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創造型図書館(Creation Library)

『普遍的な図書館:移行と超越』より 図書館は高度に統合化されたヴァーチャルおよび物理的なコミュニケーションのスペースである

私は、Library 10、ヘルシンキ市立図書館などは2004年に訪問しています。

ロジャー・E.レヴィエンは「将来との対峙:21世紀の公共図書館のための戦略的展望」で、図書館は情報、知識、芸術、メディア、楽しみを創造する作業場になるべきだと指摘している。そうした図書館は新しい作品を創造する書き手、編集者、演技者や創造者を助けるために、専門的な機器や設備を広範に備え、「創造型図書館」になりつつある。

図書館のイメージチェンジにとって重要な目標は、蔵書の図書館から創造の図書館に転換することで、これには図書館員の豊かな想像力と革新的な思考が必要である。少数の成功物語を示しておく。

Anythink librariesは創造的な図書館の1つで、近年は世界で最も人気がある。この図書館は2010年12月に「博物館・図書館サービス全国メダル」を獲得して世界的に注目された。この図書館はもともと1953年に設立されたアダムズ公共図書館で、2005年にレンジヴュー図書館と名称を変更した。図書館を経営するのはカウンティ理事会が任命した5人の委員会である。 2009年9月、レンジヴユー図書館はイメージチェンジ・プログラムを開始し、新しい名称Anythink を使い始めた。そして標語「レンジヴユー図書館の革命」を採択し、包括的な転換計画を実行した。“Anythink”は実質的には“anything”の口語体だが、思考(thinking)を強調している。新しい館長パム・サンドリアン・スミスの指導の下、図書館は伝統的な経営とサービスのモデルを変えようとし、インターネットとデジタルの時代に適応する新しいサービスを創造した。例えばデューイ十進分類法をいっそう直接的な「ワードシンク」分類法に代え、延滞料をなくし、図書館員(librarians)という名称を住民になじみ深い「案内者」(Guides)、「接客係」(Concierges)、「世話役」(Wrangler)に置き換えた。それに政府の税支援も増加し、数年の間に4つの新しい創造的な図書館を設置したので、現在では全部で7つの分館体制になっている。いずれの建物も環境保護の基本的要件を満たし、2009年9月に開館したブライトン分館は、アメリカで最初の低炭素の図書館として知られる。

ヘルシンキの鉄道駅の隣に位置するLibrary 10は新しい概念の図書館で、「10」というのは所在地の郵便番号を示している。 Library 10は音楽図書館で、主たる蔵書はレコード、映画、旅行案内書、それにコミック本である。また録音、編集、視聴のために3つの音楽スタジオがある。図書館員は音楽教育の経歴を持っている。読者は自分自身の音楽を創作でき、他の音楽家や音楽愛好者とコミュニケーションがとれ、小さな演奏室で自分の作品を実演できる。それに図書館は音楽家を招いて講演会を開くことも多い。

ヘルシンキ市立図書館の主たる革新は都市オフィス(Urban Office)で、一般住民に快適な職場環境の提供を意図している。読者は館内の仕事スベース、コンピュータ、事務機器などを予約し、短期間のオフィスを設定できる。また市立図書館はトーロンラハティ湾の分館にも類似の都市オフィスを開く予定である。都市オフィスはヘルシンキ市立図書館の大きな創造的思考の1つである。

ヘルシンキ市立図書館長マイジャ・ベルンドストンは2011年9月7日に上海図書館と共催のフォーラムで、大多数のオフィスは共同経営者や顧客の職場あるいは外注された職場など、伝統的な職場や補助的な職場にあると述べた。今後はますます、職場はホテル、カフエ、会議センターといった第3の職場に設置されるだろう。予測によると、2017年までに50パーセントの仕事が第3の職場でなされるという。ヘルシンキ市立図書館は革新に大胆で、コミュニティのニーズの変化に対応して図書館自体の業務活動を考案している。そして「Library 10」、「都市オフィス」に加えて10年前にiGSを開始し、読者にレファレンス・サービスを提供している。また鉄道の駅、ショッピングセンター、人の集まる場所に、移動式のiGSを設置している。現在、このサービスは通常のヅァーチャル・レファレンス・サービスになっている。

張暁林は「図書館を超えて:第77回国際図書館連盟年次大会」で、国際図書館連盟プエルトリコ年次大会で報告された革新的な図書館を報告している。この論文は読む価値がある川。張暁林はシンガポール国立図書館長の厳立初(Ngian Lek Choh)の考えを取り上げている。それは「サービスとしての図書館」、「コンパニオンとしての図書館」、「ゲートウェイとしての図書館」、「社会を平準化する図書館」、「記憶としての図書館」、「経験としての図書館」、「ネットワークとしての図書館」である。図書館は変化に得意でなくてはならず、業務能力とサービス基準の向上のために、既存の科学的、技術的な成果を取り込み、十分に活用しなくてはならない。このような成功物語は、図書館は発展のための広大な余地、革新のためのスペースを持つということを示している。図書館は公共文化のサービス・システムとして重要な役割を果たせるだけでなく、知識の交流とコミュニケーションという広範なシステムの中で、指導的な役割、立派な役割を展開できるし、担えるということである。

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急激すぎる血糖値の変化

『糖尿病の治療革命』より 考えうるリスクを検証する

糖尿病網膜症(目の網膜での出血による障害)はなぜ起きたのだろうか。Kさんは病院で、意外な原因を指摘された。「血糖値を急激に落としすぎた」ことが、出血の原因になった可能性があるという。

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、神経障害とともに、糖尿病の3大合併症のひとつであり、日本では成人が失明する主な原因のひとつとされている。

目の網膜には、栄養や酸素を届けるために細い血管が張りめぐらされている。血糖値が高い状態が長く続くと、これらの血管が損傷を受け、うまく栄養や酸素を運べなくなる。

このままでは目の神経がエネルギー不足に陥ってしまうため、網膜では新たな血管がさかんに作られるようになる。けれど、急ごしらえの血管はとても脆弱だ。何かダメージがあるとすぐに出血してしまう。糖尿病網膜症は、このようなメカニズムで起きる。と、ここまで調べたところで、ひとつの疑問かわいた。

出血の原因をひとことで言えば「血糖値が高い」ことだ。それなら血糖値を下げたほうが、出血を防げるのではないだろうか?

調べてみるとそのとおりで、過去の研究でも、糖尿病の人が薬を使って血糖値を下げた場合、網膜症を予防できるという結果が出ている。ところが意外なことに、ずっと血糖値が高い状態だった人が「急激に」下げると、かえって出血が起きてしまうことがあるのだという。

なぜ、そんなことが起きるのかについては、様々な仮説が出されている。

例えば、「低血糖」(血糖値が下がり過ぎた状態)がたびたび起きるような状況は、糖尿病網膜症のリスクを高めると言われている。低血糖の状態になると、血管に対してダメージが加わってしまうからだ。

急激に血糖値を改善しようとすると、どうしても低血糖になりやすくなる。そのことが血管にダメージを与え、糖尿病網膜症の引き金になる。あくまで可能性だが、そうしたストーリーも考えられるということだ。

そうすると気になるのは、どんな状態の人は気をつけたほうがよいか、ということだ。少し古い研究になるが、その条件を示したものがあるので引用する。

 1 血糖コントロールが不良(HbA1c値が9・O%以上)

 2 血糖コントロール不良期間が長い(3年間以上)

 3 糖尿病罹病期間が長い(10年間以上)

 4 内科的治療法としてインスリン治療を要する

 5 前増殖網膜症または増殖網膜症を有している

 6 単純網膜症であるが網膜症の活動性が高い

このような背景を2つ以上有している症例に対しては、短期間(6か月以内)に急激な血糖是正(HbA1c値で3・○%以上)を行うことは避けるべきであると考えられる。

右の6つの条件に多くあてはまる人の場合、急激に血糖値を下げたときに出血が起きるリスクが高い。だから薬などの量を調整し、だんだんと血糖値を下げていくようにする慎重な対応が求められるという。

ではKさんの場合はどうだったのだろうか。過去の検査結果から考えると、6つの条件のうち少なくともI、2、4の3条件を満たしていた(5、6に関しては事前に検査を受けていなかったので不明)。

だから右の論文を引用すれば、「6か月でHbA1c3・O%を超える急激な血糖値の変化は避けるべき」だ。Iか月にならすと、O・5%ずつのペースで下げていくという計算になる。

ところがKさんの場合、自己流の糖質制限を行った結果、HbA1cは1か月あたりおよそ1・6%下がった。この結果、網膜の血管にストレスがかかり、出血が起きてしまった可能性を否定できない。

なおKさんはその後、出血を止める手術を受け、視力の低下は止まった。しかし医師からは「以前と全く同じ視力を取り戻すのは難しい」と言われたという。
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自然認識としての環境教育

『よくわかる環境教育』より 環境教育の目的

環境教育の目的は、「環境とそれにかかわる問題に気づき、関心を持つとともに、当面する問題の解決や新しい問題の発生を未然に防止するために、個人及び集団として必要な知識、技能、態度、意欲、実行力などを身につけた世界の人を育てることjである(ベオグラード憲章)。

環境教育の目的を達成するために、自然認識は欠かせない。地球的規模で起きている人類がかかえる問題を解決するためには、自然科学(理科)で学ぶ知識や技能が必要になる。理科において学習する生態学的知識としては、特に「循環・多様性」「閉鎖系システム」などが重要なコンセプトになる。

例えば、自然生態系においては、生産者・消費者・分解者で物質が循環し、ごみ問題が生じることはない。循環が切れたところに環境問題は発生する。また地球上には「多様な」生物種が存在し、それら生物種は、相互に「つながり」を持ちながら生態系を作っている。人間だけで地球上に生きることはできない。地球レベルの生態系は閉鎖系であり、地球資源は有限であることの認識が大切である。自然の恵みを超えた利用を人類が続けていると、やがては元金である地球資源を食いっぶすことになってしまう。

科学や技術がいくら進歩しても、人間が幸せになるとは限らない。科学技術を使うのは人間であるので、科学技術の進歩には、常に光と陰の両面が存在する。「人間とは何か」ということを歴史や文学を通して考察することも重要であろう(例えば、梅津,1987)。このような視点で見ると、科学技術と社会のあり方を考え、科学文明について考えさせるSTS教育も持続可能な社会を築くうえで、環境教育として必要な教育と言えるだろう。

中学校や高校になれば、理科と国語の学習を連携しながら、現代的テーマを元にディベートする学習も展開できる。問題提起されたテーマに模範解答はない。問題提起されたことを「自分の問題として」意識させることが環境教育として重要である。どのような環境が望ましいか、人によって評価や価値が異なる。自ら考え、自らの意志で行動できる力、合意形成する力は環境教育にとっても大切な力である。

ポイント

○直接体験を重視する

 体を通して、五感を通してわかることを大切にする。実感がわかないものには感動も意欲もわかず、行動にもっながらない。幼児や低学年だけでなく、生涯にわたって、自然の弟子となり、自然体験を継続していくことが大切である。

○事実を通して、学習の視点を明確にする

 具体的な事実を通して、科学的な見方(生き物の学習であれば、「個体維持」「種族維持」など)を育てられるように、視点が明確な授業計画を立てる。

○地域にある教材を使う

 子どもたちに身近な地域の教材を使って学習を展開することが大切である。地域の教材を使えば、自分たちのくらしとつながる思考ができるし、理科ぎらいの児童・生徒も興味を持って、学習に参加ができるだろう。例えば、指標生物を使った参加型の調査活動等を行えば、間接経験では得られない感動を与え、具体的思考も容易になる。地域素材の教材化にあたっては、学習目標とのつながり・発展を十分に考え、計画を立てることが大切である。

○学校での学習と日常生活の連続をはかる

 「自然のだより」などを発行し、地域の自然に対して広いアンテナを張ることのできる子どもを育てたい。学校での学習と日常生活の連続をはかることによって、確かで豊かな自然認識が育ち、「行動化」にもつながるだろう。

○自然認識と社会認識をつなぎ、自主的活動を促す

 環境学習としては、自然観察体験活動だけで終わるのはもったいない。自然認識は、社会認識の基礎として位置付け、さらに自主的に地域の活動に参画していける力を育てたい。これが、「持続可能な開発のための教育(ESD)」にもつながっていく。例えば、川の学習の場面で、生き物を通した水質調査体験だけで終わってしまう場合があるが、これでは環境教育で最も重要な課題になっている「行動化」につながらない。なぜ、川が汚れてきたのか、その原因を探る中で、地域の中にある工場が原因となる場合も出てこよう。「昔の川の聞き取り活動」[ダムに沈んだ村の人への聞き取り]など、「人との出会い」を入れてみよう。子どもたちは、川の激変に驚くだろうし、水をめぐる先人の苦労・工夫に気付くであろう。

 自然体験や聞き取りなどの活動を通して冊だ発見・感動・意欲を元に、まちづくりに参画できる力を育てたい。例えば、ポスター作り、「子ども会議」、地元への呼びかけなど、自主的で、よりダイナミックな環境学習に発展させたい。
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