goo

ヒッグス粒子が宇宙の謎を解くカギ

『小さな宇宙をつくる』より

何かそんなにすごいの?

 「ヒッグスらしき粒子発見」の発表は、瞬く間に世界中に伝わりました。これは本当に世紀の大発見です。50年かけてようやく見つけたのもさることながら、ヒッグス粒子が本当に存在していたとほぼ考えられることで、謎に包まれていた宇宙のしくみがひとつ明らかになったのです。この発見は、単に新しい素粒子が見つかったことにとどまらず、なぜ宇宙が今の姿になったのかという疑問に答えてくれるものかもしれません。

 質量は素粒子が生まれたときからもっていたものではなく、ヒッグス場によって後から与えられたものだった。

 この暴かれたしくみは、大変驚くべきことです。最初から質量をもっていれば、その素粒子の性質だという話で終わるのですが、後天的に与えられたものだとすると、素粒子の性質が変化したことになります。つまり、ヒッグス場が他の素粒子の性質を変えてしまったのです。

 これで、ヒッグス場は素粒子に質量を与えるという役割がはっきりわかりました。質量がゼロの素粒子は動きにくさもゼロ。そのため止まっていることができず、光の速さでビュンビュン飛び回ることを意味します。

 アインシュタインの「相対性理論」によると、この宇宙では光よりも速く移動できるものはありません。ここで重要なのは、質量がゼロかいなか。素粒子の世界では、光の速さというのは特別な状態です。ちょっとでも質量があるものは光の速さに限りなく近づいたとしても、光の速さに到達することは絶対にできないのです。

 同じ宇宙に存在しても、素粒子が光の速さかいなかで見える景色がまったく違ったものになりますので、物理学者はこの2つの状態を明確に区別しています。

ヒッグス粒子が宇宙の謎を解くカギ

 ヒッグスらしき粒子の発見で、宇宙には素粒子の性質を変化させるしくみが本当にあることがわかりました。ヒッグス粒子は、宇宙の謎を解く手がかりとして、とても重要な役割を担っています。ヒッグス粒子が本当に存在していたと確認できたことは、物理学者のこれまでの研究の方向が間違っていなかったことを示していますし、その先にある新たな謎を解くスタートにもなるのです。

 今、新たな謎といいましたが、ヒッグス粒子が見つかっても、宇宙の謎がすべて解明できたわけではありません。まだまだわからないことだらけです。

 たとえば、ものをつくるグループの素粒子はすべて質量をもっていますが、その大きさはバラバラです。「ミューオン」は「電子」の212倍の質量がありますし、「タウ」に関しては3554倍にもなります。それぞれの質量はヒッグス場がもたらしているので、質量が大きいほどヒッグス粒子を感じやすくなっています。

 問題は、ここです。では、どうしてミューオンは電子の212倍、タウは3554倍もヒッグス粒子を感じやすくなっているのでしょうか。

 ヒッグス粒子が電子、ミューオン、タウの3つの粒子を区別していなかったら、すべて同じ質量になるはず。ところが、この3つの粒子の質量は大きく違います。ということは、ヒッグス粒子は、何らかの理由でこの3つを区別していることになります。ヒッグス粒子が電子とミューオンとタウを区別している理由やしくみは何なのでしょうか。その謎はまだわかっていません。

 ヒッグス粒子はよく「神の粒子」とたとえられています。これは、ヒッグス粒子にはそれだけ重要な役割があるという意味と同時に、私たちがまだ、ヒッグス粒子のこうした秘密を解き明かせていないことを示しています。今のままだとヒッグス粒子がまるで神のように、電子を軽くして、タウを重くしようと決めているようにしか見えないのです。物理学者たちは何とかその理由を説明できるように、これから研究を進めていく予定です。

私たちがこの世界に存在できるわけ

 これまで、ヒッグス粒子が質量の起源といわれる理由についてお話ししてきました。質量とはつまり、止まっていられるという性質。質量があるから、私たちは今この場所に止まっていられるのです。こうしてじっと座って本を読んだり、友だちとお話ししたり、ご飯を食べたりできるのも、すべて質量があるおかげ。そもそも私たちがこの世界に存在できるのは、ヒッグス粒子のような質量を与えるしくみがあるからです。

 もし、ヒッグス粒子が存在しなかったら、ものをつくる素粒子はどれも質量がもてなくなってしまいます。「ただものが軽くなるだけ?」「体重の心配をしなくていいじゃない」なんて悠長なことはいってられません。質量がないと、素粒子は光の速さであちこちにビュンビュン飛び回ってしまいますので、ひとつの場所にとどまってものをつくることができなくなります。

 素粒子が集まらなければ原子はできないし、太陽や地球も生まれません。もちろん、私たち人間も存在しなかったでしょう。質量を与えるしくみがあるから、この宇宙にたくさんの星がつくられ、人類は地球に生まれてくることができたのです。

 現在、私たちはハワイにある日本の「すばる望遠鏡」やアメリカの「ハッブル宇宙望遠鏡」などを使って、はるか遠くで輝く天体を見ることができます。

 素粒子に質量があってものをつくることができるからこそ、宇宙にはたくさんの星が誕生しました。そのしくみが存在しなかったら、ひとつの星も生まれずに宇宙はただ真っ暗な空間が広がっているだけの、味気ないものだったでしょう。そう考えると、このバラエティに富んだ世界をつくるために、ヒッグス場が存在しているといってもよいかもしれません。

 今はやっとヒッグス粒子が見つかった段階なので、これからヒッグス場がどんな性質をもっているのか、そして、どのように質量を生み出しているのかを詳しく調べていきます。そのために、ヒッグス粒子をつくり出す加速器の性能を上げたり、新しい加速器を建設する計画が考えられているのです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ハイエクの貨幣民営化論

『マクロ経済学』より

消費税は景気を悪化させるか

 消費税率の引き上げをめぐって、政治の場では激しい議論が行われました。消費税増税に反対する人たちは、増税をすれば景気に悪影響が出ることを懸念しています。本文中で説明した簡単なマクロモデルでも、増税が景気に悪影響が及ぶことを確認することができます。増税は一般に消費を抑制します。消費が抑えられれば、乗数効果を通じて、経済全体の生産や所得水準も下がるからです。

 ただ、現実はそう簡単でもありません。スウェーデンやデンマークの北欧諸国のように、消費税率が25%前後という国もあります。これらの国のほうが、日本よりも所得水準も高いし、経済成長率も高くなっています。消費税率が高いほど経済は停滞するというのは、国際比較で見るかぎりはどうも正しくないようです。

 消費税の税収が何に使われるのか、そして消費税も含む税体系全体がどうなっているのかなどによって、経済への影響も大きく異なります。北欧諸国では税負担は重いのですが、その税を利用して手厚い社会保障制度が運営されています。消費税率は高いのですが、その分法人税率を引き下げ、経済活力の維持には配慮した税制になっています。

 また、潤沢な税収をもとに手厚い労働者保護制度が確立しているので、企業は従業員の解雇などを柔軟に行っているようです。日本のように企業に雇用維持を強く求めるのではなく、社会全体として労働者を守る制度が確立しており、その分企業に過度な雇用維持責任を押し付けないのです。こうした制度が、北欧の企業の国際競争力を高める結果になっています。

 消費税率の引き上げを議論するとき、目先の景気に対する影響と、長期にわたる経済への影響を区別しなくてはいけません。税制の改正は長期的な経済のあり方を決めるものであり、短期的な視野に縛られてはいけないのです、

貨幣民営化論

 貨幣は政府や中央銀行などの公的機関が供給するものです。これが世間の常識ですし、現実もそうなっています。しかし自由主義の騎手であるフリードリヒ・ハイエクは、この常識に挑戦し、民間企業が貨幣を発行することのメリットを説きました。貨幣民営化論です。

 ハイエクによれば、政府が貨幣発行権を独占的に持つことは国民の利益になりません。政府はつねに貨幣の増発によって財政赤字を埋めようとする誘因をもっているからです。現実にも、過去に多くの国で貨幣が過剰に発行されて深刻なインフレが起き、国民は大きな被害に遭いました。

 もし民間企業が貨幣を発行することが可能になれば、複数の民間企業の間で貨幣発行の競争が起きます。深刻なインフレ(つまり貨幣の価値低下)を起こすような貨幣は利用されないでしょう。貨幣発行競争によって、価値が下がらない貨幣、あるいは利子やポイントをつけるような貨幣が選ばれるようになるでしょう。ハイエクはこうした複数の貨幣の間の競争の重要性を説いたのです。

 50年以上前にハイエクの議論が出されたとき、多くの人は民間貨幣のイメージを持つことはできなかったでしょう。

 しかし、現代社会では、完全な貨幣ではないものの、擬似的な形のさまざまな貨幣が民間企業によって発行されています。その代表的なものが電子マネーです。Suica、楽天Edy、WAON、nanacoなど、さまざまな電子マネーが発行され、そして競争を展開しています。これらの電子マネーはまだ限定された店でしか使えませんが、利用できる店は確実に増えています。利用できる店が増えるほど、電子マネーは現金と同じようにどこでも通用する貨幣的性格をより強く持つようになります。電子マネー以外でも、さまざまな形態の貨幣的サービスが提供されています。クレジットカードなども、貯めたポイントでさまざまなサービス提供することで顧客を引きつけようとしています。もっとも、クレジットカードは貨幣を補助するものにすぎませんので、民間貨幣とはいえませんが。

ネズミ講の構造

 ネズミ講というものを知っていますか。仲間をつのって1万円ずつ集めます。そして仲間にこういうのです。あなたの子供(もちろん本当の子供という意味ではなく新たな仲間という意味)を3人集めてください。それぞれから1万円ずつ集めれば、あなたに1万5000円あげます。

 現実には、もう少し巧妙な仕組みが考えられるのですが、いずれにしろこの仕組みは、動いている限りはすべての人の利益となります。仲間になるのに1万円払わなくてはいけませんが、3人の子供を見つけてくれば1万5000円入ってきます。30人の子供をつくれば、15万円入ります。

 こうしたネズミ講がときどき世の中に出てきます。もちろん、これは犯罪です。ネズミ講の仲間が順調に増えている間はだれも損はしないのですが、必ずどこかで新規加入の枯渇が起こるのです。ネズミのように子供を倍数的に増やしていけば、どこかで枯渇するのです。

 驚くべきことに、年金制度にもこのネズミ講的構造が隠されています。若者の人口が多かったとき、若者が年金として預けたお金の一部が、その時代の高齢者へ年金として支払われました。っぎつぎと多くの若者が生まれてくる限りは、この順送り的構造はうまく機能します。

 しかし、少子高齢化ということで、新しく生まれてくる若い世代の人口は減少傾向にあります。かつて年配の人の年金を支えた世代が高齢化しても、つぎの若者にはそれを支えるだけの人数がいないのです。ネズミのようにたくさんの子供を産みつづけるのであれば、こうした年金制度はうまく機能するのでしょうが、日本人はネズミのようには子供をたくさん産まなくなったのです。

 日本の年金制度の最大の問題は、こうした順送りの構造からどう脱却するかということです。順送り構造をやめれば、いまの若者が年金のために支払った資金は、彼らが歳をとったときに使えるようにしなくてはいけません。すると、いまの高齢者の年金は一般財源から賄うしかないのです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

本の意味と人間の意味

未唯へ

 駐車券がありません。ポケットに入れたはずなのに。外へ出たところ、スタバのスタッフが追っかけてきて、3時間無料券をもらいました。それを持って、駐車場の管理室に行ったところ、出庫の時に示してくれればいいということです。

 この最近、モノが忽然となくなります。特に、冷蔵庫のチーズです。2回、たて続けて、部屋に持って行ったものが無くなった。チーズはどこへ行ったのか。

 「数学的思考の技術」を図書館で探しましょう。他の数学の本に比べると、いくらかはマシです。

本の意味を考えること

 本を考えるよりも、本の意味を考えることです。人間も同じです。そこに存在することの意味は何か。どうつながっていくのか。

 10時前にスタバで、読書です。1時間で6冊ほど片付けました。その後は食べ放題で、読書の続きです。持参した12冊の本を片付けました。

「ぽつん」と一匹

 「ぽつん」は「1 2 3」に比べると、悲しげです。こちらの方が実際でしょう。動物と言えども、群れを組んでいることはストレスと思います。生きていけないからということで、群れを組むことは妥協です。

昼から30冊からのOCR

 以下の11冊の本からOCRです。新しいパソコンなので、スムーズに進みました

 302.38コモ『エストニアを知るための59章』
  エストニアの独立:あまりにもロシアに
  フィンランドとの関係:同じ語族です
  エネルギー、資源、環境:オイルシェール
  IT:スカイプ発祥、ロシアからのサイバー攻撃

 C31.1サイ『アメリカ型ポピュリズムの恐怖』
  NUMMI閉鎖とレクサス事故との関係

 331イト『マクロ経済学』
  コラムを抜粋:経済学教科書の影響力、消費税は景気を悪化させるか、ハイエクの貨幣民営化論、金融工学の理論と実践、ネズミ講の構造、誰が雇用を守るのか、インフレは財政危機を救うのか、日本の経常収支はいつ赤字になるのか、自由貿易は貧困を撲滅するか、経済成長と地球環境問題

 429.6フジ『小さな宇宙をつくる』
  2012年7月4日はみんな大興奮だった!
  ところで、何かそんなにすごいの?
  ヒッグス粒子が宇宙の謎を解くカギ
  私たちがこの世界に存在できるわけ
  宇宙は「無」からはじまった?

 361.45ヨシ『メディア文化論』
  グローバル・メディアの矛盾
  グローバル・メディアヘのアプローチ
  新しいグローバル・メディアの台頭

 323.53『アメリカ憲法入門』
  「表現の自由」の項目をすべて、OCR。この間の日本憲法よりもはるかに詳細です。

 217.7オガ『山口県の歴史』
  やはり、長州は幕末の変動でしょう
  攘夷の決行と奇兵隊:下層社会の心は、長州ひいきになった
  禁門の変と四国連合艦隊下関砲撃
  第一次長州出兵と高杉晋作の決起:本当に、ギリギリのところで、高杉晋作は踏ん張った。
  幕長戦争と民衆

 501.6コン『電力化亡国論』
  持続可能な社会とは何か 地球は定常開放系
  安定と平衡と定常;定常開放系;物質の循環構造;拡散の指標=エントロピー;熱とともにエントロピーを捨てる
  持続可能な生態系

 291.1サツ『北海道ガイド』
  「日本で最も美しい村」をめざして、美瑛町 景観と観光と農業。美瑛は大好きな町です。一年の四季を訪問した。秋と冬がいいですね。

 319.53スノ『米中百年戦争』

 302.22『21世紀の中国 政治・社会篇』
  上からの民主化か、下からの民主化か 中国茉莉花革命
  共産党の「静かな変容」
  カギ握る二億人の中間階層
  将来シナリオ リベラル派知識人の慎重な見方
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )