意志による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意志に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

遺伝子は変えられる シャロン・モアレム ****

2018年03月18日 | 本の読後感

環境が遺伝子を変える、というエピジェネティックス、その具体例を提示しながら、それはどういう意味なのか、実際にはどういう結果をもたらすのかを分かりやすい事例で示す2017年発刊の著書。

例えば、いじめを受けた記憶、こんな後天的なことは遺伝しないはず、と思うがそうでもない。いじめを受けるとその環境に対応するために表れていない遺伝子が発現する。生物がこの世に生まれてきてから数十億年もの間の地球環境変化は、地球規模での壊滅的環境変化から小さな地域での大きな環境変化まで大変な時代を経てきた。生物の中の遺伝子はこうした環境変化に対応するための仕組みを遺伝子に組み込み、次々と発生する変化に対応してきた。それは気温、湿度、天気、気圧、地磁気、競争相手、空気成分、隕石、噴火、地震、津波、雷、それは数限りない環境の変化であった。遺伝子はその経験を遺伝子内に埋め込み、各個体は埋め込まれた遺伝子の中でその時の環境に対応するために必要な数パーセントの遺伝子部分を発現させ対応してきた。遺伝子の中には無駄と思える繰り返しが沢山あり、人間の遺伝子は2万とも言われていて、類人猿との違いは1-2%ともいわれる。残りは何、というのが遺伝子の環境変化対応、という仮説である。

女王バチになる蜂と働きバチのDNAの違いはない。食べるものの成分が一種類違うだけで、ある特定の蜂だけが女王バチになる。これは人間も同じで、同じようなDNAを持った人、例えば一卵性双生児でも、食べ物が違う、生活環境が異なると全く異なる風貌になることもあるし、違う生涯を送ることもある。人が女になるか男として生まれるか、それはXX遺伝子、XY遺伝子の違い、と思ってきたが、遺伝子は変わらなくて生まれてくるプロセスのある胚の発生地点でのゲノムの発現順序が異なることによりもたらされる。女性と男性の違いは実に微妙で、現在LGBTの認識が深まっていることには遺伝的にも深い意味がある。心と体のバランスは微妙なのである。

日本人には半数以上の「乳糖不耐症」がいる。牛乳を飲むとおなかがグルグルするという人がいるという。ある年齢から果物や野菜を多く食べるようになったんだけど、お腹にガスがたまりやすくなった、という方、それは果糖不耐症かもしれない。これらは腸内フローラといわれる腸内細菌のバランスと遺伝子発現の組み合わせで起きている。つまり、遺伝子は体内にいる数兆ともいわれる細菌との共同作業で健康を維持しているのである。ある人には有効な果物と野菜摂取がある人には有効ではない、牛乳を飲むことがある人には害になることもある。ある子供の成長が遅れていると考えた母が成長ホルモンを子供に与えたら、その子が持つ遺伝子が成長ホルモンへのアレルギーを持っていたため死んでしまった、という事例がある。多くの人にとっては良い結果をもたらすからと言って、自分の子供にも有効かどうかは良く調べて見ないとわからないのである。信じて飲んでいるサプリメントも、多くの人には有効なビタミンB6,12もあなたにとっては有害なこともある。本書の内容はここまで。

今はやりの遺伝子検査、360種類の分析が5万円ほどでできるという。医者に代わって診断を下すことはできないが、遺伝子グループの判定や多くの人たちが持つ遺伝子の傾向は分かるというが、それは遺伝子傾向であり個人の判定ではないことに留意する必要がある。検査をしてもらい結果をもらっても、それはあなた個人の判定ではなくて、あなたと同じ遺伝子の組み合わせを持つ場合の傾向を示すだけであり、個別診断ではないということ。アンジェリーナジョリーがDNA診断で乳がん傾向を持つことを診断され乳房切除をして話題になったが、それは8割以上の確率で同様のDNAを持つ人は乳がんになるというリスクへの対応であったということ。著者は人の顔を見るとその人が持つ遺伝子を判定する。目が離れていると美人が多く、くっついていると馬鹿にされることが多い、というのはなぜかという疑問。それも遺伝子的に説明できるという。遺伝子エピジェネティックスの世界の研究はまだまだこれからである。

 

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