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KDDIクルーフの動向は

『スマート化する社会』より

事業戦略と収益多角化の位置付け

 KDDIの連結営業収益の内訳を図4-2-2に示す。本業となる電気通信事業が年々減少傾向にあるなか、附帯事業は増加傾向となっており、連結営業収益全体に占める比率も拡大し、2011年度は3割を超える計画となっている。

 2011年4月には新たな中期事業戦略となる「中期的事業方向性」を公表し、今後の中長期的な成長戦略が示された。その成長戦略は2つあり、1つは国内事業における成長戦略としての「3M戦略」、もう1つは海外事業の拡張に向けた「グローバル戦略」である。これら2つの成長戦略のなかに、収益多角化の方向性が示されている。その内容を以下で紹介する。

3M戦略における収益多角化 コンテンツ・メディア事業

 「3M戦略」とは「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」の頭文字をとったもので、さまざまなコンテンツやサービスを、いつでもどこでも最適なネットワークを経由して、好きなデバイスから利用できるといったコンセプトでサービス展開していく戦略である。このうち、収益多角化との関連が深い「マルチユース」では2つの方向性が示されている。

 1つはこれまでauケータイ向けに自社ブランドとして提供してきた[LSMO!]「au one ニュースEX」「au Smart Sports」といったサービスをさまざまなデバイスヘ拡張するという方向性である。その際のキーワードが「クラウド型コンテンツサービス」と(定額モデルけブスクリプションモデル)」となる。これを具現化したサービスとして、2011年6月にauスマートフォン向けに開始されたクラウド型の定額制音楽配信サービス「LISMO unlimited」がある。このサービスには2010年12月に子会社化した台湾の音楽コンテンツ配信会社KKBOXのプラットフォームが活用されている。

 もう1つの方向性は、Skype、Facebook、GREE、Googleといったインターネット上のオープンなサービスとの連携を積極的に進めていくことである。2011年の前半を振り返っただけでも、foursquare Labsとの協力関係構築(2肌1年2月)、mediba・ノボットとのスマートフォン向けアドネットワークでの業務提携(20111年5月)、Facebookとの協力関係構築(2011年5月)、グリーとの協業による「GREEマーケット」の提供(2011年6月)、楽天(Edy)との業務提携(2011年6月)、ウェブマネーの子会社化(2011年7月)などがある。オープンなサービスと通信事業とのシナジー創出に期待したい。

 これらコンテンツ・メディア事業゛o4の売上げは拡大を続けており、2010年度では前年度比31%増の712億円である。こうした取組みを通じて、通信トラヒックに依存しない多様なビジネスモデルを推進していく方針である。

グローバル事業における収益多角化--既存事業のシナジー/新興国展開

 KDDIは中期事業戦略において、グローバル事業をKDDIグループの事業の柱の1つに育てたいとしている。旧KDDの時代からグローバル事業を展開してきているが、既存事業である「ホールセール」「データセンター」「海外SI」「ネットワーク」を組み合わせて事業間のシナジーを創出することにより、グローバルICT基盤の確立を実現したいとしている。特にコア事業であるデータセンター事業「TELEHOUSE」は、20年以上の運営実績とブランドカにより、主力である欧米に加えて、新興国への新規展開など事業拡大を続けている。

 加えて、グローバル事業における新規展開として、日本国内で営んできた「インターネットISP事業」「WIMAX事業」「コンテンツ事業」といったノウハウを活用し、今後大きな成長が見込まれる新興国やアジアにおいてコンシューマビジネスを展開していく考えも示している。その先駆けとして、2009年にはバングラデシュ最大手のISP事業者である「bracNet」を通じてWiMAXによる固定インターネット事業を展開している。

 こうした取組みを通じて、2010年度に約1、600億円であったグローバル事業の売上げを、2015年度には倍増以上にする計画を立てている。
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高まる無線LAN (Wi-Fi)の位置付け

『スマート化する社会』より

利用者からみれば、通信サービスは「速い」「つながる」「安い」の三拍子が揃っていることが望ましい。

ところが、スマートフォンの普及によって、電波は届いているのに「つながりにくい」「速くない」という状況が増えてきてしまった。

こうした状況で、Wi-Fiは通信事業者にとっても利用者にとっても魅力ある選択肢となっている。通信事業者にとっては、通信網の負荷軽減が図れる。利用者にとっては、もう1つの「速い」「つながる」しかも「安い」サービスである。

そのWi-Fiを、通信事業者が自社モバイル通信網の一部として組み込む動きをみせてきたのだ。

こうなると、利用者にとっては、今どの通信網につながっているかを意識することなく、通信サービスを利用できれば便利だ。「速い」「つながる」に加え[煩わしくない]Wi-Fiであってほしい。これらを両立させるのが、「Wi-Fiへの優先接続設定」と「Wi-Fiへの自動ログイン機能」である。

「Wi-Fiへの優先接続設定」は、端末がWi-Fiの電波と携帯電話網の電波の両方に接続可能な時、なるべくWi-Fiにつなぐ機能である。

「Wi-Fiへの自動ログイン機能」は、利用者がいちいち指示しなくても、端末が自動的にWi-Fiにログインする機能である。

もっとも、Wi-Fiにも課題はある。たとえば、同じ場所に数多くのWi-Fiアクセスポイントがある場合だ。もともと、Wi-Fiは免許が不要な周波数帯域活用している。電子レンジが使っている周波数も、Wi-Fiと同じだ。これは、携帯電話サービスとの大きな違いである。携帯電話事業者は、周波数帯域の利用免許を獲得して、その帯域を自社で占有してサービスを提供している。

Wi-Fiの場合、一般的な2.4GHz帯でWi-Fiのアクセスポイントを同じエリア内にいくつも置くとなると、お互いの邪魔となることがある。これを干渉という。

公衆Wi-Fiにしろ、自宅のWi-Fiにしろ、アクセスポイントが密に設置されるほど、干渉する可能性は高くなる。干渉している状況ではWi-Fiの「速い」「つながる」というメリットは期待できない。 Wi-Fiアクセスポイントが多く設置されることは利用者にとって基本的に歓迎のはずだが、行きすぎると干渉が待っている。

3G、4Gといった携帯電話網とWi-Fi網が継ぎ目なくつながる(=シームレスなアクセス)ことで、Wi-Fiは通信サービスの大きな軸になる。トラヒックのほとんどが携帯電話網からオフロードしている姿を理想と考える通信事業者にとっては、通信網の構成は「Wi-Fiありき」で考えることになる。しかもそのWi-Fiは必ずしも自社設備である必要はない。家庭のブロードバンド回線に接続されたWi-Fiアクセスポイントでかまわない。

そうなると、実は携帯電話事業者にとっても、固定ブロードバンド事業者にとっても、通信網の位置付けが変わってくる。

まず、携帯電話事業者にとっては、4Gの位置付けが変化する。 4Gで面的な品質改善を、Wi-Fiでスポット的な品質改善を狙うことになるだろう。携帯電話事業者の通信設備は、より重層的になる。ネットワーク戦略を練るうえで「より速い携帯電話網をいかに早く・広く整備するか」を考えるだけでは済まなくなる。

また、トラヒックは、4G網からWi-Fi網へどんどん流れだす。すると、利用者にとっては4Gへの依存度は下がる。大規模な設備投資を伴う4Gへ依存せず、安価な設備であるWi-Fiへ依存する。携帯電話事業者にとって、4Gへの設備投資を充実させることの意義が、従来とは大きく変わってくるのである。

一方、固定ブロードバンド事業者にとっても、Wi-Fiオフロードのトレンドが与える影響は大きい。スマートフォンの利便性が、Wi-Fiエリアの有無に依存してくると、自宅をWi-Fiエリア化できる固定ブロードバンド回線の有無が、家庭内でのスマートフォンの利便性を左右するようになる。これまで、携帯電話のみに加入していたヘビーューザにとって、自宅をWi-Fiエリア化できる固定ブロードバンド・サービスは従来以上に魅力的に映るはずだ。

また、スマートフォンに限らず、Wi-Fiを搭載した端末はここ数年で随分と増えてきている。たとえば、デジタル・フォトフレームや家庭用ゲーム機、ポータブル・ゲーム機など、その裾野が広がってきている。 Wi-Fi網があることで、こうした端末は独立した機器単体としてではなく、ネットワークにつながった機器となり、利用の幅が大きく広がる。こうした機器は今後もさらに充実すると思われ、固定ブロードバンド回線の需要を刺激するだろう。
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節電策としてのテレワーク

『スマート化する社会』より

2011年夏は、「節竃策としての在宅勤務」「サマータイムで節電」などといった文言が、連日、マスコミを賑わせた。

東日本大震災に起因する東京電力福島第一原子力発電所の事故や東北電力の発電所の被災などの影響により、東京電力・東北電力管内で夏場の電力需給状況が逼迫し、大規模停電も危惧されたことから、7月から9月にかけて、企業などの大口需要家に対して電気事業法第27条にもとづく電力の使用制限(-15%)が課せられ、また、家庭などでも節電の取組みが求められた。加えて、当時の首相による浜岡原発の停止要請や停止中の原発の再稼働の見通しが立たなくなったことなどにより、電力各社の原子力発電所の稼働率が大幅に低下したことから、夏場には、全国的に企業も家庭も大幅な節電を余儀なくされることとなった。

このような状況下、たとえば製造業では、電力需給に余裕のある土日に工場を操業し、代わりに平日に操業を休む、といった勤務日のシフトを実行する企業が目立った。特に自動車産業では、業界を挙げてこの方法に取り組んだ。あるいは、比較的涼しい朝のうちから業務を開始し、午後の電力消費ピーク時間帯での業務時間を極力減らす、といった勤務時間のシフトを実行する企業もあった。これが、いわゆるサマータイムである。ユニクロやキヤノンをけじめ、多くの企業や官公庁が取り組んだことは記憶に新しい。

さらには、オフィスで仕事をせずに、自宅で仕事をすることによって、オフィスの消費電力の削減を目指した企業も多かった。 NTT、KDDI、ソフトバンク、損保ジャパン、三井金属などの取組みが新聞紙上を賑わしたことも記憶に新しい。

社員がオフィスにいないことにより、オフィスの消費電力が減少し、節電効果が高まることを企図した施策であり、その効果については、「在宅勤務者1人1日当たり0.53kWhの節電効果」、「在宅勤務者1人当たり0.96kWの節電効果」などといった試算がなされている。 しかしながら、実際には、オフィスの電力使用量が出勤社員数にジニアに比例しているわけではないt19ことから、より節電効果を高めるためには、オフィスそのものを完全に閉鎖してしまうことが有効かつ確実な方法といえる。たとえば、NTTデータは、入居ビルのフロアごとに曜日を決めてオフィスを閉鎖し、当該フロアの部署に所属する社員は原則として当該曜日は在宅勤務を行う制度を運用したt20。

NTTも同様の考え方の在宅勤務制度を導入・運用したが、いささか趣を異にするのは、フロア単位で週ごとに[午前中はオフィス勤務十午後は在宅勤務]または「午前中は在宅勤務十午後はオフィス勤務」といった勤務パターンを割り当てて、いずれのフロアも、毎日必ず半日は閉鎖され、電力の消費が大幅に削減されるようにしたことだった。このポリシーによると、社員は、毎日、必ず出社し、同僚とは半日間け顔を合わせているので、従来のテレワークにおいて課題視されてきたコミュニケーション上の問題(会議・打ち合わせなどの機会が制約されることによるフォーマルコミュニケーションギャップの問題、同僚等との雑談などの機会が制約されることによるインフォーマルコミュニケーションギャップの問題)を解決できるメリットがある。それは、同時に、全社員に対して、オフィス勤務の半日は同僚・上司・部下などとのコラボレーション的な業務を中心に進め、在宅勤務の半日は独立して集中的に行える業務を中心に進める、といった業務の仕分け・見直しを迫ることになるため、業務の効率化・生産性の向上につながるマネジメント改革でもある・ 21

また、節電策としての在宅勤務を導入・適用した企業にみられる特徴は、「私物パソコンの解禁」である。従来、テレワークでは、情報セキュリティヘの懸念から、ハードディスクなどの記憶媒体が利用できず、端末側へのデータの保存ができないシンクライアント端末を対象社員に貸与し、それ以外の端末での業務を禁じていたケースが多かった。ところが、今般は対象社員が飛躍的に増えたため、シンクライアント端末の配布は行わず、自宅の私物パソコンを利用した企業が多かった。もちろん、情報セキュリティ対策として、「画面転送方式」のリモートアクセスツールを用い、端末側へのデータの保存ができなくしているケースが大半であり、シンクライアント端末と同等のセキュジティ水準の担保の工夫がなされている。

このように、節電策としてのテレワーク(在宅勤務)は、従来の「平時のテレワーク」とは、別な目的・ポリシーを以て、導入・運用されていることが分かり、「別物」として認識し了いる企業も多い。従来、企業やワーカがテレワークに対して抱いていた(特にネガティブな)評価は、テレワークを実践したことのない企業・ワーカによって、想像・イメージで語られていたケースも多く、いわば「食わず嫌い」の側面がなきにしもあらず、だった。夏の実体験がそれらを検証する好機となるはずなので、夏季限定の働き方にとどまらず、テレワークをどのように活用していくべきなのか、検討が進められることを期待したい。

また、たとえ、導入契機が電力需給対策であったとしても、テレワーク(特に在宅勤務)を導入した組織では、従来の働き方を見直す機運が高まっており、これを機に、業務やマネジメントの見直しにつながることも期待される。
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