【日の当たる小枝の先に蕾かな】酒上乃不埒
菜の花の和え物が艶やかな季節になった。
梅の朱が、桜の淡い朱にとって変わる。
また一つ歳を重ねた。
ふわりと湯気の立つ焼いた空豆。
殻ごと焼き上げるので、旬の甘みをそのまま体に吸収できる。
中の皮も柔らかい。
白胡麻味噌のソースがまた大地の土を感じさせてくれる。
空が徐々に低くなる秋、身も心も凍る冬は大嫌い。
だが、こうした旬の味覚を口にできる幸せは和食の国ならでは。
話題変わって。
気になっていた映画「グリーンブック」を観た。
ヴィゴ・モーテンセン演じるイタリア系移民のトニーの熱演がいい。
マハーシャラ・アリの気品がこの作品を質の高いものにしている。
脇役陣も多彩で、久しぶりに良心が歓喜でき、堪能できた。
かつて、雑誌の取材でオクラホマ州など中南部を旅したことがある。
組み立て工場は黒人たち、精密機械工場は白人たち。
もちろん、レストランも黒人用、白人御用達と当たり前のように分かれていた。
一部のエリートを除いて、支配階級を白人たちが牛耳っている。
それもわずか20年前のこと。
そして、現在も、トランプが唾を飛ばして、国境に壁を作っている国。
黄色人種であるわしは、白人のレストランに招待されたが、果たしてその本心やいかに。
そんなことを思い出した休日。
単純な黒白だけでなく、ありとあらゆる場面に差別は蔓延っている。
かくいう自分の中に、学歴、男女、運動などなどそうした意識が眠っていることを忘れてはなるまい。
人間とは愚かなる生き物。
だから、書物を読み、映画を観て、絶えず学ばねばいけないのよ。
楽しく、真面目に。
さあて、次週は花見の句会。
旧交を温めて、江戸の華を楽しもうぞ。