邦画天国、おきなわ天国

日本映画、特に昭和30年代、40年代の大衆娯楽映画&沖縄がお気に入り

『黄色い風土』で立ち見だあ

2007-08-13 22:27:16 | 日本映画- ミステリー
えー、フィルムセンターで初めて立ち見を経験する。
フィルムセンターは定員しか入れないのが決まり。
それが、警備の人がカウントをミスったか、定員ギリギリで入場したら座席がない。
ほんで、あまり気にしないで立ち見を決め込んだ。

『黄色い大地』でなかった、『黄色い風土』は1961年製作、ニュー東映、石井輝男監督の推理サスペンス。石井監督がこのようなジャンルを手がけていたのが意外で、これがなかなか正当派ミステリー。畳み掛ける演出と、カトレアの花をキーワードにする洒落た趣向に2度びっくり。連続殺人事件にたまたま遭遇した週刊誌記者に鶴田浩二。偽札事件が背後に控えている難事件は謎を謎を呼び、90分を十分に楽しませてもらいました。犯人に旧陸軍将校がからんでいるなど、まだ戦後を引きずっている昭和30年代を感じさせる映画。ちょっと気になって、ワイズ出版「石井輝男魂」をひもとくと、原作は松本清張。
ちゃんとしたサスペンス映画になっているのは納得。それと、石井輝男、なんと『黒い画集 ある遭難』の脚本も書いていた。「ある遭難」は、「寒流」、「あるサラリーマンの証言」よりはマイナーだが、黒い画集シリーズでは佳作として知られている。石井輝男監督、推理路線でもっと撮って欲しかった。
それぐらい、ちゃんとしたミステリーでした。

おなじ日に観た、吉田喜重監督の『煉獄エロイカ』。
わからん映画だった。
まんず、1970年代に流行った思想に馴染めない。
革命とか、いわれてもねえ。
そういう時代だったんだねえ。
吉田監督では『エロス+虐殺』も同様に思想めいた映画でついていけなかった。
いずれにしても、おもしろくはない映画だ。

最初にまちがえちゃった『黄色い大地』。
中国映画だけど、結構好きだったナ。

『赤い殺意』1964と『原子力戦争』1978。

2007-06-04 00:27:12 | 日本映画- ミステリー
今村昌平と黒木和雄の特集に行ってみた。
今村昌平は、相性の悪い監督のひとりで、おもしろいと思った映画がヒジョーに少ない。
『にっぽん昆虫記』『にあんちゃん』『人類学入門』『神々の深き欲望』『豚と軍艦』『復讐するは我にあり』『うなぎ』などなど、評価されている映画をそれなりに鑑賞するも、ムムム…または、zzz(いねむり)の連続。眠らずにしっかり観たのは『人間蒸発』くらいだったかなあ。これは擬似ドキュメンタリーで不思議な映画だった。

今村メジャー作品で未見だった『赤い殺意』をちょうどヒマだったので、京橋 フィルムセンターまで足を運ぶ。
観た感想。
う~ん、やっぱり映画に入り込めない。
底辺に生活する女性の力強さをアピールしている点で、『にっぽん昆虫記』の延長にある映画。
春川ますみの東北弁はさすがだし、体当たりの演技だ。
それでも、今村昌平の映画はおもしろくない。
北野武のつまらなさとは別モンの楽しくなさが今村昌平監督。
2時間半が実に長くて、明日の予定を考えるのにいい時間だった。

引きつづき、
黒木和雄監督の『原子力戦争』をやっつける。
これはまったく期待しないで観て、掘り出しモン。
原発のある漁村で起こった心中事件が、連続殺人事件に発展する謀略ミステリー。
主演が武闘派、原田芳雄。
普通、ミステリーの主人公は、検事だったり、善良で正義感強い普通の人だったりするが、
原田芳雄演じるヤクザを持ってきたのが異色。
ヒモの設定である原田芳雄は、情婦を追って、原発のある田舎町を訪れる。
女は原発関係者と心中遺体で発見される。
そこには、原発事故を隠蔽しようとする闇の勢力が働いていた。
疑惑を暴こうとする新聞記者に、佐藤慶。
心中した原発技術者の妻、山口小夜子に接触した原田芳雄は原発事故の資料を手渡された。
果たして、真相は。

ここまで、書くと映画に期待はふくらむが、
そこは低予算のATG。

途中から、なんやら、話の展開がいいかげんになってくる。
結局、最後まで、殺人事件の黒幕はうやむやだし、本当に原発事故が起こったかも
定かでない。それでも、この映画のプロットは決して古くない。
原発を管理する動燃の隠蔽体質は今も変わらないように思われている。
予算があれば、一級のエンタテイメントになったかもしれない作品である。

池部良の『黒い画集 寒流』

2007-03-06 00:40:25 | 日本映画- ミステリー
『黒い画集 寒流』は鈴木英夫監督の代表作で有名だ。
観る機会がなかなかなくて、やっとこさ、観たんだが、
拍子抜けするくらい普通、いや、やや良作。
過剰に期待しちゃったか。

『黒い画集』シリーズは「ある遭難」「寒流」「あるサラリーマンの証言」の
3作からなる松本清張原作、推理サスペンス映画。
「ある遭難」は北アルプス鹿島槍岳が舞台の山岳ミステリー。
山の地形が殺人事件のアリバイを崩すポイントになっているのだが、観ていないのでノーコメント。
3作目「あるサラリーマンの証言」は推理映画として必見。
その緻密に構成された橋本忍の脚本は、ものがたりの醍醐味を存分に味わえる。
小林圭樹演じる普通のサラリーマンが、たまたま近所の知り合いに会ってはならない状況で
会ったがために、うそにうそを重ねてどうにもならなくなってゆく。一般の人にありうるシチュエーションが生々しく恐ろしい。
人生を転落する一瞬をスクリーンの中で客観的に観るのが怖いのだ。

「寒流」も「あるサラリーマンの証言」に路線は近い。
原作者が同じだから、当然と言えば当然。
まじめな銀行員の池部良が、したたかな新珠三千代にやられまくる。
銀行支店長の池部良に「貸して、貸して~」っておねだりしといて、これ以上お金を借りられないとわかると平田昭彦の銀行常務に乗り換える。清純女優、新珠三千代は、思いのほか悪女役が似合う。成瀬巳喜男『女の中にいる他人』なんかもそうだった。
池部良のまじめで融通きかないように見える演技は渋谷実の『現代人』でも発揮されている。
こちらでは汚職に手を染める官僚役。汚職を止めようとしながら、ずるずる、ずるずる。一線を越えて、あとの祭り。
『昭和残侠伝』シリーズでもストイックで、高倉健と殴りこみにいって、
やられちゃう。『雪国』や『乾いた花』も池部良はなんとなく似たようなキャラ。
俳優として他にまねできない、まさに池部良としかいいようのない俳優である。

『昭和枯すすき』の秋吉久美子

2006-05-03 00:43:54 | 日本映画- ミステリー
きょうは三百人劇場の野村芳太郎レトロスペクティブへ通う。
遅めの昼食は千石自慢ラーメンで。
しょう油豚骨スープに背脂が浮いた、こってり、すっきり味を久しぶりに堪能。

『昭和枯すすき』は70年代に松竹で流行った歌謡曲タイトル映画。
歌詞をモチーフにそれらしい話に仕立ててあって、ストーリーはどってことないのだが、
言うなれば、秋吉久美子を見る映画である。

70年代前半、映画で見る秋吉久美子はいつも自由奔放、地なのか演技なのかわからないさばけた性格の役柄を演じている。10代、20代の時から50代に入った現在に至るまで、基本的にイメージそのままなのは驚異的。非常識というか無責任というか、不思議な魅力ある女優である。
今回の役どころは両親に死なれて刑事の兄(高橋英樹)と暮らしている妹。藤田敏八監督の『妹』で演じた役柄が成長したようなキャラである。当然のように問題をおこして、兄を心配させ、事件に巻き込まれる。バックに繰り返し流れるのは「昭和枯すすき」。

秋吉久美子は、70年代の日本映画界が閉塞感に陥って既成概念を壊すような企画が現われた頃に登場した、時代が要請した俳優だった。
だから、今、彼女のような女優は流行らないのだと。

フィルムセンターで『殺したのは誰だ』

2006-04-15 23:37:47 | 日本映画- ミステリー
今週は先週に引き続き、休みなし。
まったく、仕事しすぎの毎日だす。

今日は午前中に会社へ行って、明日の日帰りツアー(行き先は茨城県日立にある「イワカガミの高鈴山」。あぁあ、あしたは雨かぁ、ちょとゆううつ)の打ちあわせをしにいって、午後からフィルムセンターへ。

そのまえに銀座の「じゃぽね」で昼食。
「じゃぽね」はカウンターだけの簡素なつくりなスパゲッティの専門店だ。
店はいつも行列ができている。
値段が¥500程度と安く、味がよければ並ぶのは必至。
スパゲッティ(パスタ)の店は、味はいいが値段は高いか、たいしておいしくないのに決して安くない店ばかり。
その点、「じゃぽね」の日本人向けにアレンジされたしょう油味スパゲッティは実においしい。
場所は銀座イング3の1階。
こんなところに飲食店があるなんて普通の人が考えないような場所にひっそりと、そして、
びっくりする行列をつくっている店。
ラーメン屋感覚で入れる大衆スパゲッティ屋である。

映画の話にもどって、
前々から気にかけてた中平康監督の『殺したのは誰だ』をフィルムセンターに観にいったのだ。
シナリオ作家新藤兼人の企画である。
『殺したのは誰だ』は保険金詐欺にまつわるサスペンスもので、中平康の佳作と呼ばれる作品。
映画上映のち、しばらくすると、眠りモードに突入。
目が覚めると、スクリーン中では何か人が死んでる様子。
そうこうするうち、映画は終わっちゃった。
なので、映画についてはコメントできません。

ひとつ発見。フィルムセンターに貼ってあった『鬼婆』のポスターには
おにばばぁのルビが。最後に”ぁ”がつくのね。

『砂の器』の大ヒット

2005-07-04 20:30:37 | 日本映画- ミステリー
東京、銀座で公開されている「砂の器」デジタルリマスター版が好評で
ロングラン決定という。
意外というよりも、むしろ想定された結果のように感じる。

いい映画はいいというあたりまえのことを証明した1件だ。
低迷している日本映画だが、大人の鑑賞に堪えうる良質の映画であるなら、
リバイバルでも十分商売になるということである。

ただ個人的にはこの映画はどうだかな~。
10代半ばに初めて観たときは素直に感動した。
大人になって改めて観直して見ると、泣かせることを狙いすぎなことばかり気になってしまう。
そうはいっても、例のシーンは感極まる。何度観ても。
『砂の器』はやはりいい映画なのか。