今Sも新馬戦が始まり、生産はすっかり落ち着いた時期に差し掛かっているところで、こんなテーマをもってきてもどうかとは思うけど…暇つぶしに読んでみてください。
先の掲載記事「牝系一族別重賞勝ち馬頭数 in など。」を筆頭に、当ブログで繁殖牝馬にまつわる話題をよく目にするので書いてみようと思い立ったことを付け加えておきます。
「振り返りなど。」執筆者には本当に頭が下がります。。
さて、このゲームでの生産において最も重要なファクターは何かと問われたとき、皆さんは何を想像するだろうか?私なら迷わず「母の能力」と答える。長くプレイしている方もそれぞれ配合については一家言あるだろうが、母馬の能力の重要性については共通の認識ではないかと思う。
現実の生産界でそんな「母の能力」に着目し、競走馬の遺伝に関するメカニズムを解明しようとした人物がいた。今回はそんな「母の能力」についてのお話――。
1859年にダーウィンが発表した『種の起源』は世界中の様々な分野に影響を与えた。彼の提唱する進化思想や自然淘汰説は広く受け入れられ、従来の学説を覆したばかりでなく、宗教や哲学にも影響を与えたほどだった。
そして、それはサラブレッド生産の世界も例外ではなく、ダーウィンに感化されてにわかに血統研究ブームが沸き起こったのだ。
この頃、多くの学者、研究者、愛好家たちが研究の対象としたのが『ジェネラル・スタッド・ブック』だった。
それまでにもサラブレッドの血統研究はなされていたが、そのほとんどが父系に注目したものばかりだった。しかし、従来のそれとは違い、サラブレッドの母系ファミリーを解析しようとするアプローチが生まれたのだ。
この分野において競馬史に名を残したのがオーストラリアのブルース・ロウ(Bruce Lowe)という人物だった。
彼は当時のイギリス3大クラシックだったダービー、セントレジャー、オークスの第1回からの優勝馬をピックアップし、その母系の直系を母、祖母、曽祖母といった形で遡って調べていった。
すると、3大クラシックの優勝馬の母は、『ジェネラル・スタッド・ブック』第1巻に載る根幹牝馬のうち約50頭に辿り着いた。
ブルース・ロウはこれを更に根幹牝馬ごとに分類整理し、そこから広がった母系を「ファミリー」と名付けた。
そして、3大クラシック優勝馬の数が多い順に1~43までの番号を付けていった。
これが、いわゆる「ファミリーナンバー」と呼ばれるものだ。
彼はこの43系統まで分類した上で、成績が振るわない9系統を除外し、残る34系統を更につきつめていった。
すると、1~5号族までに3大クラシックの優勝馬が目立った。そこで、これらを「競走族」(ランニングファミリー)とした。
また、優秀な種牡馬を輩出している3,8,11,12,14号族を「種牡馬族」(サイヤーファミリー)とし、それ以外を「局外族」(アウトサイドファミリー)とした。
これが、いわゆるブルース・ロウの「フィギュアシステム」だ。
彼はこの「競走族」、「種牡馬族」、「局外族」を巧みに構築することによって独自の血統理論を展開していった。
そして、著書『フィギュアシステムによる競走馬の生産』の中で当時のサラブレッドについて必ずしも競走能力の優秀さと種牡馬能力の優秀さが相関関係にないことを明らかにした。
ただし、後年遺伝学的見地からそれらはほとんど否定されているが、彼が提唱した「競走能力に優れた牝系のファミリーに、優秀な種牡馬を交配すると優秀な産駒が生まれる」ことについて例を引きながら論じた功績は大きかったと言える。
確かに、ブルース・ロウが創出した「競走族」や「種牡馬族」といった概念は、現在ではほとんど重要視されてはいない(彼が「競走族」とした2号族からノーザンダンサーなどの大種牡馬が出現したり、2号族(競走族)と8号族(種牡馬族)のミトコンドリアDNA (mtDNA) が同じだったりする)。
また、彼の分類によれば、ファミリーナンバーの少ないほど優れた競走能力を示すサラブレッドが多く、43号族が最も劣ることになるが、理論の発表から100年以上もたった現在ではファミリーナンバーの少なさと競走能力の相関関係はほとんど重要視されることもない(現在では勢力順位の入れ替わりも見られる)。
しかし一方で、細胞質は母から子へのみ伝わることが明らかになると、「持久力の原動力はミトコンドリアをはじめとする細胞質である」として、ファミリーを重要視する者もいる。
更に、近年の研究によれば、競走馬の遺伝的な素質は母馬から55〜60%を、父馬から40〜45%を受け継ぐということが明らかになっているのだ。
このことから、サラブレッド生産においては「母の能力」が重要欠くべからざるファクターであると言えるし、また、若干ではあるが父系よりも母系重視と言えなくもない。
「フィギュアシステム」に関しては完全に否定されてしまったものの、サラブレッドの血統研究において、従来注目されるのは種牡馬のみで、しかも感覚的、迷信的に論じられていた世界にブルース・ロウが数字やデータを持ち込み、母系に目を向けさせた意義は大きい。
翻ってこの競馬伝説というゲームにおいて、複雑な配合理論など存在するのか怪しいものだが、「母の能力」を実感することは少なからずある。
そんな「母のチカラ」について、皆さんも改めて考察していただけたらと思う。
先の掲載記事「牝系一族別重賞勝ち馬頭数 in など。」を筆頭に、当ブログで繁殖牝馬にまつわる話題をよく目にするので書いてみようと思い立ったことを付け加えておきます。
「振り返りなど。」執筆者には本当に頭が下がります。。
さて、このゲームでの生産において最も重要なファクターは何かと問われたとき、皆さんは何を想像するだろうか?私なら迷わず「母の能力」と答える。長くプレイしている方もそれぞれ配合については一家言あるだろうが、母馬の能力の重要性については共通の認識ではないかと思う。
現実の生産界でそんな「母の能力」に着目し、競走馬の遺伝に関するメカニズムを解明しようとした人物がいた。今回はそんな「母の能力」についてのお話――。
1859年にダーウィンが発表した『種の起源』は世界中の様々な分野に影響を与えた。彼の提唱する進化思想や自然淘汰説は広く受け入れられ、従来の学説を覆したばかりでなく、宗教や哲学にも影響を与えたほどだった。
そして、それはサラブレッド生産の世界も例外ではなく、ダーウィンに感化されてにわかに血統研究ブームが沸き起こったのだ。
この頃、多くの学者、研究者、愛好家たちが研究の対象としたのが『ジェネラル・スタッド・ブック』だった。
それまでにもサラブレッドの血統研究はなされていたが、そのほとんどが父系に注目したものばかりだった。しかし、従来のそれとは違い、サラブレッドの母系ファミリーを解析しようとするアプローチが生まれたのだ。
この分野において競馬史に名を残したのがオーストラリアのブルース・ロウ(Bruce Lowe)という人物だった。
彼は当時のイギリス3大クラシックだったダービー、セントレジャー、オークスの第1回からの優勝馬をピックアップし、その母系の直系を母、祖母、曽祖母といった形で遡って調べていった。
すると、3大クラシックの優勝馬の母は、『ジェネラル・スタッド・ブック』第1巻に載る根幹牝馬のうち約50頭に辿り着いた。
ブルース・ロウはこれを更に根幹牝馬ごとに分類整理し、そこから広がった母系を「ファミリー」と名付けた。
そして、3大クラシック優勝馬の数が多い順に1~43までの番号を付けていった。
これが、いわゆる「ファミリーナンバー」と呼ばれるものだ。
彼はこの43系統まで分類した上で、成績が振るわない9系統を除外し、残る34系統を更につきつめていった。
すると、1~5号族までに3大クラシックの優勝馬が目立った。そこで、これらを「競走族」(ランニングファミリー)とした。
また、優秀な種牡馬を輩出している3,8,11,12,14号族を「種牡馬族」(サイヤーファミリー)とし、それ以外を「局外族」(アウトサイドファミリー)とした。
これが、いわゆるブルース・ロウの「フィギュアシステム」だ。
彼はこの「競走族」、「種牡馬族」、「局外族」を巧みに構築することによって独自の血統理論を展開していった。
そして、著書『フィギュアシステムによる競走馬の生産』の中で当時のサラブレッドについて必ずしも競走能力の優秀さと種牡馬能力の優秀さが相関関係にないことを明らかにした。
ただし、後年遺伝学的見地からそれらはほとんど否定されているが、彼が提唱した「競走能力に優れた牝系のファミリーに、優秀な種牡馬を交配すると優秀な産駒が生まれる」ことについて例を引きながら論じた功績は大きかったと言える。
確かに、ブルース・ロウが創出した「競走族」や「種牡馬族」といった概念は、現在ではほとんど重要視されてはいない(彼が「競走族」とした2号族からノーザンダンサーなどの大種牡馬が出現したり、2号族(競走族)と8号族(種牡馬族)のミトコンドリアDNA (mtDNA) が同じだったりする)。
また、彼の分類によれば、ファミリーナンバーの少ないほど優れた競走能力を示すサラブレッドが多く、43号族が最も劣ることになるが、理論の発表から100年以上もたった現在ではファミリーナンバーの少なさと競走能力の相関関係はほとんど重要視されることもない(現在では勢力順位の入れ替わりも見られる)。
しかし一方で、細胞質は母から子へのみ伝わることが明らかになると、「持久力の原動力はミトコンドリアをはじめとする細胞質である」として、ファミリーを重要視する者もいる。
更に、近年の研究によれば、競走馬の遺伝的な素質は母馬から55〜60%を、父馬から40〜45%を受け継ぐということが明らかになっているのだ。
このことから、サラブレッド生産においては「母の能力」が重要欠くべからざるファクターであると言えるし、また、若干ではあるが父系よりも母系重視と言えなくもない。
「フィギュアシステム」に関しては完全に否定されてしまったものの、サラブレッドの血統研究において、従来注目されるのは種牡馬のみで、しかも感覚的、迷信的に論じられていた世界にブルース・ロウが数字やデータを持ち込み、母系に目を向けさせた意義は大きい。
翻ってこの競馬伝説というゲームにおいて、複雑な配合理論など存在するのか怪しいものだが、「母の能力」を実感することは少なからずある。
そんな「母のチカラ」について、皆さんも改めて考察していただけたらと思う。
例えばマックイーンやオグリキャップ。
マックイーンは兄が菊花賞馬、オグリキャップも妹が桜花賞馬と両馬ともに母が名牝といえる。
2頭の活躍が母から仔にしか受け継がれない能力によるものなら、種牡馬として父から子供に能力が伝わらないのも説明がつく。
ような気がするw
まぁオグリローマンの仔が走っていれば説得力も増すんだけどだめだから・・・;