意思による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意思に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

暗礁 黒川博行 ***

2008年01月31日 | 本の読後感
建設コンサルタントの二宮のところに、疫病神である二蝶会のヤクザ桑原から「麻雀をしろ」の一言。麻雀では東西急便のふたりが奈良県警交通部の幹部に負けて金を渡すのが目的の麻雀。金になると考えた桑原は気の弱い二宮に代打ちをするよう電話してきた。二宮は金に釣られて出かけて行った。

贈収賄事件の内偵をしていた警察に引っかかり、二宮は刑事の訪問を受けて逮捕されるかもしれないと肝を冷やしている。そんな事はお構いなしの桑原は、二宮に命じて東西急便を調べさせているうちに、ヤクザの罠に嵌められ放火犯の容疑者になってしまう。放火の真犯人を追おうと二宮と桑原は、暴対課の刑事中川から情報を買うことに。浮上したのが、花鍛冶組とそのバックにいる東和桜花連合の大幹部、そして東西急便と奈良県警の癒着、裏金の存在。桑原と刑事でマル暴担当の中川は、シノギになると踏むが、二宮は放火の真相を知る男として、ヤクザから狙われる対象となった。

いつものような展開ですが、やはり警察の腐敗を描写、それを桑原と二宮が味付けしている。黒川ファンなら言われなくても読みたい一冊。
暗礁〈上〉 (幻冬舎文庫)
暗礁〈下〉 (幻冬舎文庫)
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セカンドウインド 川西蘭 ***

2008年01月28日 | 本の読後感
自転車乗りにはお薦めの青春小説。主人公溝口洋は、自転車に風の中に勝手気ままに乗ることを好む少年。中3前のある日、峠道で揃いのウェアに身を包んだロードバイクの一団と出会う。スピードを上げ遠ざかる彼らのを見ながら負けたくないと思った。青春スポーツ小説ですね、続編期待。
セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫)
セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)
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閉鎖病棟 帚木蓬生 ****

2008年01月25日 | 本の読後感
舞台は精神病院、ここにいる人々の多くは身内から厄介者扱いされ、今までの生活から引き離された人。この病院での様子を患者の視点から描いています。後で物語に登場する人のエピソードを紹介、耳が聞こえないため喋る事が出来ない昭八ちゃんは家に火をつけ村から逃げ出した過去がある。昭八ちゃんの「ゲッゲゲゲ」という言葉とそれにあわせたパントマイムを理解するチュウさん。チュウさんは声が頭に響き渡って部屋中を歩き回ったりする。チュウさんと仲のいい秀丸さん、母親を殺し死刑を執行されたが息を吹き返し、死刑は一人につき一度。お前は既に死んだ、戸籍はないと刑務所を出所した。その病院に通院している中三の島崎さん。チュウさんや秀丸さんと仲がよく、病院内のろくろ室で時間を過ごす。とても暴力的で恐ろしがられている重宗、元暴力団員で小指がなく、裁判で精神鑑定が必要だと精神病棟に入院、すぐ暴れ大声を出す。舞台は病院へと移って朝の風景が始まる。朝5時半から響きわたる勤行、ベルが鳴るや否やモップ片手に水掛けを始める男性、薬の副作用で首が捻れた人、蛇口の端から順に水を飲んでいく女性。物語としてはチュウさん脚本の演劇があり、重宗の起こした事件、それを昭八ちゃんが見つけ、急いでチュウさんの所に助けに走り、秀丸さんが動く。そしてチュウさんは退院する。物語を通して作者は優しい筆致で患者目線で描写する。決して明るい話題ばかりではないが、優しい気持ちにさせられるおすすめの一冊。
閉鎖病棟 (新潮文庫)
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シエラザード 浅田次郎 ****

2008年01月22日 | 本の読後感
第二次世界大戦中の昭和20年4月、国産の豪華客船弥勒丸は安導券を有した緑十字船として艤装、シンガポールから北上していた。本来沈むはずのない弥勒丸は途中の台湾沖で米軍潜水艦の魚雷により撃沈。 それから数十年後、台湾人・宋英明に弥勒丸引き上げの話を持ちかけられた町金融の社長・軽部順一。かつての恋人だった新聞記者・久光律子と共に話の裏付けを取り始める現在のストーリーがある。同時に並行して語られるのが、ナホトカで国際赤十字の依頼による連合国軍捕虜宛ての救援物資を積み込む弥勒丸から始まる昭和20年のストーリー。物語は阿波丸事件を元に組み立てられるが、太平洋戦争における大日本帝国陸軍と海軍の思惑を下士官の視点から描写、米海軍の思惑も描いている。また、現代においては恋人に捨てられて数年後に再会、行動を共にすることで、戦時の女性と現代の女性の違いを描いている。浅田次郎なのでうまくて当たり前だが、読んでいて終わらないでほしい、と思える面白さである。浅田ファンならずともお勧め。
シェエラザード〈上〉 (講談社文庫)
シェエラザード〈下〉 (講談社文庫)
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斜影はるかな国 逢坂剛 ***

2008年01月19日 | 本の読後感
スペイン遊学中の花形理絵は殺人事件を目撃する、というか巻き込まれる。酔った同僚に強引に物陰に引きずり込まれてしまい、その同僚は殺し屋風の男に刺殺されてしまう。日本からスペイン内戦時の日本人義勇兵の話題をルポしに来た龍門二郎が主人公、かれは理絵とは知り合いの通信社記者。そしてフリーグルメライターで取材をしにスペインにやって来ていた、龍門のこちらも友人の冠木千夏子、日本人ギタリストの風間新平、殺人事件の捜査に従事する治安警備隊のクレメンテ少佐と国家警察のバルボンティン刑事、謎の殺し屋マタロン、龍門の関連会社の現地法人所長新宅春樹などが登場人物。スペイン内戦時のエピソードやソ連のスパイの話なども絡めて読者をなんとしても惹きつけたいという作者の気持ちが伝わってくるが、今読んでみるとなにか古めかしい手法 を感じる。これは男女関係の表現が古めかしいためだと思った。昭和40年代の男女関係はこのようなものだったのかもしれないが、今の読者にどう写るのだろうか。しかし読み物としては、執念深い不死身の殺し屋がいて、血縁関係が突然判明して、展開が早くどんでん返しもあってと、サスペンスとハードボイルドとでも表現すべきか 、よき昭和時代の冒険小説。
斜影はるかな国 文春文庫 (文春文庫)
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