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日本映画、特に昭和30年代、40年代の大衆娯楽映画&沖縄がお気に入り

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『足摺岬』と『夜明け前』を観ました。

2007-02-17 18:26:00 | 日本映画- ヒューマンドラマ
新文芸座で吉村公三郎監督の特集である。
なんやかんやでやっとアップできました。

まずは『足摺岬』1954から。

「人生に疲れちゃった。」と感じているあなた。
「明日から、また生きよっかな。」って、小さな元気をもらえる映画です。
ヒューマンドラマかと思わせといて、実は純愛ドラマ。

時代は太平洋戦争の足音が聞こえ始めた頃。
不幸の連鎖にどっぷりつかった主人公を演じるのは、木村功。
地方から東京に出てきて学生を送っている彼は、自らが借金だらけで汲々して
大変なのに、身近な人がやるせない理由で死んでゆく。
いまだったら不幸に違いない境遇も、庶民には、しごく当たり前の困窮した時代。
映画を観ている観客は、しみじみ現代に生きている幸せをかみ締めざるを得ない。

木村功が住むおんぼろアパートには、さまざまな境遇の気のいい住人が住んでいる。
左派の信欣三、病気で寝たきりの子、苦学生。近所には食堂で働く苦学生の姉、津島恵子。
いくつかの事件が重なって、自暴自棄になった木村功演じる主人公浅井は、かばんひとつで、心の支えだった津島恵子が移り住んだ足摺岬をめざす。
最後に彼女を一目見て死ぬ気なのがありありとわかる。

彼女の家に到着するなり、病気で倒れた浅井は、彼を助ける殿山泰司他、まわりの人のささやかな善意に助けられて、一度は棄てようとした人生を生き直すことを決意する。
津島恵子は語る。
「私も何度も足摺岬から下を見て思い直した。」
彼女の人生も決して平坦ではなかった。
足摺岬は断崖絶壁の地。
実際、自殺の名所で知られている美しい風景の場所だ。

つましい善意に助けられる。
そういう時代だったんですねえ。
どん底に落ちてもお互いを助け合う。
かつての日本人はそうだった。
なんかねえ、かんがえちゃうねえ。毎日のように人身事故で遅れる電車が当たり前の現代を。

もう一本は『夜明け前』1953。

幕末から明治にかけて、価値観が大きく変わった激動の時代を質実剛健に描ききった人間ドラマ。
木曽宿場町にある代々続いた本陣の主が遭遇する事件をたんねんになぞらえ、
あたかも歴史の教科書を読んでいるかのようなリアリズム。
島崎藤村原作なもんで、いまいち観る気しなかった映画だが、掘り出しモンの秀作。
タイトルから感じる文芸色強い第一印象を裏切るドラマチックな映画だ。
同じ島崎藤村原作、市川昆監督『破戒』が道徳を前面に押し出していて、うさんくさいのとは好対照。

『夜明け前』のように、理想に向かって現状を打開する気骨ある登場人物が出てくる映画は、もう日本映画ではつくれないな。
企画が通らないし、実現するお金もないし。

ロケが敢行された長野県馬籠は中仙道の宿場町で売る観光地。
道沿いに旅籠建築が連なり、馬籠から妻籠を繋ぐ道は江戸時代にタイムスリップしたよう。
道路は舗装されたが、今も映画が撮られた雰囲気を残しているので、オススメ。
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