意思による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意思に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

今日も元気で読んでいます!


2008年1月から読んだ本について書き残してきました。読んだ内容を忘れるのは致し方のないこと、でも少しのヒントがあれば思い出すこともありそうです。今日も応援いただきありがとうございます

華族 小田部雄次 ***

2008年12月22日 | 本の読後感
戦前の日本では、特権的上流階層だった「華族」。上流家系のイメージで語られる「皇室の藩塀」。多様な生態と実相にせまった面白い本。明治2年(1869)、「公卿諸侯之称廃せられ、改めて華族と称す可し」と定められたのが華族の始まり。明治17年(1884)、公侯伯子男の五爵制を定めた華族令が決定された。華族と聞いて思い浮かべるのは「殿様や公家だった人々」。しかし、三井とか岩崎は、どうして爵位を持っていたのか、山県有朋、大山巌、勝海舟はなぜ爵位を持っていたのか。

華族は、学習院入学・宮中席次・「爵」「位」・「世襲財産の設定」などの様々な特権とともに、相続は男系・宮内大臣の監督に服務・国家への忠誠・教育や軍務など、様々な義務を有していた。公爵・侯爵は無給ながら、貴族院の終身議員。しかし「伯・子・男」爵は、満25歳以上の当主による互選かつ歳費がもらえるので、貧乏貴族は議員の地位をめぐって激しく争ったらしい。「華族令」の選考内規では、諸侯と公卿を中心に、「国家に勲功ある者」が加えられていた。藩閥間の勢力バランスに配慮、「勲功」を判断したのは伊藤博文。長州の山県有朋や井上馨、薩摩の西郷従道や大山巌は、このとき、爵位を得た。このほか、神職、僧職、奈良華族、琉球王家にも爵位が贈られた。明治20年には、反政府勢力への「懐柔策」として、民権派の板垣退助、大隈重信ら、旧幕臣の勝海舟らに叙爵が行われる。日清・日露戦争以後は、軍人の叙爵者が増加。財閥を中心とした資産家も、日本の経済発展に関する寄与を「勲功」と認められて、華族の仲間入りをする。その後日韓併合で朝鮮貴族が加わり、大正期以降は、軍人のほか、政治家・官僚、学界人が増えた。このように「華族」は、さまざまな出自・職業・利害関係を持つ人々を抱え込んでいた。便宜上、「華族」と括られているが、ひとつの階級を成していたとは言えない。明治以降の日本史の矛盾や課題を浮き彫りにするような歴史的家系背景解説、と考えられる。

戦前日本の支配階級の動静がわかって面白い。美智子皇后が、非華族出身者ということで、随分イジメられたことから分かるように、華族子女は宮中女官の供給源であったらしい。紀子様の勤めていた「山階鳥類研究所」や、競馬の「有馬記念」が、実は華族に由来するものとか、こういう豆知識も書かれている。
華族―近代日本貴族の虚像と実像 (中公新書)
梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和 (小学館文庫)
ミカドと女官―菊のカーテンの向う側 (扶桑社文庫)
皇族に嫁いだ女性たち (角川選書)
李方子―一韓国人として悔いなく (ミネルヴァ日本評伝選)
四代の天皇と女性たち (文春新書)
家宝の行方―美術品が語る名家の明治・大正・昭和
華族家の女性たち
近代の戦争と外交 (展望日本歴史)
コメント

深追い 横山秀夫 ****

2008年12月15日 | 本の読後感
配属されたくない署、第一位の三ツ鐘警察署での事件に絡んだ警察官7人の話。舞台は三ツ鐘警察署という同じ場所だけれど、基本的なテーマは一緒で人間模様を描写。日常の中の小さな事件から主人公が思うこと、体験することなどが焦点に。主人公は交通課事故係、刑事課鑑識係、刑事課盗犯係、警務課係長、生活安全課少年係、三ツ鐘署次長、会計課長。この短編集はそれぞれの個人に着目したヒューマンタッチの作品。

「深追い」 職住一体を目指した三ツ鐘署では、署の敷地内に独身寮や官舎がある。そのせいか県警や他署からは三ツ鐘村と揶揄されている。今日も署長主催で地元の信用金庫の女子職員を招いた独身署員向けのパーティ、交通課事故係主任の秋葉和彦はパーティに出る気にもなれない。秋葉は昨夜の出動で交通事故死した被害者のポケベルを拾った。被害者の妻が中学生の時に付き合っていた女性であったことが発端。交通事故で死んだ男が持っていたもので、男の妻に返そうと思っていた矢先、そのポケベルが鳴った。夜の献立がメッセージとして送られてくるのだが、返しそびれた刑事がもっていることを知っているらしい。秋葉の勘違いが次第に解明されてくる。職務を逸脱してゆく警察官の姿は、相手の女性から見たら恐ろしいもの。閉ざされた小さな世界が生み出した戒律。読んでいると、彼の本気とそれに対する女性の方の困惑ぶりもが伝わってくる、。

「又聞き」 刑事課鑑識係で日々鑑識写真を焼き続ける三枝達哉。小学二年生の時に海で溺れ、救助に向かった大学生一名が死亡、もう一名の大学生にに助けられた経験を持つ。今年もその日7月28日がやってくる。鑑識課の三枝達哉は休暇を申請していた。幼い頃、海でおぼれかけた彼の命を救い、代わりに自らの命を落とした小西和彦の命日だった。義務感のみで小西家を訪れた三枝は例年のように小西の位牌の前に線香をあげ、両親と話しながら時を過ごすのであったが、アルバムの最後にあったスナップ写真に目を奪われた。事故の一時間前に撮られた写真というのだが、疑問が。トラウマのある人は、それに向き合ってやっと解き放たれる、この主人公も写真1枚に疑問を持ったことから自分の過去と向き合って乗り越えることができた。

「引継ぎ」 名物空き巣「宵空きの岩政」が引退宣言をした。刑事課盗犯係主任尾花久雄が、親の代から追っていた空き巣だ。県警を退官した父から引き継いだ「盗人控」、大学ノート二十冊のうち岩政こと岩田政男に関する情報だけでも六冊を占めていた。年に一度の「盗犯検挙推進月間」に、その岩政の手口に類似した空き巣事件が発生、目撃情報も寄せられた。岩政は引退したはずではなかったか。推進月間なのにいまだ検挙数ゼロの尾花は、岩政の行方を追う。

「訳あり」 警務係長の滝沢は困り果てていた。まもなく定年退官する鈴木巡査長の再就職先がどうしても見つからないのだ。その対応に追われている最中、県警本部にいる同期の殿池から電話で呼び出された。出向してくるキャリア組用のポストである捜査二課長は歴代「ボク」と呼ばれているのだが、そのボクに悪い虫が付いた。その悪い虫を滝沢が追い払えれば県警本部警務課長の船山が滝沢の処遇を上手く取りはからってくれるそうだ。船山はかつて逆らった滝沢を三ツ鐘署に飛ばした張本人。昇進試験に通らないのも船山のせいだと滝沢は見ていた。昔なら席を立っていた所だが、どうしても滝沢は断れずにボクの監視を行うのであったがそんな中、刑事二課長が女のマンションに入り浸っているというタレ込みが入る。刑事二課長の身辺調査を依頼された鈴木は、自身の仕事の合間を縫い、極秘裏に調査を開始する。自分の出世の話を持ち出されてある意味浮かれてしまい、仕事とはいえ人の就職先の世話なんてすっかり忘れてしまった滝沢。

「締め出し」 生活安全課少年係の三田村は刑事課への転属希望を出し続けているが、未だに異動の話は聞こえてこない。三ツ鐘市をあげての夏祭りが明けた朝。前夜にグループ間で乱闘騒ぎになる前に無事補導した不良グループの取り調べの最中、ふんぞり返り生意気な言葉を口にする少年に一撃を食らわそうとしたちょうどその時、強盗殺人事件を告げる無線が鳴った。それを聞いた不良少年が漏らした一言を三田村は聞き逃さなかった。住宅団地のローラ捜査に借り出された三田村は、公園で休憩している最中に奇妙な言葉を口走る老人と出会う。

「仕返し」 三ツ鐘署次長の的場には再婚後にもうけた息子がおり、中学受験を控えている。前妻とは職場結婚、当時の警備部長の勧めであったのだが、急逝した部長の通夜で酔った同僚から部長のお下がりであった事を告げられ激しくショックを受け、間もなく家庭は崩壊し、離婚した。引き取るつもりであった息子はまだ3歳で、妻から離れず手放す事となっていた。ある日、ホームレスが公園のテントの中で死んでいるとの知らせを受ける。どうやら病死のようであったが、恩のある TV リポーターがホームレス問題に力を入れていた事もあって彼にネタを流した。その日は的場の誕生日であり、少し遅くなったものの家族で祝いの席を楽しんだところへ、リポーターが現れホームレス;ポンちゃんの前日の足取りを細かく調べてきた。彼はその報告に特に違和感は感じなかったようだが、的場には疑問に思える点があり、慌てて署に戻ると当直社名簿を調べたホームレスの死体が公園で発見された。いつも署に顔を出していた"ポンちゃん"というホームレス。病死との所見だったが、ポンちゃんの足取りを追ううち、警察署の近くでの目撃情報を得る。職住接近の同じ官舎での暮らし、そこで暮らす家族の毎日は、子供たちの関係も含めて息詰まるもの。息子の虐め問題で対立している部下から本部への密告で苦境に立たされる。自分の子供がいじめられている立場じゃなくていじめている立場だった。自分自身の出世と、家族の問題に直面する、警察署次長の的場。事故の隠蔽工作と家族の問題を巧みにリンクしながら、物語は展開。子供たちも親の上下関係を見て自分たちの上下関係を決める、警察を舞台にしているが、これはどこででもあることだろう。

「人ごと」 会計課課長の西脇は本官ではなく、一般職員である。彼は「草花博士」として近隣の署まで名が知れているらしい。部下の飯倉が各交番から届けられた遺失物のチェック中に財布からカードを出して落とし主にたどり着けそうだといってきた。そのカードは花屋の会員証で、西脇も同じ花屋の会員であることから自ら確認に行くことにした。財布の中身から落とし主をある程度イメージしていたのだが、花屋の話ではそのイメージとはかけ離れているようだ。627円と花屋の会員証。それが届けられた財布の中身だった。西脇は会員証から落とし主を追うが、持ち主は財布の中身とは似つかわしくないマンションに住む老人だった。一つの花を三つに分けて自分の子供たちの様に育てる。そして更に三つの家から見えるのは老人の住むマンション。
深追い (新潮文庫)
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