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バイク・シェアリング運動

『コトナーのソーシャル・マーケティング』より 有害排出ガスの削減
プログラム導入の背景
 最初の「バイク・シェアリング運動」(bike sharing programs)は1965年7月にオランダのアムステルダムで始まった。「ヴィッテ・フィエステン・プログラム」(Witte Fiesten Program)では白色に塗装された、地域全体で自由に利用できるごく普通の自転車が用いられた。その着想は単純である。ちょっとした距離を移動する必要がある人は自転車を1台、目的地まで利用でき、目的地で乗り捨てると他の人が利用できる。しかしながら、開始当初、心なき破壊者が自転車を運河に投げ入れる、泥棒が盗むなどの事件で、「ヴィッテ・フィエステン・プログラム」は混乱した。45年を経て、「バイク・シェアリング運動」は円滑に機能するようになった。 125の都市において、約100の「バイク・シェアリング運動」が行われており、さらに2010年だけで、45のプログラムの導入が計画されている。これらのプログラムヘの参加は紆余曲折を経ながらも存続している。例えば、パリの「ヴェリブ・プログラム」(Velib Program)では、2万3,600台の自転車が用意され、1日平均7万5,000件の貸し出しがあった。中国の「杭州公共バイク・システム」(Hangzhou public bicycle system)は2008年に1万台の自転車で始まり、5万台まで拡張する計画がある。実際、全世界で、約13万9,000台の自転車がさまざまな「バイク・シェアリング運動」において利用されている。
 自転車共有の初期の試みである「ヴィッテ・フィエステン・プログラム」の問題点は、利用者によって使用された自転車が不幸にも周囲に放置されたことにあった。最初の大規模な試みである第2世代のプログラムは1995年、デンマークのコペンハーゲンで行われた「バイクレン・プログラム」(Bycyklen Program)である。そのプログラムでは、頻繁な使用に耐えられるよう頑丈な自転車が用意された。保証金を支払って、市内のいくっかの場所で自転車を乗り降りすることができた。第1世代よりも改善がなされているものの、デマイオ(Demaio)によれば、第2世代のプログラムも、利用者の匿名性により依然として盗難に悩まされた。第3世代、および、現世代の「バイク・シェアリング運動」では、スマート・カードの利用、電気的に施錠できる自転車ラック、自転車を追跡するための廉価なGPSの搭載、その他の改善により、匿名性の問題に取り組んでいる。この第3世代以降、「バイク・シェアリング運動」は急激に成長してきた。
ターゲット層と望ましい行動
 「バイク・シェアリング運動」には、複数の対象となる利用者がいる。まず、おそらく最も重要と思われる対象者は公共交通機関を利用する通勤者である。公共交通機関の欠点の1つは、通勤者が最終目的地に直接、到達できないことである。そのために、電車・地下鉄・その他の公共交通機関の利用者は駅から最終目的地まで歩くか、もしくは、タクシーを利用するかしなければならない。公共交通機関の結節点に設けられたバイク・シェアリング拠点は通勤の最初と最後に、駅と自宅・勤務先とを結ぶ便利な通勤手段を提供する。「バイク・シェアリング運動」の2番目のターゲットは自動車で通勤するものの、市内中心部のちょっとした距離を自転車で移動する通勤者である。最後に、「バイク・シェアリング運動」は公共交通機関に加えて自転車を利用する、または、自転車だけを利用する旅行者を対象としている。 1日券や1週間券を購入する旅行者から、かなりの収入を得ることができる。
 「バイク・シェアリング構想」は普通、サービスを利用可能な見込み客が密集した市の中心部において、比較的、短距離の通勤手段を提供することをめざしている。複数の大学では、自転車を借りた場所と同じ場所に返却するプログラムを実行してきた。米国では、こうしたプログラムが65程度あり、さらに,  2010年に10のプログラムの開設が計画されている。
「障害」と「便益」
 「バイク・シェアリング運動」の提供に関連して、多様な「障害」がある。デマイオとギフォード(Gifford)は「バイク・シェアリング運動」に対する十分な需要が不可欠であること(例えば、バイク・シェアリング連動は小さなコミュニティでは機能しない傾向にある)、自転車利用者が安全に目的地に到達できること、「バイク・シェアリング運動」自体で収益を上げることができること、そして、自転車の盗難や破壊を阻止できること、を挙げている。それらに加えて、自転車は定期的に手入れされ、利用者が望む時に利用可能であるよ引こ、自転車が返却される必要がある。利用者が安全であると理解することは自転車利用への決定的な条件である(逆説的だが、ヘルメットを義務化すると、自転車利用が減少することが明らかにされている)。一般的な理解ではないものの、自転車利用による事故発生の可能性よりも、健康増進にはるかに重きが置かれている。そして、危険が低下すればするほど、多くの人々が自転車を利用する。米国オレゴン州ポートランドでは、1991年から2006年までに69%事故が減少するのに伴い、自転車利用が400%増加した。ガードナー(Gardner)によれば、人口当たりの自転車利用率が最高である国は交通事故死率が最小である。また、天候は「バイク・シェアリング運動」の重大な日希害」である。モントリオールの「ビクシー・プログラム」(Bixi Program)などいくつかのプログラムは冬の厳しさゆえに特定の季節にのみ運営されている。
