しかし、麓の村でもヒグマを撃ったものなどいない。結局、警察に助けを呼ぶことになる。警察官、村人たち総勢200名からなる大勢で、ヒグマがおりてくる可能性の高い橋のたもとで待ち伏せる。ヒグマが来た時に銃を発射できたのはほんの一部、半分の銃からは玉さえ発射されなかった。
クマをやっつけようと、依頼した相手はアイヌ人でヒグマを200頭以上も撃ち殺したという60にもなる老人、普段は乱暴者で手に負えないと近づかない人間だったが、この場合には彼にしか頼ることができないと50円もの大金を区長がはたいて、銃を与え羆狩りに連れ出した。200名の村人たちは一緒に山に入るが、老狩人は同一行動を取らなかった。人間の匂いをヒグマは感じて討ち取れないというのである。
結局、200名の村人たちは何もできず、380Kgを超える巨大ヒグマを仕留めたのは老狩人であった。その老人でさえ、仕留めた時には顔面蒼白、ヒグマは恐ろしい動物だった。
実際に起きた羆による人間襲撃事件のドキュメンタリーであり、開拓民の暮らしや熊による人間襲撃の恐ろしさ、そのあとの開拓民や村人たちの恐怖の夜、そして羆狩りの恐怖の描写は迫真、さすがの吉村昭である。
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