goo

世界をよりよく知り、よりよく変えていく

『フェイスブックをつくったザッカーバーグの仕事術』より

一人ひとりに自分の声を与えるんだ。知ることは得をすること

 何年か前、ある伝統メディアの幹部が、サーゲイ・ブリンに「グーグルは、伝統メディアの懐から金を奪うこと以外に、社会にどんな貢献をしているのかね」と噛みついたことがある。

 サーゲイ・ブリンはあっさり答えた。「単純なことだよ。ちゃんとした情報を持っていれば、人はもっといい選択ができる」と。

 確かにそうだ。たとえば買い物も、どこにどんなものがあり、それはいくらかを比較検討して買うのと、何の情報もなく買うのとでは、雲泥の差が生じる。ブリンは「知っていることは損になることじゃない。得することなんだ」と言いたかったのだろう。

 本来、こうした情報は伝統メディアが伝えるものだった。だが、そこに売る側の意図が当然のように入ってくるようになり、信頼性は失われた。そんな時代が長く続いた。グーグルは、できるだけ意図のない情報を、できるだけたくさん伝えるようにすることで、情報の民主化を実現した。

 それは、思いがけない効果を世界にもたらした。たとえば独裁国家や圧政が敷かれている国に共通するのは、情報の統制だ。そこに正しい情報がもたらされれば、人は自由に判断し、行動できるようになる。情報は力だったのだ。

 その力をもたらしたのがグーグルであり、「歴史上で最も有機的な民主化支援ツールの一つ」といわれるフェイスブックだった。

 「僕がやろうとしているのは、一人ひとりに自分の声を与えることなんだ」とザッカーバーグは言っている。ほんの数世代前までは、今のような情報共有も、自分の意見を伝えることもできなかった。ほんの何年か前までは、そういうことができるのはごく一部の人たちに限られていた。だが、今は違う。SNSやインターネットのツールを使えば、自分の考えを世界中に伝えることができる。

フェイスブックが目的とするのは、知る力を高めることだ。仕事を世界に対する義務ととらえる

 SNSと一口に言っても、そこに分類される企業のすべてが同じ目的に向かっているわけではない。ビジネス向けのネットワークを提供する企業もあれば、さまざまなメディアのポータルサイトとして機能するネットワークもある。

 規模もずいぷんと違っている。フェイスブックやマイスペースのような世界規模のものもあれば、地域独自のネットワークのようなもの、大手企業が社内コミュニケーションの活性化を目的にスタートさせたものもある。

 では、フェイスブックが目ざしているのは何か。

 ザッカーバーグは「フェイスブックが目的とするのは、自分たちの世界がどうなっているのか、それを知る力を高めることだ」と話している。そのために必要な情報を伝え、みんなで情報のやりとりができるシステム。それがフェイスブックの目ざすところだ。

 人間が幸福になるためには、自分の周囲の世界について熟知しておく必要がある。熟知するために人々が必要とし満足するだけの情報を効率よく提供することがフェイスブックのいわば義務なのだ。

 こうした考え方は他のSNSにはあまり見られない。フェイスブックには、他のSNSにない独特の「熱さ」があるが、それはザッカーバーグの考え方からきているといえる。

暇つぶしの手段を崇高な目的に変える

 フェイスブックのスタートはハーバード大学の学生が同級生や友人との交流をより深めるためのものだった。それだけに、ある程度のユーザーを抱えるようになっても、「フェイスブックは単なる暇つぶしにすぎない」といった批判があった。

 確かにフェイスブックは、物的な生産に関与するわけではない。自分の友人に何か変わったことはないかといったことを見て時間が過ぎていくのだから、人によっては暇つぶしと呼ぶかもしれなかった。

 批判に対して、ザッカーバーグは、人を理解できるようになることは暇つぶしではないと反論した。そして、フェイスブックの最終目的を「人々が自分の置かれた世界をよりよく理解するための手助けとなることだ」と定義した。

 たとえば同じ大学にいる人々が何を考え、大学で何が起きているかを知ることは大切だ。大学からの通知ではなく、一人ひとりが情報提供者となれば、より正しい情報が得られる。それだけ正しい判断、行動ができるようになる。それは暇つぶしなどではなく、世界をよりよく知り、時によりよく変えていくために欠かせないことだ。

 こうした崇高な目的に加え、ユーザー数が増えることでネットワーク効果が増すようになっていった。

 ネットワーク効果とは、同じ製品を利用するユーザーが増えると、その製品の効果や価値が高まることだ。たとえば携帯電話は登場当時、珍しいだけで便利ではなかった。だが、今では便利なだけでなく必須製品となっている。

 SNSにネットワーク効果が加われば、世界を動かす力になることもできる。それは、2008年の米国大統領選挙が「フェイスブック選挙」と呼ばれ、2011年の中東での革命が「フェイスブック革命」と呼ばれたことからも明らかだ。

 ザッカーバーグほど情報の共有を広げ、世界にもっと透明性を加えることを熱く追求している人間は、SNSの世界にはいないだろう。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 恋愛・結婚  ポータルは... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。