つらつら日暮らし

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瑩山禅師に於ける「沙弥戒」授与の意義

2018-02-19 06:49:11 | 仏教・禅宗・曹洞宗
道元禅師に於ける「沙弥戒」授与の意義】に続いて、瑩山禅師に於ける「沙弥戒」授与の意義について検討したい。まず、瑩山禅師が著したとされる『出家授戒略作法』を見ると、「沙弥戒」について以下のように指摘されている。

汝、已に五戒を受くれば、次に沙弥十戒を受くべし。此の戒を受けた後、大僧と利養を同じくす、共に応法沙弥と名づけ、此に勤策と称す。
    『出家授戒略作法』


このように、在家五戒を受けてから、沙弥十戒を受ければ、「大僧」と利養が同じくなるとされているため、ここで大僧=比丘と沙弥とが区別されていることが分かるが、そもそも瑩山禅師には、以下の文献が知られている。

一 小僧・沙弥・喝食等、三時の勤行の外、専ら文を学すべし。若し怠慢すればこの輩、痛く三頓を与うべき事。
    『当寺開山十箇條之亀鏡』


これは、總持寺の修行について規定した内容だとされているが、そこで「小僧・沙弥・喝食」という比丘になってはいない段階に於いて、勤行(読経など)の他に、経文を学ぶように促しているのである。更には「沙弥」について以下の位置付けも知られている。

諸方顕密の学徒、本宗に改むれば、只だ衣鉢を授け、衆に入らしむるなり。若しくは臘未だ房を持たざる人来たりて作僧を望めば、一夏若しくは一冬、且く沙弥の位に接して、給仕せしめて、後に受具入衆すベし。
    流布本系統『洞谷記』、「発心作僧事」


これは、他宗派で修行していたもので、「房を持たざる」というのは、比丘になっていない状態だと思われるが、その者が「作僧」を望んだ時には、一安居の間「沙弥」にして、その後に「受具入衆」させるべきだとしているのである。この「沙弥」の意味としては、比丘になる直前の見習いということになるだろう。つまり、瑩山禅師の会下では沙弥教育が明確に存在したことが分かるのである。

それから、前回の道元禅師の記事で、曖昧となっていた「袈裟」の問題について検討すると、以下のようにある。

菩薩大士一心に念ず、我れ比丘某甲、此の僧羯梨九條衣を受く、三長一短、割截衣を持す〈三遍す〉。与授頂戴の後、起立し搭袈裟す。
    『出家授戒略作法』


ここで、拙僧が気になったのは、言い方が「比丘」となっていることである。それで、瑩山禅師の『出家授戒略作法』には、九条衣が上記の内容で本文中に挿入されている。なお、その際「菩薩大士」が「我○○某甲」と念ずるが、その内容について検討したい。

・剃髪
・授坐具(比丘)
・授袈裟(九条衣)(比丘)
・授鉢盂(比丘)
・懺悔
・三帰
・五戒
・沙弥十戒
・三聚浄戒
・十重禁戒
・散堂
※「又七条の如きは……」授袈裟(七条衣)(比丘)
※「又五条の如きは……」授袈裟(五条衣)(沙弥)


このようにあった。ここから類推するに、瑩山禅師がこの『出家授戒略作法』について、沙弥授戒・比丘授戒の両方に用いていた可能性を指摘するものである。いわば、沙弥として僧団に受け入れる際には、「沙弥十戒」(菩薩戒も授けていたことだろう)と「五条衣」を授け、大僧=比丘として僧団に受け入れる際には、「三聚浄戒・十重禁戒」と「七条衣・九条衣」を授けていたという推測である。

拙僧自身はこの典拠として、『洞谷記』の「発心作僧事」を考えている。つまり、相手が入僧団時の状態に於いて、対応法が変わっているということである。『出家授戒略作法』に見える、或る種の混乱というか不自然さは、それが多様な授戒を行っていたことを物語っているように思う。そして、このような多様な授戒が行われた理由の1つには、道元禅師の伝記的事象も関わっているのだと思う。

因て十八歳の秋、建保五年丁丑八月二十五日に、建仁寺明全和尚の会に投して僧儀を具ふ。彼の建仁寺僧正の時は、諸の唱導、初て参ぜしには、三年を経て後に衣を更しむ。然るに師の入りしには、九月に衣を更しめ、即ち十一月に僧伽梨衣を授けて、以て器なりとす。
    『伝光録』第51祖章


このように、道元禅師が比叡山から建仁寺に転じた時には、かなり早い段階で、「僧伽梨衣=九条衣」を授けているとある。このことから、状況によっては禅林に受け入れることを速疾に行う方法が儀礼化され、そこで授戒が行われていた可能性を考えるものである。無論、この時の道元禅師がどういう状態で比叡山から建仁寺に移ったかは、詳細な検証が必要ではあるが、瑩山禅師御自身がどう捉えていたかについて考える材料にはなるだろう。

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