浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フルトヴェングラー 維納国立歌劇場でのマイスタージンガー

2007年12月30日 | 指揮者
フルトヴェングラーの「マイスタージンガー」は学生の頃に全曲盤のLPを購入し、一度も通して聴いてゐない。一種の罪悪感を持ってゐる。しかし、ストーリーを知らずにワーグナーの楽劇を数時間聴くなどといふことは修行のやうなものだ。つい時間がないことを理由に、ワーグナーからは遠ざかってゐた。

学生時代にはオペラをよく観に行ったものだ。「フィガロ」「魔笛」「ドン・ジョヴァンニ」「フィデリオ」「オルレアンの少女」「エフゲニ・オネーギン」「マクベス」「椿姫」「ひかりごけ」(初演)などは今でもよく憶えてゐる。だが、ワーグナーだけは縁が無かった。そうそう上演されないことも要因の一つだらう。

理由はもう一つある。僕は管絃樂の演奏が好きだ。フルトヴェングラー信者の中で、オペラ演奏が好きで信者になった方はおそらく1000人中3人くらいの珍しさだらう。オペラでは、歌手や舞台演出に関心が集まり、管絃樂はあくまで伴奏だ。演奏そのものが大雑把に感じるのだ。

それは前奏曲でも同だ。序曲なら、その1曲で完結するため、前奏曲よりはまだ聴き応えがあるが、それでもコンサートで単体で取り上げて演奏する場合とでは、燃焼度や完成度が全く異なるやうだ。

今、1938年9月5日、維納国立歌劇場でのフルトヴェングラーによる「マイスタージンガー」の録音を聴いてゐる。今から緞帳が上がるといふわくわくした雰囲気が伝わってくるが、フルトヴェングラーにしてはあっさりと速いテンポで通過してしまふ前奏曲に、多少の物足りなさを感じるのだ。

こういったわけで、僕はオペラを家ではあまり聴かない。でも、多少なりとも物語を理解して、DVDでオペラを楽しむやうな時間的ゆとりを持って生活したいものだと思ってゐるのだ。来年あたり、実現できるだらうか。先ずは大型のプラズマテレビでも買いに行くことから始めようか。

盤は、墺太利KochによるCD 3-1452-2。


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