週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

担当の夜。

2014年11月15日 | ☆文学のこと☆



 いやぁ、参った。

 マイッタというのはいい意味で、久しぶりに面白い本に出会った。

 新聞の小さな書評、つい気になって読んでみたのだ。 

 おもて表紙の可愛らしい絵に騙されちゃいけない。バブル期から失われた20年まで出版業界にどっぷりと浸かった漫画編集者と漫画家との凄まじいまでの生き様が詰まっている。

 著者は1960年生まれとあるから、バブル経済のど真ん中に編集者として鮮度のいい時期を過ごしていたことになる。

 その赤裸裸は、少しあとにこの業界へ入った私にも微かに体感できた感がある。いわゆる出版にも旬というものがあるとするなら、その片鱗を先輩たちにみる眼差しは同種のように感じた。

 異色の才能を信じて止まない若き漫画家との葛藤を書いた【担当の夜】

 とうに盛りを過ぎた大物漫画家とのアルコール漬けの日々【担当の朝】

 デビュー前から前借り専門自称無頼派の青年漫画家との蜜月を描いた【最後の担当】

 そして、過ぎし日の酒と薔薇の日々を懐古する【俺酒】

 この四編からなる。

  漫画週刊誌と月刊専門雑誌の私とは微妙に(大きくか!?)違うが、酒臭いどぶ川の同じ流れにはいたはずだ。

 あの頃は味も感じない酒を飲みに、毎晩銀座、新宿、四谷、六本木、西の新地、歴史的ドブ板街と夜な夜な繰り出した。主人公高野も、四ッ谷荒木町、ゴールデン街、二丁目に出没する。

 金とアルコールにまみれた編集者生活、あの狂気で侠気な時代の残渣は意外に長かった。

 

 全国の読者への大いなる勘違いの優越に支えられた絶対的な服従、取材相手、執筆者、絵描き、デザイナー、カメラマン、ありとあらゆるクリエーター、広告代理店、それら介在するモノに、背中を押され、ときに蹴飛ばされ、拝み、土下座し、さらには罵倒し、それでも締め切りだけは守ってきた。自分が面白いと信じれば、お上(上司)にも平気で逆い、クライアントに食ってかかって説得した。そんな時代がたしかにあったのだ。

 熱い時代を思い出させてくれた、担当の夜。

 出版界が隆盛であった頃の裏の世界をちょっぴり覗ける。

 これは買いですわ。

 出身大学の色眼鏡で見るつもりはないが、上智大出の関純二。元青年漫画誌編集長との肩書きだが、謙遜するその文学の博識と素養、言葉遣いのセンスが半端ない。

 手鎖上等、主人公高野の生き様に惚れた。最後の俺酒にいたって、おそらく私小説の類いに入る。

 判る人には判るこのシュールで真摯なオモロさ。

 おいらのツボにハマっちまったよ。

【酒漬けの年末進行灯り恋い】哲露




 世間は酉の市の季節。

 浅草龍泉町の鷲神社は江戸から一葉を経ての盛大だが、巣鴨の大鳥神社は素朴の親近がある。

 ちょうどいい大きさは、わが村の市だ、と和ませてくれるんだね。



 それにしても、この年末の糞忙しい時を狙っての選挙だよ。

 肝心要の誰もが投票なんかいかねえんだろうな。

 誰のための政か。いつの時代も権力を持つと、自分だけの正義を振りかざし、汚いものを隠したい、金儲けしたいってのは変わらない。

 威勢のいい柏手に、偽政者どもも心洗われるがいい。



 龍泉も、巣鴨も、新宿も、各地の二の酉は、22日(土)でござんす。

 お見逃しないように