つらつら日暮らし

今日は敬老の日(令和元年度)

今日は敬老の日である。日本の国民の祝日に関する法律では、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを趣旨として制定されている。世間としては、それで良い。そこで、仏教には「長老」という立場が存在している。現代の曹洞宗では、一座の法会の首座を指す言葉となっているが、実際には以下のような定義であった。

禅門規式に云く、凡そ道眼を具え、尊するべきの徳有る者を、号して長老と曰う。西域の道高くして臘長き、須菩提等を呼ぶの謂いなり。
    『禅林象器箋』巻6「長老」項


こちらの通りで、長老というのは、いわゆる高徳の僧侶であり、更には、「臘長き」という言葉がある通りで、出家してからの年数なども考慮されたものであったらしい。ところが、同じ『禅林象器箋』でも引用されているのだが、以下のような見解も存在していたらしい。

いわゆる長老の相、必ずしも年耆を以てせず、
形痩せ鬚髪の白く、空しく老いて内に徳無し。
能く罪福の果を捨て、精進して梵行を行じ、
已に一切の法を離るる、是れを名づけて長老と為す。
    『大智度論』巻22「釈初品中八念義第三十六之余」、訓読は拙僧


中国以東では、龍樹尊者のものだと信じられてきた『大智度論』ではあるが、実際には良く分からない文献である。それはさておき、少なくとも上記一節は、「長老」を知るのに適した文脈であろう。つまり、長老の姿とは、歳を重ねていることを条件としていないというのである。明らかな老いの衰えを見せていて、更には内側に徳も無いというのであれば、長老とはいえないということである。

むしろ、罪にも福にもなるような、現世的な果を捨てて、ただひたすらに精進して梵行を行い、一切の法へのとらわれを離れていることを、長老というのだとしている。そして、馬鳴菩薩造と伝わる『大荘厳論経』巻1でも、上記と同様の見解に立っている。ということは、少なくとも釈尊入滅から4~500年ほども経つ間に、ただ年齢だけをもって「長老」と見なす状況は後退し、内面に具えた徳を尊重するようになったといえよう。

そこで、実は道元禅師もまた、長老について同じような見解に立っているのである。『正法眼蔵』各巻から見ておきたい。

・いはんや道取あらんや。近来の杜撰の長老等、ありとだにもしらざるところなり。かれらに為説せば、驚怖すべし。 「葛藤」巻
・かくのごとくなるに、いまの杜撰の長老等、みだりに宗称をもはらする、自専のくはだて、仏道をおそれず。 「仏道」巻
・そのほか二三百年来の杜撰長老等、そこばくの野狐ならん。 「大修行」巻
・このゆえに、二三百年来の長老杜撰のともがら、すべて不見道来実相なり。 「諸法実相」巻
・しかあれども、いま大宋国の諸山にある長老と称するともがら、仙陀婆すべて夢也未見在なり。苦哉苦哉、祖道陵夷なり。 「王索仙陀婆」巻


以上の通り、道元禅師は中国で見聞した長老の中に、「杜撰の長老」という言い方でもって、批判すべき対象がいたことを示している。「杜撰」とはいい加減なさまであるから、仏道に対して正しい学び、正しい見解を持っていない者を批判したのである。最後の一節も、「祖道陵夷」という言い方で、当時の中国禅林の長老達の愚かさを歎いている。

もちろん、優れている人に対して「また大宋宏智禅師の会下、天童は常住物千人用途なり。然れば、堂中七百人、堂外三百人にて千人につもる常住物なるによりて、長老の住たる間、諸方の僧雲集して堂中千人なり」(『正法眼蔵随聞記』巻3)という言い方もしているから、「長老」とは蔑称というばかりではない。しかし、総じて『正法眼蔵』では、余り良い表現とはいえないのである。

拙僧つらつら鑑みるに、「敬老」という時の「老」も年齢だけではなく、その人となりや人格、そして、人徳をもって尊敬すべきだということになるだろう。とはいえ、こういう「人徳」なんてのは、訓練で身に着けられることではないし、得たいと思って得られることでもない。むしろ、得たがっているような人がいたとすれば、ちょっとどうなの?という印象すら懐く。

よって、ただ毎日の生き方、心構えのみが作り上げるものだということはいえるだろう。

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