彦四郎の中国生活

中国滞在記

二十四節季は中国から日本に伝わったものだろうが、広大な中国の いったいどの地方の季節なのかな ?

2019-05-18 22:56:41 | 滞在記

  5月8日(水)、京都市内の祇園や木屋町界隈に行く。鴨川に架かる四条大橋から八坂神社や東山方面を見る。京都東山の山々のなんと新緑の季節の植生の豊かなこと。さまざまな色あいの新緑・新葉が見える。日本海と太平洋などの暖流に囲まれた近畿地方の京都は、雨にも恵まれ、温帯気候帯としての植物や樹木の種類が豊かで、みずみずしく さまざまな色合いの新緑・新葉が見られる。高瀬川沿いを歩くと、「鴨川をどり」(5月)のポスターが貼られていた。

  比叡山の麓の琵琶湖が望める「滋賀県大津市仰木」という「里山」に写真アトリエに住む写真家の今森光彦さんが、「私はかって若い時は豊かな自然を求めて、インドネシアやマレーシァ、ニューギニアなどの熱帯地方にばかり行って写真の撮影をしていた。しかし、植生(植物の種類)の豊かさは、温帯地方の日本の方がはるかに熱帯や亜熱帯よりも豊かであることに数年して気がつきはじめた。」と言っていたのが印象に残っている。「里山」という言葉をつくったのは今森さんだが、彼は温帯地方の自然の豊かさに気がつき始めてから滋賀県や京都府などの自然を精力的に撮影し始めたようだ

 私も亜熱帯地方の中国福建省に長年暮らしていて、亜熱帯よりも温帯である日本の本州の自然の豊かさに、改めて気がついた一人でもある。

 祇園白川石畳を歩くと、新緑が濃くなり始めて「緑の木陰」をつくっている。紫陽花の葉も大きくなり始めていた。アオサギが数羽、白川に降り立ち餌を探していた。白川に架かる「辰巳(たつみ)小橋」のたもとで、50ccのカブバイクに大きな箱型のリヤカーをつけている乗り物の横で休んでいる人がいた。リヤカーの色彩はあでやかで、小さな家のようだ。「日本一周中です」と書かれてあった。その人に話を聞いてみた。年齢は65才とのこと、私より1つ下だ。これから沖縄を目指して本州・四国・本州・九州、そして沖縄に向かう途中だと言う。屋根のあるリヤカーの中で寝泊まりをすると話していた。

 中国にも日本にも「二十四節季(せっき)」がある。1年12カ月間を24の季節の節(せつ)にわけたものだ。中国でインターネットをしていると、この二十四節季がよく表示されてくる。「今天 立夏」という具合である。中国人にとって二十四節季は日本人以上に身近なものなのかもしれない。二十四節季は次の通りである。

 春の季節

 ①立春(りっしゅん)2月4日[春の始まり(春の気始めて立つ)]       ②雨水(うすい)2月18日[雪が雨に変わり、氷が融けて水になる。(氷雪融け雨水温む)」 ③啓蟄(けいちつ)3月5日[冬ごもり中の虫が目を覚まし姿をあらわす。(冬ごもりの虫声を啓く)]   ④春分(しゅんぶん)3月20日[昼と夜の時間が同じ。(春の最中夜昼半分)]   ⑤清明(せいめい)4月5日[清浄明潔の略といわれ、南東風が吹く春のよい季節。草木の芽が出る。(草木晴明風光明媚)]    ⑥穀雨(こくう)4月20日[穀物を育てる雨が降り、芽を出させるという意味。(百穀春雨に閏う。)

   夏の季節

  ⑦立夏(りっか)5月5日[夏の始まり。東洋暦では立夏から立秋の前日までを夏、西洋暦では夏至から秋分の日までを夏としている。(夏の気が初めて立つ)]     ⑧小満(しょうまん)5月20日[植物が育ち繁る。"麦生日"と呼ばれ、晴天であれば麦がよく熟すると言われている。]     ⑨芒種(ぼうしゅ)[雑穀の種まきをする時期。田植えの時期に入る。梅雨めいてくる。]    ⑩夏至(げし)6月21日[昼間の時間が一番長くなる。]    ⑪小暑(しょうしょ)7月7日[梅雨が明ける。]    ⑫大暑(たいしよ)7月23日[暑さが最高になる。]

   秋の季節

  ⑬立秋(りっしゅう)8月7日[秋が始まる。]    ⑭処署(しょしょ)8月23日[暑さが終わる。]    ⑮白露(はくろ)9月7日[秋の気配が深まり、露の量も多くなる。]   ⑯秋分(しゅうぶん)9月23日[春分から半年目。昼と夜の時間が同じ。]    ⑰寒露(かんろ)10月8日[露が寒さで凍ろうとする。]   ⑱霜降(そうこう)10月23日[霜が降りるほどに寒くなる。]

  冬の季節

 ⑲立冬(りっとう)11月7日[冬が始まる。]    ⑳小雪(しょうせつ)11月22日[雨が雪になって降る。]   21、大雪(たいせつ)12月7日[雪が雪降り積もる。]    22、冬至(とうじ)12月22日[昼間の時間が最も短い。]      23、小寒(しょうかん)1月5日[寒の入り。寒さがましてくる。]    24、大寒(だいかん)1月20日[寒さが最も厳しくなる。]

 

 最近の中国のインターネット記事に「中国江西省棚田、毎年5月中旬に田起こしをし田に水を入れ田植えを始める。稲の成長を祈願して、田起こしの牛に赤い布を巻く。」という内容の報道が写真とともに報道されていた。江西省は福建省の西に隣接している省だ。京都府南部の山城地域では、この江西省とほぼ同じ時期の5月中旬ごろから田植えが始まる。

◆この「二十四節季]は、中国も日本も全て同じ日である。例えば「大寒」は、中国でも日本でも1月20日。おそらく中国から日本に伝わったものだろうが、もしそうだとしたら、この広大な中国のどこの地方をもとにしてこの節季がつくられたのだろう。私が6年間暮らしている中国南部に位置する福建省福州だと、「春の季節」とされる①~⑥は、ほぼ季節的に当てはまる。日本の京都に比べるとほぼ1か月以上、春も夏も早く到来する。しかし、5月から10月下旬ころまでの6カ月間、気温的には「夏の季節」なので二十四節季とはぜんぜん合致しない。

 北京あたりは緯度が高く、日本の京都よりも春も夏も到来するのがやや遅い。南京と上海は比較的近く、中国中部に位置するが、このあたりの地方の季節の推移を参考にしてつくられたのだろうか。それとも、もっと中国西部の河南省の洛陽や陝西省の西安あたりの季節の推移なのだろうか。「二十四節季」について詳しく知りたくなった。 

 5月9日(木)、夕方には関空から飛行機で中国に向かうこの日、午前9時に歯科医に行き治療を再び受けた。歯科医院の前の畑には、タチ葵の花が何輪か開花し始めていた。この花は夏の季節の花だ。確かに京都も「立夏」といえば「立夏の季節」に入ったとも言える。

 5月8日に息子の妻の美有紀さんから、私の妻あてに「母の日プレゼント」のアジサイが自宅に郵送されてきた。普通、アジサイは6月の10日あたりの梅雨入りの時期から色付き始めるが、「母の日プレゼント」のアジサイは、綺麗に色づいている。花屋さんに「なぜ5月上旬なのに、アジサイの花が開花し色もついているのですか?」と聞いたら、「気温の高い温室で栽培されているので早く開花し色づくのです」とのことだった。最近は、アジサイがよく「母の日プレゼント」に贈られることが多くなってきたとも話してくれた。

◆このブログ記事を書いている今日の5月18日、中国福建省福州は、天気予報での最高気温は34℃、最低気温は26℃。ものすごい湿気と高温の一日となった。午後3時頃 直射日光が当たる場所に気温計を置いたら45℃になっていた。そして夕方の5時半ころからスコール性の猛烈な雨が1時間ほど降り続いた。これだけの雨が降っても、午後10時、窓を開けると「熱帯夜」の気温で、「湿気」がすごい。5月5日の立夏から10日間あまりで もう完全な真夏である。


伝統ある「立命館大学での中国学―中国を学ぶ」―大学構内にさまざまな「中国学講座」の看板も見える

2019-05-18 06:56:05 | 滞在記

 5月5日(日)の夕方、立命館大学言語教育情報研究科(大学院)に留学している閩江大学卒業生の沈さんと久しぶりに会って、祇園白川石畳の道沿いにある おばんざいの赤ちょうちん居酒屋「祇園・侘助」で妻ととともに3人で再会の乾杯をした。沈さんと会うのは、昨年の11月以来となる。彼女は、昨年の6月に大学を卒業し、9月(秋季入学)に立命館大学大学院に入学した。将来の進路希望は、中国で日本語教育の教員となること。閩江大学から立命館大学大学院でに入学したのは、彼女で3人目となっている。今年も新しく一人の学生(現在4回生)が立命館大学入学大学院をこの6月に受験予定なので、3月より受験指導をしている。

 沈さんは、昨年11月より大型スーパー「イズミヤ」でアルバイトを始めていたが、祇園に近い宮川町の日本料理店の面接試験に合格して、この4月下旬より週に何回かアルバイトを始めたばかりだった。(イズミヤのバイトはやめた)   まだまだ着物の着付けが難しいとのこと。この日は、午前10時から午後3時までの勤務を終えて私たちと会った。「祇園侘助」に2時間ほどいて、先斗町のカラオケ居酒屋「みちのく」に場所を移し午後10時頃まで3人で過ごした。

 日本の10連休が終わった翌日の5月7日(火)、この日は朝早くから午前中いっぱいまで、歯科・胃腸科・皮膚科の3つの医院に矢継ぎ早に行って診察を受け薬をもらった。医院に行くことが今回の一時帰国の大きな目的だったが、10連休が終わり この日にようやく病院が始まった。

 午後3時ころ、立命館大学大学院独立研究科の事務室に、あずかってもらっていた「2019年度立命館大学大学院研究員証明カード」を受け取りに行った。言語教育情報研究科担当の2名の職員に、「いつもお世話になっています」と挨拶し、中国福建省のお茶をお土産に渡した。烏龍茶に金木犀(きんもくせい—中国では桂花という)の花が入った「桂花烏龍茶」。後日、「とても香りのよい茶でした。事務室全員で味わいました。ありがとうございました。」とEメールが入ってきた。中国はさまざまな花を茶にした「花茶」の種類がとても多い。ジャスミン茶もその一種で、「ジャスミンの花」と「緑茶」をブレンドしたものだ。

 「未来を信じ 未来に生きる ―末川博」の石碑を覆うような青モミジが美しい。法学部がある時計台棟の建物と青モミジと青空のコントラスト。独立研究科(大学院棟)近くの藤棚に紫のフジが満開となっていた。大学構内の新緑がすがすがしい季節だ。

 立命館大学は早稲田大学とならび、「中国学」にかなりの長い伝統をもつ大学だ。現在、中国・台湾・香港の100を超す大学との提携関係(北京大学・清華大学・復旦大学・上海交通大学・台湾国立大学・香港中文大学など)をもっている。毎年、北京大学との連携講座が大学構内で開催もされているが、構内に置かれている看板を見ると、今年は「時/空を超える―中国・ポップカルチャー」と題された連携講座だった。5/30「中国×日本"三国志"版画の中の中風と霧の表現」、6/6「民国期中国の漫画—誕生と展開」、6/13「楊貴妃・白居易・空海」、6/20「時/時空を超える中国ポップカルチャー」の4つの講座を、北京大学や立命館大学の教員が行う企画のようだ。この連携講座は北京大学でも行われている。

 「2019年度 立命館大学生 中国語スピーチ発表会」という企画の看板があった。{6/28 17:00〜19:30}{スピーチテーマは自由、3分以内}{立命館大学で中国語を学んでいる学生なら誰でも参加できる}と書かれている。私の大学の日本語学科でもこのようなスピーチ発表会を企画したら面白いなあと思った。まずは、担当している授業でやってみようと思う。

 「中国古典文化講座」の看板もあった。6/22「中国史マンガの魅力を語る」、6/29「中国と日本の演劇—歌舞伎と京劇を例として」。 6/22日の講師は安田峰俊氏。彼は今 新進気鋭の「中国学―中国社会・政治・文化」の若い研究者だ。1982年滋賀県生まれで、現在36才とまだ若い。中国に関する研究者としての日本人のベスト5に入る人かと思う。立命館大学卒業後、広島大学大学院にすすみ「中国学」を研究。中国広東省の深圳大学に交換留学生として在籍もした。

 大学院修了し一般企業に勤めていたが、その後「中国研究者」として、アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情について研究・執筆している。著書もけっこう多く、『和僑—農民・やくざ・風俗嬢、中国の夕闇に住む日本人』、『境界の民—難民・遺民・抵抗者。国と国の境界線に立つ人々』、『野心—郭台銘伝』、『"暗黒・中国"からの脱出・逃亡・逮捕・拷問・脱獄』(安田氏の翻訳)、『八九六四』(天安門)などがある。また、ブロク記事もよく出しているが、中国に関してとても参考になる優れた記事が多い。現在、立命館大学人文科学研究所客員研究員ともなっているが、将来的にはぜひとも立命館大学の准教授や教授として迎え入れてほしい逸材だ。一度会って話をしながら酒でも酌み交わしたいとも思う。

 一昨年に新しくできた図書館に入ると、「白川静展示」のコーナーがあった。「白川学」で有名、甲骨文字をはじめとして、60年間あまりにわたる「漢字の体系的研究」の日本での第一人者で、立命館大学で長年教鞭をとっていた。「6/20  中国語教師として次の世代に伝えたいこと」と題して、中川正之氏(立命館大学孔子学院院長)や木村英樹氏の講座を紹介するポスターも貼られていた。

 立命館大学は早稲田大学とならび、中国政府肝入りの「孔子学院」が日本でも早く設立された大学だ。中国政府のプロパガンダ(中国文化・言語を世界に広める)の役割を孔子学院は担っているのも事実だが、日本人が中国に関して多くのことを学べることも事実である。

  5月~6月期間の「中国学」に関する講座は、立命館大学衣笠キャンパスで、目にしただけでもこれだけあった。

 「よみがえる沖縄—1935」という2019年度春季企画展(4/13~6/29)が立命館大学国際平和ミュージアムで行われていることを知らせる看板もあった。太平洋戦争での沖縄戦以前の1930年代、島の人々の暮らしの様子を写真などで説明をする企画のようだ。沖縄独特の庶民の衣服姿や大きな魚を運ぶ漁師の姿とそれを歓喜の表情で追いかける子供たちに姿をとらえた写真など。残念ながら、この日は時間がなくて入館できなかった。

 大学とは「大きく広く学び合う場所」なのだろう。自分の専門だけでなく、幅広くさまざまなことを学べる大学の姿が日本のこの立命館大学にはまだ感じられる。中国の大学では、中国共産党一党支配下、自由に大きく学び合うという姿は絶えて久しい(特に2013年以降は)。人文科学に関しては中国は「時代閉塞」の時代だが、これはいつまで続くのだろうか。