goo

世界遺産の都「ラトビア」の魅力

『世界遺産の都へ「ラトビア」の魅力100』より ⇒ 2005年の愛知万博でリトアニア館に20回以上行った。通訳の女性とバルトの文化に惹かれた。バルトにはヘルシンキ経由で行きたい。フィンランドの挨拶「キートス」を言ったら、本当に喜んでくれた。「パルディエス」も同様なものなんでしょう。

ラトビア

 世界地図で探すと、スウェーデンやフィンランドの近くにある北欧の国、ラトビア。北はエストニア、南はリトアニアと国境を接し、西はバルト海に面しています。そう、教科書に載っていたバルト三国の一つです。北海道よりも小さな国土の中に、3、000を超える湖と広大な森林が広がる、自然豊かな森の国。最も高い山でも300mほどと起伏は少なく、ちょっと高い場所から見下ろすと、白樺の森がどこまでも続いています。バルト海が夏に涼しい空気をもたらし、かつ冬の冷え込みをやわらげるため、高緯度に位置するわ引こ気候の変化がおだやか。主食はライ麦を使ったパンとじゃがいもが中心で、乳製品やベリー類も豊富です。この地には、言語も風習も異なるいくつかの民族が暮らしていました。人々は天体や自然現象を神として崇拝し、古くからの言い伝えをダイナと呼ばれる民謡で伝承してきました。そこに13世紀はじめ、キリスト教の布教を目的としてドイツ人が入植し、諸民族を支配していきます。その後、20世紀末に独立するまで、ドイツ、ロシア、スウェーデンとさまざまな国の支配下におかれたこの国は、今でもキリスト教文化と、土着の自然信仰文化が共存しています。クリスマスやイースターを祝う一方で、夏至を祝うリーゴも人々の大切なイベント。ラトビア人の誇りでもあるダイナは今も歌われ、5年に1度開催される歌と踊りの祭典で盛大に披露されます。

挨拶

 ラトビアでも他のヨーロッパ諸国と同様、若い人を中心に英語が通じやすいので、ラトビア語が話せなくても旅行中に大きな支障はありません。ただ、その国の言葉でやりとりができれば喜びもひとしお。どこの国でもそうですが、やっぱリラトビアの人たちも旅行者がラトビア語を話そうとしている意志が伝わるととても喜んでくれます。「こんにちは」の意味の「ラブディエン(Labdien)」、「ありがとう」の意味の「パルディエス(Paldies)」だけでもいいので、恥ずかしがらずに使ってみましょう。お店に入ったときに一言ラブディエンというだけで、店員さんも快く接してくれるはずです。ラブディエンの発音のポイントは、「ディ」にアクセントをおき、「ィ」を心持ち強めに仲ばすことです。他にも、便利なラトビア語に「どうぞ」「どういたしまして」の意味の「ルーヅ(Ludzu)」があります。英語の「You're welcome」「Please」「Here you are」のすべてに使えるイメージです。最後の「ヅ」にアクセントがあり、「ルーヅッ」と弾むように発音します。みんな「ヽソ」のところで口角をキュッとあげて微笑むので、この言葉は微笑みと1セットになっているのでは?と思うほど。無愛想なカフェのお兄さんですらルーヅというときにははにかんだような笑顔を見せてくれました。挨拶のほかに、「Yes/No」の意味の「ヤー(Ja)/ネー(Ne)」、1~9の数字も頭に入れておくと便利です。

図書館

 空港から旧市街に向かう途中、ダウガワ川の手前に三角形の大きな建物が見えます。ラトビア国立図書館、別名は光の城です。 2014年の落成時、|日図書館から蔵書を移動させる際に「本を愛する人の鎖」というイペントがおこなわれました。14、000人の市民が参加して、手渡しで本を運んでいったのです。正面入り口をくぐると、高い吹き抜けの窓から柔らかな太陽の光が差し込みます。近代的な広いホールの中央に立って見上げると、まるで空へ向かって伸びるような美しい本の壁。最上階には展望デッキ、1階にはギャラリーやレストランがあります。

