佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

サムライシンドローム演劇公演「赤鬼」

2006年03月23日 20時38分12秒 | アート・文化

 

 火曜日、サムライシンドローム演劇公演「赤鬼」を観た。

大学の遠い後輩で、今回が旗揚げ公演。

 

 演劇は片手を少し超えるほどしか見ていないので

あまりちゃんとしたコメントは出来ないが、

率直に言って、非常に素晴らしい公演だったと思う。

 

 私が見たのは2日目の公演。会場はりゅーとぴあスタジオB。

舞台は、両サイドに客席を配置し、挟まれる形で演じるスペースがある。

 

 「赤鬼」の作はあの野田秀樹。

野田作品は、多分WOWOWで放映したものを録画してあるが、

まだ観たことがない。

 

 特徴なのだろうか、冒頭からハイペースな台詞のかけ合い。

瞬時に引き込まれる。

登場人物はたくさんいるのだが、演者は4人のみ。

しかも1人は同じ役なので、3人で色々な役を演じ分けていた。

最初は正直戸惑ったのだが、見るうちに慣れる。

その演じ分けがなかなか良かったと思う。

なんと言うか、舞台のスピード感に必要なことだったのだなと思った。

 

 配役がまたよく合っていたと思う。

声をかけた中心人物が、おそらくこの芝居の上演を

念頭においてキャスティングしたのではと感じた。

内容はどこまで理解できているか分からないので

詳細は書かないが、とにかく最初から最後まで

見るものを惹きつける演技で駆け抜けた。

とても良いものを見せてもらったと同時に、たくさんの刺激をもらった。

 

 

 見ながら、自分が大学のときにしたオペラのことを思い出していた。

お金はないが時間はあった頃。

彼らも相当の稽古を積んで今日に臨んだのだろう。

勢いだけでなく、ちゃんと練られたものを提示していたと思う。

 

 

 ただ、これを見ながら

 

「ああ、若いっていいな」

「若さの特権だな」

 

 と思ったのだが、いや、違う、そうじゃないと思った。

演劇の出来を、若さに帰結してはいけないと思った。

年を重ねたって、情熱的なものを見せることはできるはずだ、

気持ちを相手に伝えられるはずだ、

若さのせいにして諦めてはいけない、そう思う。

大人は確かに時間が無いが、それでも

練り上げるということを放棄してはならない。

努力しなければいけないのだ。

 

 

 そして最も強く感じたこと。

 

 

 表現するということについて。

 我々音楽をする人間は、

果たして限界まで能力を使えているのだろうか。

五感はもとより、六感も、また声量、発語、声色、

その他あらゆることのほとんどを、使い切れていないのではないか、

そう感じたのだ。

 

 もちろん、演劇と音楽では用いる語法が違うので、

表現するということを単純に比較できない側面はあるが、

でも、彼らの芝居を見て、演じること、表現することに、

真に正面から取り組み、自分の能力のありとあらゆるものを総動員して、

立ち向かっていたことを強く感じ、

合唱人は、はたしてそこまで取り組めているのか、

そう自問自答したのだ。

 

 合唱というと、大勢で歌うから勘違いしやすいのだが、

本来は一人ひとりのものであり、一人ひとりが表現者であり、

その点からは、芝居する人と同じわけだ。

 

 でも、大勢集まることで何となく薄まってしまっているのではないか。

何かを人任せにしているのではないか。

一人ひとりがもっと表現することに立ち向かえば、

もっと良いものを聴衆に提示できるのでは、と思う。

やはり明らかに、合唱人一人ひとりが表現するということ、

足りていないのだと思う。

 

 演劇も合唱も根本は同じ。

表現者としての意識を最大限持たないといけない。

見ながらそう感じた。

 

 とにかく、彼らにとって今回の公演は大きな財産になるに違いない。

そして僕にとっても、大げさではなく、財産になった。

2度目があるかどうか。大変は百も承知だが、

大きな希望を抱きつつ待ちたい。

きっと彼らも、表現することの快感を感じてしまっただろうから、

そう遠くないのではないかな。

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Ciao ciao! (三毛猫)
2006-03-25 20:09:12
Ciao ciao!
おうたにオケのみならず、芝居まで!いったいどこまで行ってしまうのでしょう。楽しみですっ。
そう、表現するということについて、ホントにそうだなぁと思います。というか、ちょっと前にステージの上でミュージカルを見る機会がありました。いわゆる商業演劇。客席で観るのとまた違って、自分も出演してるかのような、役者さんとの一体感がとってもあったのですが、まぁ、その彼らの全身全霊ともいえるような演技。そのままその場で倒れてもいいってくらいの圧倒的な迫力!かなりじ~んときましたねぇ。私はこんなに一生懸命演じているか?なんて。表現ベタを自他共に認める私ですが、時折このときのことを思い出して、自分に”がんばれ~”と言ってみます。
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 三毛猫さん、ありがとうございます。 (tek310)
2006-03-27 23:05:15
 三毛猫さん、ありがとうございます。
 商業演劇といってなめてはいけないですよね。諸々含めたエンターテインメントの世界からは、学ぶべきことがたくさんあると思います。もちろん弊害もありますけど。
 練習で歌うこと、人の前で歌うこと、どういう意味を持っているのか、改めて考える必要がありますね。別ジャンルのものを見るといろいろ勉強になります。
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