 「バイク・シェアリング運動」には関連する多数の「便益」がある。デマイオとギフォードによれば、「バイク・シェアリング運動」は「十分な公共交通サービスが行き渡らない目的地に到達でき、わずかな社会基盤だけで済み、購入や維持が比較的安価で、一般に交通渋滞を高めず、運営によって公害を発生させず、利用者にさらなる運動の機会を提供する」。「バイク・シェアリング運動」は整備に要する時間について、他の交通基盤システムとは際立って異なる。「軽便鉄道による地下鉄システム」が整備に10年、ないし、それ以上かかるかもしれないのに対して、「バイク・シェアリング運動」はその時間のごく一部で実行可能である。事実、ニューヨーク市計画局によれば、フランス・パリでは、「ヴェリブ・プログラム」は当初、700の自転車ステーションと1万台の自転車をわずか6ヵ月で配置し、運営開始から1年間で倍増させた。新たに設置されたバイク・ステーションは太陽光エネルギーを用いるために、大規模な掘削工事を必要とせず、すぐに運営を開始できた。同様に、太陽光エネルギーを用いたプログラムとして、モントリオールの「ビクシー・プログラム」がある。現地の幹部スタッフの示唆によれば、バイク・ステーションをわずか20分で設置できる。
プログラムの内容
 現代の「バイク・シェアリング運動」では、利用者は通常、オンライン、または、バイク・ステーションで、1日・1週間、ないし、1年間単位で利用契約をする(流通)。契約後は番号を入力するか会員証を磁気読取機に通すだけで、自転車(製品)を利用できる。その後、利用者は目的地まで自転車に乗り、近所のバイク・ステーションに自転車を返却する。多くの場合、275メートル(300ヤード)以下ごとに、利用者が自転車を返却できるよう膨大な数のバイク・ステーションが設置されている(利便性)。しばしば、最初30分間の利用は課金されず(動機づけ)、また、バイク・ステーションで自転車を返却する場所が空いていなかった場合には、15分間の猶予が与えられる。自転車が24時間以内に返却されなかった場合には、盗まれたと判断され、利用者のクレジットカードに自転車の費用が課金される。
 既存の「バイク・シェアリング・プログラム」の大部分は、地方自治体が契約者に対して、自転車やバイク・ステーションに掲出する広告スベースを販売できることを見返りとして、「バイク・シェアリング運動」の運営を許可するフランチャイズ契約により運営されている。他の形態として、地方自治体自らがプログラムを運営する、自治体に代わってサービスを提供する輸送会社を設立する、または、非営利団体を設立するなどがある。
 自転車の返却台数が少ないバイク・ステーションヘ自転車を返却してもらうように(それにより、管理者が自転車を移動する手間が省ける)、利用者に時間的・金銭的な刺激を時に与える。これらの刺激は返却台数が少ないバイク・ステーションに自転車を返却してもらうのにかなりの効果がある。
 デマイオ(Demaio)によれば、「バイク・シェアリング運動」は自転車の利用が少ない都市において、自転車利用を1~1.5%増加させる。例えば、パリでは、自転車利用率が2001年の1%から2007年の2.5%まで増加し、ヴェリブでは、最初の2年間だけで5,000万回の移動が行われた。ただし、これらの増加は「バイク・シェアリング運動」単独によるものではなく、プログラム導入により自転車利用を支援する基盤が整備されることとしばしば関連している。
 バイク・シェアリングは有害なガスを排出しない交通手段である。しかしながら、自動車を利用する代わりに自転車を利用するとは限らないために、バイク・シェアリングによる有害排出ガスの削減量を推定することは困難である。それでもなお、自転車が1日に移動する距離は非常に長い。例えば、パリではヴェリブの利用者は1日に平均7万8,000回、合計31万2,000kmを移動する。もしこれらの移動が自動車と完全に入れ替わるものであれば、1日に約5万7,720kgの二酸化炭素を削減できる。これらの移動のうち、個人的な自動車利用はどの程度だろうか? ワシントンDCにおけるスマートバイク(SmartBike)の利用者調査によれば、バイク・シェアリングを通じて、個人の自動車によると思われる移動の16%を自転車利用が代替すると示唆されている。一方、欧州の複数の都市においては、個人の自動車利用の約8%が自転車利用となるようだ。タクシー利用も含めれば、この値はパリでは13%へ増加する。
 バイク・シェアリングには他にもいくつかの利点がある。近年、健康保険コストが急上昇している。コスト増加の中心的要因は活動的でないライフスタイルによる健康への悪い影響にある。ガードナー(Gardner)によれば、ミネソタにおいて、健康保険コストは太り過ぎや肥満の場合、各々12%,  37%高い。さらに、ミネソタ州政府の予想によれば,  2005年から2020年に上昇する健康保険コストのうちの31%は、太り過ぎや肥満が引き起こす健康問題と関連する。「バイク・シェアリング運動」は太り過ぎや肥満の人に自転車利用を促すことにより、健康保険コストの低減のみならず、生活の質の改善にも貢献できる。
 自動車から自転車への乗り換えによる有害排出ガスと交通渋滞の削減、健康の増進に加え、「バイク・シェアリング運動」は自動車利用のための社会基盤整備に比べ、非常に低廉なコストで提供できる。例えば、自転車のための駐輪場は駐車場に比べ1/30から1/300の費用で整備できる。

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掃除機はもうダメ

宇宙のことについて、尋ねられている夢。宇宙と存在。まともに聞いているかどうかわからないけど。 #夢見
部屋の片づけ、大変ですよ。一生着ないものばかり。掃除機はもうダメですね。一万円以下のバッテリータイプを買ってこよう。 #部屋の片づけ

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