カルンツィエマ・マーケット

 リーガ国際空港と旧市街の間に位置するカルンツィエマ広場。ここで毎週土曜日に開かれるのが大規模な野外市場、カルンツィエマ・マーケットです。日用品や生鮮食品はもちろん、衣類やアクセサリー、クリスマスなどのシーズンイベントに合わせた雑貨類が並びます。オーガニックフードや添加物の少ない手づくりの食品を求めて足を運ぶ人もいます。売り手と買い手の距離がとっても近くフレンドリーなのも、この場所が楽しい理由のーつ。ワインやチーズ、ベーコンなどは気軽に試食できますし、どのお店の人も英語で観光客に積極的に話しかけてくれます。「一つどうだい? おいしいよ」といわれて、ついつい買ってしまった炭火焼きソーセージはとってもジューシー!伝統的な黒パンや、「何人で分けるんだろう?」と思うほどの巨大ケーキは見ているだけでも楽しめます。市内のカフェやケータリング店がブースを出していたり、ドライフルーツを使ったベジタリアン向けトリュフといったオリジナル商品の販売をしたりする人もいます。生活雑貨、アクセサリーコーナーには、ミトンやニット製品、リネンのテーブルウェア、熊のマスコットなど目移りしてしまうほどのラインナップ。敷地の奥の小さな小屋には、地元アーティストの作品を展示したギャラリーも併設されています。マーケット内を見まわって(ときどき腹ごしらえをしながら)とっておきの一品を見つけてくださいね。

写真

 ラトビアには絵になるスポットがたくさん。きらびやかな装飾のブラックヘッドの会館や荘厳な教会、ユーゲントシュティール建築群などの歴史的建造物では間違いなく素敵な写真が撮れます。ダウガワ川から眺める旧市街もおすすめ。早朝・昼・夕方と時間帯によって表情を変えるパノラマを、川にかかる2本の橋から一望できます。街にはショーウィンドウや公園にたたずむ銅像など、ついついカメラを構えたくなるかわいいもので溢れています。これといった観光要素のないエリアを歩いていても、思わずシャッターを切りたくなるスポットが散リばめられていて、ちょっとした宝探し気分を味わえます。昔のラトビアやリーガに興味があるなら、旧市街の南にある写真博物館に立ち寄ってみてください。ラトビアの変遷を記録した貴重な写真が多数展示されています。圧巻なのは、リーガのシンボルの一つ、聖ペーテラ教会の塔が火災で焼け落ちる様子を撮った写真。数コマに渡って撮影されていて、最後には展望台が跡形もなくなっています。この塔は災害で何度も倒れ、その度に再建されてきたのです。他にも、今と変わらず賑わう中央市場の写真や、スパイカメラといわれたラトビア生まれの極小カメラ「Minox」などの常設展示に加えて、ラトビアの若手フォトグラファーの写真展が開催されることもあります。ちなみに、ラトビアの博物館では館内の写真撮影は有料でOKとなっているところが多いので、入り口で確認してみてください。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

レファレンス質問に関する総合演習課題

『情報サービス演習』より レファレンス質問に関する総合演習 ⇒ 聞いてどうするのかね?

1.地方公務員を目指している。公務員の奮闘記を描いた新書を読んでみたい。ちなみにテレビで著者が2015年頃に紹介されたらしい。

2.商業施設での照明に関する図書はないか。雑誌の特集でもいい。できれば2005年以降に発表されたものがいい。

3.男性の更年期障害で悩んでいる。何か良い新書はないか。

4.「モルグ街の殺人事件」をスマートフォンか電子書籍で読みたい。できれば、無料で読めないだろうか。

5.京津日日新聞のことについて知りたい。時期は問わないので、当時掲載された記事も読んでみたい。

6.雪氷環境について研究した日本人研究者の博士論文が読みたい。 2000年頃に発表されたらしい。ついでに、経歴も知りたい。

7.コプト語かコプト文字を研究している研究者はいないか。できれば九州域内から講師を呼びたい。

8.文部科学省が行う学力基本調査の、秋田県の結果を分析した論文が読みたい。

9.海外で発行されている日本研究に関する雑誌には、どのようなものがあるか。

10.ゲルマン民族の大移動について、子どもにわかりやすく説明したい。

11.暗いという言葉は「元気がない」という意味合いではどんな言い換えがあるか。

12.ウンベルト・エーコはイタリアではどのように紹介されているのか。イタリア語の勉強がてら、経歴を知りたい。

13.英語で書かれたアフガニスタンの経済動向について知りたい。百科事典の1項目程度にまとまっていれば良い。

14.軍用イルカとは何か。

15.日本国内での育児休暇に関する制度をアメリカ合衆国の本社に説明したい。良い情報はないか。

16.草津市では、愛する何とかという、地球温暖化に取り組むための条例があるらしい。全文を読みたい。

17.池田勇人が国会の委員会で「貧乏人は麦を食え」と発言した後、木村禧八郎は誰に対して質疑応答をしたのか。そのやりとりも知りたい。

18.高知県公報で、最新のものを読みたい。

19.1970年代の宅急便のマークでは、猫は丸以外のどんな形に囲まれていたのか。

20.ルンバの会社はどれぐらい特許を持っているのか?

