吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

小津は大人になってから

2016-01-12 13:16:42 | 日記
私が、去年からと観まくっている小津安二郎監督の映画ですが
ネットで調べてみると、私が観ている作品は、彼の映画人生の後半の、ほんの一部でしかありません。
(ただの「一部」ではなく。、「後半の、ほんの一部」ですよ)
「観ている」と、いうより、「観ることができる」と言ったほうが正しいでしょうか。

多分、本気で観ようと思えば、ネットを駆使して色々な方法もありますが
流石に、そこまでの熱意も無ければ、時間もありません。

さて、私が観た小津作品。

晩春(1949)
麦秋(1951)
お茶漬の味(1952)
東京物語(1953)
早春(1956)
東京暮色(1957)
彼岸花(1958)
お早よう(1959)
秋日和(1960)
秋刀魚の味(1962)

そして、こらから観る予定の小津作品。

浮草(1959)
小早川家の秋(1961)


1959年の『おはよう』以降がカラーで、その前までは、モノクロ。
全て私が生まれる前のものばかりです。

昨日の吐露に書いたように、年頃の若い娘さんを、よってたかって結婚させるものも多いのですが
親と子供の距離感や、子供をもつ親の複雑な心の様子や、親の気持ちを素直に受け入れられない子供たち。
古風な考え方をする親とは対照的な考えをもつ、若い夫婦。
(何故か、小津作品には「片親の家庭」という設定が多い気がします)
時代は、高度経済成長期。
親と子の考え方の違いに加え、こういった年代の差による摩擦を繰り返しながら
「今どき」はかたちを変えてきたんだな、なんて、しみじみと考えてしまいます。

内容は、本当に、何処にでもよくありそうな話しばかりで
老夫婦が子供たちに会うために田舎から上京してきたのに
子供たちは仕事や生活にていっぱいで、ちっとも両親との時間を大切にしないとか
倦怠期の夫婦に訪れた危機とか(うちも人のことは言えない)
夫のすることなすこと全てが気に入らず、いつもツンツンしている妻の、ある気付きや(うちも…以下同文)
娘の嫁ぎ先について、あれこれと世話を焼こうとする父親のもとへ
ある日突然、若く、礼儀正しい、爽やかな青年(しかもハンサム)がやってきて
「お嬢さんと結婚させてください」と、頭を下げる。
娘に付き合っている男性がいるなどとは寝耳に水の父親は、とにかく面白くない。
周りのみんなが賛成しても、自分だけは認めない!と意地を張り続ける(駄々っ子に見えなくもない)とか
おそらく、若い頃なら「退屈な映画」を思たかもしれないこの映画の数々は
五十路になった今なら、子供の気持ちも、親の気持ちも、「ああ!」と、よくわかり
「どっちの気持ちも分かるけどねぇ…」と、いった立場で、楽しむことが出来るのです。


『新しき土』のような、超クライマックスや、派手な喧嘩シーンや
ましてや、濃厚なラブシーンがあるわけでもない
静かに進行していく物語のところどころに映し出される、台詞にはない、人の心の機微。

私の妄想は、フル回転。

小津安二郎が分かる年齢になって、良かったなぁ。