意思による楽観のための読書日記

梟の城 司馬遼太郎 ***

伊賀忍者の葛籠(つづら)重蔵、風間五平、木さる、小萩、忍者の男女が情を通じながら命じられた仕事のためにお互いを殺し合う、というお話しだ。天正9年、織田信長によって攻め滅ぼされた伊賀の葛篭重蔵は、信長に取って代わった秀吉を親の敵と考えている。忍術の師匠である下柘植次郎左衛門は重蔵に秀吉暗殺を命じる。実は次郎左衛門に秀吉暗殺を命じたのは堺の豪商今井宗久、暗躍するのは背後の徳川家康。宗久からの使いは小萩という女忍者、宗久の養女であるというが、もとは武士の娘であった。重蔵と小萩は互いに惹かれ合う。重蔵の手下のもう一人の女忍者木さる、そして黒阿弥_は、重蔵とともに秀吉暗殺を企てる。次郎左衛門のもう一人の弟子風間五平は、伊賀の掟を破り伊賀を飛び出して京都奉行前田玄以に仕官し、彼は秀吉暗殺を企む重蔵を捕らえることで、玄以に取り立てられると約束をしていた。甲賀の忍者摩利支天洞玄も、玄以に雇われ重蔵を殺そうと狙っていた。しかし重蔵は洞玄を倒し、一人で伏見城に乗り込む。重蔵が秀吉と対面した時、思ったよりも老いぼれていた太閤を見て命乞いを聞き入れてしまう。五平も重蔵を追って伏見城に侵入していたが、城の警備に捕らえられる。石川五右衛門と名乗った五平は処刑された。その後、重蔵は小萩とともに山中でひっそりと暮らした。

これだけの話である。1960年の作品であり、忍者もののはしりなのであろう。梟とは忍びの者を指す言葉、昼は人の目に付かず虚に住む、他のものとは群れず一人で生きる、という存在。その梟が実は恋する相手を求めていたというストーリーなのだ。映画にもなったし、ストーリーを知っている方も多いと思うが、司馬遼太郎のその後の作品を知る人にとっては異色の作品とも感じられる。つまり、歴史観があまり感じられないという点。時代設定はあるし、秀吉の朝鮮進出は批判的に描かれている、甲賀伊賀忍者の哀れな行く末についても記述があるが、このお話しで世の中がどう変わった、世の中の趨勢が登場人物の生き方にどのような影響を与えたか、という接点は少ない。ただ、忍者である、という出自が生き方を左右している。同時代にポピュラーだった白戸三平のカムイに近いものがあるのかもしれない。

梟の城 (新潮文庫)

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