21.「コーヒーフレッシュ」という呼び名を商標登録している会社はどこで、いつまで使えるのか。またその会社ではどのようなコーヒーフレッシュを販売しているか。

22.日本のディズニーランドは特許を幾つか持っているらしい。どんなものか。

23.銀河英雄伝説の商標はどこか持っているのか。また、過去にトラブルがあったらしいがどんな経緯か。

24.紀国屋文左衛門の画像を見たい。画像の典拠元も見たい。

25.方向音痴を研究している研究者を知りたい。研究領域、現在の研究課題なども知りたい。

26.八十二銀行はどのような経緯をたどって、現在に至ったのか。

27.日立造船の有価証券報告書が読みたい。できれば最新分のものを。

28.熊本県熊本市で出土した土偶を見たい。データベースで検索できるか。

29.明治時代に出版されたフランス語の桃太郎を読みたい。

30.百鬼夜行絵巻をインターネット上で見たい。できる限り異版も見たい。

31.江戸時代に作られた石造の建築物の存在を確認したい。日本建築学会が把握している限りで何件あるのか?

32.借金を整理したい。マンガとか何かわかりやすい本はないか。近くの司法書士とか相談窓口も知りたい。

33.教育訓練給付制度を使って、司書資格取得を目指したい。通信講座で取れるところはないか。

34.Tンテペート軟膏を使用した時の重大な副作用を知りたい。

35.東京から岩手県紫波町へ行くバス路線を知りたい。時刻表と途中の停留所も併せて知りたい。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

図書館における情報サービス 利用者の情報ニーズの把握

『情報サービス演習』より 図書館における情報サービスの構築

利用者の情報ニーズの把握

 図書館で情報サービスを展開するにあたってば、利用者それぞれが抱える情報ニーズを把握することが大事である。特に、サービスの枠組みを設計するにあたり、利用者の特性を知ること、場合によっては、サービス対象となる利用者を特定化することは、利用者の情報ニーズをより深く把握することにつながる。ひいては、利用者の目的に応じたサービスが展開でき、利用者の満足度を高めることにつながる。その場合に有効となる手法が、マーケティング分野の手法として用いられる「セグメンテーション」である。

 セグメンテーションとは、市場細分化の意味であり、地域、顧客の属性、趣味嗜好、生活スタイルなどといった観点から顧客を細かく区分けし、同じニーズや性質を持つ固まり(セグメント)にまとめる。そして、対象をしぼり、特定の対象に応じた市場対策をとることである。図書館で利用者をセグメンテーションする場合、細分化する切り口の例として、人口統計的要因(年齢、性別、世帯規模)、地理的要因(地域の習慣、気候)、社会的要因(職業、学歴、所得)などが設定される。

 公共図書館の場合、設置自治体の状況を人口統計要因から調べることで、図書館の主な利用者層を把握することができる。また、国勢調査や住民登録台帳を見れば、住民が居住する地域、居住者が少ない地域も確認できる。国勢調査や住民基本台帳を通して年齢別人口も調べられるため、年齢でセグメント化することもできる。地域によっては、外国人の比率も注目に値する。地域間の特徴を知るには、総務省統計局のサイトで公開されている国勢調査などの結果が参考になろう。

 また、自治体が作成している各種計画や統計は地域の社会的実情や地域全体の将来性を把握するのに役立つ。地域住民がどのようなニーズを抱え、図書館どのような情報サービスを提供したら効果的なのかが見えるだろう。

地域の課題解決と図書館の情報サービス

 2006 (平成18)年3月に文部科学省が発表した『これからの図書館像一地域を支える情報拠点を目指してー』では、図書館の基本的な在り方の一っとして、「図書館はすべての主題の資料を収集しているため、調査研究や課題解決に際して、どのような課題にも対応でき、どのような分野の人々にも役立つ、また、関連する主題も含めて広い範囲でとらえ、多面的な観点から情報を提供することができる」ことを示した。

 そして、現在、地域が抱えるさまざまな課題を地域にある資源を活用しながら、住民やNPO、市民活動団体などが自ら活動することでまちづくりを行い、地域を活性化する動きがかなり多く見られるようになった。公共図書館はまちづくりの活動の主体に対して課題を解決するための情報提供をしたり、図書館自身が実際にまちづくりに地域活性化に参画したりする関わる事例も出てくるようになった。その領域は、商業、産業、観光の振興といった地域経済に関するものから、市街地開発、地域特有の課題解消に向けた動きなど、幅が広がっている。いわゆる、「課題解決型」図書館の登場である。

 図書館は、資料や情報提供機能のほか、情報収集法のアドバイス、レファレンスサービス、さらには講座や相談会などの行事開催などを通して、課題解決に関わる。いわゆる図書館の情報サービスが生きている例である。

 図書館による課題解決支援の取り組みとして代表的なものは、鳥取県立図書館の他機関との連携を通した事例であろう。鳥取県立図書館はミッションの一つに、「仕事とくらしに役立つ図書館」を掲げ、仕事・地域活性化へ貢献するために、「図書館ビジネス推進事業」や「くらしに役立つ図書館推進事業」に取り組んでいる。そして、ビジネス支援サービス、医療健康情報の提供など行っている。

 また、図書館員が街に出て地域の課題を把握、多様な主体による協力を得ながら、課題に対処するためのサービスを展開している事例もある。岩手県紫波町図書館は運営三本柱の一つに「紫波町の産業支援をする」と掲げ、農業支援サービスを展開している。活動内容は、農業支援コーナーの常設、農業関連のデータベース講習会、企画展示、隣接する産直館でのレシピ本POPの設置、仕事や団体の垣根を越えて気軽にテーマを話し合う場「こんびりカフエ」といった非常に多岐にわたるものである。

 その際、課題解決型のサービスで最も重要な点は、他部署、他機関との協力連携である。鳥取県立図書館の場合、ビジネス支援サービスを展開する前に、2003年4月より外部委員(商工会議所、財団法人県産業振興機構、県産業技術センター、県商工労働部、県農林水産部など)を委嘱してビジネス支援委員会を立ち上げて、仕事に役立つビジネス支援サービスのあり方を検討し始めた。委員会は人脈作りや具体的事業の検討提案で実績を残し、その後図書館は2004年4月よりビジネス支援事業を本格的に開始した。岩手県の紫波町図書館は、図書館開館後に、図書館員が農林課勤務経験のある上司を起点に、役場内の農林課、農林公社との連携を図り、その後意見交換会を開催した。双方とも、サービス導入/実施段階において図書館外部から知識を得ることで、サービスの方針や内容を少しずつ軌道修正しながら、サービスを展開している。

 日常的に図書館は外の部署と業務上の行き来が少ないため、組織内の他部署や他機関の存在は近くて遠い存在となりかねない。しかし、相手の信頼を得る上でも、「組織としてサービスに取り組む」姿勢を見せることは重要である。サービス策定においては、サービス自体を図書館計画の中に明確化させる、ないし、サービスが図書館計画の方向性に沿うよう示すことも重要である。図書館が課題解決を中心とした情報サービスを展開するにあたってば、サービスに関連する情報の収集、関連組織との連携体制が重要となる。

 課題解決を中心とした情報サービス展開のプロセスは次のような流れにまとめることができるだろう。

  (1)利用者/対象者を正しく把握する。

  (2)解決する課題を把握し、定義する。

  (3)図書館の目的を踏まえながら、図書館で活用可能な諸資源、保有技術を探る。

  (4)サービス展開に関わる、組織内の他部署、他機関との連携を図り、関係づくりを行う。

  (5)課題解決のための情報サービスを実践する。

  (6)必要に応じて、利用者のサービスに対するニーズを把握し直し、サービス内容を変更する。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

最近の欧州における「難民危機」

『難民を知るための基礎知識』より ヨーロッパの難民問題 二つのヨーロッパ 欧州連合(EU)の難民政策 欧州評議会の難民政策

冷戦後からの流れで見ると、EU加盟国での庇護申請数は、主にユーゴスラビア紛争の影響でいったん1992年に約67万というピークを迎えた後、2013年までは概ね約40万人から20万人の間を推移していた。ところが、2014年には約63万人、2015年には132万人とわずか2年間の間に3倍、10年前と比べると6倍以上に増え、第二次世界大戦後「最悪の状況」と言える。2014年と2015年の新規庇護申請者の主な出身国は、シリア、アフガニスタン、イラク、コソヴォ、アルバニア、パキスタンで、約3割がシリア出身である。主な庇護審査国はドイツ、ハンガリー、スウェーデン、オーストリア、イタリア、フランスで、ドイツにおける2015年の新規庇護申請者数は約89万人とEU全体の半数以上となった。2015年に出された庇護審査結果のうち、約23万人が難民の地位、約6万人が補完的保護、約2万人がその他の人道的滞在許可(各国政府が独自に定めるもの)を与えられたが、約半分のケースにはそのいずれも与えられず、基本的に送還の対象となっている。

これらの数字を全世界規模で比べると、2015年の世界における難民の数は約1610万人であり、庇護申請数は約200万件であった。またシリア人だけで考えると、UNHCRによれば、トルコ国内で登録されているシリア難民は約270万人、レバノンでは約106万人、またョルダンでは約64万人が「UNHCRの関心対象者」とされている。これらの数字と欧州における難民や庇護申請者の数を比べて、「ヨーロッパに難民が怒濤の如く押し寄せているという表現は誇張である」とか、「ヨーロッパはもっと難民を受け入れるべき」という主張がある。確かに数字だけを単純に比べれば、トルコ、レバノン、ヨルダン内にいるシリア出身者の合計の方が、EU加盟国内にいる数よりもずっと多い。しかし問題は「量より質」でもある。上でも見てきた通り、欧州共通庇護制度や欧州人権条約によって、庇護申請者や難民、その他の「第三国民」に保障されるべき最低基準が定められており、加盟国にはそれら最低基準を必ず満たす法的義務がある。欧州諸国の「福祉国家」としての性質は、その国の国民だけでなく外国籍を有する者にも一定基準の下で権利や福祉が保障されるべきという理念に繋がっている。そしてそのような権利保障や福祉は、欧州難民基金(庇護おょび移住基金)はあるものの、基本的には受け入れ国政府が財源を確保し提供することとなっており、言い換えれば各国の市民が払う税金から成り立っている。このことは、トルコやレバノン、ヨルダンにおける難民・避難民支援が、その他の先進国(たとえばアメリカや日本など)から直接提供される二国間支援や、国連などの国際機関を通じて提供される緊急人道支援のための巨額の拠出金に頼ることができる状況とは、大きく異なっている。

現在欧州が抱える難民問題は、時に相矛盾する理念や国益の間のバランスをとる難しさを体現しており、これは自由民主主義に基づき福祉を重視する経済的に豊かな国民国家が必然的かつ共通に直面する課題であると言える。つまり、一方では、人権、福祉、法の支配といった「ヨーロッパ的価値」やアイデンティティを保持する必要があり、また西ヨーロッパ諸国の多くには植民地時代からの繋がりやナチス時代のホロコーストの堕罪という呪縛もある。さらに、多くの欧州諸国が短期・長期的に高齢化社会を迎える見込みであり、経済面での国際競争力を保つために必要な労働力を確保するという文脈で、移民受け入れは不可避である。その一方で、多くの欧州諸国で極右政党が台頭しており、移民・難民政策の失敗はそのまま現政権の失墜に繋がる恐れもある。その国で生まれ育った移民の背景を持つ若者が社会に対する様々な不満のゆえに過激化する現象も見られており、国外からの人の流れの中にテロリストが含まれるかもしれないという不安もある。度重なるテロ事件と「イスラム国」の勢力拡大から、必ずしも正しい宗教的理解に基づかない「イスラム嫌悪主義」も広がっており、移民との文化的摩擦の回避、社会的一体性の保持という国是も実際に存在する。そのような中で特に2014年から顕著になってきたのが、「シリア難民危機」への対応の混迷である。

ヨーロッパは地中海を隔てて北アフリカや中東と至近距離にあり、イタリア、ギリシア、ポルトガル、スペインといった南ヨーロッパ諸国に密航船が漂着するのは必ずしも新しい現象ではない。しかし「アラブの春」以降、特にシリアにおける紛争が長期化する中で主にトルコ、レバノン、ヨルダンに留まっていたシリア難民の多くがしびれを切らし、自力で欧州を目指し始めたのである。まず顕著になったのが、主にリビアから舟でイタリアを目指す「地中海ルート」である。たとえばイタリア最南端の島であるランペドゥーサ島には、ゴムボートや小舟にひしめくように避難民が乗った舟がひっきりなしに漂着し、小さな島の人口6000人を上回るほどの漂流民が島に滞在するようになった。と同時に、航海中に舟が転覆したり密航業者に溺死させられたりする事件も増え、2014年以降は確認されているだけで毎年3000人以上の溺死者が報告されている。地中海は「ヨーロッパの棺桶」と呼ばれるまでになった。そこで、EU諸国はFRONTEXの海上警備機能を強化し、EU海軍も様々な海上作戦を実行し、最終的にはNATO海軍までエーゲ海でのパトロールを開始することとなった。ここで問題なのが、これら海上活動は必ずしも漂流船の救助を目的としたものでなく、時に漂流船がヨーロッパ領海内に入ることを防止する行為も行っていることである。国際的な「庇護権」の大原則によれば、領海・領域・領空内に入った外国人には庇護を求める権利を保障しなければならないが、まだ管轄権外にいる外国人については基本的にはそのような権利を認める義務はない。FRONTEXやEU海軍の活動が人道救助なのか(避)難民の入域阻止なのか、その線引きが非常に曖昧になっており、ヨーロッパを目指したい避難民にとっては、地中海ルートは溺死の危険かおる上に入域阻止される可能性も高まった。そこで、次に顕著になったのが「バルカンルート」、つまり陸路でのョーロッパ入域である。シリアから見ると、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、またはマケドニア、セルビアやクロアチアを通って、シェンゲン領域内であるハンガリーやスロベニアを目指すルートである。避難民の多くはハンガリーやスロベニアに留まる意図はなく、いったんシェンゲン領域内に入った後はさらに北を目指し「難民に優しい」と噂で聞いているドイツやスウェーデンを目指したい。

