てっきりてっくり

あっという間に1日が終わっちゃう

くらやみの速さはどれくらい

2005年06月01日 | 読書
エリザベス・ムーンの「くらやみの速さはどれくらい」を図書館で借りて読みました。
単行本ですから。
あと、コニー・ウィリスの「航路」とか「犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」(題名、ながっ!)とか図書館にあるといいなぁ。でも、ないんだなぁ。
と思ったら、「航路」は文庫でも出てますね。ほほう、買うしかないか。


さて、この本は、自閉症の35歳(ぐらいだったと思う)の男性ルウの視点で書かれています。
幼いうちに受けた治療の成果があって、ルウは最低限の社会生活を送ることができるようになっています。
特殊能力を生かした仕事もしながら、余暇に自閉症ではない普通の人々との交流もしています。
自分では満足して生活していたのですが、仕事上でも、プライベートでも問題が起きてきました。。。


21世紀の「アルジャーノンに花束を」と紹介されていました。
なるほど、最初のうちは、「アルジャーノン」っぽいと思いました。
でも、全然、違う話です。
すっかり「アルジャーノン」モードで読んでいましたから、あれぇ?いつ手術するんだぁ?大体、最初っから知能が高いし、周りとも上手くやってるじゃん、などと不審に思ってしまうほど。
「アルジャーノン」という売り方は、どうかと思います。

このお話、なんだか淡々としています。
事件は起きるから、書き方が淡々としてるのかな。
ルウが物静かな性格だからかもしれません。


これがSFっていうのは、ま、自閉症が治るようになった社会っていうことぐらいかな。
もうひとつ、自閉症の人から見た世界は、自閉症ではない人が世界を認知する方法とは異なるから、そこにセンスオブワンダーがあるってことかな。
近未来社会で妊婦が事件を推理するバルーンタウン」シリーズと同じですね。
妊婦経験のある私にとっては、センスオブワンダーなどなんにもなく、普通すぎてつまらないですが。


本当のことをいうと、この本、つまらないのじゃないかとビクビクしながら読んだんです。
そんなこともなく、普通に読める本でした。
良かった、良かった。

『月は無慈悲な夜の女王』 ロバート・A・ハインライン 

2005年06月01日 | 読書
月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A・ハインライン 矢野徹・訳 
原題 The Moon is a Harsh Mistress 1966年初出


月植民地の住民は、行政府に対して、反旗を翻した。
計算機技術者マイクは、自意識を持つ月のメインコンピュータ<マイク>と共に、月独立運動に乗り出す。
はたして、圧倒的に不利な状況にある月世界(ミサイルなし、宇宙船なし)が、地球政府に対して勝利を収めることはできるのだろうか。


有名なハインラインの作品です。
不利な味方が、圧倒的な敵に対して、アイディア勝負の戦いをする話というのは、古今東西を問わず、面白いものです。
たとえば、三国志とか、太平記とか。。。
そのうえ、自意識を持つコンピュータ<マイク>が、とてもかわいいです。
ボリュームはありますし、古いので文字が小さいですが、読みやすい本です。
ハインラインは、『自由万歳』がいきすぎて鼻に付くこともありますが、この作品では、それもありません。

『バベル-17』 サミュエル・R・ディレーニイ 

2005年06月01日 | 読書
バベル-17 サミュエル・R・ディレーニイ 岡部宏之・訳 
原題 BABEL-17 1966年初出


インベーダーによる破壊活動が発生するときに、その区域で交わされる無線。この通信内容は、バベル-17という名前がつけられ、当局は暗号の解読を試みるが、手がかりもつかめない。そのため、この解読が一人の女性天才暗号解読者兼詩人に依頼される。
彼女によると、バベル-17は、暗号ではなく、一つの新しい宇宙言語だという。これ以上の破壊活動を阻止するため、彼女は宇宙に乗り出す。



この記事を書くため、結末がどうだったか、ちらちらと見たんですが、どうもよくわかりませんでした。以前読んだときは、ふんふん、と思ったはずなんですが。
そんなわけで、もう一度、はじめから読み直したいと思ってます。
言語が行動を規定するというのは、テッド・チャンの「あなたの人生の物語」と似たところがありますね。
この作品は、1966年初出ですから、この前の記事のハインライン「月は無慈悲な夜の女王」と同じような時期(こちらは、1968年ヒューゴー賞で、「バベル-17」は1966年ネビュラ賞です)ですが、「バベルー17」のほうが古さを感じさせません。

『狗神』 坂東真砂子

2005年06月01日 | 読書
狗神 坂東真砂子 
角川文庫 初版は平成8年。

40代となった美希は、独身で、実家の山里で和紙を作る仕事一筋の生活を送っている。美希の一族は、村人から『狗神筋』として恐れられてきた家。でも、美希自身は、それをあまり意識したこともなかった。
しかし、村にある青年が現れ、それ以来、村は恐怖に包まれる。
美希と青年はお互いに引かれあうが、それは恐ろしい出来事の始まりだった。



やっぱり日本のホラーは、女性作家に限りますねと言いたくなる作品。
土と血の匂いのするホラーです。方言もいい雰囲気を出してます。本当にいいですわぁ。
この本を読み終わってしばらくの間は、「びゃうびゃう」(狗の鳴き声)というのがマイブームになりました。


びゃうびゃう

『重力が衰えるとき』 ジョージ・アレック・エフィンジャー 

2005年06月01日 | 読書
重力が衰えるとき ジョージ・アレック・エフィンジャー 浅倉久志・訳 
原題 When Gravity Fails 1987年初出


イスラーム社会を舞台にした電脳ハードボイルドSF。
主人公マリードは、一匹狼の探偵。今回の依頼は、ロシア人から行方不明の息子を探して欲しいというもの。でも、話を聞いている最中にそのロシア人は殺されてしまった。
この事件をきっかけに、ただでさえ怪しげな無法地帯ブーダイーンに、連続殺人が発生する。はやく犯人を見つけないと、マリードの命もあぶない。


おお、上のあらすじと言うか、きっかけだけを読むと、「どこがSFだ!」と突っ込みを入れたくなりますね。
舞台が未来ですから。
マリードの恋人は、性転換娼婦。性別は自由に変えられる社会のようです。
それに、頭にコネクタがあって、人格ソフトなるものも出回っています。その人格ソフトをセットすると、小説の主人公にもなれます。知識系のソフトなら、外国語もペラペラ、初めての場所でも迷子になりません。

浅倉久志の名訳で、ノンストップ娯楽小説に仕上がっています。
イスラーム社会の風習も興味深いです

『幼年期の終わり』 アーサー・C・クラーク 

2005年06月01日 | 読書
幼年期の終わり アーサー・C・クラーク 福島正実・訳 
原題 Childhood's End 1953年発行


アメリカとソ連がしのぎを削って、月へのロケット打ち上げにこぎつけたとき、巨大な宇宙船が地球を来訪した。その後、宇宙船は地球上に君臨しつづけ、人類を支配した。その支配により、地球上には戦争はなくなり、平和で豊かな世界となった。しかし、宇宙人は地球人の前に姿を見せることはなかった。
やがて、人類は、新しい時代を迎える。


オールタイムベスト10の常連でもある有名なクラークの作品です。
最初のプロローグで、ロケット開発者たちが、宇宙船を見て抱く思いというのが面白いです。今まで競争して、勝つために環境も選んで頑張ってやってきたのに、宇宙船が来ちゃったら、自分の技術は全くの時代遅れ。かたや、新しい時代の夜明けに感動というものです。
さらに、宇宙人が人類に持つ思い、密航者の思い、取り残された人類の思い、それぞれ、多少は違いますが、乗り遅れた者がもつ思いは、複雑なものがあります。
福島正実の訳文も格調高いです。
宇宙人の姿形については、別にどっちでもいいけど、まあ、お話を面白くする役には立ってますね。

実際には、もう月ロケット成功したけど、宇宙船は来ない。。。
新しい人類って、面白そうなのになあ。自分の子どもが、そうなら、私は祝福したいです。