意思による楽観のための読書日記

小暗い森(上) 加賀乙彦 ***

永遠の都の第二部にあたる。ダンテの神曲の一節。「七十の人の命の中程にして、正しき道を失えし我は、とある小暗き森の中に、我自らを見出でき。」この本のタイトルである。

「子供部屋」では主人公の小暮悠太が生まれたときから記憶をたどって昭和17年4月18日の東京発空襲までの記憶が語られる。両親である悠次、初江、弟の駿次、研三、末の妹央子、親戚で母初江の妹夏江と夏江と結婚する菊池透、悠次の姉脇美津とその夫脇礼助、その子敬助、晋助、風間振一郎と藤江夫妻、その娘たちの百合子、松子、梅子、桜子、そして学校の友達である松山哲雄、外交官の息子で病弱の吉野牧人の話などが中心。悠太が抱いた富士千束への幼い日の思いも描かれる。祖父時田利平が経営する病院の複雑な人間関係も悠太の視点から紹介されている。

「涙の谷」では、もう一度昭和15年にさかのぼり時田利平や悠次、初江、夏江が語り始める。小暮家の女中なみやは悠次の子を妊娠、おなかが目立って悠次の子であることを白状する。堕胎を拒否するがある日一日中歌を歌って働きづめに働いて流産する。時田史郎は30歳になり、父の利平に勧められた縁談を受ける。相手は大学教授の塚原の娘薫、英語が堪能、というふれこみである。央子は3歳の頃から晋助のすすめでバイオリンを習い始める。先生は富士千束の母である。夏江はセツルメント時代に知り合って、負傷兵として帰還、入院していた人菊池透と再会そして結婚した。時田利平の病院には前妻とその前の妻の子である上野平吉を病院の事務長にすえ、間島五郎を武蔵新田にある別邸の使用人として使っている。利平の新しい妻いとは若いため、病院内での人間関係が噂になる。上野平吉との関係を利平に疑われるが知らんぷりを決め込んでいる。利平は睡眠不足になりモルヒネ中毒になってしまう。

時代としては満州事変からノモンハン、日中戦争へと戦争の時代である。ものが不足し、昔は時田、脇、風間、小暮の各家族が一緒に出かけた夏の逗子や葉山のことを初江も悠太も懐かしく思い出す。


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