意思による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意思に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

ウラミズモ奴隷選挙 笙野頼子 **

2019年01月10日 | 本の読後感

本書を読もうとする人には事前に注意事項がある。本書は政治的主張の強い小説であること。また、TPP絶対反対、LGBT権利擁護推進、水道法反対、働く女性絶対応援という方はまずはこれ以降も読み進んでも意味があるが、安倍政権支持、麻生大臣が好き、櫻井よしこの講演会には何度も行った、百田尚樹の愛読者などはハナから近づかないほうがいい。そのうえで本書内容は以下の通り。

最初は状況がまるでつかめないままに我慢して読み進むと徐々に、場所は日本で、それも茨城県付近、時代は50年後だということが分かってくる。TPP条約批准が行われ、水道法も成立して、「グローバル自由貿易」が徹底的に推進された結果として、グローバル企業の植民地になりはてた国「にっほん」があり、その中に、女性が中心となり独立を果たしたウラミズモという国がある。

にっほんは一昔前は一人あたりGDPが世界一、そかしグローバルビジネスを推進するため規制改革を断行した末に国家主権まで失ってしまう。ジェンダーギャップは114位だったのがさらに低下、世界最低レベルになっている。この国に住む人は逃れるすべがある、それは亡命する、もう一つは隣国であるウラミズモに帰属することを選挙で決めるという「ウラミズモ奴隷選挙」、しかし救われるのは女性だけ。しかしこのウラミズモも極端な女性社会となっていて、子供は外国から精子を輸入しての人工授精で女性ばかりで女の子の子育てをする。TPPには参加していないため水も食糧事情も豊か、独立国としての面目は維持できている。しかし国内には監視カメラが溢れ、稀にいる男性はにほんから押し付けられた痴漢犯罪者で、見世物にされる。クラミズモ奴隷選挙とはこうした選択を迫られる究極の選択である。本書内容はここまででだいたいわかる。

極論で主張を述べるという手法は好き嫌いが分かれるだろう。昨今、トランプかサンダーズかの選択を迫られたアメリカ国民、マクロンかルペンの選挙だったフランス、EU離脱か否かを迫られた英国民、TPPありかなしかを迫られた日本、などなど。決めるときには結局は右か左かでありいずれも民主的プロセスを経ての決断なので、どうしようもないが、もう少し他の選択肢を示してほしかった、という国民は多いのではないか。

それでも筆者の政治的主張と危機感はしっかりと伝わる。「セクハラ」という犯罪はないと言った大臣、「認可対象組織の長であるお友達とゴルフするのは許認可権者として如何なものか」と問われて「テニスや将棋なら良いのか」と答えた国のリーダー、弱者切り捨てのグローバル化を推進しようとする官僚、こうした存在に「ハッキリと拒否」という政治的意志を作品に込めていると評価することもできる。しかし本作品は文学としての魅力はない。荒唐無稽な小説というものは存在するが、ストーリーの脈絡が現実世界とのリンクでのみ命脈を保つ、という展開にはついていけない。芥川賞も取った立派な作家さんであり、筆者の政治的主張に賛同できる方には参考文献として紹介できるが、万人には決しておすすめできない。

 ウラミズモ奴隷選挙

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