意思による楽観のための読書日記

死神の精度 伊坂幸太郎 ***

主人公は死神の千葉。調査部に所属する彼は、日本に出没する時には都道府県を苗字に貰い、1週間かけて割り当て人物の調査を行う。「可」か「見送り」の回答を出し、情報部へ報告。その人物が死に値する場合の調査結果は「可」、ほとんどの場合は「可」、判定された人間は8日目に死ぬ。自分が「可」とした人間がちゃんと死んだかを確認して、彼は自分の世界に戻る。1週間の調査期間に、死神は足しげくCDショップに通い、ミュージックを心ゆくまで満喫する。

この本での調査対象は6名。それぞれ独立した短編。ヤクザの死を扱っかった「死神と藤田」、推理ドラマ風「吹雪に死神」、恋愛物語風「恋愛と死神」、殺人犯の男と旅する「旅路を死神」、老美容師のいる海辺の美容院で死神とさとられ奇妙な要望を受ける「死神対老女」。最後の老女には「人間じゃないんでしょ」と正体を見破られる。浜辺で美容室を営む老女は、「わたしが死ぬのを、見に来たんでしょ」。その老女に、街の若者を四人くらい見つけて、明後日に店へ来るように声をかけて欲しい、とお願いされた。ビジネスライクな「死神」の千葉は、他の死神同様、この世の音楽こそは素晴らしいとしつつも、人の生き死にには興味がなく、死はなにも特別なこととは考えていないので、死者を前にサービスすることも演出することもなく、死すべき人間と語り、そばにいてどうするかを決める。どこかずれていて、妙に生真面目で、それでいて音楽に心から惹かれ、「晴れ」を見た事が数千年ない死神。時折しか人間界に姿をあらわさないために数千年も人間の死に関わりながら、人間の行動や言葉遣いへの理解が今ひとつのところがあり的外れなことを言ったり質問したりして周囲を呆れさせたり、和ませたり、苛立たせたりする。仕事の時にはいつも雨に降られる死神、千葉だが、老女とは心の中に晴れ間を共有する。

エピソードごとに独立していながら、著者の他作に登場している人物と重ね合わせたり、いくらでも続編が作れる小説、というのも珍しい?評判のいい作家だが僕の評価は高くはない。
死神の精度 (文春文庫)

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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