つらつら日暮らし

曹洞宗の比丘性に関する問題について

以前アップした【曹洞宗に於ける出家性と比丘性について】の続きである。そこで、道元禅師の文献で、「比丘」に関する指摘の有無を見ていくと、引用文には一定量含まれているが、御自身の文章となると、それほど多いわけではない。例えば、以下のような文脈はどうか?

しかあるに、在世の仏会に、みな比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷等の四衆あり、八部あり、三十七部あり、八万四千部あり。
    『正法眼蔵』「礼拝得髄」巻


この四衆については、道元禅師は基本的な枠組みとして考えていたものと思われる。何故ならば、上記一節に続いて、以下のようにも示されるためである。

又、仏弟子の位は、菩薩にもあれ、たとひ声聞にもあれ、第一比丘、第二比丘尼、第三優婆塞、第四優婆夷、かくのごとし。この位、天上・人間ともにしれり、ひさしくきこえたり。しかあるを、仏弟子第二の位は、転輪聖王よりもすぐれ、釈提桓因よりもすぐるべし、いたらざる処あるべからず。
    同上


このように、道元禅師は明らかに比丘・比丘尼という順番を定められ、在家との違いについて明言しておられる。この区分や順番は、現代に於ける授戒会などにも影響しており、或る意味で保守的なものであるといえる。道元禅師は、この一節によって、比丘尼は在家信者よりも、教団内に於ける立場が上であることを示したかったようである。

つまりは、立場についても比丘性が考慮されていたことになる。そこで、実際の比丘性が何によって担保されていたのか、以下の一節も見ておきたい。

輪王・梵王・帝釈、なほ出家・受具の比丘に及ばず、何に況や如来にひとしからむや。
    『正法眼蔵』「四禅比丘」巻


こちらも、在家者と比丘との違いを示した教えだが、比丘の構成要素として、「出家・受具」としている。「出家」というのは、以前から述べている通りで、沙弥以上のことを指すが、問題は受具である。通常の用語としては、「具足戒を受ける」ことを指しているはずだが、それは声聞戒を指すことが一般的であった。しかし、道元禅師は声聞戒の受戒について、特に示しておられない。

 若し過去世無くんば、応に過去仏無かるべし、若し過去仏無くんば、出家受具無し。
 この偈は、諸仏如来の偈なり。外道の、過去世なし、といふを破するなり。しかあればしるべし、出家受具は、過去諸仏の法なり。われらさいはひに、諸仏の妙法なる出家受具するときにあひながら、むなしく出家・受戒せざらむ、なにのさはりによるとしりがたし。
    「出家功徳」巻


この一節を慎重に見ていくと、『阿毘達磨大毘婆沙論』巻76を引用しつつ、出家受具を過去諸仏の法だとしているところに意義がある。しかし、その内容を見ていくと、出家受具を転じて、「出家・受戒」と言い換えている。そうなると、道元禅師の場合、「受具」というのは「受戒」という意味であったことになろう。

そこで、「受戒」巻を見れば、菩薩戒(十六条戒)を基本としている。つまり、出家・受具とは、出家・受菩薩戒と言い換えて良いことになる。以前の記事でも述べた通りで、「出家」については、俗服を脱ぎ、授袈裟され、しかも、沙弥十戒を受けることであったといえる。その上で上記に見てきた通り、「比丘」が「受菩薩戒」だったとすれば、『出家略作法』後半で、「三聚浄戒・十重禁戒」を授けていることをもって、「比丘」になったことを意味していると解釈しても良いといえる。

世尊すでに酔婆羅門に出家・受戒を聴許し、得道最初の下種とせしめまします。あきらかにしりぬ、むかしよりいまだ出家の功徳なからむ衆生、ながく、仏果菩提、うべからず。この婆羅門、わづかに酔酒のゆえに、しばらく微心をおこして、剃頭・受戒し、比丘となれり。
    「出家功徳」巻


上記一節は、この記事の纏め的な位置付けになると思うが、ここでも、剃頭・受戒としている。つまり、姿として頭を剃り、受戒した者を「比丘」と呼んでいる。しかし、これもやはり、十分条件では無いというべきであろう。現代の我々が行う檀信徒喪儀法に於ける「授菩薩戒」に於いても、出家性の十全なる具足は無いと見るべきで、結果として今少しの手続きを要すると考えられるのである。

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