つらつら日暮らし

仏教、禅宗を学ぶ曹洞宗の禅僧によるつらつらなる日暮らし。時事ネタ、野球ネタもあります。

実範上人『出家授戒法』について

2019-06-15 09:10:19 | 仏教・禅宗・曹洞宗
実範上人(?~1144)とは、興福寺で法相宗を、醍醐寺などで真言宗を、比叡山で天台宗の教学をそれぞれ学び、また、律学復興を目指した人であったともされ、1122年には『東大寺戒壇院受戒式』(『日本大蔵経』巻13所収)を定められた。その実範だが、『出家授戒法』も定められたという(『日本大蔵経』巻14所収)。

それで、今回はその『出家授戒法』の差定などを確認し、学びを深めておきたい。分からない項目は曹洞宗的な差定名も用いつつ、全体の流れについて簡単に挙げておきたい。

◎準備
・和上(戒師)登礼盤 着座
・次塗香
・次浄三業
・次浄水加行等
・次取香炉蹲踞
・次三礼畢着座
・次如来唄
・次読戒体

・和上三帰三拝
・次如来唄
・次表白
・次嘆徳門
・次教請(和上を拝請)
・次礼拝氏神国王父母
・次説偈(流転三界中……)
・次香水灌頂讃(善哉大丈夫……)
・次教礼十方仏竟説偈(帰依大世尊……)
・次剃髪(毀形守志節……)
・次法名
・次授与袈裟(大哉解脱服……)
・次礼仏 自慶偈(遇哉値仏者……)
・次安受者見処
・次受者礼僧足
・次教受戒体(三帰依文)
・次為説戒相(沙弥十戒[尽形寿])
・次教発願
・次神分
・次祈願
・次六種回向
・次下礼盤
・次着座


以上である。内容から、いわゆる「略作法」系統のものであることが分かるが、これが実際にどこまで用いられていたものかは分からない。それは、途中「説戒相」のところを見ていただければ分かる通り、この場合の「出家」とは、あくまでも沙弥としてであって、大僧比丘になったわけではない。

それから、内容的に何か特徴的な差定があるかどうかだが、特段見当たらない。以前に紹介をした【『法苑珠林』巻22「剃髪部第三」について】を基本に、日本中世の密教的な信仰などが加わっている程度で、用いられている偈文も、その登場順なども全く同じであった・・・

以上で終わってしまうと、記事として余り面白くないので、「教発願」のところの回向文を見ておきたい。

出家受戒の功徳を以て法界一切衆生に廻施し、世世生生仏法中に於いて清浄出家にして、離苦得楽し、菩提心を発して断悪修善して、早く成仏することを縁。
    訓読は拙僧


出家受戒は、我々が生前に行える最高の善行であるともいうが、それをあらゆる衆生のために回向し、その者達の救いを願いつつも、自分自身は今後の生まれ変わりしていく人生でもって、常に清浄なる出家者となり、苦を離れ楽を得て、菩提心を発し、悪を断ち、善を修して、早く成仏できるように、と願っている。非常に率直な願いであって、これ以上のものはない。

そこで、事実これが実範上人の出家作法であったと仮定して、内容的には【恵心僧都源信『出家授戒作法』について】で紹介した恵心僧都源信のものとも近いし(但し、沙弥戒について源信は「従今身……」で菩薩戒として受ける)、いわば当時の一般的な出家受戒作法として行われていたんだろう、ということはいえそうだ。なお、恵心僧都源信については、『自誓戒作法』が入手できたので、その位置付けなどについても、機会を見て考えてみたい。

この記事を評価して下さった方は、にほんブログ村 哲学ブログ 仏教へにほんブログ村 仏教を1日1回押していただければ幸いです(反応が無い方は[Ctrl]キーを押しながら再度押していただければ幸いです)。

これまでの読み切りモノ〈仏教12〉は【ブログ内リンク】からどうぞ。
コメント   この記事についてブログを書く
« ノートルダム寺院の再建はど... | トップ | オリックス・バファローズの... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

仏教・禅宗・曹洞宗」カテゴリの最新記事