意思による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意思に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

日本の祭り解剖図鑑 久保田裕道 ****

2019年01月12日 | 本の読後感

日本の祭りを意識しながら欧州やアメリカを旅行すると、逆に日本の良さに気がつくことが多い。アメリカやヨーロッパの自然は素晴らしいが、地方による食べ物や文化の違いがバリエーション豊富なのはイタリアやスペイン、アメリカはどこでも均一、日本の特に地方には本当に多くの古い祭りやしきたりが残されていることに気がつく。ローカル文化の原点は「ご近所の底力」ではないかと思う。人との繋がりなしでは農業、林業、漁業は成り立たなかったから、豊作祈願、厄除け祈願、健康祈願などを村人みんなで神様にお願いしたのがお祭り、これは「神に奉る」に由来するという。本書はその日本の祭りの起源と成り立ちを図解して紹介し、併せて日本全国の四季の祭りを解説している。旅行をするときに祭りを意識して訪れると楽しみは倍増するかもしれない。

祭りの歴史は祖霊信仰と来訪神の祝いから説明できるという。原始のまつりの痕跡としては、日時計状の組石として知られる秋田県鹿角のストーンサークルは日時計をかたどっていて、一年のいつ何をするかの目安を表す。縄文時代の土偶の多くは女性で大きな腰、乳房、性器を細かく表現して妊娠と安全出産を願う。古墳は死者を弔い死者に対する祭祀を供養として行った場所である。これらすべてが古代の祭りと関係している。祖霊信仰の神は集落近くの山に宿り、いつもは山にいらしてお願いすると里にある神社まで出てきてくださる。そのお願いのメインは豊作で、田植え、刈り取り、虫よけ、鳥よけなどバリエーションが多い。来訪神は遠方からのマレビト神、沖縄に種子取(タナデュイ)祭は子や孫を連れてくる長者様に豊作を感謝し来年の豊作を祈願する。秋田のナマハゲや甑島のトシドンも来訪神。マレビト信仰に則り、集落内での婚姻を繰り返すといい子が育たないことから、商売などで村を訪れる訪問者と村の女性が婚姻することが進められるケースも有った。

古事記や日本書紀の神話がモチーフになっている祭りには神楽がある。天の岩戸とアメノウズメや倭健命のヤマタノオロチ退治などのエピソードがお祭りになった。出雲大社では旧暦10月10日に全国から集まる神様を稲佐浜でお迎えする「神在祭」があり、夜に焚かれる篝火の前で行われ、神様たちは7日間を出雲で過ごし各地に帰っていく。2017年に世界遺産に認定された宗像大社沖津宮は女人禁制だったが、遺産認定とともに女性だけではなく一般も上陸が禁止されるようになった。

祭りの構造は、祭りにはプロセスがあることを知ることで理解できる。1.神を祀る「神まつり」。最初に柏手を打って神を迎え、お供えをする。2.お供えした食べ物や飲み物を神様が召し上がった後に人間がいただく直会(なおらい)ただの飲み会ではなく神様とともに食事するのがポイント。3.芸能、これは人間同士の二次会で無礼講というのはこれ。村人の中で踊りや歌が上手な人が芸を披露したことから始まり、猿楽、田楽そして能や狂言の原型となった。

祭りは神道とつながっている。神道の根幹はアミニズムで山自体を神とするのは大神神社、神社には本殿はなく三輪山そのものがご神体である。境内には三鳥居という鳥居がみっつ合体したものがある。春日大社の神はタケミカヅチ、フツヌシ、アメノコヤネ、ヒメカミの総称である春日神で鹿に乗って奈良に来たとされる。東大寺の境内には鎮守社が3つあり修二会の初日と終了後にこの社に参拝する。このように仏教伝来以降は神仏が習合して一体になってきたため祭りにも両方が取り入れられるケースも有る。修験道は仏教の修行が神道と混ざり合って生まれた日本独自の宗教。山伏は信仰を広めるために身につけた力を見せて信仰を広めたが、明治維新の廃仏毀釈で廃止された。しかし各地の祭りには修験道の影響を受けたものも多い。奈良の吉野で7月7日に行われる金峯山寺の蛙跳びでは、カエルに扮した男性が山伏で行いの悪い人間を改心させるという。山口の周南市の三作神楽では三宝荒神の舞という修験者によるアクロバットが披露される。

祭りの順序は 1.修祓(しゅばつ):神職が祓詞を唱え幣束を振って参加者を清める。 2.開扉と献饌(けんせん):本堂の扉を開き神様にお供えをする。 3.祝詞:お祭りの趣旨を神様にお伝えする。 4.神楽:神様を歓迎する。 5.玉串奉奠:榊などを神前に供え神様にお迎えする側の心持ちをお伝えする。 6.撤饌(てっせん)と閉扉:神饌を撤収して扉を閉める。

祭りのアイテム 1.神輿:神様が氏子地域を回り、離れた場所に設けられた「御旅所」まで移動するときに乗る乗り物が神輿。荒々しく揺さぶると喜ぶ神様には、大きく神輿を揺らす。泥まみれにする上尾のどろいんきょ祭り、火に入れる石川宇出津の宇出津あばれ祭り、宮城の鹽竈神社では年に三回神輿を出す荒神輿が開催される。2.山車:山・鉾・屋台のバリエーションが有る。神様がそこまで降りてくるのが山と鉾、代表は京都の祇園祭。屋台は神様を囃す楽団が乗り込む乗り物。見て楽しむことに特化した山車が青森三社大祭の山車。四日市の鳥出神社の鯨船行事は鯨船の山車でクジラ漁の様子を演じる。だんじり祭りは屋台、大阪や愛媛西条のだんじりは大規模。八代の妙見宮祭礼の笠鉾も神様の降臨装置。八戸のおがみ神社、長者新羅神社、八戸三社大祭などでは歌舞伎や民謡の場面を題材にした壮麗な山車が27基も練り歩く仕掛けを楽しむ山車。

江戸時代までは祭りは旧暦で行われたが、明治維新以降は太陽暦で実施されるようになった。それでも新政府に反抗的だった南九州や沖縄では今でも旧暦で行われる祭りが多い。十五夜は旧暦15日でなければ満月にならないので今でも旧暦だ。長崎のペーロンや沖縄のハーリーは中国の華中、華南のドラゴンボート(龍船)が伝わったものとされる。小笠原の南洋踊りは戦前にサイパン諸島などから取り入れられた。獅子舞も中国の獅子舞が日本で独自に変化を遂げたもの。獅子舞はマレーシアやシンガポール、ベトナムにもある。

各地に残る祭りの保存は各地方の人々の協力で残っている。なんとか残してほしいし、自分ができるのは現地に見に行くことかと思う。全国の祭りカレンダーを保存しておいて、旅行のときには参考にしたい。

日本の祭り解剖図鑑

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