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意思による楽観のための読書日記

サイレント・ブルー 樋口明雄 ***

水資源は有限だ、というテーマ。秋津俊介と妻の真琴は八ヶ岳山麓にある甲斐大泉駅からほど近い「カナディアン・ログ・ビレッジ」に5年前にログハウスを建て引っ越してきた。今は夫婦で自然食を中心としたカフェを開いていて繁盛している。一人息子の翔太は小学生、地元の小学校に通う。

水はビレッジに暮らす七軒が共同で水源を確保して簡易水道を引いている。管理は、管理会社の「八ヶ岳ホームズ」が全面的にサポートしてくれていて、年間使用料を支払っている。ある日、水が出なくなる。原因が分からず管理会社に依頼すると、水道工事担当者が来て、地下の水脈が下がったのかも知れない、として、地下に下がるポンプの位置を調整し、水は出るようになるが、数日後再び止まる。

今度は、水脈自体が感知できないほどに下がっているのではないかという説明。原因は、どうも近所で新たに設置された大手水販売メーカーのポンプではないかという話になり、秋津はメーカーを訪問する。担当者は、水脈は地下にあり、それが因果関係があるのかどうかが分かりませんよね、と説明。訴訟になっても秋津に勝ち目はなさそうである。

秋津は管理会社と相談して、市が管理する水道をビレッジまで引くこととした。費用は一件あたり数十万円もするが、水がなくては生活できないため、背に腹は代えられない。

秋津たちが暮らす八ヶ岳市では市長選挙が始まった。現職市長は水メーカーともパイプがあり、盤石に見えるが、そこに東京からタレント候補の門倉が立候補を表明する。門倉は、秋津たちの水資源に対する要望を聞いて、水は限りある資源、という主張を公約に織り込むことを約束、秋津は夫婦で門倉を応援する。

真琴は門倉に心酔しているようでWEBサイトやブログなども作って力が入る。門倉が現職を追い上げる。選挙のさなか、秋津は門倉の良くない噂を耳にした。真相を糺すため、門倉に直接問い質す。門倉も外国資本の水メーカーと裏で手を組んでいるという内容。それは本当だった。門倉は当選したら、すべての水メーカーから一定量の水利用料を市に支払ってもらいたいと考えているという。秋津は落胆するが、選挙も終盤、応援している妻の邪魔はできないと考える。結果的に、現職が当選。

秋津から見ればどちらが当選しても、水資源は守られないではないかと考える。そして、市が管理する水道までが止まってしまう事態になる。水メーカーが水を汲み上げた結果、市が管理する水源までもが水位が下がった。市は水メーカーと協議、組み上げ量に制限を設けることにして、水位はもとに戻る。

作者が提起する問題は根深い。水資源は日本では無料なので、海外資本が水源地の土地を買い漁っている。林業で栄えてきた地域でも今はビジネス採算が取れないので、山の森は手入れされずに放置されている。水源地や地下の水脈は目に見えないので、組み上げた水により元からある水源が枯れても因果関係が立証できないケースが多く、強い資本が勝ち残る結果になる。法律整備と、林業対応が必要だという主張である。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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