2011年7月29日
今年の8月2日に注目・アメリカの債務不履行なるか
国内問題への発言と、国際問題への発言は首尾一貫することが可能だろうか、それとも無理な相談だろうか。
たとえば、自国民には脱原発を呼びかけながら、他国に自国の原発を輸出できるだろうか。あまつさえ、つい最近明るみにでたことだが、東芝という会社は日本の使用済み核燃料廃棄物をモンゴルに運ばせようとアメリカに働きかけていた。経済産業省が後押ししていた(東京新聞 7月2日 朝刊)。一方、外務省は慎重姿勢だとのことだ。
私にはどうにも理解できないのだが、そしてこういう話には吐き気がするのだが、日本の核施設は、汚い言いかただがトイレのないマンションといわれている、核廃棄物の最終処理をまったく予定しないで原発を増設してきたのだ。そして、日本ではもう核廃棄物の処理場所を確保できない(費用がかかりすぎて採算が合わない)と感ずるや、自分の国の核廃棄物というゴミを、他国、それもモンゴルのような親日的な国に、経済援助をちらつかせて核廃棄物を押し付けることを、内緒でこそこそ画策する。
経済人と経済産業省の役人たちのエリート意識なんだかわからないが、日本人一般大衆はこういう連中をどうして居座らさせているのだろう。日本も地球という活きた星のなかの、海に囲まれ海と山の幸のおかげで存続できてきたユーラシア大陸の端の列島なのだ。そこが自国の都合で核物質という手に負えないもののゴミを、こともあろうに森林と遊牧社会、同じアジアの友好国に持ち込むということを考えつく、そこがわからない。
歴史的にみれば、日本の明治維新は、日本社会では日本人の誇りとしてのみ評価されるが、たしかに欧米列強諸国によるアジア侵略に対する精神的な拒絶の役割を果たしたことは大きく評価するべきであるが、その後、特に日露戦争で勝ったあとはもう欧米列強の帝国主義の尻尾に成り下がる一途だったことを見ようとはしない。
そうなったのは日本にだけに原因があるのではなくて、19世紀の産業資本主義が高度な軍事力をイギリスに与え、他の欧米諸国も産業資本主義の育成に全力をあげ、いわゆる重厚長大な重工業主義、大鑑巨砲万能の時代をつくったからだ。それには巨額の金が要る。そこで銀行資本家が諸国をまたがった金融取引を拡大させ、金融資本主義、それと軍事産業と、軍部と官僚が一体となった帝国主義が成立した。日本で言えば明治時代の終わりから大正時代で、それまでの薩長藩閥政権が明治憲法を公布して一見立憲君国家になったように見えるが、富国強兵路線への批判は決して許さない治安警察(今、中国でおきていることを笑ってはいけない。かつての日本もまったく同じだったのだ)による取締りは強化され、社会主義はもちろん、自由主義、民主主義、も取り締まった。こういう時代を、古きよき時代となつかしもうとする一部の政治家、言論人がなお現在もいる。戦後の日本の高度成長を牽引してきたのは、戦前の経済や軍需の部門の官僚だった人と、財閥の人たちだ。日本をなお原発強国にしたい、という思惑の根底にはこういう歴史的背景があることをもっと新聞もとりあげたほうがいい。ここが変わらなければ、そしてもっともっと広く人知を集め、広い視野で皆で討論して後世のことまで子孫のことまで考えて国づくりをしていかないと、表面的に脱原発したところで、別の災厄を生み出すだろう。たとえば、復興増税などは正しい選択なのだろうか。そういう政策立案を旧態依然とした政党や政府官僚にお任せでいいのだろうか。革新とか保守とかで昭和の後半を争った連中だが、ひと皮剥けば同じ穴のムジナだった。彼らは、これまでに無理と無駄を積み重ねて、歪みきった財政と利権をただただ維持していきたい、そればっかりの政策しか思いつくことができない。
マスコミは政府の方針を、ことなかれで追従するだけなら、世論を誤って誘導することになるだろう。与謝野大臣は、れっきとした原発推進論者で、そういう論文を書いてきている。この人の発想自体が問題であるにもかかわらず、菅直人という人は三顧の礼をもって与謝野を閣僚にした。菅政権の寿命はとっくに終わっている。
次に、きのう今日の新聞記事からみえることは、まもなく、多分数日以内に、吉と出るか凶と出るか、それはわからないのだが、重大な事態がくる。8月2日に起源が迫った、アメリカの債務引き上げ上限についての、政治的妥協がなるか否か、についてである。ここで、一旦脇においておかなければならないのは、日本人の無意識的なオバマ大統領ひいき、そして大嘘をつきとおしてイラクに攻め込んでイラクをかき乱した共和党ブッシュ政権への嫌悪感だ。私も、これは共有しているといえるかもしれない、しかし、これを脇において考察しなければならない。
一見、オバマを支援することがアメリカのみならず地球全体に平和をもたらすと考えられている。リベラル派にはその傾向がある。オバマにノルウェーのノーベル平和賞委員会がノーベル平和賞をあげたのもそういう理由からだろう、たぶん。
ところが、アメリカの共和党のいう小さな政府論というのは、決して財政面とか、資本家富裕層への利益誘導というあからさまな面ばかりでない、ある重要な一面がある。それは、連邦政府という権力が、地方自治の原則を簡単に侵すからだ。本来、アメリカの独立宣言は強権的なイギリス本国政府のアメリカへの重税に反発した植民地住民の結束から生まれたもので、自治的な連帯が基本である。茶会tea party の運動もそのひとつで、独立戦争のきっかけになった。当時のアメリカ人の生活は質素で、敬虔な生活者の健全な生産活動、それは同時に神への奉仕でもあり、有徳なことだったのだ。本来、アメリカ・ドルに書かれているように、In God we trust なのだ。だが、アメリカは、原住民インディアンの活きかたを破壊した。それは、自然との共生と平和に基づくものだが、それを白人の強欲が盗みまくった。そのうえ、産業資本主義が州をまたがる横断鉄道を引き、鉄鋼産業をつくり、ニューヨーク証券取引所を設け、極端な富豪と、没落する中間層、ホームレスがごろごろするスラム社会をつくってしまった。アメリカ建国の父たちは嘆いているだろう。
こういう社会矛盾を解消するには、オバマは政権づくりをするとき、既得利権をもった政治家や官僚の影響を避けるための、社会改革の見識をもつすぐれた活動家であり学者でもある人材はアメリカには多いのだ。例えば、サステナブル・デザインやパーマカルチャー関係の企画設計者には多い。そういう人材登用をもっとしなければならないはずなのに、彼はそれができなかった。たぶん、そういう人材からは見放されていたのだろう。本物の見識をオバマはもっていなかったのだ。そうとなれば、連邦が強化されることはかえって危険なのだ。アメリカが独裁国家に変貌する可能性を、1970年代のSF作家たちは盛んに警告していた。いわゆる、ニクソン大統領によるウォーターゲート事件が実際にある。このときニクソン大統領とその補佐官たちの政略的手腕は、事件の隠蔽と圧殺以外のなにものでもなかった。政権についたものは、溺れそうになるときは何でもするのだ、菅総理のように。8月2日、もし債務不履行問題がこじれるとすれば、それは、現代の共和党内の茶会派(Tea Party)の人たちが頑張ったからだろうが、それが一概に悪いとはいえないのだ。ただ、そうなったら、アメリカのみならず世界中が大混乱になる危険性はある。私も、穏やかな生活をしたい、物価がシーソーゲームみたいに上げ下げしたり、急に会社が倒産して家族と路頭に迷うような事態はあってほしくない。
しかし、起こりえる、8月2日でなくても、秋にも。共和党は8月は譲歩して妥協しても、引き上げ上限を低く設けていて、中間選挙で民主党に打撃を与えようとしているからだ。多分、これ以上の譲歩はできないだろう。一方、現にアメリカの景気の後退傾向は隠しようもなくなっている。さすがにダウ平均株価は昨日から急落した。よってますます、共和党の歳出削減の論調は先鋭化し、一方で、民主党が主張する富裕層への増税は認めたくない。対立の解消の見通しは遠のくばかりだ。しかし、アメリカのデフォルトが実際に起きたらどうなるか。まず、すぐには収拾がつかない大混乱だろう。アメリカ国債価格が暴落すれば、それをもっている世界中の政府系、あるいは民間系を問わず、あらゆる銀行が、また年金ファンドなどがパニックに陥る。
そうなったら我々はどうするか、それには有意の人たちが日ごろからネットワークをつくっておいて、いざとなったら、まず正確な状況判断をしていくことだ。天狼星児のブログは今年10月28日でおしまいだが、10月から別のコミュニケーションを考えている。(10月以降から、iosns@yahoo.co.jp に、1年間のメンバーになってメールマガジンの購読を申し込むとメールしてきた人に、週報を、万が一、非常事態になったら日報を送る考えだ。ただ、受付は10月になってからで、それ以前は返信はしない。また、内容も、時事問題と、エネルギー・ヒーリング、都市菜園などにかかわる実務的な問題を中心にしていくつもりだ。若干ファイナンシャル・プランニングに触れるかもしれない。政治的な論評は多分今後はしないだろう。とても解析できそうにない事態になるからだ。だから、政治的論評は期待しないで欲しい。)
次に、意外と見落とされるが、ロシアと中国との関係は、お互いは決して本音のレベルでは友好とはいえない。日本はロシアを経済関係と領土問題だけでしか見ようとしない、それは戦前からの発想に、私たちの親たちの時代の意識に私たちが無意識に縛られているからだ。
ところで、7月28日、東京新聞の9面は「軋む世界 中央アジア 経済力背景に中国化」とある。「中央アジアに対する影響力を拡大する中国は、ロシアにとって米国以上ともいえる脅威に変貌。ロシアは、中国を抑えるため、友好国であるSCO準加盟国のインドの正式加盟をもくろんでいた。」この目論見はうまくいっていない。
国際関係は、国内の感情とは違った現実がある。それに、国内の感情が常に正しいわけでもない。そうだとすると、こういう情報を面倒がらず受け入れて読み解く努力を続けなければならない。そういう努力をせずに、一方的な激論をするのは幼稚である。
この問題については、もう40年も前、ロシアと中国が国境紛争で銃火を交えていたことを想起する。今、中国はその当時と比べ物にならない武力をロシア国境に配置している。もちろん、今ロシアとことを構える予定はないはずだが、新疆ウイグル地区には、東トルキスタン独立運動が高まっている。ロシアはイスラム教徒のチェチェン地区で手を焼いているので、中国がイスラム教徒のウイグル族を武力弾圧するのを容認している。しかし、いわゆるテロ集団を追撃するとかの理由でウズベキスタンと中国との国境などを中国が破る事態が起きたら、おそらくロシアは中国と戦闘することも間違いない。では、中国が中央アジア諸国に干渉して兵を動かす可能性が大きいか。それは、間違いなく大きい。一番の理由は、カスピ海沿岸の油田を押さえるためである。中国はなりふりかまわず石油資源を買いあさり、南シナ海の島は全部自分のものだと言い張っている。そこには豊富な油田があるからだ。そして、中国は南シナ海の島がすべて中国領土であるという根拠をしめさない。もし示したら、それは世界の物笑いになるだろう。考えられるのは(そうでないとは思うけれど)、中国の古い歴史書地理書に、南の国の島が漢字で書かれている、とかいうのが根拠だろう。そうだとしたら、ベトナム(コウチシナといった)など皆中国のものだ、と言い出すだろう。日本も、魏志倭人伝で倭国とあってそれは中国皇帝に服属していたから中国のものだ、つまり九州は中国の一部だと言い出しかねない。そんな意識の民族なのだ。
おなじ理屈で、中央アジアの諸国に、西暦7世紀、唐帝国は軍を送った。イスラムが台頭してきた時代、西域とシルクロードの権益を確保しようとしてタシケントに進出し、タラス河畔でイスラム軍に打ち負かされた。カスピ海まであと一歩である。今の中国なら、空軍と落下傘部隊でカスピ沿岸油田地帯は簡単に押さえられるだろう。しかし、ロシアが黙っているとは思えない。
30年ほど前、ロシアはソビエトという共産国家(本当の共産社会でなくて、国家社会主義のひとつの形態)だった。宗教は公式には認められなかったが、ロシア正教会が対ナチス戦争(ロシアでは大祖国戦争という)に協力したので、それは認められていた。ただ、一般の宗教活動が抑えられていた。そういう中で、ロシアには中世の昔から聖人や霊能者がかなり沢山でていて、その血筋を引く子孫がそういう能力をもつ人がときどきマスコミにでてくる。そういう一人の女性が、ロシアはカスピ海に出てくる中国と戦うだろう、といった。まだ、ソビエトの時代で言論統制もあり、中ソ国境紛争もあったが、そこまでは言えない時期だった。なぜなら、今、カザフスタンといわれる地区は、かつて核実験場や宇宙基地がおかれて、もっとも強力に防衛されていた地区だからだ。一方、当時の中国は、旧式のロシアの戦車しか動かせない人海戦術に偏った軍事力だった。とても中央アジア奥深く入れるわけがなかったのだから。
これからどうなるか。可能性としては決して、安定成長の無風地帯の日本でないかもしれない。