しかし、ハンガリーやスロベニアとしては、ダブリン制度が機能する限り自国で数万・数十万の庇護申請を受け付けなくてはならなくなることが予想され、また「EU域外国境管理の強化」という文脈で当然厳しい出入国管理を実施している。時に国際機関や報道などで「ハンガリーが国境を開かないのは条約違反だ」という批判がなされたが。ハンガリーが難民・庇護申請者を含む外国人に国境を開放すべし、つまり積極的に入国を許可すべしと明示的に規定した国際規範はなく、そのような批判は法的根拠に乏しい。どの主権国家にとっても(シェンゲン域内でない限り)国境管理は当然の権利であり義務である。そこで。ハンガリーやスロベニアからのシェンゲン領域への入域が困難になり、多くの避難民がルーマニアやセルビア、クロアチア内に滞留することとなり、ドミノ的にルーマニアやセルビアヘのブルガリアやマケドニアからの入域も厳しく制限されることとなった。そこで、最後に顕著になったのが「トルコ=ギリシア海路ルート」である。たとえばギリシアのレスボス島には毎日数百・数千の密航船が漂着することとなり、国際移住機関(IOM)によれば、2016年の最初の4ヶ月間だけで、海路でギリシアに入国した人の数は15万人を超えたと報告されている。

そのような中で混迷を深めたのが、EU諸国による対応策である。まず、イタリア、ギリシア、ハンガリーといったEU域外国境を抱える国で大量の避難民が流入した国が、ダブリン制度が機能するための大前提である指紋採取を放棄したのである。もし指紋採取し、ダブリン規則に則って他国へ移送すべき他の根拠が見つからなかった場合、最初に登録した国が庇護審査作業の義務を負うこととなる。これらの国では突然大量の庇護申請者を抱えたため難民認定制度が機能麻痺に陥ったこともあるが、より現実的には、指紋採取せずに他国への通過を黙認し、行った先の国で登録されればダブリン規則に則り自国は責任を負わなくてよくなる、という思惑もある。また当事者である庇護申請者にとっても、イタリア、ギリシア、ハンガリーで登録してしまうとそこに留まる必要が生じるため、できれば無登録のまま自由にシェンゲン領域内を移動してさらに北を目指したいという意図もある。よって、最初に到着したEU域内国での登録と指紋の採取・照合という大前提が崩れたため、シェンゲン情報システムもユーロダック規則も機能しなくなり、実質的にダブリン体制が崩れた。

次に綻び始めたのがシェンゲン法体系である。ダブリン体制が崩壊し避難民がEU域内で北を目指すようになった結果、自国への大量の庇護申請者の流入を恐れた国、たとえばオーストリア、ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどが、国境管理を再開し始めたのである。これらの国はシェンゲン法体系に参加しているため、本来国境管理は放棄しているはずだが、ちょうど時期を前後して起きたパリやベルギーにおけるテロ事件も受け、国境管理が緊急措置として再導入された。これはとりもなおさず、シェンゲン体制の危機であり、EU域内での移動の自由という大原則の「終わりの始まり」とも見える。シェンゲンとダブリンという欧州共通庇護制度を支える二つの柱が崩壊し始めたのは、ヨーロッパ統合構想全体にとっても大きな衝撃だった。

