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電気自動車の優位性

『資源・食糧・エネルギーが変える世界』より

「世界の情勢は、中国がどう動くかです」

原油価格上昇の要因は、新興国、途上国のモータリゼーションによる需要増加、投機資金の資源マーケットヘの流入が二大要因といえる。重要なのは、ガソリンは原料である原油の価格、製油所での精製コスト、物流コストなどコスト構造が世界でほぼ共通しており、先進国であれ途上国であれ、石油にかかる税金や物流コストを除けば一物一価になっている点だ。

一般的な物価が先進国より安い途上国のほうが製油所が国内になかったり、油槽所など物流ネットワークが整っていなかったりするため、ガソリンの小売価格は割高というケースが少なくない。とすると、途上国で自動車を保有する人が一ガロン4ドル超、すなわち一リットル一00円前後のガソリン価格を負担してまで車に乗り続けられるかという疑問が湧いてくる。途上国なら一リットルのガソリンを買うのと同じ金額で一回の食事を十分に摂れるからだ。

仮に、より低コストで走ることができ、車体価格もそれなりに安い車が開発されれば、途上国では電気自動車のほうがガソリン車より普及するのは間違いないだろう。それが電気自動車への期待なのだ。

電気自動車とガソリン車の走行燃費は日本エネルギー経済研究所のリポートによると、電気自動車(軽自動車ベース)が一キロメートルあたりO・4MJに対し、ガソリン車は2・1MJと、電気自動車がガソリン車の5分のI程度のエネルギーで一キロメートルを走ることができる。メガージュールはエネルギーの単位で、IMTJは一キロワットの電力を使う機器が1000秒稼働して行う仕事量であり、温度が零度の氷を3キログラム溶かす熱量に相当する。

米環境保護局が2010年11月に発表した電気自動車の燃費では日産の「リーフ」がガソリン一リットル換算で42キロメートルの走行が可能と判定された。米GMの「シボレー・ボルト」も40キロメートル(バッテリー走行時)と効率の良さを示した。「ボルト」は純粋の電気自動車ではなく、「エクステンダー」と呼ばれる発電用補助エンジン付きの電気自動車で、充電が切れると発電用のエンジンを稼働させ、発電しながら走るタイプだ。
ガソリン車側は、軽自動車で燃費トップのスズキ「ワゴンR」とダイハツ「ムーブ」でようやく1リットルあたり27キロメートル。マツダは10年10月に高圧縮比の直噴エンジンとシャシー、トランスミッションなど車全体を燃費向上のために改善する「SKYACTIVE」で1リットルあたり30キロメートル走る小型車「デミオ」を発表するなど、燃費改善の動きは進んでいるが、電気自動車の燃費性能、走行コストの優位性はガソリン車を大きく上回っている。自動車においても電気は走行エネルギーとして一定のシェアを獲得し、石油と並ぶプラットフォームになる可能性が高い。

それを予感させる現象が、中国ではすでにみられる。電動バイクの急激な普及だ。中国の都市で街なかを歩いていると、何の前触れもなく横をバイクがすりぬけることがあり、一瞬ひやりとする。電動バイクのため、ほとんど騒音を出さずに走ってくるからだ。中国では2010年の電動バイク販売台数が2500万台を超えた。

中国で電動バイクが普及した背景には、電動であれば電動アシスト自転車と同じように免許が不要であり、エンジンの二輪車が禁止されている北京、上海などの大都市圏でも乗れる、排気ガスが出ない、といった理由がある。

だが、大きいのは、同じ距離を走るのに電動バイクならガソリンのバイクの10分の1程度のコストで済み、家庭の電源で簡単に充電できるほか、街中に簡易充電所がたくさん存在しており、充電に不自由しないことがある。電力のコスト、インフラにおける優位性が発揮されている。

電動バイクは現状では鉛蓄電池を電源としているため、1回の充電で走れるのは60キロメートルぐらいが限度だが、リチウムイオン電池の価格が今後大幅に下がり、バイクにも採用されるようになれば、走行距離は一気に200キロメートル程度まで延びるといわれている。

先進国でも石油製品の需要飽和と石油産業のコスト削減で、ガソリンスタンドの数は減っており、日本では最盛期の6万軒が今では4万軒割れまで減少した。山間部ではガソリンスタンドが近くにないため、数十キロ走って給油に行く。スタンド難民‘という言葉まで生まれている。

石油の流通インフラは新設、維持のコストが高く、消防、環境などの規制も厳しいため、需要が低迷を始めると撤退ムードが広がりやすい。それに比べ、電力は電線でどこにでも運べて、いったん電線のネットワークを作ってしまうと維持費もあまりかからない。電力のインフラとしての優位性、既存インフラの有効活用という点に注目しておくべきなのだ。
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コージェネは隠れた大電力会社

『資源・食糧・エネルギーが変える世界』より

「25%削減の制約をなくせば、色々なエネルギーが可能になる」

◆コージェネは隠れた大電力会社

 分散電源に戻れば、日本ではいまや新築の大型ビルや大規模工場の多くは「コージェネレーション設備」を導入している。2010年3月末時点での累計の導入件数は、ビルや工場などを合計して8444件で、発電能力の合計は943万キロワットにのぼっている。これは北海道電力や四国電力、北陸電力などを上回る規模であり、コ・ジェネレーションは「隠れた大発電会社」ともいえる存在だ。コージエネレーションの総合エネルギー効率は理論値では70~80%に達している。

 ここに来て目立ち始めたのはコ・ジェネレーションの家庭版だ。そのひとつはガスでエンジンを駆動させ、発電するとともに余熱を給湯に回す「エコウィル」と呼ばれる商品で、02年度の発売以来、累計で10万台を突破している。1台の発電能力は一般的には一キロワット程度で、全国で10万キロワット程度の発電能力になる。

 もうひとつのかたちが家庭用燃料電池の「エネファーム」だ。ガスや灯油を燃料にするが燃焼させるのではなく、改質器で水素を取り出し、燃料電池に入れ、発電する仕組み。エンジン駆動の「エコウィル」などに比べ、電力への転換効率や総合エネルギー効率が高いほか、エンジンなどの駆動部分がないために、騒音が小さいなど住宅地に向いている。09年度に発売され、1年半で6000台以上が売れている。

 11年3月の東日本大震災で東電の福島第一原発が事故を起こし、首都圏はじめ全国的な電力不足が懸念される事態が発生した。コ・ジェネレーションや家庭用分散電源は効率性とともに停電、電力不足といった状況に対するリスク回避策にもなることを証明した。

 ただ、コ・ジェネレーションと家庭用分散電源には共通した弱点がある。電力のニーズとお湯や暖房など熱のニーズがうまく一致するとは限らないことだ。たとえば、一般家庭では夏場の日中はエアコンなどを使うため、電力需要が多いが、その時間帯にはお風呂やシャワーなどお湯はあまり使われない。お湯は貯湯槽に一定量は貯められるが、もちろん限界がある。電力と熱の需要のミスマッチがあるため、発生した熱を捨てたり、逆にお風呂などを使う際にお湯をわかすための別の熱源が必要になる。そうしたミスマッチを埋めるための技術革新がさらに必要になるわけだ。

◆自動車の将来像のひとつにも

 トヨタの描く自動車の将来像では、ガソリン車がハイブリッド車にシフトし、さらにプラグイン・ハイブリッド車を経て、燃料電池車にいたるロードマップを描いている。電気自動車ではなく、燃料電池車を将来の自動車の主軸として位置づけている点が興味深い。

 燃料電池車と電気自動車の違いはエネルギー源が水素か、バッテリーかの違いであり、エネルギー密度でいえばバッテリーよりも水素のほうが単位容積あたりの電力貯蔵量は多いという利点がある。

 ただ、水素には供給インフラをどうするか、という弱点がある。既存のガソリンスタンドを水素ステーションに替えるには高圧タンクの建設、輸送する水素ローリーの整備なども必要で、莫大なコスト負担が必要になるからだ。

 そうした弱点はあるにせよ、水素には大きな潜在力があり、電力を補完するエネルギーのサブ・プラットフォームの地位を得る可能性もみておくべきだろう。

◆産業としての自然エネルギー

 一般の企業であれば、設備投資に伴う資本コストを意識し、自社設備か、外部からの調達か、を考慮する。日本の電力会社は長年、すべてのコストを電気料金に上乗せして電気料金を決める「総括原価方式」をとっていたため、資本コストに対する感覚が薄く、むしろ自社電源こそ安定供給の要という発想で、巨額の設備投資を続けてきた。国策による支援もあった原子力は1基4000億円の巨額投資でも何ら躊躇することはなかったのだ。

 言い換えれば、電力会社は建設コストの回収が約束され、自社でコントロールできる電源として原子力を重用し、自社でコントロールできず、割高で買わされても電気料金への転嫁がしにくい自然エネルギーは敬遠していたわけだ。さらにいえば、自然エネルギーが増大し、コスト競争力を高めてくると、原子力だけでなく他の自社発電所の存立が危うくなるという発想もあっただろう。日本における自然エネルギーの普及後れの背景には、電力会社にとっての損得勘定、市場防衛の戦略があったとみるべきだ。

 自然エネルギーが急増し、その供給者に一般家庭や一般企業が多数含まれてくると、電力の市場化、コモディティ化か進んでくる。つまり、一般企業は自家発電の電力などを電力会社以外のPPSと呼ばれる新規参入の電力小売業者に卸売りしたり、逆に購入したりする可能性が高まってくるからだ。

 実際、日本卸電力取引所(JPX)には電力会社以外の一般企業も多数参加している。一般家庭も電力会社から電力を買う一方、余剰が出れば電力会社に売る「プロシューマー(プロデューサー=生産者=兼コンシューマー=消費者)」となり、電力会社にとってはコントロールの難しい存在になってくる。電力会社にとっては決して歓迎できる状況ではない。

 自然エネルギーはさまざまな面で、電力会社の既得権益や長年の独占的業界構造の欠陥を白日のもとにさらし、電力産業に変化を迫る動きにつながりかねない。自然エネルギーは実は既存の電力業界に対するアンチテーゼを含んでいるがゆえに警戒されている、という面もあるのだ。
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体の「冷え」をあなどらない

