は重要でないと考えている。「歩行者である」という自意識はほとんどない。交通手段について尋ねられた場合も、ほとんどの場合徒歩のことは忘れている。
 徒歩と自転車交通についてのこうした意識の藍魁は、どこから来たのだろうか。道路交通の利用者においては、それらを下位におく傾向が自意識の中にまず形成されているのだろう。徒歩と自転車交通は輸送実績においては、移動距離の面から意義が小さいと考えられがちである。それについては次頁図17-4に示す。
 徒歩と自転車利用は、多くの場合道路交通においてかなりの危険を伴っている。防護のない移動は、直接的な環境をダイレクトに体験する。近年交通事故における死者も負傷者も減少傾向にある(2009年:負傷者約40万人、死者4、100人)。連邦統計庁の事故統計を見ると、歩行者の負傷者や死者の数は一貰して減少している(2008年:負傷者3万2、800人、死者592人)。自転車利用者では負傷者は増加している(2009年:7万8、967人)。自転車利用者の死者は2007年には過去最低の425人だったが、再びやや増加している(2009年:462人)。
 都市における自転車の利用割合の増加が、例えば事故の増加につながるのではないかという点についていくっかの調査がある。実務家や研究者は自転車輸送の増加により自転車同士の事故が増加するとしている。自転車の密度が高くなると、自転車同士の軋傑も増加する。そのために統合的な計画の目標として、都市あるいは都市内の交通において、自動車交通と徒歩と自転車交通の間の事故が重大なものにならないようにするべきである。

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