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身体が無ければ最高!

言葉の世界は配置です

 言葉の世界はハイアラキーではなく、配置である。となると、人間の世界も配置で見た方が自然です。それができなかったのは個が覚醒していなかったから。言葉にハイアラキーがないです。循環とか飛ぶとか言うのは、配置で考えるしかない。

 今の組織も同様です。ハイアラキーと思っているけど、個人からするとそうではない。社長よりも上のことを考える人間はいくらでもいます。それを活かすことで、組織は生きてきます。

ソニーは手を抜く

 また、ICレコーダのバッテリーが最低限になっています。やはり、新しいゴールドの方はおかしい。

組織の中の配置を活かす

 組織にとっては、裏切りになります。SMAPを見ていても、同じように、グループを配置と考えれば、答えが出て来る。一方向から持たない。持っても、それは仮の姿。でありながら、ダイナミックに動いていけるのは、配置の特徴です。

 今までのやり方ではそんなことはできなかった。だけど、情報共有がそれを可能にした。フェースブックでザッツバーグが仕掛けたように。

Blue Shadeの世界

 キンドルをBlue Shadeにすると、どうしても暗闇を潜りたくなる。これは人間の真理でしょう。

 言葉は配置ならば、人間の世界も配置になっていくのが自然です。そう考えると、哲学が言葉に向かったのは至極当然です。

 覚醒していない人間にとって見ると、この無秩序は耐えられないでしょうね。彼らにとって見たら、不安定です。ただし、系としては安定しています。

身体が無ければ最高!

 この穴倉での思考、光が遮断された世界はなかなかいいものです。あと、身体さえなければ、最高です。

 なぜ、身体のように物理的なものがあるのか。そう考えたからYODAは出来たんでしょう。考える身にとってみたら、余分です。本当はすべてが頭の中に空間があればいいけど。そのために、パソコンとか哲学を作ってもらった。車も会社もそうでしょう。

 ただ、女性だけは、もう少しキッチリ作ってほしかった。あまりにも、何を考えているのかわからない。

 暗闇の中で考えることの欠点は、眠たくなる。起きると、途方もない時間が過ぎている。夢も含めて、どこの次元に嵌りこむのか。

ご無沙汰メールの続き

 またしても、意外な時間にこの間の続きのメールが飛び込んできました。富山で二泊したみたいですね。あいかわらず、キャッチボールではない。この感覚がなかなかいい。ラインでは無理な世界です。絶対に予想した時に、予想した答えが返ってこない。

英語よりも数学の教育

 優秀な日本人が6年間、英語の教育を受けて、それで英語が話せないということが信じられないというがあるけど、それは使わないから。算数・数学は12年間やっても、数を変えることぐらいしかできない。

 数学ほど、有効な武器を手にしないのか。世界中、どこでも使えます。英語は英語圏しか使えないけど。

キーワードの抽出

 キーワードの抽出ということで、中項目に対しても一つだけではない。それを上に上げていきます。当然、下にも影響します。それはそれで変えればいいです。問題なのは、横軸との関係です。そのためのキーワード空間です。

年間借出冊数

 1月の段階で、1500冊を超えました。例年よりも2カ月早いです。毎週、40冊を処理してきたから。

 これだけ、ターゲットがあるもんです。今日、読みたい本がないと言っていた人がいたけど、それは興味の範囲が狭いんです。いま、興味の範囲はどんどん拡大しています。これも未唯空間のおかげです。
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豊田市図書館の30冊

330.4『エコノミストの昼ごはん』コーエン教授のグルメ経済学

430.21『日本の化学の歴史』エピソードで読む

494.6『図解 手足のしびれをスッキリ解消させる!』最新治療と予防法 手術をすべきか 自己治癒力で改善させるのか?

331.87『ディートンの経済理論』図解 完全まるわかり 貧困からの大脱出

324『民法概論⑤ 親族・相続』

366.38『マタハラ問題』

316.1『「表現の自由」入門』

914.6『かわいい夫』

007.6『アキレスとコンピューター蟻の冒険』CPU・プログラム・OS--コンピュータの仕組み

210.08『岩波講座 日本歴史 第21巻・史料編』

377.23『イタリア・アカデミックな歩きかた』都市をめぐる教養散策

231『ギリシャ人の物語Ⅰ 民主制のはじまり』塩野七生』

104『哲学な日々』考えさせない時代に抗して

489.56『タヌキ学入門』かちかち山から3.11まで 身近な野生動物の意外な素顔

069.02『ぶらりあるきカンボジアの博物館』

319.27『石油・武器・麻薬』中東紛争の正体

159『心に元気があふれる50の物語』あなたのすぐ隣にあるストーリー

914.6『ぼくがいま、死について思うこと』椎名誠

915.6『ヒマラヤ漂流』--『神々の山嶺』へ-- 夢枕獏

913.6『南海蒼空戦記5』[機動部隊激突]

373.22『平成27年度 教育小六法2015』

131.4『ニコマコス倫理学(下)』アリストテレス

007.3『大人のためのメディア論講義』

133.9『プラグマティズム入門』

323.13『憲法誕生』

481.78『個性は遺伝子で決まるのか』

191.9『カール・バルト』神の愉快なパルチザン

210.3『封印された古代史の謎大全』

104『恐怖の哲学』ホラーで人間を読む

509.21『ものづくりの反撃』
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ローマ 宗教と科学がせめぎ合う歴史都市

『イタリア・アカデミックな歩きかた』より ⇒ 『アテネの学堂』には、370年に居たアレキサンドリア図書館のヒュパティアも描かれていると聞いたことがある。ローマ大学図書館は休みで入れてもらえなかった。

ローマほど歴史が重層する街もありません。古代ローマ時代、中世キリスト教の時代、一二世紀ルネサンス期、盛期ルネサンス期、対抗宗教改革とバロック期、ナポレオン期、イタリア統一期、ファシズム期。それぞれの時代のアカデミックな歴史がこの街には重なっています。

ローマに行くとその華々しい歴史と美術に目が奪われてしまいがちです。しかし、アカデミックな面から見ても、ローマほど面白くて奥の深い都市はありません。こうしたアカデミックな名所を地下鉄を使って回ります。地図2をごらんください。ローマの地下鉄は、京都と同じく、東西線(A線)と南北線(B線)しかないので、とてもわかりやすいのです。

●ラファエロの最高傑作『アテネの学堂』

 地下鉄A線オッタヴィアーノ駅から歩くとヴァチカン市国があります。ぜひ見ておきたいのは、学問の絵として世界で最も有名な壁画です。「署名の間」の四面にはラファエロによって学問の各領域が描かれています。東面の『アテネの学堂』は哲学を表し、南面の『枢要徳』は法学、西面の『聖体の論議』は神学、北面の『パルナッソス』は詩学を表しています。

 なかでも、『アテネの学堂』には、プラトンとアリストテレスをはじめとする古代ギリシャの哲学者たちが描かれています。プラトンは天上にあるイデアを指さし、アリストテレスは手のひらを下に向けて、地上での研究を表しています。他にもユークリッドやプトレマイオスなどの哲学者が描かれています。なお、プラトンはレオナルドーダーヴィンチ、ヘラクレイトスはミケランジェロ、ユークリッドはブラマンテがモデルといわれており、こうした下世話さもこの絵を有名にしています。この壁画の原寸大の下書きがミラノのアンブロジアーナ図書館に残っています。この壁画は哲学史やルネサンスを教えるには格好の題材となるので、世界中の大学や学校に模写が飾られています(日本では玉川大学など)。

 また、神学を表す『聖体の論議』は天上と地上を二分する構成で、天上には、キリストやマリアなどの聖書の登場人物が描かれ、地上には、聖人や教皇、神学者たちが描かれています。

 詩学を表す『パルナッソス』は、ギリシャのパルナッソス山を舞台に、ホメロスやサッフォーなどの古代詩人九人と、ダンテやペトラルカなど同時代の詩人九人が描かれています。

 これらの絵はラファエロの最高傑作であるとともに、ローマのルネサンスを代表する作品です。ギリシャの学問や宗教はキリスト教にとっては異教であり、こうした画像をローマ教皇が描かせるということはまさにルネサンスの特徴を表しています。また夕章に登場するグラディーヴァの浮き彫りはヴァチカン美術館の中にあります。

 他に、ヴァチカンのアカデミックな名所としては、一五世紀から営々と続くヴァチカン図書館や、一六〇三年に創設されガリレオも会員となったリンチェイ・アカデミーを継承するローマ教皇庁科学アカデミーなどがあります。

●地獄に堕ちた教皇による大学創設

 地下鉄B線のポリクリニコ駅にはローマ大学があります。学生数一二万人のマンモス大学です。

 ローマ大学には二つの起源があります(シュドール『大学の起源』)。ひとつは一二四四年にローマの教皇庁によって創られた大学です。これはボローニャ大学のような学生組織ではなく、教皇庁によって設立・運営されました。しかし、この大学は、一三〇九年の教皇庁のアヴィニョン遷都とともに移動し、それに続く教会大分裂(一三七八~一四一七年)によって力が弱まりました。

 もうひとつの起源は、一三〇三年に教皇ボニファティウス八世によって創設されたローマ市の大学です。こちらはボローニャ大学のように学生組織によって運営されました。ボニファティウスハ世は政治的エピソードの多い人で、大学創設の年に、フランス王と対立して幽閉され、憤死しました(アナーニー事件)。彼の前任の教皇ケレスティヌス五世は在位五ヵ月で教皇職を辞任しましたが、噂では、その椅子を狙うボニファティウス八世が前任者の寝室に伝声管をとりつけ、毎夜「辞任せよ、さもなくば地獄の火に焼かれるであろう」という超自然を模した声を送り続けたともいわれています(堀田善衛『聖者の行進』)。これによりケレスティヌス五世は不眠となって教皇職を辞任し、ボニファティウス八世が教皇に選ばれたという逸話が残っています。

 さらに、彼はフィレンツェの内紛に介入し、その結果、ダンテがフィレンツェから追放されました。この恨みからダンテは、『神曲』において、ボニファティウス八世を実名で登場させ、地獄で逆さまに生き埋めにされて、足を燃やされるだろうと予言しています。『神曲』は、ダンテの私怨のある有名人を地獄に堕として苦しませるというスキャンダル集でもあるのです。

 一方で、文化面での評価は高く、マックスウェル・スチュアー卜の『ローマ教皇歴代誌』によると、「ボニファティウスハ世はのちのルネサンス時代の教皇を彷彿させるところがあります。学問に関心が深く、ヴァティカンの公文書保管庫を改造して、蔵書目録を作らせた。さらに、一三〇三年にローマ大学を創設し、ジオットを初めとする画家や彫刻家の庇護者」となったということです。

●ローマ大学・大学都市キャンパス

 はじめローマ大学は自分たちの教室を持ちませんでしたが、しだいに前述のサピエンザ宮を本部とするようになりました。一六世紀前半にローマはルネサンス期を迎え、メディチ家出身の教皇レオ一○世の時代に、サピエンザの大学は多くの有名人が教授を務めました。

 イタリアが統一され、一八七〇年にローマがイタリアの首都になると、ローマ大学は、教皇庁から独立して、国立大学となりました。一九三五年から現在の大学都市キャンパスに移転しました。

 シェンツェ通り(サイエンス通り)の巨大な正門を入り、まっすぐ進むとミネルヴァ広場があります。中央の池の後ろに、知恵の女神ミネルヴァの巨大な像が立っています。正面が壮大な神殿風の大学本部です。正面の階段を上り、後ろをふりかえると、正門から続く壮大な空間を見渡すことができます。正面の建物の両翼のビルには、巨大な馬と人のレリーフが彫られています。

 本部の裏の広場には、やしの木が植えてあり、熱帯にいるような雰囲気になります。正面には図書館があります。

 正門から入ってすぐ北には、巨大な教会があります。ドーム型の変わった建物で、正面にはキリストのユーモラスな像が描かれています。キャンパスの南には広い植物園があります。


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観光立国トルコの損害

『石油・武器・麻薬』より ⇒ ギリシャから陸路でトルコに入った時に、ガイドから最初に言われたのは、「トルコは農業国から観光立国に変貌した」。パムッカレなどの観光地では地域が頑張り、政府が支援している姿が見受けられた。その次に行ったエジプトとは大違い。

疲弊する中東の周辺諸国

 米国やロシアの武器が中東における紛争を混迷させる中、二〇一五年一月、ISによる日本人人質事件が発覚した。その際、日本政府とISとの交渉の窓口になったョルダンは、シリアとイラクでのISの台頭によって深刻な経済的打撃を受けている国の一つだ。

 ISの活動が顕著に見られるようになった二〇一三年、ヨルダンの財政赤字は三〇億ドル(三六〇〇億円)で、それは全財政の三〇パーセントにも上った。イラクとシリアでの戦争が、ヨルダンからの輸出や両国に出稼ぎに行っていたヨルダン人からの送金を滞らせたことが一因だろう。また、主にシリアからやってきたおよそ一〇〇万人の難民たちの生活を支えることも、ヨルダンの財政に重くのしかかっている。大量の難民たちがその後、キャンプを離れアパートなどを探すようになったため不動産価格を押し上げ、またシリア難民がヨルダン国内で安価な労働力として従事するようになると、ヨルダン人たちの失業率も上昇していくことになった。

 同国の観光産業も損害を被っている。二〇一〇年一一月には一四万二〇〇〇人いた外国人観光客が、二〇一五年四月には七万八〇〇〇人とほぼ半減。観光の目玉ともいえるナバテア王国の首都であった世界遺産ペトラを訪れる観光客も、二〇一四年には二〇一〇年の四分の一と大きく落ち込んだ。

 二〇一五年にヨルダン政府が公表した失業率は一二パーセントだが、若者に限れば三〇パーセントとも見積られている。大学を卒業しても一六パーセントが無職というありさまで、公務員の採用(二〇一三年)には、六四〇〇人の募集に対して二〇万人の学生たちが応募したという。

 エジプト政府も「アラブの春」の前年の二〇一〇年から一四年にかけて、観光収入が四〇パーセント減少したことが明らかになった。二〇一五年前半には前年同期に比べて三・一パーセント増加したが(金額にすると一億ドル〈一二〇億円〉程度)、同国の混乱を考えると厳しい状態が続くといわざるをえない。

 というのも、二〇一五年、エジプトでは「イスラム国・シナイ州」によるテロが、シナイ半島で頻発するようになっている。七月には同半島の町シェイフ・ズワイドやその周辺で、軍の検問所などおよそ一〇ヵ所がほぼ同時に襲撃を受け、エジプト軍兵士の少なくとも六〇人が犠牲となった。

 「イスラム国・シナイ州」は、二〇一三年七月に軍部のクーデターによってムスリム同胞団出身のモルシ政権が倒され、エジプトで過激派の活動が活発になった結果、生まれたような組織だ。二〇一五年八月にはクロアチア人の企業関係者が「イスラム国・シナイ州」によって斬首され、頭部の画像がインターネット上に公開された。クロアチアはISとの戦闘に加わっておらず、イラクのクルド自治区政府に少量の武器を輸出しているにすぎないが、それでもテロの標的とされたことになる。

 このクロアチア人拘束の際、「イスラム国・シナイ州」は、エジプト国内に拘束されている女性の服役囚全員の釈放を要求した。女性の保護を唱えるイスラムの教えを強調し、自らの活動の正当性を訴えたかったのだろう。こうした外国人に対するテロは、エジプトの観光産業に重大な影響を与える可能性が高い。二〇一五年六月にはエジプト観光の目玉であるルクソールのカルナック神殿で自爆テロがあり容疑者二人が死亡、さらに同年七月にカイロのイタリア領事館の前で爆弾テロがあって五人が死傷した。

 これらの事件は、エジプトが治安の上でも決して安定していないことを示しており、「テロ」のイメージがつきまとうことで、観光産業や、外国企業のエジプトでの活動はいっそう厳しくなることは間違いない。日本企業の間ではエジプトからの撤退を視野に入れる動きも出始めた。

観光立国トルコの損害

 ISの活動に手を焼くシリアやイラクと国境を接するトルコも、経済的窮地に立たされている。トルコは二〇〇八年の世界同時不況を機に、外国との経済交流の多角化を模索した国で、同国の輸出のおよそ四〇パーセントはEUに向けられていた。そうした矢先、卜ルコはISの勢力拡大によって、二番目の貿易相手国であるイラクヘの輸出額を二〇一四年末までに三〇億ドル(三六〇〇億円)減少させたと、二〇一五年八月、ニハト・ゼイペクジエ経済相が語っている。

 シリア内戦の長期化やイラクでのIS台頭は、トルコによる投資機会を奪うものである。トルコの経済状況に追い打ちをかけているのは、ウクライナ問題に伴うロシアヘの経済制裁だ。ロシアの通貨ルーブルの価値が下落し、自国(トルコ)製品への需要を減少させることになった。トルコにとって地理的に近いロシアは四番目の規模の貿易パートナーだが、イラクやシリア、またウクライナ情勢の不透明さは、地理的に「東西世界の架け橋」ともいえるトルコ経済を苦境に置いている。シリアでの混乱がなかなか収束に向かわず、また二〇一五年にエルドアン政権がISとともに、クルドの反体制武装勢力PKK(クルド労働者党)を空爆するようになると、トルコの観光産業も、その影響が懸念されるようになった。

 トルコは多くの世界遺産を抱える観光立国だが、二〇一五年二月、トルコのダウトオール首相は、二〇一五年に同国を訪れる観光客が減少に向かうと予測。この際、首相は観光業がトルコの重要な産業であることを強調し、ロシアとイランから飛来するすべての旅客機にそれぞれ六〇〇〇ドル(七二万円)の支援を行うと明らかにした。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、トルコが二〇一一年より受け入れを開始したシリアからの難民は、一〇〇万人を超えた(二〇一四年末時点)。難民に対するトルコ政府の支出は二〇一五年には通年で三億二〇〇〇万ドル(三八四億円)程度になると見込まれており、二〇一一年以降の累積額は一〇億~二〇億ドル(一二〇〇億~二四〇〇億円)と、名目GDPの約〇・二パーセント程度の規模に達する模様だ。ISをめぐる戦争が長引けば、こうした経済負担は継続し、財政を圧迫することは明らかだ。

 シリア、イラクでのISの台頭は、周辺諸国にとっても重大な経済負担となり、政治的不安定の一要因にもなることが懸念されるだけに、日本をはじめとする国際社会は、周辺諸国にもたらすISの経済的影響をよりいっそう考慮していかなければならない。
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なぜポップコーンは損なのに、スターバックスコーヒーは損ではないのか

『エコノミストの昼ごはん』より ⇒ スターバックスのコーヒー原価をバリスタは知っている。その上で、自分たちの役割を認識している。これがマクドナルドとの違い。

様々な食の現場を覗いてみると、こうした内部相互補助の考え方が驚くほど頻繁に姿を現す。

映画館の食べ物は不味いことが多い理由も、内部相互補助の概念を使えば説明しやすい。食べ物は映画を相互補助するが、その逆は無い。映画館に来る客にとって、映画鑑賞はかなりお得であるのに対して、映画館の食べ物を食べることはかなり損である。この話には歴史的な経緯があるので、これからそれを説明しよう。

ポップコーンがアメリカの映画館に現れたのは、大恐慌の真只中の一九三〇年代のことだった。ポップコーンの売り上げのおかげで、どうにか潰れずに済んだ映画館も多かった。一九四〇年代後半までには、ほぼ全ての映画館がポップコーンの製造機を設置していた。一九四五年までには、アメリカのポップコーンの半分が映画館で消費されるようになった。一九四九年の調査によると、映画の観客全体の六割が映画館で軽食を購入していた。ポップコーンと炭酸飲料は、利益率の高い商品としての名声をたちまち獲得した。それから長年かけて、劇場の支配人たちは、ポップコーンに大量の脂肪分や塩や油を添加することで、観客たちの需要を刺激してきた。こうした動きは一九九〇年代半ばに「ポップコーン健康不安」が取り沙汰された時だけ鳴りをひそめたが、今日でも相変わらず体に悪いポップコーンが売られている。

映画館でお得にものを食べるための特別な奇策があるわけではないが、もしもこの本が良い映画のための内部相互補助を見つける方法について書かれた本だったとすれば、ポップコーン問題に対してももう少し注意を払うだろう。大きなポップコーン売り場を探せ!

映画産業の経済学について考えると、ポップコーンを買う気はますます失せるだろう。現在の映画館は、チケットの売り上げの大半をスタジオに送り返している。映画の上映が始まる週末(その映画の歴史において最重要のイベントである)には、最大九十パーセントものチケットの売り上げが映画の制作者に対して支払われ、上映期間全体を通じてはチケット売り上げの約半分が映画の制作者へと支払われる。これは収益の配分としては合理的なものである。スタジオは映画を制作するが、ヒットさせるのは容易ではない。それに加え、スタジオは多額の宣伝費を支払わねばならない。万人受けする大衆映画の場合、この費用は特に多額にのぼる。これとは対照的に劇場は、ポップコーンの販売によって多くの金を稼ぐ。ポップコーンの売り上げは一切、制作会社に支払われることがない。

劇場側のインセンティブは、映画料金を下げ、ポップコーンの価格を上げることである。低い映画料金によって観客/食事客が引き寄せられ、劇場の収益はそれほど減ることがない。その代わりに、ポップコーンの価格を比較的高いものにする。品質を落とすこともまた正味の利掛けを上げる方法なので、売店で販売されるポップコーンなどの味は、通常あまり美味しいものではない。

この状況をさらに悪化させるのが、誰が映画を観に行くのか、ということである。映画館に来る客の多くは三十歳以下、特に十代またはそれ以下の若者や子供が多い。先述したとおり、これらのグループは、特にアメリカにおいては、きちんとした味覚を持っていない場合がほとんどだ。

映画館できちんとしたものを食べようと思うなら、一番良いのは、「独立系」の劇場に行くことだ。こうした劇場は、外国映画やカルト映画を上映し、年齢の高い成熟した観客たち、すなわち若者たちよりは舌の肥えた人たちをターゲットにしている。さらに、よくあるシネコンに比べると、独立系の劇場はチケット収入の取り分か高くなっている。独立系の劇場では、多い場合でチケットの売上の五割が劇場に入るので、劇場は客をポップコーンの消費者ではなく映画の観客として扱うことになる。独立系の映画館を食事の場所としてお勧めすることはできないが、少なくともサンドイッチやフムスやごく普通のリンゴが売られている可能性はある。重要なのは、食べ物の利益率ではなく、成熟した人々がリピーターとして足を運んでくれるかどうかである。

スターバックスにも、内部相互補助の有効な事例を見ることができる。スターバックスで売られているようなコーヒーが好きならば、特に分かりやすいだろう。創業当初、このチェーン店はアメリカにおけるコーヒーの消費に革命を起こした。スターバックスを嫌う人たちでさえ、スターバックスが当時の競合店の大半よりも濃くて美味しいコーヒーを出していることは認めざるを得ず、このチェーンは一躍有名になった。だが、やがてチェーンの規模が拡大するにつれ、以前よりも売上総額や利益率の高さが問題になりはじめた。今日のスターバックスは、何らかの形でコーヒーと関係のあるような、ミルクたっぷりの甘いドリンクを得意としている。いま私たちが目にしているのは、ミルクと砂糖がコーヒーを相互補助してくれているおかげで、コーヒーの質が維持され、何より手に入れやすくなっているという状況である。「コーヒーのイメージ」や、おそらくコーヒーの香りによって、スターバックスは甘いドリンクの新たな販路を開拓した。すなわち、これはコーヒーに対して有利に働く内部相互補助であり、コーヒー好きにとってはスターバックスでの買い物は特にお得だということになる。だが、ミルクと砂糖が好きならば、コーヒーの香り代を余計に支払っていることになる(これによって店のコーヒー風の基盤が支えられる)ので、自宅で自分好みにミルクと砂糖を混ぜたほうがいいかもしれない。そのほうがはるかに安上がりだ。
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