そこで、欧州共通庇護制度の完全崩壊を何とか防ごうと欧州委員会が提案したのが、EU域内での「緊急再定住措置」である。EU加盟国問の庇護分担という理念に基づき、シリア、エリトリア、イラク出身の庇護申請者に関して、2015年5月にはイタリアとギリシアにいるうちの4万人を、同年9月にはイタリア、ギリシア、ハンガリーにいるうち12万人を、他のEU加盟国に移送するという提案がなされた。分担数の計算は、各国の人口、GDP、庇護負担率(人口100万人に対する庇護申請件数)、失業率に基づき行われ、たとえばドイツは約1万7000人、フランスは約1万3000人の受け入れが投票の末に可決された。しかし、本稿執筆時点で再定住は殆ど実現しておらず、数百人規模でしか進んでいない。欧州共通庇護制度の形骸化をさらに印象付ける事態となっている。

最後に、最近の大きな動きが、2016年3月18日の「EU=トルコ声明」である。当初は、「卜ルコ=ギリシア海路ルート」を使ってギリシアに非合法的に漂着した全ての新たな庇護申請者をトルコに送還し、一人トルコに送還される代わりに、トルコに留まってすでに難民と認められた者を一人EU圏内に第三国定住手続きで受け入れるという提案であった。この「第三国定住制度で受け入れる」という部分だけを見れば歓迎し得る方針ではあり、危険な航海と密航業者を撲滅するという表面上の価値はある。しかし、「全ての新たな庇護申請者を送還する」という部分は、国際法でも広く認められている「庇護を求める権利」を反故にするものであり、他方面から多くの批判が寄せられた。結果、最終的には「庇護手続き指令」に則り、トルコを「安全な第三国」とみなしてトルコ政府との「再入国協定」を結ぶと共に、同指令に定めた迅速審査手続きと国境手続きを発動し、庇護申請が受理に値しない者や明らかに根拠のない者、またギリシアで庇護を求めない者は全員トルコに送還するという内容となった。従って、何とか国際法上の大原則である「庇護を求める権利」は少なくとも紙面上では死守された。また第21章で見てきた通り、「安全な第三国」との「再入国協定」はすでに多くのEU域外国と結ばれており、「庇護手続き指令」第43条3項では大量の庇護申請者を突然抱えることとなった際の緊急手続きも認めているため、「EU=トルコ声明」はそれらに先例と根拠を見つける形となった。しかしすでに触れた通り、そもそも「安全な第三国」という概念が持つ問題点に加え、トルコが本当に「安全な第三国」なのか、またギリシアにおける迅速審査手続きや国境手続きにおいて「庇護を求める権利」がどの程度実質的に保障されているのか、大いに疑問が残る。今回は何とか欧州において「庇護に対する権利」が首の皮一枚で繋がったが、今後庇護権がどうなるのか、非常に危うい状況である。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「公共」図書館の先にあるのは知の世界

図書館はシェア社会を先行

 図書館の存在理由としてはシェアする文化が一番重要です。パブリックライブラリそのもの。この文化を拡げること、というか、拡がっているものを全体に伝播させること。

本は音楽と同じ道を辿る

 本を買わないと読めない。それは今では無理です。音楽は買わないと聞けなかったけど、今は買う前に聞きます。まず、音です。それでないと拡がらない。そのことはミュージシャンが望むこと。

 ミュージシャンは自分のものが拡散することを望む。【拡散希望】が本で起ころうとしています。CDを大量購入するのは、握手会のためです。タイトル未定の状態で、握手券を求めます。この方がはるかに異様です。応援したい心をモノにしないと表現できないことは資本主義の欠点です。

モノでしか決済できない仕組み

 NAVIのデータを衛星で飛ばした時に、一番の課題は料金徴収だった。衛星は相手を特定しない。沖縄の石垣島にもアンテナを設置すれば、受信できる。設置確認に現地まで出張して調べた。

 情報に対する見返りのために、システムにキーを設定して、わざわざ物量ルートを作った。なんかばかげている。

 今まではCDとかDVDに価格を設定してきたが、それが不要になってしまった。これらは本来はシェアする考えに持って行くことなんでしょう。というのは、走行中にNAVIがデータを受信できるようになれば、経費のコストが不要になる。いつでも最新のコンテンツを保障するカタチになる世界です。

岡崎図書館の『図書館の未来』

 今日は岡崎図書館でテーマ『図書館の未来』がある。行こうかどうか迷った。一つは車で行く時のガソリン代と事故のリスク。二つ目は駐車料金です。それに見合ったメリットがあるか分からなかった。

 テーマが私が思っているような「図書館の未来」が聞ける可能性は低い。公共図書館で資本主義を凌駕できるシェア社会が描けるとは思えない。

 講演者の本はOCR化してあるが、さほどインパクトはなかった。ニューヨーク図書館を描いた菅谷さんの方がはるかにあったし、先を読んでいた。刈谷まで、聴きに行って、図書館にとって、アウトリーチの必要性を教えてもらった。どうでもいい本屋との関係とかの話になりそうですね。だから、止めました。

