意思による楽観のための読書日記

ニッポン仰天日記 ゴードン・スミス著 荒俣宏訳 *****

1900年を挟んで日本を訪れた英国人男性の写真と絵がふんだんに挿入された日記。イザベラ・バード、ミットフォード、アーネストサトウ、いすれの日本日記も面白かったが、この本の価値は挿絵と写真である。手元においておいて時々パラパラと読み返したい本である。

ゴードン・スミス(GS)は英国の鉱山王を父に持つ富豪、結婚して子をもうけるが妻とは不和で離婚、その後1898年に日本を訪問、その素朴な文化と自然を愛する。GSもバードやサトウの日本旅行記を読んで日本に来ているようだ。しかし日本の人々と文化にいちいち驚いている。日本人女性の美しさと男性の醜さはバードやサトウも指摘しているがGSも同じ感想を持った。男女とも混浴や自宅前路上での行水、裸というものに関して恥ずかしいと感じない、このことに驚いている。

女性の髪型にも驚嘆している。丸髷、島田髷、櫛巻、結綿などである。毎日これらを結い上げているのかと。既婚夫人は銀杏返し、丸髷であり未婚の娘は桃割れ、結綿だが、GSにはその区別がつかない。帯の結び方にも驚いている、複雑で美しいと。

来日早々、日本における英国人社会での交流があったようである。当時の英国日本公使アーネストサトウから公使館での晩餐会に招待されたりしている。英国公使館にあった盆栽に目を奪われたりもしている。日本人が礼儀正しいことに興味を示しているが、あくまで東洋の珍しい人々をみる文明人たる英国人としての接し方である。しかしGSに横柄さはない。

正月をホテルで過ごしているGSが突然の獅子舞に驚く。悪魔のような太鼓の音とダンサーによる訳の分からないパフォーマンスが、部屋の中に乱入してきたのだ。ホテルの支配人がアレンジしたのだという。

GSは泉岳寺を訪れ大石内蔵助と47士の物語を聞く。彼らが果たした仇討、そして切腹に関して、「そんなことができるのが心底羨ましいと思う」と書いている。なにが羨ましかったのだろうか。芝公園にできた紅葉館も訪問、当時名流紳士のための社交の場として建てられた物。10セント払えば入れる、ということで高いのか安いのかよくわからない。家屋は大きく広い、そして清潔であり、娘たちに完璧に接待される、といい、一見何も見るべきものはないが、実は細部にいたるまで非常に清潔で芸術的、ブリテン島は本当に文明化されているのか、と自問自答するのである。

GSは日本で世話になった女性たちについて多くの記述をしているし、写真も撮っている。実在の人物であり、貴重な資料である。当時の日本で写真がとれた人は多くはなかったであろうから、読者の中には祖先が映っている人もいるであろう、出版社は読者にそうした申し出を呼びかけている。

GSは日本で始めて体験する地震についても記述しているが、なんといってもさすがは博物学者である、動物、植物、魚類、貝類などの記述と絵図が面白い。お雇いの梅芳という日本画家に多くの動植物や景色などを描かせた。日本で捕らえた珍しい動植物は契約している大英博物館に送っているのだ。そして日本の民話も聞いたものをまとめている。小泉八雲や柳田国男の前にもこうしたことをしていた英国人がいたのである。GSの場合は素人であり、お気楽な娯楽の範囲をちょっと出るくらいの話だったのかもしれないが、明治政府はこうしたGSの働きに勲四等旭日小綬章を与えた。

仰天日記、荒俣宏のネーミングであろうが、本当に仰天するほど面白い。3800円と安くはないが、bookoffで出物を探してでも読んで欲しい一冊である。

ゴードン・スミスのニッポン仰天日記
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