つらつら日暮らし

今日は如浄禅師忌(令和元年度版)

今日7月17日は、道元禅師の本師・如浄禅師忌である。如浄禅師御遷化の場面は、以下のようにも語られている。

 有るが問う、瑞世、誰に嗣ぐや。
 曰く、如浄。
 問う、道号は何と謂うや。
 曰く、浄長。
 後に、太白山にて疾を感じて退席し、涅槃堂に下りて、始めて大哭して鑑足庵の為に焼香す。入寂の時、侍者に告げて法堂の宝蓋・鏡を以て座上に堕ろす。曰く、鏡枯禅至なり、と。其の言の如し。
    『枯崖和尚漫録』巻上


この一節について見ていくと、如浄禅師が生前に、世に自らの師を明らかにしなかったようで、「誰に法を嗣いだのか?」という質問について「如浄」と自らの名前を出している。また、道号は?という問いには「浄長」と答えたとされ、道号を持っていたことを示している。

問題はその次で、太白山=天童山にて病気となったため退席し、涅槃堂に下りて、そこで自ら泣きながら本師・雪竇(足庵)智鑑禅師のために焼香したという。よって、ここで嗣承香を焚いたことを意味している。この一事について、後代の人は以下のように評価した。

先師天童堂頭、ふかく、人のみだりに嗣法を称することを、いましむ。
    『正法眼蔵』「嗣書」巻


このように、道元禅師は如浄禅師が嗣法したことや、誰に嗣法したかを主張することを戒めたという。そして、このことを更に以下のように評する見解もある。

尚ほ神秘して平生卒に嗣承を顕はさず。終焉のきざみ法嗣の香を焼く。唯世間愛名を疎くするのみに非ず、又宗家の嘉名をも恐るるなり。実に道徳当世に並びなく操行古今に不群なり。
    『伝光録』第五十祖章


瑩山禅師は、如浄禅師が何故嗣承を明らかにしなかったかを、名聞利養の否定であると理由付けている。だからこそ、道元禅師が如浄禅師から嗣法したことを高く評価している。

浄和尚独り、洞山の十二世として、祖師の正脈を伝持せしに、尚ほ神秘して以て嗣承を顕はさずと雖も、師には隠す所なく、親訣をのこざず祖風を伝通す。実に是れ奇絶なり、殊特なり。
    同上・第五十一祖章


これは、瑩山禅師の下に既に『嗣書』などを受け嗣いでいたことと、『仏祖正伝菩薩戒作法』を伝授されたことや、『正法眼蔵』「仏祖」巻を読んだことなどが影響しているのだろう。「仏祖」巻には以下のようにある。

 ※過去七仏・東西五十祖を挙げた後で
 道元、大宋国宝慶元年乙酉夏安居時、先師天童古仏大和尚に参侍して、この仏祖を礼拝頂戴することを究尽せり。唯仏与仏なり。
    「仏祖」巻


よって、道元禅師は仏祖の系統を隠さず伝えられていたことを示している。さて、ここで「嗣承香」の件について論じておきたい。「嗣承香」とは、或る僧侶が寺院にて開堂を行った際に、「嗣承香」を行うことで、自分が誰の弟子かを示すものであった。実際には、この時に嗣法する相手が決まっていた。ただし、このことは曹洞宗では批判的に扱われており、その理由は以下の一節が影響している。

しかあるに、一類の狗子あり、尊宿のほとりに法語・頂相等を懇請して、かくし、たくはふることあまたあるに、晩年におよむで、官家に陪銭し、一院を討得して、住持職に補するときは、法語・頂相の師に嗣法せず、当代の名誉のともがら、あるひは王臣に親附なる長老等に嗣法するときは、得法をとはず、名誉をむさぼるのみなり。かなしむべし、末法悪時、かくのごとくの邪風あることを。かくのごとくのやからのなかに、いまだかつて一人として、仏祖の道を夢にも見聞するあらず。
    『正法眼蔵』「嗣書」巻


ここから、「嗣法」が、住持職に補せられた後で行われることが明らかとなる。しかし、道元禅師はそこで、名誉をむさぼる輩がいて問題だとしている。つまり、誰に就いて仏法を得たか、というようなことが基準にならずに、当時著名な僧侶を本師として仰いだことを問題視しているのである。よって、如浄禅師が嗣承を隠したことについて、瑩山禅師が名利心の否定と評価した理由も理解出来ると思う。

今日は如浄禅師忌であったため、上記のような記事を書いて如浄禅師を顕彰してみた。南無天童如浄大和尚。

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