道々の枝折

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トヤ

2008年09月03日 | 健康管理

「トヤ」とは換羽、すなわち鳥の羽が生え替わる生理現象をいう。一般に鳥類は年一回換羽するのだが、換羽は鳥にとって相当に体力を消耗させるものらしく、羽が抜け替わるまでの期間、鳥は体調が悪く食も細り、発情すら停止してじっとしていることが多い。

30年ほど前に、当時は飼育を許されていたメジロやウグイスを飼っていたことがあった。これらの小鳥は、野生では主に昆虫類を食べている。したがって、餌は穀物の粒餌でなく、動物性タンパク質主体のすり餌を与える。

飼鳥の健康は、与える餌に依存している。健康であることを示す囀り、高音、軽快な身のこなし、羽毛の艶等々も、稟性の差異を除けば、一切が食餌で決まると言っても好いだろう。

すり餌は干した淡水魚の粉末など動物質のものと、米ぬかと青菜の植物質に水を加えて混ぜ合わせてつくる。魚粉にはタンパク質とカルシウムがあり、米ぬかには植物性の脂肪とリンやビタミン、青菜にはビタミンとミネラルがあって、小鳥に必要な栄養のバランスが考慮されている。

 ところが、飼主の目的が単なる飼育観賞に止まらず、他の鳥と鳴き声を競わせる方に傾くことがある。美しい声のために、日常のすり餌以外に、彼等の好物である生き餌、すなわち昆虫やその幼虫を特別に与える。ホルモンに関与するのだろう。生き餌は小鳥の活力に特効的な効果をもたらし、動作は活き活きとして羽毛は艶を帯び、鳴き声に張りがでて、籠の鳥であっても実に魅力的な姿になる。

穀物を主餌とする文鳥や十姉妹、カナリヤなどでも、卵黄をまぶした粟などの高タンパクの餌を与えると、鳴き声が好くなり、発情が始まることはよく知られている。濃厚な動物性タンパク質に富んだ餌は、小鳥に精をつけることが知られている。

 そのような濃厚な餌を暫く与え続けていると、その小鳥は元気がなくなり、食も細り羽毛が抜け始める。さらに状態は悪化して、鳴かなくなり、翔ぶこともなく止まり木でじっとしていることが多くなる。トヤの時期でなくても、外見上はトヤの状態になる。鳥は明らかに健康を損なっている。

 そのような状態になった小鳥の健康を回復させるには、青菜をはじめカルシウムなどミネラルの比率を多くした餌を与えなくてはならない。新鮮な青菜を摂取し続けることで、小鳥の健康は回復する。小鳥の食餌と健康の関係を具に観察して、これは人の食生活を単純化したモデルだと思った。

小鳥の生き餌は人で言えば美食、別の言い方をするなら高タンパク高脂肪食ということになろうか。過剰に摂取すれば、健康を損なうのは人の成人病と変わらない。

黄色人種は人種としての形質が固定されるまでの期間、氷結した不毛地帯で極端に動物性の食物が乏しい世界で生活していたらしい。黄色人種は幼形成熟によって個体を小型化し、厳しい食料環境に適応してきたと言われている。したがって、低タンパク低脂肪の食事に体が適応している。その黄色人種が、同時期高タンパク高脂肪の肉類に恵まれていた白色人種並みの食事を摂ると、栄養的にはタンパク質と脂質が過剰になり、比較的早く小鳥のトヤ状態に陥ると推測される。人種的な体質の違いに即した、バランスのとれた栄養の摂取が必要だ。

またメジロはミカンやカキなど果実も好きで、特に甘い熟した柿を好む。だからといって、果実ばかり与えていると、メジロの健康は悪化する。糖分の過剰が好くないのだろう。蒸かしたサツマイモはメジロの好物だが、植物性の食餌であっても糖質ばかりでは鳥の健康を損なう。ミネラルの多い青菜すなわち野菜が不可欠だ。これらを総合すると、餌は動物質と植物質のバランスが大切である。メジロの飼育を通じて、自分の食生活に配慮するようになり、爾来30年近くこれを守っている。

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