意思による楽観のための読書日記

羆嵐 吉村昭 ***

大正時代、北海道開拓時代に天塩山脈の沢を入り込んだ開拓村に暮らしていたのは、開拓民の数家族、ある冬の日に、100貫目もあるヒグマがを襲った。2日に渡るヒグマの襲撃で村人の女性と子供たち6人が犠牲になった。身を守る銃を持っているのは数名、しかし実際にクマを、それも巨大なヒグマを撃った経験などない開拓民たちは、を上げて麓の村まで逃げ降りてきた。

しかし、麓の村でもヒグマを撃ったものなどいない。結局、警察に助けを呼ぶことになる。警察官、村人たち総勢200名からなる大勢で、ヒグマがおりてくる可能性の高い橋のたもとで待ち伏せる。ヒグマが来た時に銃を発射できたのはほんの一部、半分の銃からは玉さえ発射されなかった。

クマをやっつけようと、依頼した相手はアイヌ人でヒグマを200頭以上も撃ち殺したという60にもなる老人、普段は乱暴者で手に負えないと近づかない人間だったが、この場合には彼にしか頼ることができないと50円もの大金を区長がはたいて、銃を与え羆狩りに連れ出した。200名の村人たちは一緒に山に入るが、老狩人は同一行動を取らなかった。人間の匂いをヒグマは感じて討ち取れないというのである。

結局、200名の村人たちは何もできず、380Kgを超える巨大ヒグマを仕留めたのは老狩人であった。その老人でさえ、仕留めた時には顔面蒼白、ヒグマは恐ろしい動物だった。

実際に起きた羆による人間襲撃事件のドキュメンタリーであり、開拓民の暮らしや熊による人間襲撃の恐ろしさ、そのあとの開拓民や村人たちの恐怖の夜、そして羆狩りの恐怖の描写は迫真、さすがの吉村昭である。


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