意思による楽観主義のための読書日記

面白きこともなき世を面白くするのは楽観力、意思に力を与えるのが良い本 *****必読****推奨**閑なれば*ムダ 

人体常在菌のはなし 青木皐 ***

2018年03月08日 | 本の読後感

常在菌とは人の体に共生している細菌のこと。そもそも生命の誕生は35億年前、古細菌、真正細菌が誕生し、その後菌類、植物、動物という順で誕生している。つまり、人の先祖であるすべての動物は細菌が支配している世界の中に割り込むように誕生した。人の先祖も、生活環境の中に細菌がすでに存在している中に生まれているので、細菌の立場に立って考えると、新たに登場してきた動物の体という環境内で如何に勢力を拡大するかという戦略を考えることになる。つまり細菌勢力拡大の道具として動物の体を考えると、皮膚、内臓、顔、すべてが生息環境となる。

人が他の人と一緒に暮らすときにも細菌環境を共有することになる。人の息や唾液、排泄物にも細菌は生きているので喫茶店でお茶を飲む、一緒に食事をする、というデートは最初の細菌環境の共有ということになる。握手をする、抱擁する、口づけする、その後親密度が増してくるとともにお互いの皮膚の上にいる表皮ブドウ球菌、アクネ菌、口腔常在菌、性器常在菌の交換と進み、一緒に暮らすようになると、おならに含まれる腸内細菌の交換にまで発展する。誰もいない部屋にでも「あの人の気配がする」というのはこういうことらしい。こうした常在菌は人の栄養の消化吸収だけでなく、健康維持、美容、肥満防止、平静な精神状態の維持、そして老化にまで影響を及ぼす。

常在菌は腸内に100種類、100兆個いるといわれ、重さは1-1.5Kg。口腔内に100億個、皮膚に1兆個、人間の細胞が60兆個なので、個数でいえば常在菌の方が多いといえる。牛乳や卵などに過剰に反応する食品アレルギーや消化吸収能力でも、人種(住んでいる環境や食生活の違い)によるアレルギーの有無や消化能力の違いが知られており、これらは腸内細菌環境の違いに起因する。免疫の仕組みには口から食べるものは安全とみなす「経口免疫寛容」という仕組みがある。この仕組みを制御する存在が腸内細菌。花粉症や食物アレルギーは腸内細菌のバランスが悪くなるために起きると考えられている。

肌の再生や健康を守るためにも常在菌は重要な働きをしている。細菌勢力は早い者勝ちなので、表皮ブドウ球菌、アクネ菌は病原性を持つ黄色ブドウ球菌やカビなどの拡大を防ぐ機能も持っており、むやみに手を洗い抗菌処理を施しすぎるとかえって肌の健康を損なう。怪我をしたときに傷の部位を殺菌しすぎると治りが悪くなるのは常在菌まで殺してしまうのが原因。紫外線は常在菌の敵であり、シミ、しわ、皮膚がんなどを誘発する。しかし紫外線を防ぐために常在菌まで駆逐するような界面活性剤入りの液剤を塗布すると逆効果になる。日傘、帽子、衣服による紫外線防止と十分な睡眠に努めることが重要である。腸内常在菌の中でもビフィズス菌が合成するビタミンB6と葉酸は腸管を通して皮膚の内部に到達して傷んだ細胞に働きかけ分裂を促す。こうした体の内部からの皮膚対策も重要で、肌のお手入れに腸内細菌の働きなしには考えられない。発汗も皮膚常在菌にとって重要で、冷房もない南国に暮らす人たちのお肌はすべすべである。

都会で病気がちになった人が、田舎で空気のいいところで健康を取り戻す、というのは、土の中にいる細菌を空気とともに吸い込んで腸内細菌環境を取り戻すことが大きいという。さらにストレスがないの睡眠が十分とれる、体を動かすので汗をかく、食物繊維が多い自然の野菜を食べられる、すべてが常在菌環境を整えることにつながる。都会の生活よりも田舎の生活、つまり昔の自然環境に近い生活環境が人の健康な暮らしにとっては必要だということ。本書の内容はここまで。

退職後に田舎暮らしをしたい、というのは本能的に健康な暮らしをしたいという人間的に自然な欲望であった。清潔、衛生、抗菌などにより感染症は減って、こうした原因で病気になる可能性は減少したが、それと引き換えに免疫力が低下し、アレルギー反応で苦しむ人が増えた。過剰な清潔生活や不用意な抗生物質による感染症対応などを考え直す時が来ているのかもしれない。

人体常在菌のはなし ―美人は菌でつくられる (集英社新書)

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