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低炭素経済の課題 「死の谷」を越える

『気候カジノ』より エネルギーコストに対する近視眼的思考

アメリカ経済は、国内の大学や研究所に極めて高水準な基礎科学技術を擁している。企業は市場に対して非常に敏感な感覚をもち、毎年何千もの新製品や改良品を生み出している。しかし、研究室などのいわゆる「象牙の塔」と、「市場のジャングル」の間には、スタンフォード大学の経済学者ジョン・ウェイアントが「死の谷」と呼ぶ窪地が存在する。これは、研究室で生まれた素晴らしいアイデアが、資金の欠乏によって市場に辿り着く前に力尽きてしまうという中間地点だ。

この問題は、分野を代表する学者F・M・シェーラーによって、詳しく研究された。

基礎研究と新たな製品・製造技術の開発という二極の間には、商業的に利用するには十分に成熟していないものの、具体的な展開への道を切り拓く技術革新への投資が存在する。このような「競争段階前のノーブランドな実現技術」への投資は、基礎研究への投資と同じくらい深刻に、民間市場の失敗の影響を受けると考えられている。商業利用が可能な段階まで技術を育てるには相当の投資が必要だ。にもかかわらず、ひとたび決定的な進歩が成し遂げられれば、その本質は広く知られ、他者に無断で利用される可能性が高い。特許制度はあまりにも弱く、ほかの研究開発プロジェクトにそうした技術が使用されるのを阻止できない恐れがある。

妥当なイノベーションが「死の谷」を越える確率を上げるには、どうすればよいだろうか。まずは、適正な炭素価格を設け、地球温暖化の外部性を相殺することだ。また、追加のインセンティブとして、政府が競争段階前の技術を特別税額控除の対象とする方法も考えられる。

政府による新制度で興味深いのは、エネルギー高等研究計画局(ARPAIE)プログラムだ。ARPA-Eは、技術的、経済的な不確実性のため、営利企業が支援しそうにない初期段階のエネルギー研究に出資することを目的としている。設立以降の数年間で出資した事業には、先進バッテリー技術、二酸化炭素回収、改良型タービンなどが含まれている。現実には、研究開発全体から見ればARPA-Eは非常に小さなプログラムだ。2012年におけるエネルギー関連の研究開発費が総額50億ドルだったの対し、同じ年のARPA-Eの予算は2億7500万ドルだった。しかし、「死の谷」理論が正しければ、この段階で割り当てられる資金は極めて高い収益を生む可能性がある。この取り組みが果たして革新的なアイデアを市場に届ける一助となるか否か、社会が注目することとなるだろう。

本章は三つの重要な結論を導き出している。第一に、エネルギーやその他の関連分野の基礎科学技術に対し、政府が支援を続けることは絶対不可欠だ。どの科学の発展が利益をもたらすことになるかはわからないため、幅広く、そして賢く投資しなければならない。基礎科学への支援には、危険な「死の谷」にいる初期段階のプロジェクトに対する援助も含まれるべきだ。

第二に、我々は、先進技術の開発における民間部門(非営利志向の研究者も、営利志向の起業家も)の重要性を認識する必要がある。特に大事なのは、営利企業による低炭素経済への迅速で経済的な移行を促進するために、適切なインセンティブを付与することだ。それには、炭素価格が十分に高い水準に設定され、低炭素技術への投資に具体的で確実な経済的見返りを期待できるようにすることが最も重要だ。高水準の炭素価格が実現しない限り、イノベーターや企業に低炭素技術への投資意欲を喚起させることはできない。したがって、ここでも炭素価格は、地球温暖化という脅威の抑制に向けたアプローチの中核を担っている。

最後に、繰り返しになるが、低炭素経済への移行の中で、急速な技術革新が果たすべき中心的役割について強調しておきたい。相当の経済的ペナルティーが科されない限り、今日の低炭素技術が化石燃料に取って代わることは難しい。低炭素技術が開発されれば、それは気候目標の達成に必要なコストの低下につながる。そして、ほかの政策がすべて失敗に終わった場合、低炭素技術の開発は我々にとって気候目標達成の最後の砦となる。
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一億人いれば、一億のビジネスが誕生

『新・日本経済入門』より 日本の選択--未来世代に豊かな成熟社会を 新しい産業の育成

一億人いれば、一億のビジネスが誕生

 これからの日本は、ICT革命によってサービス産業をはじめ製造業、農林水産業などの分野で様々な二ュービジネスが誕生してくるだろう。それが人口減少時代の日本の活力源になる。

 無人工場化に対しては、製造業の雇用が減ってしまうのではないかと懸念する向きもあるが、心配無用である。工場の無人化は製造業の労働生産性の向上を促進させる。製造業に余剰労働が生まれれば、これから労働需要が拡大するサービス産業分野に移動させればよい。そちらの分野に有能な人材が集まるようになれば、サービス産業の多様化がさらに進み、サービスの質も向上してくる。

 ICT革命は一億人の国民がいれば、一億のビジネス(事業)を生み出すといわれる。

 人々の価値観が多様化し、それぞれが便利で快適で満足度の高い生活を送るためには、様々なサービスが必要になる。それらを埋めるビジネスはまだ始まったばかりで、これから数限りなく登場してくるだろう。

 化石燃料をエンジン役にした経済発展過程では、物的生産性を高め競争に勝ち残った大企業を数多く生み出してきた。これに対しICT革命は、大企業をそれほど生み出さないかもしれない。

 それに代わって、多くの中堅、中小企業が付加価値の高い技術、ノウ(ウ、サービスなどを提供しながら共存する新しい産業社会を形成することになるだろう。中堅、中小企業のほかに個人経営、家族経営なども堂々と市場経済の一員として参加できる賑わいのある市場が誕生する。

ICT革命はこれからが本番

 産業革命以前の農業社会では、ごく少数の農機具製造業者や物流業者以外はほとんどが独立した農民だった。ICT革命が創り出す新しい社会もそれに似て、生活者のかなりが独立した自営業者かそれに近い存在として登場するだろう。先に触れた序章の表1のグローバル化(シェアの変質)の項目をご覧いただきたい。高度成長期にグローバル化を示す指標として「シェア」があった。この場合のシェアは、市場占有率を示す指標である。世界市場で高いシェア(売り上げや生産量)を持つことが、グローバル化の証しになった。

 ICT時代のグローバル化は、競争的共存、つまりそれぞれの企業が互いの個性、特徴を認め合い、市場を棲み分ける「シェア」が新しいキーワードになる。

 化石燃料をエンジン役とする時代は約二五〇年も続き、様々な技術、企業、産業を生み、物的豊かさの実現に大きな貢献をした。それに対しICTをエンジン役とする時代はまだ始まったばかりである。インターネットとパソコンが上体となって普及が始まったのは九五年頃からである。それからまだ二〇年を絲たに過ぎないが、すでに既存社会に大きな変化をもたらしている。二〇五〇年頃にはICT革命がさらに大きく世の中を変え、人口減少のマイナス側面を乗り越え、活気のある豊かな成熟社会を創り出していることを期待したい。
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経済発展のエンジン役はICT

『新・日本経済入門』より 日本の選択--未来世代に豊かな成熟社会を 新しい産業の育成

一八世紀後半の産業革命から二〇世紀末に至る約二五〇年間、経済発展のエンジン役は石炭・石油などの化石燃料だった。化石燃料が生み出す巨大エネルギーがエンジン役となって様々な量産技術(生産機械類)、圧縮・溶解技術(鉄鋼、石油化学など)、距離短縮技術(自動車、飛行機、造船など)を生み出した。

これらの分野で生まれた多彩でダイナミックなイノベーション(技術革新)が複合的に結びつき、重化学工業を発展させた。欧米先進工業国の経済発展は化石燃料に大きく依存してきた。高度成長期の日本も同様で重化学工業化路線に乗って大躍進を遂げた。この時代の産業の主役は製造業を中心とする第二次産業だ。

代わって、これからの経済活動を支えるエンジン役は、ICT(情報通信技術)である。巨大なエネルギーを使って大量にモノをつくり、物的豊かさを目指すのではなく、情報通信分野のイノべーションによって、快適で、住み心地のよい新しい経済社会への転換を促進させる技術である。人間の労働にたとえれば、筋肉労働から、頭脳(脳・神経系)労働への転換といってもよいだろう。

成熟社会にはモノが沢山あふれており、これ以上どんどんモノをつくらなくてもよい。それに代わって、快適な生活環境を整え、人々が生活を楽しむために必要な様々なサービス産業が登場し、世の中を変えていく。第二次産業に代わって第三次産業が経済を牽引していく。

これから成長が期待されるサービス産業分野としては、金融、法務、医療、福祉、介護、情報、通信、地球環境、住環境、アニメ、クールジャパン、レジャー、旅行、スポーツ、さらに教育、芸術、観光などが挙げられる。これらのサービス産業は、豊かで質の高い生活のために欠かせない領域を埋める役割を果たす。

しかも同じサービス産業といっても、ICT革命以前のサービス産業は労働集約的で労働生産性の低いものが多かったが、ICT革命で誕生してくるサービス産業は労働節約的で、労働生産性が高いことが特徴になっている。

ICT革命は、私たちの日常生活にすでに根をしっかり張り出している。

たとえば、温泉旅行をしたいと思ったとしよう。パソコン、スマートフォン(スマホ)、タブレットなどの機器をインターネットにつなぎ検索すれば、自分の行きたい温泉、目的地までのルートと金額、好みの旅館やホテル、周辺のレストランなどがあっという間にわかる。ネット予約なら旅館やホテル代も通常料金よりも安くなる。

家電製品、衣類、書籍、食料品などの様々な商品も、インターネットを使った通信販売を利用することで簡単に手に入る。それを裏付けるように、ネット通販の売り上げは年ごとに急速に伸びている。趣味や教養、スポーツなどほとんどあらゆる分野で、インターネットによる検索で自分に必要なきめ細かな情報が手に入る。

学生の就職活動もいまやインターネットが大きな役割を演じている。高度成長期の学生は就職活動に当たって、先輩などのつてを頼って直接企業を訪問し、求人情報を集めた。いまでは企業の求人情報、学生が就職活動で企業に提出するエントリーシート(履歴書)などもほとんどパソコン、スマホなどの端末とインターネットを介して処理されている。
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出待ちの奇跡

出待ちの奇跡

 Iさんの「出待ち」はよくできたものです。色々な条件が重なった。5年間の蓄積。スタバのIさんチーム。ブラックエプロンの自由度。そして、私のキャラクター。Iさんはコントローラの時も、私の時にレジに入りました。バックヤードでパソコンをやっている時も、皆に呼ばれて、中断して出てきました。

 今だと、チーフと知り合いことができないし、レジはあまり担当しないみたい。

 「出待ち」の最大のポイントは、Iさんが待ってくれていたことです。「お待ちしていました」この一言です。
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豊田市図書館の30冊

933.6『不思議の国のアリス』

410.79『ガードナーの数学パズル・ゲーム』

410.79『ガードナーの数学娯楽』

016.29『マイクロ・ライブラリー』人とまちをつなぐ小さな図書館

302.53『マリファナも銃もバカもOKの国』言霊USA2015

019.2『子どもが「読書」に夢中になる魔法の授業』

547.48『基礎からのWordPress』

725.2『定本パースの教科書』ゼロからはじめる遠近法

338.9『シフト&ショック』次なる金融危機をいかに防ぐか

290.93『スイス』アルプス・ハイキング 地球の歩き方

293.59『アムステルダム 芸術の街を歩く』

253.01『これならわかる アメリカの歴史Q&A』

674『最新のネーミング強化書』

616.61『新大陸が生んだ食物』--トウモロコシ・ジャガイモ・トウガラシ

377.9『どうして就職活動はつらいのか』

361.4『競争考』人はなぜ競争するのか

024.1『ほんほん本の旅あるき』

304『文化亡国論』

498.14『ドクター小鷹、どうして南相馬に行ったんですか?』

316.84『隣人が殺人者に変わる時和解への道』ルワンダ・ジェノサイドの証言

783.47『勝利の街に響け凱歌』松本山雅という奇跡のクラブ

159.4『頭がいい人の仕事は何が違うのか?』入社1年目から差がついていた! 今日から変わる27のコツ

311.7『多数決を疑う』社会的選択理論とは何か

914.6『余命』五木寛之 これからの時間をいかに豊かに生きるか

913.6『The Mind Quencher』

726.6『ディック・ブルーナ』ミッフィーの魅力、再発見 絵本が楽しくなる、創作秘話に迫る 祝・ミッフィー誕生60周年

369.42『ルポ保育崩壊』

361.5『タングニの日本生活記』韓国語リーディング

289.3『アメリカン・スナイパー』クリス・カイルの伝説と真実

783.7『ビリー・ビーン 弱者が強者に勝つ思考法』メジャーリーグの名物GM
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