意思による楽観のための読書日記

龍の哭く街 今野敏 **

新宿を舞台にした日本人ヤクザと中国人マフィアのいざこざに、元入国管理局員の氷室が巻き込まれる。氷室は新宿のバーでバーテンダーをしているが、入局管理官時代に中国人の兄弟をリンチにして一人を殺してしまったことがあり、それが原因となって退職、現在はそのことをとても反省している。

新宿ではヤクザ同士の縄張り争いと同時に新興の中国人勢力がしのぎを削っていた。90年代まではヤクザ勢力に中国人たちはかなわなかったが、徐々に力をつけてきた彼らは独自に防衛をするようになってきた。中国人たちが経営する屋台のショバ代をめぐってヤクザとの闘いがあり、今までは逃げ出すことで対抗していた中国人たちは今は力ではねつけるようになってきた。

そんな時、氷室の昔の仲間で、一緒にリンチをした男が訪ねてきた。残りの2人の仲間が連続して死んだ、どうも復讐されているのではないかというのである。そしてその男もバーからの帰り道に電車にはねられ死亡、氷室は命が狙われていることを知る。一緒に暮らす19歳の麻美はそんな氷室が心配でならない。氷室は昔、台湾にいた頃に中国語と中国拳法を身についけていたのだが、暴力や武器に素手で対抗できるとは考えていなかった。

3人を殺したのは、昔リンチをして殺してしまった兄弟の片割れ、その彼が日本に戻ってきているというのであった。

風水、中国拳法、中国経済の発展、中国人同士のつながりと日本人への恨みなどが背景に描かれる。ストーリーに描かれるよくある暴力的な抗争の後ろにある時代背景や文化的軋轢が面白いが、この筆者にありがちな尻すぼみの展開に星は2つである。


読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事