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NYPLのサービスと経営 2/2

⑪教員の研修
 日本の学校の先生は、どこの図書館を使って勉強しているのか不思議である。公共図書館と学校図書館がタイアップすることができれば、教員研修のひとつの指針を示すことができると考えている。 NYPLには、教師コーナーがありサブジェクト・ライブラリアンによって、選書されており、学校の教員向けのDBや、刊行物が検索でき、専門雑誌の全文にもアクセスができるようになっている。公共図書館の教育支援もこのような環境を準備することができれば、子どもと先生のシナジー効果があがるであろう。

⑫学校と図書館、学校図書館と公共図書館
 前述したが、NYPLでは、総合学習を実施している。毎日10万人以上の子どもたちが利用しており、年間2万5干以上の講座が開設され提供されている。この講座は、60万人が利用しており、前述した学校の先生はもちろんのこと、生徒たちへの教育システムの拡充を果たすことが出来る。

⑬市民たちの図書館
 1886年ニューヨーク州知事が、ニューヨーク市に無料図書館と読書室の建築のため240万ドルを寄贈した。このことを卜リガーにして、1895年さらに、市民のための市民によるニューヨーク公共図書館のために、アスター・レノック・ティルディン財団がNPOとして立ち上げられている。

⑭カーネギー氏のコントリビューション
 カーネギーの資産の9割である3億5千万ドルのうち、5600万ドルを投じて1971年までに米国・英国に2509館の図書館を建設している。ニューヨーク州には、1901年に520万ドルの寄付があり、公共図書館の地域の分館として39の図書館を建設した。ちなみに、シブルの建築総工費は、その1億ドル(120億円)の半分がニューヨークの資金、残りの半分が企業と市民等の寄付金であった。

⑮ライブラリーフレンド
 フレンズ・オブ・ライブラリーには、1、250ドルから2万5千ドルまでの幅がある。また、企業側も、1、000ドルから2万5千ドルの幅がある。 NYPLの本館の貸出しにも応じており、大ホールは2万ドルを支払えば各種パーティに使用することができる。

⑯財政難危機
 同時多発テロ後、ニューヨーク市は大幅に予算削減した。約14億円の予算削減を実施したが、テロ後市民たちは、図書館の予算削減は自分達市民に対する死活問題であるとの認識に基づき基金支援としてのキャンベーンを実施し、2年後にはと19億円の基金を集めた。このことからも、市民たちが作る自分たちのための図書館という認識が明確である。

⑰デジタル化の4ステップ
 NYPLのデジタル化に関する政策とは、第1段階として、購読あるいは外部の電子情報の統合(データベース、電子ブック、リンク集)を行ない、第2段階として、検索ツールと資料検索支援(検索システムの開発)を行ない、第3段階として、所蔵資料のデジタル化(デジタルコレクション)を行ない、第4段階として、研究教育情報用のデジタル化資料の開発(デジタル資料を使った教材の作成)を行なっている。

⑱デジタル化の利用者教育
 第1段階として、公共インターネット端末および電子情報の提供(デジタル情報へのアクセスを保証)を行ない、第2段階として、コンピュータ利用講座(デジタル情報利用のための基礎知識の習得)を行ない、第3段階として、電子情報活用講座(専門分野の情報収集や活動の能力の強化)を行なっている。

⑲NYの公共図書館と書店
 インターネットカフェの違いとは、第一に、図書館は、印刷媒体から電子情報、出版ルートに乗らないチラシから歴史の記録まで、多様な媒体による豊富な情報を、過去に遡って体系的に蓄積している。第二に、図書館は、膨大な情報のなかから適切なものを選び出し、評価を加え、アクセスしやすい検索システムを作り、情報の水先案内・知の体系化をも含めたガイドとなる。第三に、図書館は、市民の情報活用力を育成するとともに、情報環境を整備する。第四に、図書館は、人と人との出会いの場を創出、新しい知を生み出す。第五に、図書館は、研究スペースなど、知的活動のための空間を提供している。第六に著作権や、デジタル化などをめぐる新しい動きに対して、民主的な情報環境っくりのために行動している。
 さらに、ニューヨーク公共図書館の政策とキャンペーンによると、ブッシュ前大統領の時代、「図書館による教育と情報提供が民主主義の強化につながる」として2004年に図書館関係予算が15%増加した経緯がある。また。米国図書館協会では、「インターネット時代だからこそ図書館が市民の情報拠点として重要である」という図書館キャンペーンも実施している。
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NYPLのサービスと経営 1/2

『大学図書館経営論』より

①NYPLの実務重視
 ビジネスの司書がその講座として、「投資に関するもの」「健康に関するもの」「インターネットビジネスに関するもの」等を提供している。市民の8割以上が、「図書館と司書は民主主義の基本となる役割を果たしている」と大いに評価している。

②電子情報
 シブルは地下1階に[電子情報センター]として80台近いコンピュータを設置しており、他の米国の図書館も含めて、9割以上の公共図書館で市民にインターネットを無料で提供している。利用率の高いものとしては、ABIインフォーム・グローバルがあり、もちろん、ビジネス、マネージメント、投資、マーケティング関連の刊行物も800以上の検索も可能である。

③市民の需要
 館長は、情報の迅速な提供に常に努力していると語っている。アメリカの市民に対して、即座に回答する体勢を取ることが必要であり、具体的なサービスを常時展開していると強調していた。

④情報リテラシー教育
 コンピュタートレーニングセンターの講座としては、図書館利用スキルとして目録やデータベースの使い方、インターネットのスキルとしてサーチエンジンの使い方、情報の評価法、職業とキャリア情報の探し方、ビジネス情報としてトレードマーク入門、マーケテトリサーチ、株式とファンド、行政情報として行政情報入門、立法機関情報の探し方、特許入門、商標入門、科学情報として科学情報入門、衣服・繊維情報、ビルディングと建設、食品化学、天文学情報が提供されており、以上の講座(シブル)を、1996年開館以来7万人以上の受講者が利用している。

⑤デジタル時代のライブラリアン
 豊富なコレクションと市民を結びつけるには、優秀な図書館員の存在が不可欠である。そして図書館員は、コミュニケーションの能力とネットワークの能力を持ち合わせていることが必要である。因みに、シブルのスタッフは、100名(40名専門職、60名パートタイム)で、40名の専門職は大学院レペルで図書館学およびその他の主題を学んでおり、MBAの出身者が圧倒的に多い。

⑥就職活動
 ミッド・マンハッタン図書館のなかには、職業情報センターがあり、毎晩9時までオープンしている。そこでは年間の利用者は約20万人を超えるという実績をあげている。市民に対して、就職や転職、専門技能取得のための情報を提供しているのである。さらにミッド・マンハッタン図書館では、雑誌広告の切り抜きだけを収集して、野球、デザイン、建築、衣装、猫、犬、花、家具、電子機器、食品等、多種多様な市民の興味に応えている。

⑦映画資料館
 ドネル図書館は、1958年から独立系映像作品を集めており、内容はさまざまであるが、ドキュメンタリーが中心である。社会問題を取り上げた作品が多い。その時代を反映する映像資料も充実している。

⑧同時多発テロ後
 NYPLは、テロ後に市民に対する情報提供などの迅速な対応ができ、市民の支持を獲得している。テロ後、数週間で利用者数が1割以上増加し、貸出数も2割近く増加した。館長は、テロ事件に対する図書館の対応を、図書館が民主主義を守る砦となってきており、そのことが、今ほど必要とされていることはないと述べている。さらに、リペラルな思想そして情報の交換、人々の協力が市民社会にとって最も重要なことであり、ニューヨーク公共図書館だけでなくアメリカ中の図書館で、情報の提供や講座の開催を通して、公共図書館が再確認されていると表明している。

⑨医療ウェブサイト
 NYPLでは、「ニューヨーク・オンライン・健康アクセス」をすでに立ち上げている。医療関係者とライブラリアンがチームを制作したものであり、その内容としては、病気、健康維持、病院、ホスピス情報等に英語とスペイン語でアクセスできる。月間、35万人以上のアクセスがあり、図書館で医療情報を得てから病院に行く市民が多いとも言われている。

⑩児童室
 マンハッタンの図書館すべてに児童室がある。全体で180万点以上の絵本・小説・ノンフィクション・雑誌・ビデオ・CD等がり、50カ国以上から情報が集められている。筆者も毎年NYPLを訪れるが、そのたびに多くの小さな訪問者が図書館を走り回ったり、床に寝転んだり、とにもかくにも、楽しそうに有意義に図書館での時間を満面の笑顔で過ごしている。
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