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意思による楽観のための読書日記

浄瑠璃を読もう、もう少し浄瑠璃を読もう 橋本治 ***

大学生の時に、谷崎潤一郎の「蓼食う虫」を読んで、主人公たちが淡路島に人形浄瑠璃を見に行くという場面があった。ずっとあとになって、淡路島に行く機会があり、人形浄瑠璃をやっているという浄瑠璃資料館を見に行って、人形や講演資料が展示されていて五〇〇年もの歴史があることを知り、これがあの時に読んだ人形浄瑠璃か、と感動したことを覚えている。

人形芝居の部分が文楽、音曲と語りが浄瑠璃、という構成。人形によるお芝居の部分、浄瑠璃により語られる部分、三味線などの音楽演奏部分とそれぞれのルーツと歴史がある。江戸時代に主に大坂で、近松門左衛門がシナリオを書き、それを竹本義太夫が演じて好評を博し、各種浄瑠璃ものシリーズが人気となったので、義太夫節という人もいるが、清元や常磐津という浄瑠璃節もあるので、微妙にジャンルがずれている、というのが正確なところ。歌舞伎でも多く取り上げられるテーマにもなっている。人形浄瑠璃といえば、それは大阪の国立文楽劇場で上演されている、といっても間違いではないが、もとは大衆演芸である。

大阪キタで飲んでいると、ふと「この先お初天神」という札を目にすることがある。ここがあの曽根崎心中の舞台になったあたりなのかと思うが、飲んでいるので大概はそれっきり。この解説を読むと、堂島が新地と呼ばれていた頃は、曽根崎には天神ノ森があって、堂島で遊女をしていたお初は、手代の徳兵衛と、蜆川と呼ばれたこの曽根崎あたりの、寂しい場所にわざわざ来て心中を図ったということ。その後、曽根崎にも花街ができたが、明治末に焼失、曽根崎の遊女は飛田に移ったという。

曽根崎心中のお話というのは、手代の徳兵衛と遊郭のお初との心中物語である。醤油屋の手代徳兵衛が遊郭のお初に惚れる。しかし醤油屋の主人は甥でもある徳兵衛を見込んでいて、娘と結婚させようと、徳兵衛の継母に、支度金を支払い、勝手に結婚の手はずをしてしまう。お初と一緒になりたい徳兵衛は、結婚できないと断るが、主人は支度金を返せと徳兵衛に迫る。徳兵衛は金を継母から取り戻すのに成功するが、その金を友人の久兵衛に3日で返す、と言う約束で貸してしまう。主人に金を返せば、結婚話はなくなり、お初と一緒になれるのに、貸した相手の九平次は金を返さないばかりか、返済を迫る徳兵衛を滅多打ちにしてしまう。これで心が折れてしまった徳兵衛は、三十三箇所参りの途中で偶然であったお初と心中してしまう、というストーリー。なぜ死んでしまうのか、そこが大きな問題だと思うが、美しい話として語られるので、心中が相次ぎ、江戸幕府は心中ものの上演を禁じたくらい、大衆に受けた。

こうした演目を一つづつ紹介していこうというのが本書。
『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』『菅原伝授手習鑑』という三大演目に加えて、『本朝廿四孝』『ひらかな盛衰記』『国性爺合戦』『冥途の飛脚』『妹背山婦女庭訓』を紹介する。

その続編「もう少し浄瑠璃を読もう」では、『小栗判官』『出世景清』 『曾根崎心中』『一谷嫩軍記』『夏祭浪花鑑』『双蝶々曲輪日記』『摂州合邦辻』 を紹介する。

日本人なら、こうした有名どころ、一つや二つは、ストーリーを語れてもいい。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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