寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3004話) ギターの先生

2020年08月13日 | 出来事

 “コロナウイルスの影響で、フリーランスの方々の仕事が奪われていると聞きます。私がお世話になっていたギターの先生も例外ではないようです。私は五十四歳になったとき、思い切ってギターを習おうと決心し、音楽教室を訪れました。先生は、私の娘と年の変わらない若い方でした。
 私は遠近両用眼鏡をかけ、思うように動いてくれない指で頑張ってレッスンを続けました。仕事が忙しいときには、全く練習せずにレッスンに臨んだこともありました。先生はそんな時も、粘り強くこの劣等生に教えてくださいました。習い始めて六年目、初めて先生と発表会に出ました。脚がガタガタ震えていたことを覚えています。
 今年定年を迎え、心も体も落ち着き、改めてレッスンに臨もうとしていたらコロナ禍です。教室もお休み。そして先日電話で、先生が教室をやめられると聞きました。本当に残念でなりません。
 音楽はつらい時や悲しい時、人の心に寄り添ってくれます。私も定年まで六年間、音楽に励まされてきました。フリーランスの音楽家の皆さん、皆さんの奏でる音楽は、きっと誰かの力になってくれています。コロナに負けず、頑張って活動を続けてください。応援しています。”(7月26日付け中日新聞)

 愛知県愛西市の安田さん(女・60)の投稿文です。54歳の時に、自分の娘さんほどの先生について、ギターを学び始められた。そして先生と発表会にも出演された。いろいろ思い出を作られた。今年定年で更に励もうとされたが、このコロナ騒動で教室も閉鎖されてしまった。この意欲に水を差され、全く残念な思いであろう。本当にこのコロナ騒動は、社会に大きな変化をもたらしている。このような事例は数え切れないだろう。一時的中止ならいいが、そのまま終わってしまうことが恐ろしい。このギターの先生はこの後どうされたのであろう。職を奪われたままになったら大変だ。各種の教室の多くは、このようにフリーランスの方が指導者であろう。休止が長引くほど、復活は無理な気がする。
 「3密」回避、つまり換気の悪い「密閉」空間、多数が集まる「密集」場所、間近で会話や発声をする「密接」場面を避けた行動をしなさいという。密閉空間は別にして、密集、密接は社会の求めるところであった。これは絆を深めることでもあった。それをするなと言うのである。この騒動が収まったとき、社会はどうなっているだろうか。ボクは高齢者を特に心配する。老化は早い。元に戻す余力は残っているだろうか。


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