『体を治す7つの習慣』より

「足指の痛みがなくらない。もともと、体温は35度台です。これが原因なのでしょうか」

低体温は免疫力の低下を招く
 体重や血圧をこまめに計測する人は珍しくないが、「体温」を気にする人はなかなかいない。せいぜい「熱があるかな」というときに注意するぐらいで、「ちょっと低いかも」と問題意識をもつ人は皆無ではないだろうか。
 体重と血圧以上に人の健康を左右するのが「体温」だ。体温という「熱」を動力源に細胞が働き、新陳代謝が進み、免疫が高められ、人間の体は健康維持ができているのだから、自分の「平熱」を知っておくことは健康状態の把握には欠かせない。
 体温は午前四時頃に最も低くなり、午後から夕方にかけては高温を維持する。また、食後すぐは体温が上がるほか、気候にも左右される。起床時・午前・午後・夜の計四回何日かに渡って記録し、「時間帯ごとの平熱」を把握しておくとよいだろう。
 余談だが、体温が最も低下する明け方は、青壮年の突然死、高齢者の心筋梗塞・脳卒中、熱中症などによる死亡が多いほか、自殺死亡者も多い時間帯である。雪山での凍死も極端な体温の低下によるものだ。
 理想的な平熱は三六・五度だが、現代日本人の多くは三六度台前半で理想体温に届いていない。なかには三五度台後半という人もいる。

「低体温」の原因になる7つの悪い習慣
 原因1 水分のとりすぎ・:なにごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」。生命維持に欠かせない「水分」も同様。「水」にはものを冷やす作用があるため、飲み過ぎると体を芯から冷やしてしまう。
  ペットボトル飲料や、水、緑茶、コーヒー、牛乳、ビー・ル、水割りウイスキーなどは体を冷やす作用も強いので注意が必要だ。反対に温める作用の強い生姜紅茶や、ビタミンミう不ラルが豊富なニンジンリンゴジュース(166べLン)などは冷えを気にせずに飲める。

 原因2 過食…体内に入ってきた食物を代謝するためには、消化吸収器官の細胞に血液を届ける必要がある。各細胞は血液から酸素や栄養素を受け取り、代わりに老廃物を引き渡して代謝活動に邁進するのだ。
  しかし、血液には限りがあるので、消化吸収器官の細胞に供給されるあいだ、よその細胞には血液が不足しがちだ。当然、血液とともに運ばれる「熱」も、血液をエネルギーとしておこなわれる活動の際に生じる「熱」も低下する。過食で消化吸収器官ばかり働かせることによる弊害である。
  また、過食の結果、血液中に糖分や脂肪などが増えると血液が汚れ、澱みから血行不良となる。

 原因3 偏った食生活・厳しい食事制限でのダイエット・:動物は食物に含まれる糖質からエネルギーや熱をつくる代謝活動をおこない、各臓器を働かせ体温を保っている。こうした代謝活動に必要不可欠なのが「ビタミン」と「ミネラル」である。
  偏った食生活や厳しい食事制限の結果、ビタミンやミネラルが不足すると代謝活動が正常におこなわれずに体温が低下するのだ。

 原因4 過剰なストレス・:人間はストレスを受けると交感神経が緊張してアドレナリンの作用が強くなる。その結果、血管が収縮し血流が阻害され手足などの末端が冷える。緊張する場面で顔色が失せたり、手足が冷たくなったりした経験はどなたもおありだろう。
  こうしたストレスが一時的なものなら問題はない。しかし、恒常的に強いストレスにさらされ常に血管が収縮した状態にあると、全身の血行が阻害され冷えが蓄積されるようになる。
  さらに、流れに澱みが生じた血液はじょじょに老廃物や有害物質をためこむ。血管の収縮に加え、冷えによって体内の代謝反応が抑制された結果、残留した不燃物でますます血液が汚れる。

 原因5 塩分の過剰な制限…漢方では「塩」には体を温めて血液を浄化する作用があるといわれている。「減塩ブーム」に踊らされずに、「冷えが気になり、しょっぱいものが好物な人」は、「おいしい」と思う範囲でとるようにする。

 原因6 運動不足…人間の体温の四割以上は筋肉で産生される。ひどく寒い場所で体が震えるのは、細かく筋肉を動かして熱を産生し体を冷えから守ろうとするためだ。
  交通機関の発達、家電製品の充実、エレベーターやエスカレーターの普及など、暮らしは確かに便利になったが、その分、「筋肉を動かし発熱する貴重な機会」を失ったといえるかもしれない。

 原因7 カラスの行水…入浴には疲労回復効果やリラックス効果があるが、あまり忙しいとゆっくり湯船につかる気にならないものだ。毎日の入浴はシャワーでパパッと済ますという方も多いだろう。衛生的にはそれで十分だが、湯船につかることは自宅で簡単にできる「冷え撃退法」。体を芯から温めながら、保冷作用のある体内の余分な水分を汗で排泄できる。
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