新しい数学から見たシェアの世界

 新しい数学もシェアの世界で世の中を変えるインフラとしてどう作るかという視点で考えていく。他者への提案である未唯宇宙はそういうカタチになるでしょう。

スタバの使い方

 今日は8時に出掛けて、考えをまとめましょう。

 月曜日の午後は学生でスタバが混むからどうにかしてくれとFBに書かれていた。そんなものは簡単です。図書館を月曜日も開館にすればいい。ついでに、岡崎市図書館のように、9時-21時にすればいい。そのために市民ボランティアもありです。

 今は学生が主だが、岡崎市図書館は見る限り、老人の憩いの場になりつつある。水曜日に休館になるけど、老人はどこに流れるか。モーニングの喫茶店ならばいいけど、スタバに来たら始末が悪い。

 老人は自己アピールするし、婦人方のおしゃべりは学生の比ではない。スタバには美女が来て欲しい。そしたら、自然に人が集る。年寄りは何の役にも立たない。

電子図書館のイメージ

 電子書籍になれば、図書館というスペースの意味が変わってくる。本の場所がなくなれば、広く使える。貸出・返却業務がなくなれば、人員配置も換わってくる。勉強する場、集る場、孤独になる場とか、本来の公共の役割を果たすようになる。市役所を土日オープンするよりも安くて済む。

「公共」図書館の先にあるのは知の世界

 なぜ、図書館株式会社がないのか。カーシェア株式会社があるのに。どちらが合っているのか。「公共図書館」が正解なのです。

 やるとしたら、アマゾン・グーグルがクラウドを提供して、一定のレベルを保ちながら、経費削減を図り、前面に公共施設を出して、コミュニティが運営を行なう形をとる。シェアリングエコノミーで政治形態を地域主体に切り替えてしまう。公共が前に出てくる。

 コミュニティが利益を得て、雇用を維持し、循環のベースを作り上げる。NPOはそこでの働き口になる。モノを知ること、知の世界のベースとなるカタチです。

 これらを関係づけて、見えるようなカタチにするのが、未唯空間をベースとした未唯宇宙です。

ステレオタイプのFBコメント

 「消しゴムのカスを散らかしたまま…」というFBでのステレオタイプでの言い方は悪です。どれだけの事例を見てきたのか。ほぼ毎日、スタバに行っている私は見たことがない。消しゴムを使っている学生もほとんど見ていない。

 これは「ユダヤ人は…」「ジプシーは…」という言い方をして、迫害していったのと同じ論理です。悪質です。

OCR化した本の感想

 『難民を知るための基礎知識』

  ヨーロッパでの「難民危機」を「シェンゲン法」「欧州共通庇護制度」から展開している。EUとしての方向が問われている。個人的にはトルコとレバノンをEU内に取込んでしまえば、先が見えてくる。

  トルコを避けているけど、ドイツでは第3世代まで拡がっている。閉じるよりも開放して、双方向の流れにすることです。ギリシャとレバノンを接点にした交流から突破口を拡げて行けそう。

 『情報サービス演習』

  図書館における情報サービスを担える人がいないと言うよりも、ステータス不足です。UCバークレーの図書館の内部を回っている時に、大きな個室があった。そこは、司書の部屋だった。彼らは博士号を2,3は持っていると言うことであった。

  日本の図書館に司書は期待されていない。市の行政にも口出しできるだけの役割を与えれば、それなりの人は来るかもしれない。

  それ以前に、図書館協議会の委員のレベルが低いところから変えていかないと無理かもしれない。

 『世界遺産の都へ「ラトビア」の魅力100』

  2005年の愛知万博でリトアニア館に20回以上行った。通訳の女性とバルトの文化に惹かれた。バルトにはヘルシンキ経由で行きたい。フィンランドの挨拶「キートス」を言ったら、本当に喜んでくれた。「パルディエス」も同様なものなんでしょう。

  阪急交通社でストックホルム、ヘルシンキ、リガ(ラトビア)、ヴィリニウス(リトアニア)、タリン(エストニア)で7日間で14万円~18万円。これなら手が届くけど、足が届かない。胸の違和感と奥さんの説得は難航しそう。

  本当にしたいのは、ヘルシンキ~バルト三国~ハンガリー~ウクライナ~トルコのように、境目を縦に抜ける旅行です。理想は「トルストイの家出」で途中で行き倒れること。これでは奥さんからお金は出ないよね。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )