夜中の紫

腐女子向け 男同士の恋愛ですのでご興味のある方、男でも女でも 大人の方のみご覧下さい。ちょっと忙しいので時々お休みします

33 放鳥

2014-04-25 | 悪坂を転がる

怒りについては収まらなかった。

というより それを口実にしたかったのだ。



びりびりとナオの着ていたシャツをやぶき、文句を言う口を押さえ付けて肌を合わせ 強引に押さえ付ける事に。

手荒に脱がせていくと 顕わになって来る怒りの火種。

さっきメラメラと湖面に大きく揺れていた光が 自分の中で発火した。

体のあちこちに点在するウーラヴとの跡 キスマークが赤く付いて居るナオの体をを眺めた時 一気に何かが切れた。

「・・・!!。」

押さえられた手の中で叫ぶナオの 声は聞く気にならず。
ナオを見下ろすと



「俺が・・・・・先に逝ったら・・・・後から追って来てくれる・・・?。」



とナオに聞く。

ナオはショックを受けたように動かなくなった。


そして ラルフは少し離れると 自分も彼と同じように着ていた物を脱いでいく。















あまりにも乱暴だったので 
無言で耐える他なかったが それでも
ラルフの行為に悪意を感じる事が出来なかった。
しかし ナオはとても悲しくなった。

ラルフはさんざん自分だけで動き その度に痛みと恐怖が蓄積していく。
自分の足のむこうに見える美しい人が 冷たく踊るようで怖かった。

だが、はめ込まれた自分の下半身は 彼の物の様に動いてしまうので ナオは完全に自分のかだらを無視する必要がある。


暫くするとラルフが声をあげて 自分の腰を強く掴むと 深く突き高みに達したようだった。

はあはあとナオの脚も震えながら捩れ 上半身に痺れるような感覚。
共に溶ける様な快感が 頭まで登って来た。 ラルフの放った物のせいだった。

「・・・ぁふっ・・・・・。」

ナオが小声を漏らすと ラルフが彼を折りたたむように真上から覗きこみ 目を閉じたナオの頬を掴んだ。

ナオは目を閉じ 荒い呼吸で唇を噛み 胸を膨らませている。
その度に 赤くなった乳首が上下して、それを眺めるとラルフが話しかけてきた。


「・・・・・・・・・不本意だろ・・・・・?ウーラヴとは対等なのに、俺はペットの様に・・・・お前を抱くと?。」

思ったよりも近くで囁いたのでぎくっと神経が立つ。

「・・・・・・。」

ナオは違うと首を振ったつもりだったが、 少し間が空いて・・・・

「それとも・・・・ウーラヴの余韻が 消されてしまうのが・・・・嫌か?。」

ラルフが 思わぬ事を呟いた。

さすがにナオが目を開けて ラルフを見ると・・・・・・・。
びっくりしてしまった。


真っ直ぐに自分の顔の横に突いた腕が目に入り、その腕を上がって行くと 汗ばんで光り血管の浮き上がった体は見る。その途中・・・・自分とラルフの体は組み合っていた。

ラルフの目は ひどく悲しんではいたが 
彼が自分の瞳を見つめると 少しそれが和らいで潤む
彼の目は 鼻筋の通った掘りの奥で透きとおり、黒い細孔は生き生きと開き ナオの目に照準を合わせると細まった。

ラルフの目の造形を これほど良く見た記憶は無いが、
これがラルフのフラットな表情なのだと分かる なぜなら・・・・。

それは彼が 自分に目を向け覗き込むのに必死で 締りの無い唇にも気が付かないからだ。

ラルフの物欲しそうにあちこち泳ぐ視線が 自分を捕え 今にも唇が降りて来そうだった・・・・。

「・・・・ラルフ・・・・。」

今まで見た事が無いラルフに それ以上口答え出来ず黙っていると 覆いかぶさって来た。


「・・・・あいつに 童貞を捧げて・・・・俺は・・・もう用無しか?。」

・・・・・これでは・・・・・何を 言っても聞いてくれないだろう・・・・。
と、ナオは苦しくなって 横を向く 
ラルフはそのままナオの脚を擦る

「体は 俺の方が・・・順応してるはずだ・・・・・ほら・・。」

ひじを曲げナオの腿の間に手を入れた。


「・・・ああ!!・・・。」

ナオが悲鳴を上げると ラルフが

「・・・・・俺とは 違う声で鳴くんだろう?・・・・聞かせてくれよ・・・。」

とナオの物を弄びながら 囁いた。


ずっとウーラヴが口付けいしていた場所に ラルフの舌が伸び噛まれ 吸われる。

堪らず


「嫌いだ!・・・・・・・・・・・いつも!後悔・・・したって・・・いいながら・・・・そうや・・・・って・・・。」

首を振り手でラルフの顔を離そうと必死に押し上げたが その手首を強い力で握り返された。

「また・・・・き・・・か・・・な・・・い!。」

抵抗しながらラルフを見ると 彼は怒りと言うより 困り切った様な困惑した表情で

「・・・・何をだよ!・・・恋敵がぶっ倒れるから 注意をしてろって・・・・?ふざけるなよ!・・・ウーラヴが許しても俺はだめだ!。」

とナオの上で叫んだ。



「嫌だ!!・・・・嫌!!・・・・・。」

ナオがラルフから自分の手を引き抜こうと悶えると ラルフは難なく二つを一つに束ねて 押さえてしまった。そして空いた手でナオの中心に差し伸べる。

バタバタとナオの踵がラルフの背を打ち、腿がぐっと閉じられたがそれを無視して 
掴んだナオの性器の具合を確かめる。十分 自分に感じていると言う証に

「ほら・・・・・・。」

とラルフが指で先から掬い取ったナオの粘液を 彼に見せながら閉じた唇の中に入れて来た。

やめて と言うつもりが ラルフの指に邪魔されて言えず 自分の愛液を舐める羽目になる。
すると 己の仙花の蜜に頭は霞み どっと体が熱くなり始め

まるで 失くした5ナンバーの感覚を取り戻したように。


あの時はラルフが悪魔の様に思えた・・・・・・・何度も後ろから突かれて 鼓膜の裏まで射抜かれた様な感覚に 何度も震えて往かされた・・・・。


がりっとラルフの指を噛むと ラルフが

「噛み切って見ろ!・・・・俺の指はすぐ元通りになる・・・!。」

と言った。


ゆっくり 体の力を抜くと目を開けて見る。
ラルフと目が一瞬合ったが、彼がまた自分に覆いかぶさって来た。


いつもなら


ラルフを抱いて受け止め 沢山のキスをもらうのだが それが出来ず

ただ機械的に再び突き上げられる。 
気持ちを


押さえれば押さえる程 溶けそうだった・・・・。

ラルフのペニスに・・・・
大きな体に・・・・

頭がしびれて行く。


「・・・・ぅ・・・・・・。」

ラルフが擦っていた膝をぐっと掴んで 膝の周りを噛みだした。

それをうっすら見ると ラルフが


「・・・・・・声出せよ・・・・・・。もう・・・・・・・・・中は・・・・とろとろだ・・・。」

と口角を引き上げて笑った。

ナオは 顔を歪めて横に首を振り 唇をかみしめる。







また力まかせに暴れて抵抗してくるのかと思っていたら、
そっぽを向いた。 

ラルフは彼を眺めるとしみじみ



「・・・・・・・・ホントに・・・・・・男になったな・・・・。」

と言ったが 自分の嬉しそうな声にびっくりし 悲しくなった。

ゆっくり・・・・その思いを伝えようと ナオの膝を片方持ったまま 深く動きだし

「・・・・・・っ!・・・・・。」

ナオの喉が鳴る音を聞く。





















幾つものクッションを腰の下に当てられ 後ろから犯されていた。
悲鳴も上げ尽くし 止めてくれる様にラルフに懇願したが 聞く程彼は獣になったように

ナオの言葉に耳をかさなかった。

ラルフの体を遠ざけようと 手首を掴まれたまま体を捻り、精一杯腕を使って押し返したが 自分に押し入る動きは止まらなかった。

腕を離すとナオは ラルフに悪態をついてベッドに両手を付いた。
背中に付いた引っかき傷を丁寧に舐めながら ピストンしているとナオが

「ぁああ・・・・・・・ぁ!!・・・・駄目・・・・もう・・・・ああ・・。」

と感極まったように 肩をすくませた。
がつんがつんと ラルフがナオにぶつかると、腕は震え自分を支えるのが難しくなった。

ぬるぬると愛液にまみれたナオのアナルが締り ラルフを喜ばそうと蠕動を始めると彼にも
己の腰を支配する様な異常な興奮が 背中から這いあがってくる。

逃れようとするナオの体は更に細く前に伸び 手が宙に浮く。

「は!・・・ああ!・・い・・・・いく!!・・・。」

ナオが押しつけられているクッションはぺちゃんこになるまで押されたが すぐ元の高さまで復元しラルフの動きを助けた。

ナオを掴んでいるラルフの片手に手が伸び引っかく。
それでなのかどうか判らないが、ふとラルフが動きを止めナオの耳を舌で犯すと

感じ切った声でナオが

「あああ・・・もう・・・・い・・・・き・・・たい・・・。」

と屈辱に声を絞り訴えた。

はあはあと呼吸しながら ナオの引っかいて来る 彼の手を見る。
猫のように爪が少しだけ引っ掛かり もやもやと動く彼の指を見ているとつい 
彼の中にある自分を ぐるっと回してしまった。
痛みに 身を捩りのけ反って前に這いだそうとするナオ
押さえ付けると

「何処に・・・・行きたい?。」

と聞く。
こんなに罰を与えて置いてまだ許してくれていないのかと知ると 
ナオはベッドに突っ伏して泣きだした。

それを見るとラルフはナオの背を撫でる。

「・・・・ゆ・・・るして・・・よォ・・・。」

優しくされたので ナオは懇願するが・・・・

「・・・どっちをだ?・・・・俺の愛に答えない事。・・・俺を置いて死ぬ事・・・・?。」

ラルフは暗い声で 返して来た。

ナオは本能的に 逃げたくなり体を抜き足掻いたが ずるずると引き戻され腰を思いっきり引き戻される。
グイっと頭を押しつけられ、突き上げた尻の中心に熱い物が当たると 心底怖くなって大声を出した。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

32 放鳥

2014-04-03 | 悪坂を転がる

「借りが出来た・・・・・。」

自分の頬に触れていた手を取り 指先に何度もキスをして 
アイリスの手が甘いと気が付いた。
調子に乗りながら彼の指をしゃぶると アイリスの指はふやけて桜貝の様になる。

そのまま指の股まで舌を伸ばしていると アイリスがくすぐったそうに 肩をすくめた

自分の体の上で同化していたアイリスが 首を上げたずねた。

「・・・・・・・ラルフ・・・。」

「ん・・・。」

自分の首に 長い事キスしていたらしい・・・。
彼の唇が離れた所が肌寒くて すぐに肌がすくみ上がった。

背を包んでいた手で すぐアイリスの頭を押し 自分の場所に戻した。



「・・・・俺に・・・治療を受けろって・・・・言うんだ。」

思い出したように アイリスがウーラヴに言うと

「・・・・・・・私も・・・・・・君が生きてる方が・・・・嬉しいよ・・・。」

と静かに答える。

アイリスは首を また上げながら


「・・・・・それは無理だよ。・・・・。」

と、小声でつぶやく。



「・・・・俺の 望みは最後までウーラヴとラルフ・・・・一緒に居る事。」

言い終わるとゆっくりウーラヴの首の 元の場所にキスをした。
その動くアイリスの背中を見ながらウーラヴは

「君が全て忘れても!・・・信じてくれ・・・・・・・ずっとそばに居るし 愛してるから・・・。」

「・・・・こんなに幸せなのに・・・・それを 捨てろなんて・・・無理だよ。マスターも俺の気持ちは 分かるはずだよ・・・。」

「・・・・・・。」

苦労を強いて来た張本人の自分には 言葉が無い。

ごくりと自分の喉が不自然に動き

苦い味が 蘇って来た。


肯定も否定も出来ず、

「・・・・すまない・・・・。」

と、謝まるしかない。


背中に向かってウーラヴが謝ると アイリスは体を捻り

ウーラヴの瞳の中を必死に覗いた。

アイリスは

マスターの言葉に 不安を感じたのか 
彼の頬を掴んで擦り 念を押す様に。

「・・・・・・ウーラヴのせいじゃない!・・・・・俺は遊び道具で 終わった方が・・・・いいんだよ。それが 幸せなんだ。・・・・・・・・だから・・・・。」

・・・このまま 一人で逝かせて欲しい・・・・。

静かに覗きこみ 呟くと、ウーラヴの瞳が 悲しみで暗く深くなった。




自分だけ

一番楽な道を選ぼうとしているのだ 

  アイリスの唯一の愛 という名前 それを貫く為。

彼は 俺の魂の行く所まで着いて来る。

・・・この体から魂が抜け落ちる時 彼もまた・・・・・そうするつもりなのだ。

それを自分は止められない。

自分が マスターを殺してしまうかもしれない。






二人で抱き合って寝ていたが、朝だと言うのに目の前がぼんやりした。

耳の奥に毛布でも入れたように 音がこもり ぐらぐらと部屋が揺れている。
ぎしぎしとウーラヴが起きだして 自分を抱き起そうとしてくれているようだが 
それに反応して起き上れない。

・・・・・あれ・・・・・。

腕をとにかく伸ばして体を支える物を掴もうとするが まっすぐ伸ばしている筈なのに 腕すらもゆらゆらと回っているようだった。遠くで ・・・・



「・・・・痛みだ・・・・お前の体は痛むと 眠くなる様にしてある・・・・。大丈夫・・・そのまま寝ればいい。・・・・私が 調整して上げるから・・・。」

と ウーラヴが自分の上から話しかけていた。

見上げようとすると もうやけに眩しくて 彼を見て居られなかった。
頬に触れるウーラヴを感じると ア
イリスは眠気に抵抗するのをやめて 目を閉じた。



まっ暗い所に 落ちる前に 時間が無い・・・と少し思う。














その頃ラルフは 
官邸で仕事をして暫くして終わると 湖の家に帰る事にした。

すぐ帰らなかったのは 二人・・・・ナオが自分を 愛してくれなくなるのではと 怖かったからだ。

一時自信が無くなったが、ルーリッジと仕事をするうちに やっと自分を取り戻したのだ。





「・・・行って来る・・・。」

とルーリッジに言うと 彼は呆れた顔で溜息は付いたが 拳で上手くやれと言う様に 胸を軽く突いた。

頷くとラルフは車に乗り込む。
辺りはラルフの逃亡を隠す様な暗闇が 前に迫って来ていた。
行く先を見てバックミラーを見ると 恐ろしく赤く色ずいた夕日が
自分に向かって光っているようだった。

通いなれた道をナビシステムを使わずに自分で運転していく。 
ついこの前事故った場所に差し掛かる 夜になり大した形跡も見えずに通り過ぎる。

車を置いて 森の上に立つと木々の匂いが全身を包み 洗礼してくれているようだった。
初めて ナオを連れて入った森もこのように匂い立ち
二人を包んでいた。

昼の光に満ちた森に 受け入れられたように 進んで行くナオを
自分は迎えに行くようにこの坂を下り 小枝を踏んで行き。

森から溶けだした妖精の様に微笑む彼を 自分の物にした
その時の感動を今も忘れてはいない・・・・。


夜が 自分を阻むのか それとも自分がそう感じただけなのか・・・・
大きな決断を暗闇が 目の前で求めているかのように 暗い森の空気は重かった。

何度かつまずいて 手足が汚れる。


下まで行き道が平らになると、灯りを見つける。それは見慣れた自分の家だった。
コテージの中にぼんやりと小さな明かりが付いている。

ほんの小さな明かりに目の前の湖は その光を揺らして弄ぶように反射していた。

動きの無いコテージの光で揺らめく湖面・・・・・コテージを見つめ直すと ラルフの心にもメラメラと光が宿った。

その怪しい光を心から消せぬまま コテージのバルコニーの階段を上ると木が軋んだ。

・・・・・・そっと上がったつもりだったのに 木が軋む。・・・・・


ドアを開けて暗いリビングに入って行くと 外から見た小さな光の元は ランプだった。
半開きになったカーテンから小さく光ったランプが見えていたのだ。

二人はもう寝てしまったのか・・・・時間を見ようと腕を擦ると 時間が浮かび上がり同時に アイリスのブレスレットの光も近くで 浮かび上がった。

マスターの来訪とペットの所在を お互いに知らせる物だった。

光の場所に目を凝らして見ると 暗がりからナオの姿が浮かび上がり、
お互いが見つめているのに気が付いた。


珍しく

きっちり服を着たナオの姿を目で追うと ナオもラルフだと解り、少し残念そうに目を伏せた。
なぜ・・・・・

ラルフが聞こうとすると ナオが自分に近ずいて腕を引っ張った。
腕を引かれながら 玄関前まで来ると待ち切れずに
ナオの腕を掴んで自分と向き合わせる。

ナオは 尚も残念そうに自分を見ようとしない。



「・・・・ラルフ・・・・話が 有るんだ。」

「ああ・・・・。」

と答えてラルフは冷静に 彼の話を聞こうとした。

「また調整を受けたんだ・・・・・・俺。・・・・・それで ラルフに頼みたい事が出来て・・・。・・・・怒るかもしれないけど 聞いてほしい。・・・・・・・ウーラヴが・・・・。」

予想はしていたが 待ち焦がれていた声で恋敵の名前を呼ばれると 心臓が漠々と動きだす。

「・・・ウーラヴが・・・?。」

やり過ごせと自分に言い聞かせたが ナオの言葉がその我慢の糸を切ってしまう。


「ウーラヴが・・・・・俺が死ぬ時・・・・・一緒に付いて来る気なんだ。・・・・・俺が マスターを殺しちゃう。・・・・だから ラルフ・・・・・その時はウーラヴを止めてほしい・・・。」

ウーラヴの心配をするナオの手が自分の体を這いあがってくる

それを一瞬払いのけると ナオの動きが止まった。

「ラルフ・・・?。」

自分にすがってくれるナオの顔を眺めながら 体が熱くなっていく・・・・。




「それで・・・どおしろって・・・?相思相愛の相手くらい自分で助けろよ。・・・一人前の男に してもらったんだろ・・・?。」

と言いながら 一歩引いたナオに近ずいた。

「・・・・・。」

青ざめたように見上げるナオだったが 怒りの様な表情が浮かび それが今までになく彼を大人っぽくしていた。

ラルフはナオの額の高さに変化を感じ 伸びた背と存在感の増した肩を見下ろした。

ナオはラルフの圧力に耐えながら けなげに睨み返していた。

つい・・・くすっと口元がゆるんでしまう。 ナオが


「・・・・何だよ!・・・・今までお願いなんてした事無いだろう?・・・最後の願いぐらい 真面目に聞けよ!。」

と噛みついて来た。
ぐいっと更に前に出るとナオは引かず 自分だけを目で押し返そうとしている。


・・・・・・何と言う事だろう・・・・・・。


一瞬にして自分の中に 将来自分の様な体を手に入れたナオが 
自分に怒りながら迫ってくる姿を 思い描いてしまった。
下品に舌打ちして怒り 文句を言いまくるがそれでも・・・・自分に言葉を求めて来る 彼の緑の視線。

それを自分は うっとりと・・・・・・

許す。

それを今心から 欲しいと 望んでしまった。


がばっと覆いかぶる様にナオの体にのしかかると 彼はのけ反って自分の体重を支えた。

「な!!・・・・・に・・やって・・・・。」

ナオが自分の体を押し戻そうとしたが その抵抗も 小気味よくくすぐられた程度で キスの邪魔には成らなかった。

「俺に・・・言う事聞かせたかったら・・・・・男らしく ぶっ倒してみたら・・・?。」

そう言うと脇を持ち上げ そのままラルフは自分の部屋にナオを 持って行ってしまった。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

31 放鳥

2014-04-03 | 悪坂を転がる

うねうねと生き物の様な道は続く。

ラルフはもう為すすべもなく ただどこかに連れて行かれるだけ。

ただしかし

行きつく所は 思った通り官邸だった。

いつもは、彼の車が通れば街灯や庭灯が明るくなるのに 今夜に限って自分の車のライトさえ点灯して居なかった。
車が通いなれた官邸の裏に静かに近付くと、黒い人型のシルエットが立っていて
その前に車が止まった。

出てこようとし無いラルフに向かって その男が

「ほら・・・・・出て来いよ。」

と声を掛ける。
ルーリッジの声だった。

彼が近寄ると車のドアは自動的に空き うなだれたラルフは 出るそぶりを見せない。

彼は 中に居たラルフの服が破れ泥だらけで あちこち傷が付いている事に気が付くと

「・・・皆帰った後で良かったな。」

と呟いて屋敷に向かって歩き出す。





ルーリッジが家の中で待っていると ラルフが重い足取りで入って来た。
彼が靴まではいて居ない所に気が付くと 彼は呆れて笑うと キッチンの方に消えて行った。

まずは落ち着かせる為に 彼の好きな酒を飲ませよう・・・・。

そう体が動く間に 彼の足もとから興奮・・・震えに近い物が這いあがってきた。
彼が自分の前に晒した姿が 衆目の前ではありえない姿だったからだ。

肩口や 背中に枝で打たれたのか蚯蚓腫れを作り 敗れたシャツからそれが覗く、ベルトもどかに消え髪や体の至る所に土や葉が付いていた。

・・・・・・ナオにでも 襲われたのか?・・・・と冗談を言いたかったが

彼の打ち沈み 何処にも開いていないうつろな眼差しが・・・・・自分にある感情を また懐かせた。




椅子に横向きに座ったラルフの前に グラスを置く トクトクとわざと音を立て酒を注ぐ。

琥珀色に揺らめくその液体にちらっと目線を動かすと ラルフはそのまま見つずけていた。

ずいっと指先でラルフの方にもうひと押しする 
彼は、ゆっくり手を伸ばして取り、それを口元まで持って行った。

上げた首の辺りから 中を流れているのであろうそれは 彼の喉仏を動かし腹の底までたどり着いた。

ラルフは、ふーっと天井に息を吐くとそのまま固まったが、すぐに効果は現れ、変な力が抜けて血の気が無かった顔に赤みがさした。

それをルーリッジは見ると



「・・・・・・・・今度は 何が有ったんだ?。」

尋ねる。






何が有ったかではなく・・・・・・何が起こっているのか?
それは ラルフが固まったままなので気が付いたが、
内容まではルーリッジもラルフに聞くまで解らない。沈黙がつずき 答えなさそうだったのでもう一度

「・・・・どうしたんだ?」

と聞き返した。

しかしその時はもうラルフの心は ここに無くうつろな彼に戻っていた。

二人の元に帰っていた・・・・・。






二人の荒い息が体中にまとわりつき 抱き合って居ても熱過ぎてすぐに場所を変える。
同じように唇を求め見つめ合うと お互いの心の中まで理解が出来た。

またその喜びできつく腕を体に巻き抱き合った。

もう何の制約も感じない手は ウーラヴのどこに行っても許される。
その度に声が漏れ自分の名を聞くと 自分が高まって行く。
 
居ても立っても居られず抱きつくと 彼を倒してしまった。
そしてまた再び 彼から自由な愛撫を受ける。

それが繰り返され 手が往きつくのはお互いの・・・・。






ふとラルフの首はガクッと 落ち
もう一度グラスを持とうとする 

それをルーリッジに止められた。
すぐに 持ったグラスの中にトクトクと酒の重さが加わると ラルフは口元に持って行く。




困ったような顔でウーラヴに自分の物を触れさせていたが 
それはもうぬめりを帯びて その行為に耐える硬度を持っていた。
指先でゆるゆると潤みを掻き廻されて 根元を上下されると

「・・・ぅ・・・・・・。」

と声が漏れる。

「怖がらなくていい・・・・。」

とウーラブが優しく言う 

アイリスが

「マスターに・・・こんな事するなんて・・・・。」

彼を見つめると

「これが 初めと言うだけだよ・・・・。いずれ体が大きくなれば ラルフとだって そうするかもしれない。」

「ええ・・・?。」

驚くとアイリスは肩をすくめる。

ウーラヴはそれを見つめてクスクスと笑い 唇を近ずけながら

「かわいいな・・・・。」

と呟いた。



キスした後ウーラヴがアイリスのそれに唇を被せると 

彼の髪はアイリスの脚を隠す様に掛かり広がって行く。
その中で 彼にきつく吸い上げられる度に 後ろに着いたアイリスの体を支えている手は ぶるぶる震える。
耐えかねて

「あ!・・・・あー・・・・も・・・・もう!・・・・。」

アイリスがウーラヴに懇願する。 
ウーラヴは彼から唇を離した。
ふらっとそのまま後ろに倒れるアイリスから 髪を手で持ち上げ

ウーラブが

「・・・何だか髪が伸びるのが早くてね・・・・。迎えに行った時は君ぐらいだったろう?。」

倒れたアイリスの髪に手で触れた。
そのままゆっくりアイリスに近ずく

「・・・・・本当に・・・・・待ってたんだ・・・・・。」

静かに言った。
アイリスは半身を立てるとウーラヴと向き合い

「・・・・ウーラヴ・・・・本当に いいの・・・?。」

と呟く。 
ウーラヴは頷きながらキスをし、それが合図で アイリスは体をウーラヴの上に乗せようと移動し始めた。













以前に、女に振られて憔悴した様なラルフを見た事が有ったが、

扱く当然で どこかさばさばしていた。


今のラルフの顔には おしまいと 書かれている・・・・みたいだった。



しかもそれが アイリスの終わりと言う幕切れだと言う事が分かっているので






「俺は・・・・ナオを 失いたくない・・・・。」

ラルフは悲壮な顔でそう言った。

「それは お前の我儘だろう・・・・?。覚悟が出来てないのは お前だけなんだよ。」

と言う。

「俺は・・・・・・・・・・認められない!。」

ラルフは首を振る。

「お前な・・・・・・、良く考えろよ?何度も言うが・・・ナオにとちゃ・・・死刑宣告だ。お前やウーラヴの記憶を削り取って 誰も知らない所でまた体を売って一生暮らすんだ、ナオが うんって言うはずが無いだろう?・・・。」



ラルフがじっと自分を見つめる・・・・・。その目の奥に自分はうつっているが 別な者を思い描いている・・・・。


それでも俺が 映っているその目

・・・・それだけでも 自分は満足。

「・・・・・。」

どんな事をお前が望もうとしているのか。
何度でも 付き合ってやる

さっきの震えは 自分の存在を感じた・・・・・。

彼・・・・ラルフに自分が必要なのではなく
彼の為に自分だけが能力を発揮できると言う 意義を自覚した武者震いだった。 

やっと自分を好きになれる瞬間が来たのを 体が知らせたのだ・・・。


「俺なら・・・そっと見守るよ・・・・・・。説得・・・しようが無い。・・・・だろう・・・?。」

おれは 形だけでも同情したように 気の毒そうな顔をしてみた。
それは・・・どうしようも無い。俺は ラルフだけが・・・・大事なのだ。




それを見透かしたように・・・・・・



「いや・・・・。」

と椅子に背を戻し

「そうじゃない・・・・。」

ラルフは悲しそうに 首を振り

「・・・・・俺は・・・・違う。」

頭を押さえ顔を覆ってしまった・・・。



それでも・・・・・・

俺は お前が大事だから 一緒に悲しむ事は出来ない。







「・・・・・・・・・・じゃあ・・・・・・命令しろ。」

ルーリッジはラルフが自分を見るまでじっと立って 待っていた。
それを彼がどんな風に感じるかなんて もう関係ない。

「ルーー・・・・・。何を・・・・?。」

この世ので 家族でさえ見た事が無いであろう 戸惑い助けを求めるラルフの顔を
この一瞬だけ じっくり観察しながら 

もう一度

「・・・・・・・アイリスを・・ナオを生かして残したいなら・・・俺に命令しろ!。・・・・・説得できる何かを、探せって・・・・・俺に命令するしかないだろう・・・・?。」

と言った。

「でも・・・・・・。」

「・・・・・・俺は用意する。・・・・。」

ラルフはゆっくりと立ちあがった。

「・・・・・・。」



ルーリッジが見ていると ラルフはホッとしたように表情を崩し 目を潤ませゆっくり 俺の為に貯めた・・・・。

ルーリッジはラルフがそれを流す前に いらいらしたように腕を上げ 彼の肩を組むように腕を廻す。そのまま襟の後ろを掴むと ラルフを引っ張り バスルームに連れて行った。

色々な明かりを付けると 自動でバスタブに湯が落ち始めた。

首根っこを持ち上げられ為す術も無く後ろに引っ張られると 廊下に手が当たり掴もうとする度に力で引き剥がされた。

バスルームには入ると ルーリッジはタオルを準備したり 辺りの物を動かしながら

「脱いだもの 捨てるからこっちに入れとけよ。・・・・傷は後で見るから 良く洗っとけ。」

と忙しなく動くルーリッジ

それを見ながらラルフが

「・・・・・ルー・・・・・お前もしかして ・・・・・・・・。」

背中越しに言った ルーリッジは心臓が締め付けられるような きつさを感じた。

「・・・。」

誤魔化そうと聞えない振りをする。



汗が・・・・出てきた。

「薔薇が・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

薔薇の奴・・・・余計な事言いやがって・・・・奥歯を噛み締めながら
ルーリッジが山火事に合った様な胸の奥で必死に 呼吸を乱すまいとしている。

一瞬 お互いが何を言いたいのか解らず 時間が立ったがラルフがごくりと喉を動かす 彼が何か言葉をを飲み込んだ。



「・・・ああ!!もういい!・・・忘れろよ!!・・・。」

そう言うと ラルフはそそくさと全てを脱いで いつもの通り バスルームに飛びこんでしまった。

脱いだものをばさばさと浴びせられ それを一つ一つ拾い集めた後に シャワーを浴びているラルフの姿を見る。

そっと扉を開け 壁に手を付いて湯を浴びつずけるラルフの背中に


・・・薔薇に 俺がお前を好きだって言ったかもしれないが、誤解すんなよ。

と・・・・・言わなくてはいけないだろうか?。と・・・・ふと思う。


ジャージャーと湯を浴びながらラルフがゆっくりと横を向き
髪の中に鼻先が見えた。


「・・・・・・・。」

ルーリッジは少し安心したようにキッチンに戻り 自分の端末に向かった。






仕事をする・・・・。

ラルフに命令させた仕事を こなす。

それが自分に・・・自分を捧げる事なのだ。
・・・自分の為だった。

こんな時は 驚くほど仕事が出来る
それが誇り。


暫くすると ラルフが温まったのか いつも以上に警戒したようにバスローブを体に巻き付けてやって来た。
それを無視して 仕事をしているとラルフが業を煮やしたように自分でコーヒーを入れ ルーリッジの前に置いた。
ちょっと無視していたが 手が空いた拍子にそれを取り一口すすると ラルフが

「・・・・・ごめん・・・・・・。」

と謝って来た。俺は・・・・・

「・・・・・いいさ。・・・・・・こうやって次の 面倒くさい仕事もできたしな。」

と呟く

「もう 考えない・・・・。」

とラルフが怒って言うので

「じゃあ・・・・もう俺はお前がどんなに辛くなっても ナオを連れ戻したりしないからな?。」

といつものように 意地悪を言って見た。

「・・・・・正直 俺には耐えられないと 分かってるのに・・・・ナオをペットのまま死なせたくないんだ。」

とラルフが言う。

「ふん・・・・尊厳死は良くて安楽死は駄目って・・・・ペットに取っちゃ迷惑な話だな・・・。」

と俺は画面を消すと ラルフの悲しそうな顔を眺めた。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

30 放鳥

2014-02-28 | 悪坂を転がる

おかえり

と、ネクタイを引っ張られて 唇を啄ばむと笑ってナオは 俺が今来た湖の方に走って行った。

湖畔には彼が好きな髪を 風に揺らせながら アイリスの方を見るウーラヴが 白くて長いローブの裾を翻していた。

俺のシャツを着たナオは 振り返って俺を一度呼んだが 
ウーラヴに追い付くと 彼の腕に飛び付いて

二人は湖の方に歩き やがてバランスを崩して 転んだようだ・・・・・。

俺は 思い出したように首からネクタイを取ると 自分の家の前の軋む木の階段を数段上がり・・・・ナオが戻っては来ないかと・・・・・姿を探す。

二人の笑い声が高く森の上まで届いていた その空を見ると 風は雲を動かしている。
抜け殻の家に入り・・・・・・自分の忍耐力を試す



気が付くと 光が思いのほか時間と共に変化し 風が止んでいた。
二人がこの場所から居なくなってしまった気がして 自分の手首のバンドを触ると 求めに応じて機械はパートナーであるナオの状態を表示した。

ナオの心臓の鼓動は確かに動いている。
急に彼に触れたくなって その波動毎手首を擦り、立ちあがって窓のむこうに彼を探す・・・。

行こうか・・・・。

出入り口の柱を掴むと 草の高い部分から はしゃいだナオの声がして 彼は何かを喋っていた。

ほんの少年の様に 草原から草をむしって振り こちらに帰って来る。

近くなり よく体や表情を見ると、細かな傷があちこち付いているが 
本人は何一つ気にもせず・・・・。
俺のシャツは 瞳と同じような緑の草の汁が付き まくられた袖は濡れている・・・・


「俺には良く見えるんだよ・・・・。やっぱりそれっ位はいい所が有ったって・・・・いいはずだよね・・・。」

ナオはぶつぶつ何か呟いていた。

何がいい所なのか・・・・?

ラルフが 不思議そうにドアの柱に掴まって立っていると 
ナオは自分が居る事に気付か無い様子で 家に入ってきた。


「・・・ナオ!・・・・何が良く見えたんだ・・・・?。」

前を通るアイリスに道を譲りながら 声を掛ける。 

着替えさせようとシャツをクローゼットに取りに行くと彼は そのままキッチンにまっすぐ歩いて行った。

「・・・え?。」

と、コップを迷いもせず壁から取り、シンクの近くに突き出す 
水がそのコップに並々と注がれ 止まる。




ラルフがシャツとカーディガンとズボンを持って行くと ナオがおいしそうに その水を飲む所だった。

ごくごくと動く喉


彼が・・・・・後少しで 死ぬなんてとても思えない・・・。

「何・・・?。」

飲み終わって ナオが口を手で拭く時に聞き返されたが 何を彼に聞きたかったのか思い出せなかった。

「いや・・・・寒くないか?。」

とラルフがシャツを脱がそうとすると ナオが

「これからウーラヴが 教えてくれるんだ・・・・。絶対に同じ物・・・。」

「何・・・・?。」

新しいシャツを受け取らずに 緑の瞳を輝かせる。
しばし瞳に魅入っていると彼は

「俺の生まれた星にも絶対ある物なんだって・・・・。」

と自慢げにラルフに話しかけた。
その嬉しげな様子が 嬉しくて・・・・

「へえぇ・・・・。」

と つい顔がゆるむ。

優しそうな・・・・・カーディガンを首元に掛け包んでやると ナオが・・・


「ラルフも・・・・見においでよ・・・・。」

と誘う。
俺は 少し震えるが それを隠す様に押さえた声で


「・・・俺は・・・・飯を・・・作るよ。・・・・・後で 俺に・・・・ナオが教えてくれりゃいい・・・。」

とカーディガン越しに彼の胸に触れた。
ナオはちょっと残念そうに 一息付くと 俺の手にそのカーディガンを掛け


「分かった。」



頷いた。


「・・・んーーーなんだろうなぁ・・・・。」

もうナオの心は 俺の前には無い。
しかし 彼は まだ自分の前にいる。・・・・

「さ・・・寒いだろ・・・これ!。」

そう言って もう一度肩にカーディガンを掛けようとするが ナオは手で払いながら 汚れるから帰ってから着ると言う。
すぐ来た通りに はだしで草むらに飛びおりると また脚をちょっと上げながら・・・・

草むらに消えて行く。

それをじっと見ていたが ラルフはふいにドアの柱を捕まえ 
力一杯両手で握りしがみ付いた。

いつまで経っても そこから離れられなかったが 風が体に触れて行くと
全身の力は 抜ける。

日はまた風を呼ぶように傾いたらしい・・・。 
どこかに帰る支度を 空に促しているようだった・・・。










ウーラヴの話すネタが気になった訳ではないが、
前々から気になっていたいた事を確かめるために、ラルフは二人の事を小型の虫型カメラで追ってみた。小さなカメラで 彼らを盗み見る。

ちょうど二人が森の中の木の根に座り 何やら話している所だった。

「分かる物なの・・・?。」

「ぁあ・・わかるさ。」

とウーラヴが 答えて居る。

「・・・・私が何度も君を 蘇らせて来たから良く解るんだ。確かに君は・・・アイリスだよ。」

「・・・・・どの辺が・・・・?。」

ナオはきょろきょろと自分を少し見ると 不安そうにウーラヴを見つめる。

「・・・先代のアイリスさん・・・とは違いすぎる気がするんだけど。背も低いし 俺はそんなに綺麗な目じゃない。」

肩を丸めながら言う彼に ウーラヴは膝が触れ合うまで近ずくと

「その目の奥・・・・光っ?力って言うのか・・・・。言い難いが 確かに・・・・君なんだよ。私が植え込んだアイリスは確かに君の中に存在する。触れ合えば分かるのさ・・・・5ナンバーだから。」

アイリスの手を取った。

ふと見上げるアイリスの瞳に木漏れ日が反射して より深く色を放つ彼の目を
ウーラヴが うっとりと眺める。

自然に手が上がって行き 肩から頬に アイリスはその手に一度頬ずりする様な仕種を見せる。


「おぉ・・・・・。」

そう感嘆の声を漏らすと ウーラヴはアイリスに近ずいて抱きしめた。

「・・・・会いたかった・・・・。またこうして 話がしたかったんだ・・・・。」

きつく抱くと少し体を離す。
アイリスの目を見ると少し紅潮した頬は 薔薇色に染まり薄い唇も ほんのり赤みがさしていた。

嬉しそうで悲しそうなアイリスに 自分の唇が近ずくと 

彼アイリスの方から吸いあげてくれる。

脳天まで痺れる・・・あの夜 感じた陶酔が蘇り
ふらふらしそうになった。



・・・・美しい髪の長いアイリスが 
自分の肩を引き寄せ 見つめていた。

全てを捧げる様に 彼の頬に両手を差し出すと目が伏せられ 唇が触れた。

自分の腕がアイリスの髪を突き抜け天井に向かって伸びていたが 
唇同士が触れ合った途端 自分は崩れそうになった・・・・。
そして彼の唇は 首から胸に・・・・。

後は・・・・遥か昔の夢だ。







うっとりし過ぎて・・・・・すっと唇が離されても少し気が付か無かった・・・。
アイリスが自分の瞳をじっと覗きこんでいる。

彼の目は戸惑ったように、答えを求めていたが

自分は精一杯・・・

「・・・・・・・・義務・・では無いんだ・・・・。私たちの愛は・・・・それが 義務では無い・・・。」


と 彼に言う。


ナオはそれを微妙な顔をして聞きとり なぜ? と尋ねようとする。


「愛してるよ・・・私のアイリス。君を・・・ホントに 好きなんだ・・・。」


と告げた。


アイリスの顔から霧が晴れたように 憂いが消えもう一度すり寄って来た。
彼がウーラヴの手を取りながらキスをし


「俺もだよ・・・・・ウーラヴ。・・・・・・俺のマスター。」


と呟いた。









その様子をラルフは コテージの小さな椅子に座りながら眺めていた。


ウーラヴに 自分の飛ばしたカメラを見つけられ、怒りの表情で睨まれる。 
どうやったのか・・・・・それを落とされるまで


ぼやっと 眺めていた。
ふん・・・・と 少し鼻を鳴らすとコーヒーを取りにキッチンまで行く。


ごくっとカップに注いだコーヒーを飲むと 
この湖に さらっと自分の体を改造して現れたウーラヴの事を思い出した。

たった一度だったと言う 
自分の愛した アイリスとの逢瀬。


もしただの若返りをしたければ シオンの様に別な場所にリモート出来る体を置き
それに意識をシンクロさせればいいのだ。
それなのに・・・原本を想像も出来ない苦痛の伴う処置を施して
やって来た。


それほど アイリスと したい事を 義務ではないと言ってしまう・・・・ウーラヴ。
馬鹿としか言いようがないが・・・・。


もし・・・・彼の気持ちがナオにちゃんと判れば 彼もそれに答え 長生きしようと考えるだろうか・・・・。しかし・・・・・・・これ以上親密にさせてしまったら、俺の居場所が・・・・・


残りのコーヒーをシンクに流すと カップの中に何も残らない。

ラルフは 食事の支度をゆっくりする事にした。





 
二人はやっと戻ってきた。
・・・・・・・本当の兄弟の様に 話し方のスピードまで似て来たようだ。

それを 嫌がっている自分をどこかに潜ませたまま見て居た。

二人を許しているように 演じながら・・・・。



食事後、普段しない事で疲れたのか ウーラヴは早々に自室に引きこもった。

俺とナオは気まずくは無いのだが 言葉少なにそこに居た。

脚を組んで 酒を少し口にすると猛烈にアルコールが廻る。



ナオはさっきから自分を見つめていた。

「今日は 楽しかったか・・・?。」

「うん・・・。」

とナオが答えた。

「俺は お前と叶えたい夢が有るんだ。」

と酒の力を借りて言う。

「・・・うん・・?。」

ナオは無理難題なのかと 覗きこんでいた。

それをまた酒を煽りながら横目で見ると、ラルフは

「・・・俺の話は無理だって・・・思ってんだろう・・・寿命の話だから。」

「・・・・じゃないの・・・?。」

ナオは絡んできたラルフの目線から 体を引きそっぽを向いた。

「フン・・・・。お前は 俺がこんなに訴えてるのに分かっちゃくれない。・・・・・だから100年越しのあいつの望み何か分かる訳は無いな。・・・・・。」

と怒るとグラスの酒を一気に飲み干した。

喉を焼き付け鳩尾辺りまで沁みて行く。



「100年越し・・・・?ウーラヴの?。」

ナオがラルフに問う様に椅子に座り直す。

「そうだよ・・・・・。ずっと・・・前から 分かってた。」

ラルフが 苦々しく呟くとナオは益々目を見開いて 迫って来る。

「・・・・俺に 望み・・・?ウーラヴは何も言ってくれないのに・・・・・・・・?。」

彼は黙っている俺の方に手を近ずけたが 俺はその手を掴む事は出来ず見つめたまま。

「ラルフ・・・・・教えて・・・・俺に・・・・。」

と、・・・・・ナオに頼まれた。





俺は 彼を治す為に・・・・・・・ 

ナオに それを 教える。







「・・・ま・・・さか・・・・義務・・じゃ・・・ないって・・・・。」

と青ざめるとナオは 立ちあがりウーラヴの部屋に歩いて行く。

ラルフはもっと酒を飲んで おかしくなってしまいたかったが 

酒の瓶を傾けるとグラスに一滴も 落ちなかった。

まるで・・・・・今の自分に掛ける同情の余地も無いと 酒に言われているようだった。

ラルフは そのまま走り 家を出る。



その夜は月が少し低く光り 幸いにも森の中を照らしていたが それでも何度も木の根に躓いた。痛さも苦しさも何も感じない 自分の車にたどり着くと 乗り込んだ。

車の室内に草や土の匂いが充満してハンドルに額を乗せて居ると 

何処からか二人の喘ぎ声が聞えて来るような気がして・・・・かき消す様にエンジンを掛けた。

走り出して何度か道をはずしそうになると モニターから警告音が響いて操縦を奪われた。

いくらハンドルを切ろうがブレーキを踏もうと 車は静かに走って行く。

何度か車に悪態をついてぼんやり前を見ると 目の前が霞んでいた。両手で目を覆うと

隠していた感情がやっと 溢れて来てどうしようもなくなった。














「ウーラヴ・・・・・入るよ・・・・。」

アイリスは許しも待たずに部屋には入ると 

彼はベッドに寝そべって本を読んでいた。

「・・・・ああ・・・?うん。」

前髪を頭の上まで掻きあげるとウーラヴは ここに座れと言う様にぽんぽんとベッドの端を叩いた。そこに座り、静かにしていると 背をウーラヴが擦りだした。

程なく彼がキスをするのでアイリスは ちゃんと返す。
舌が少し重なると感じると、どっと喉の奥からぞわぞわと快感がやって来て舌の付け根が潤いだす。

「・・・ど・・・どおした・・・?。」

びっくりしたようにウーラヴが聞き返すので もう一度同じようにキスをすると 今度は息が荒くなって 体が熱くなるのが判った。

「・・・アイリス・・・。」

「 ・・・・・・・・俺・・・ラルフじゃないから・・・この先どうしていいか・・・解らないよ・・・。」

そう言って びくっと震えるウーラヴの髪を撫でる。察しのいいウーラヴは 彼の一言で理解したようだ 。


「ラルフに・・・・・言われたんなら・・・・・・気にしなくていい・・・。」

穏やかに言いたいはずなのに ウーラヴの表情は雷にでも打たれた時の様に 驚いていた。

「いや・・・・・そう言うんじゃなくて・・・・・俺でいいのかな・・・・・って・・・・。」

と、アイリスに呟かれた時には
勝手に体が動き彼を抱きしめて居た。


「君じゃなきゃ!・・・・・・君じゃ なきゃ・・・・・・駄目・・・。」

「ウーラヴ・・・。」


抱かれながら 段々彼の鼓動が激しく成って行くのが自分にも伝わって来た。もう息苦しい。
目を確かめる様にお互いが覗きこみ
そのまま唇が 合わさって体はベッドに倒れ込んだ。

お互いにお互いの服を脱がし合い肌を重ねると手を掴み合う。
そのまま絡んで体に巻くと

肌の上に喜びが走った。


「私に!・・・見せて・・・・。」

と ウーラヴがアイリスの胸を押して自分から離すと 
彼はアイリスの体の両脇に手を付いて 見降ろした。

「・・・・・。」

アイリスが息を整えていると ふいにウーラヴの目に涙が溢れて来た。
それを不思議そうに指で取ると

「・・・・・・どんなに 夢をみたか・・・・。・・・・・・・・この重みを・・・感じる日を・・・・・。」

ウーラヴが嬉しそうにほほ笑んだ。

アイリスは その実感を完全には理解出来はしなかったが、
自分が選んだマスターが間違いでは無かったと心底思えた。
最初で最後の相手 
自分の生まれた意味は ここに・・・・・有ったのだと。
そう理解した。

ウーラヴの愛に微笑み返す・・・・。


「そう・・・・・その顔だよ・・・・。あの日の 僕を 抱いてくれた。・・・君だよ。」

ウーラヴの手が伸びて来て アイリスを包んだ。

アイリスは何度も頷いて 彼を抱きしめる。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

28 恋の後遺症

2014-02-03 | 悪坂を転がる

「 お前はアイリスに復讐する為に 彼を生き帰らせようとしていた。でなければ・・・・小さなナオミの脊髄に一つずつ杭を打ち込む様な事しない。アイリスとナオミが・・・・苦しむのを見て 少しずつ自分を癒してたんだ。」

と呟くようにラルフが言うと ウーラヴも

「・・・・・・・君の体には そのネズミを煮溶かして作り上げた 神経が 張り巡らされているじゃないか・・・・ドブネズミを憐れみながら ドブネズミの血肉を賞味しているのは 君たちメインの住人だろう。」

と呟いた。




二人は暫く黙っていたが、ラルフが

「・・・・・・・・そうさ・・・・。最初・・・高性能って言うだけで おれはナオを買ったんだからな・・・・・。」

ラルフは溜息をつきながら 残照の残り日から目を逸らした。

オレンジ色から染み出した血の様な色が最後に浮き上がり 闇が大きく世界を包み始める頃 ウーラヴが



「・・・・・・親父の物だって事は・・・・ちゃんと解ってた。・・・・・・・嬉しそうに笑ってくれるけど どこか悲しそうに感じるのは・・・・・親父の物だからだって・・・・。・・・・でも、俺を愛したアイリスは 一瞬でも存在してたんじゃないかって・・・・どうしても・・・・知りたかったんだ・・・。」

自分の胸を両手で握り潰す様にローブを掴みながら 心の内を吐き出した。

苦しそうに息を数回すると 膝を椅子の上に上げ抱える様に丸くなる。






彼は・・・・彼なりに・・・・・ずっと苦しんでいたのだろう・・・。

俺も ナオを失ってこうなってしまうのか・・・・?
ウーラヴが作ったアイリスを伴侶にして 
自分の物に成っていたかどうか、100年も苦しまなければならないのだろうか・・・・。

・・・・俺は貴方の為に 生まれてきた・・・・・

とウーラヴに言ったアイリスが 
俺を愛して 選んでくれるのかどうか・・・さっき確かめようとした。




これでナオを失ったら ウーラヴとアイリスを探し作り直すかもしれない・・・。


ルーリッジの報告の中に有った 串刺しになったアイリスの幼い体の映像を思い出した。
予備になったナンバー70から始まる兄弟たち・・・。

吐き気を覚えたドラムの子供たちの生活・・・・。俺は又その中の一人に

・・・・・・この為に 生まれたんだね・・・・

と言わせるのか・・・・。
5つ星・・・・相手の魂を感じると言われる体。
再生されれば何度でも 彼と愛し合うことは可能かもしれないが・・・・・・。

二人が 死をわかつまで・・・・・・。


そうアイリスに誓った俺の言葉は まだ・・・・・・
空っぽだと感じる。







闇が最後の赤黒い光を 雫一滴まで飲みこんだ。

「・・・・・アイリスに・・・・・何度も言われたんだろう?・・・・再生する度に・・・あんたの為だったて・・・。」

ラルフが呟いた。

「・・・!!。」

びくっと体を震わせて  ウーラヴが 彼の方を見る。

「それがあんたに対する答えだったんだ・・・・・心なんて見えない  死が二人を別つまで・・・・。そしてお互い肉体が消失した時に 心が繋がっていると解るって意味なんだよ。」

「・・・・・。」

「そう・・・・・アイリスは あんたの親父を愛してたかもしれないが、アイリスのかけらは・・・・いつでもあんたを愛した。それがあんたの アイリスなんだ。それとも・・・・完全に親父の愛を忘れたアイリスを アイリスと認めるか?。」

「・・・・・いや・・・・。」

「なら・・・・・自分をより愛してたかどうか アイリスを責めるのは もうやめろ。アイリスもナオも苦しんでる・・・。」

そういいながら指を組んで 彼の為自分の為祈る様に呟いた。

暫く闇の中で沈黙していると 部屋は徐々に灯りをともして 二人を温めた。

自分の肌が見える様に成ると 
すぐにアイリスの傍に行きたくなった。

ポッドの中で 背から幾つもの線を生やしたアイリスは水中で人魚の様に浮かんでいた。機器が接続され体が見える部分は少ないのだが ラルフが近ずいてポッドに触れると彼は温度の変化を感じたのか 瞼をゆっくり開けた。

すぐに自分の中に彼に対する愛おしさが・・・・・・脚から満たし始め 胸まで来ると ラルフの目は潤んでしまうのだった。
ポッドにおでこを付けてるとアイリスの瞳は 嬉しそうに輝いた。

ウーラヴは来ていて、いつも通り 機械に埋没するように椅子に座る。 
ぴかぴかと光る色とりどりの信号を体に浴びて居た。

ポッドのガラス?・・・・のむこうに 暖かな物が押して来るような感覚を感じ 目を開けてると アイリスのゆらゆらとした髪の間に 白い肌の額が自分の額の辺りに有った。

手はつなげないのだが ポッド毎抱くように腕を廻す。 
ポッドは冷たかったが、自分の体温で少し温まったような気がした。

アイリスも暖かさを感じたのか肩をすくめると目を閉じ 暫くするとアイリスは身を丸め ゆっくりとポッドの中で回転し始めた。


「安心したんだろう・・・・。」

ウーラヴが背後からラルフにそう言うと

何故だか 涙がどうしようもなく・・・溢れて来た。
床に座って胡座を掻いて 胎児の様に回るアイリスを見るのだが 涙はいつまでも流れ いつまでも見飽きない。








死を前にすると 人は欲と言うより自分を残したいと思う物らしい
そして残したい物が無いと 唯一自分の出来る事・・・・。

許す事をする らしい。

死から少し遠ざかった俺達には 実感できない何かを
アイリスは見つめて


彼の笑顔は 鮮やかと言うより 儚くなった・・・・。





それを見ると 俺は鼻の奥が沁みて息苦しい・・・・。

「・・・な・・・に・・・。」

と うす暗いベッドに横たわり俺に指毎手を掴まれ 貫かれていたアイリスが ふと見上げて
そう聞いた。

生きているかどうか確認するように 上下動すると 彼の顔は悶える様に左右に振れる。

「・・・ぁ・・・あ・・・・いい・・・。」

歪んだ睫毛の並びが 彼の感じている快感を表していた。
自分のくびれた亀頭からも沁み込むように 体内の熱さが伝わって来て 硬く強く動く。

薄い胸がすくみあがり苦しそうに口が開くと アイリスの声は漏れず・・・・自分を掴んで爪を立てる。

ぎしぎしと彼の腰が軋むので 手を離して片脚を持ち上げて廻すと 体は軽く裏返る。

「はあ…はぁあ・・・・ラルフ・・・。」

アイリスが自分を呼んだ。
上半身を少し起すと背の汗が繋がった所に向って流れて行く。

「・・・・ナオ・・・。」

彼の小さな腰を掴むと自分の方にそっと引き キス出来ない代わりにそっと撫でた。

「ふ・・・・・・・はっ・・・・。」

白い脚の間に揃えて膝を入れる。 彼の膝はベッドに辛うじて着いている程度だった。
昔の皮の本位しか無い 胴・・・・・自分と接続している腰骨を掴んで見ると ナオはくすぐったいのか身を起して 自分の手を掴んだ。

指一本ずつ自分から剥がそうと言うのか 指で摘まむのが面白くて自分の方に体を引き彼の行いを覗きこんだ。


「は・・・・・・・ぁ・・ぁ・・・。」

「おやおや・・・・くすぐったい・・・・?。」

そういいながら片手を離し 彼の中心に手を添える。

「あっ!・・・・・・。」

潤みを 確認する。

「ぅぅ・・・・。」

小さく呻くアイリスのペニスの先を指で擦ると 彼の小さな口はやすやすと開いた・・・・。

のけ反る様に自分の胸にぴったりと背を当て 呼吸の荒い喉を見せた。

震える手がペニスの手を止めようとするが もう止める意志は入っていないようだ・・・・。

人差し指はそこに置いたまま摘まんだ灯芯を上下に擦ると 自分の前有るアイリスの肩はすくみ・・・・・・アナルが閉まってうごめいた。

彼の中に有る自分が高ぶるのが解る。
解けたアイリスの体液が自分をより溶かそうと 濡れてくるからだ。

「・・・・・。」

「アイリス・・・・。」

つい彼の本当の名前を呼ぶと 彼の膝は少し閉じた。どくっと彼のペニスが熱くなって脈打ったかと思うと 彼の体は前に倒れる。

大きく外に出ようとするような彼の背の肩甲骨に ラルフは覆いかぶさる様にキスをした。

ぶるぶると震える手で 二人の体重を受け止めながらアイリスが

「らるふ・・・・。」

と彼を呼ぶ。 
ラルフの理性が吹っ飛び 掴んでいた彼の腰に猛然と自分を使う。

「ふ・・・ああああ!・・・。」

アイリスの肘はすぐに落ち体は頭から突っ伏したが 腰はラルフに掴まれたままだった。

膝はラルフの脚に何度も当たるが もはやベッドに着地する事はなく 打ち込まれる度に動く腿の脇にただぶら下がっていた。












シャワーを浴びて帰ってくると アイリスは離れた時のままで ベッドに横たわっていた。

「何で 来ない・・・?。」

と腰にタオルを巻き 湯気の立つ体でラルフはベッドに近ずいて座ると
アイリスは 深いグリーンの目で自分の指先を眺めていた。

「・・・・もう・・いっか・・・い。」

心ここに有らず アイリスが呟くので ラルフは溜息をつきながら

「無理は 体に悪い・・・・。」

と言った。

アイリスがゆっくり手を伸ばして来て ラルフのタオルに触れながら

「・・・・・俺の体・・・・覚えて欲しいんだよ・・・。後 1年だから・・・・。」

と答えたので ラルフはその手を掴んでアイリスを睨み

「1年あれば・・・・・ウーラヴが 解決法を見つけ出す!気の弱い事 言うな。」

と叱り付けた。
しかしアイリスは嬉しそうに また儚く笑うと

「・・・・・何で・・・?俺は最高に嬉しいのに・・・・・。最も愛する人たちに 看取られるんだもの・・・・これ以上の終わり方は無い・・・。」

とラルフを 残念そうに眺めた。


じわーっと・・・・何かが体の奥から沁み出し
ラルフが睨みつずけていられなくなると ふいに立ちあがる。


「・・・・そんなことしたら・・・・俺は・・・絶対許さない!。」

「・・・ごめん・・・。でも 俺には 二人は神様なんだ・・・・。信じたまま・・・・・逝かせてよ・・・。」

アイリスが小声で謝るのを合図に 部屋を出た・・・・。




ぎりぎりと噛み締めた歯に気が付いたが 緩められず目をつぶり・・・・

頭が壁にぶつかるまで 前に進む。


望んで 頭を壁に打ち付けたのに 中の・・・・黒くこびりついた物は びくりともせず
ラルフの頭の中に 居続けた・・・・。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする