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吉野式林業が、林業遺産(日本森林学会)に認定されました!

2015年06月05日 | 林業・割り箸
昨日(6/4)の奈良新聞1面に「吉野林業を林業遺産に 森林学会が認定 景観や技術 複合的評価」という記事が出ていた。伝統ある吉野林業(吉野式の林業)が、2014年度の「林業遺産」に認定されたのだ。関係者の皆さん、おめでとうございます!奈良新聞の記事によると、
※写真はすべて、林業・木材産業モニターツアーで撮影(2012.1026)
トップ写真は、川上村白川渡(しらかわど)チゴロブチの人工美林

吉野林業が日本森林学会(東京都千代田区)から平成26年度の「林業遺産」として認定された。林業景観や技術体系、道具類、資料群などを含めた複合遺産。吉野地方で500年以上にわたって林業技術を伝承してきたことや、山守制度などの独自システムを構築してきたことが評価された。5月28日の総会で決定した…。

さらに日本森林学会のHPによると、

奈良県吉野地域では、室町時代より長年にわたり優れた林業技術が開発・伝承されてきた。実生苗による「密植」「多間伐」「高伐期」といった施業方法を中心に、「借地林業」や「山守制度」などの独自のシステムも構築され、多くの全国の有名林業地にも影響を与えてきた。古くは酒樽や桶などの樽丸が生産され、現在においても「通直」「完満」「無節」を特徴とする優れた構造材などの建築用材が生産され続けている。また、こうした林業発展を示す特徴的な景観、道具類、資料も数多く残されている。

原木市(吉野木材協同組合連合会)の様子

認定対象:
吉野林業地としての林業景観/吉野林業の技術体系/吉野林業の中心地としての林業記念地「歴史の証人―下多古の森」/川上村林業資料館道具類展示品/吉野林業関連の近代資料群(森庄一郎著・土倉庄三郎監修『吉野林業全書』明治31年初版、北村又左衞門著・佐藤弥太郎教授監修『吉野林業概要』大正3年初版・昭和29年改訂、北村太一謹写・石橋保男発行『吉野山林 写真帳』、その他写真)

所在:
林業景観:奈良県吉野郡黒滝村・川上村・東吉野村全域/技術体系:奈良県吉野郡黒滝村・川上村・東吉野村及びその周辺町村/歴史の証人―下多古の森:奈良県吉野郡川上村下多古586番地の4 川上村有林地内/川上村林業資料館:奈良県吉野郡川上村西河486/資料群:奈良県森林技術センター(奈良県高市郡高取町吉備1)、吉野林材振興協議会(奈良県吉野郡吉野町丹治)

 森と近代日本を動かした男~山林王・土倉庄三郎の生涯
 田中淳夫
 洋泉社

「吉野林業関連の近代資料群」に、森林ジャーナリスト・田中淳夫(あつお)さんの名著『森と近代日本を動かした男 山林王・土倉庄三郎の生涯』(洋泉社)が入っていないのは残念だ。版元で品切れになっているが、それが理由なのだろうか(私は、やっとこさ古書店で入手したが) 。

当の田中さんは今回の認定について、ご自身のブログでこのように書かれている。


樽丸(たるまる=酒樽の材料)づくりの様子

昨年から始まった日本森林学会が選定する「林業遺産」。その第2弾、2014年度選定の林業遺産 が4件発表になった。次の4つ。

天然林施業実践の森「東京大学北海道演習林」/飫肥林業を代表する弁甲材生産の歴史/吉野林業/越前オウレンの栽培技術

覚えているだろうか。昨年の5月には本ブログでも最初に選ばれた林業遺産10件を紹介したが、その内容に対して、しょぼい!と腐した。いや、正確には「地味だ」だけど。(林業遺産に10件)



それに対して、今年は4件ではあるが、ある程度知られたところが入ったという印象だ。吉野林業に飫肥林業(弁甲材に絞っているが)、東大の北海道演習林はどろ亀さんこと高橋延清氏が手がけた森ということで有名だろう。福井のオウレン栽培は、ちょっと林業の本筋から外れるようではあるが、林床利用の栽培では歴史があり、もっとも重要なものだと思う。昨年の選定されたものを腐した人間としては、ようやく納得の遺産として目に止まるようになったことは喜ばしい。

この4つを眺めて感じるのは、いずれの林業地も、複層・多様性を重んじている森が入っていること。元から天然林施業を行った東大演習林はもちろん、飫肥林業も疎植ゆえに誕生した針広混交林(三ツ岩林木遺伝子保存林など)だし、吉野林業は逆に密植の末にたどりついた低層に広葉樹が広がる混交林。そして林床のオウレン栽培は、自然林の下で薬草を栽培する見事なアグロフォレストリーである。やはり林業の行き着くところは、効率優先の一斉林ではなく、多様な森ではないか。

ちなみに吉野林業の認定対象は(中略)なかなか幅広い。人工植林として約400年たつ「歴史の証人」や、『吉野林業全書』が入っている。また川上村の林業資料館の展示品も入っているが、ここ、昨年放火にあって閉館中なんだけどね(^^;)……資料は燃えていませんから。今後は、土倉庄三郎関係の吉野林業の登録に期待しよう。

ともあれ伝統ある吉野式林業が、東京の権威ある団体のお墨付きを得たことは、とても喜ばしいことです。吉野の林業地域の皆さん、おめでとうございます!県奈良の木ブランド課の皆さん、これを機に、吉野材をもっともっとPRしましょう!

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