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中国経済の奇跡を脅かす人手不足と花嫁不足

2010-11-07 14:58:43 | 多文化共生
(以下、日本経済新聞から転載)
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中国経済の奇跡を脅かす人手不足と花嫁不足
(2010年11月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

息子を好む中国の伝統に出産制限が重なり、中国の人口は男女比率が極端に偏っている(9月14日、北京=AP)
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息子を好む中国の伝統に出産制限が重なり、中国の人口は男女比率が極端に偏っている(9月14日、北京=AP)

 30年間でこれほど変わるものだろうか。中国は1980年に、国民に十分な食糧を供給できなくなる人口爆発を恐れて、生まれてくる子供の数を制限するという思い切った施策を打ち出した。異論の多い「一人っ子政策」である。

上海は「世界で最も出生率が低い都市」

 今、中国本土では10年に1度の国勢調査が始まったところだが、人口統計学者らは、世界一人口の多いこの国には人口が少なすぎる地域があると話す。また、労働者と花嫁の不足が深刻化しており、経済の成長と社会の安定を脅かしかねない状況にあるという。

 「一人っ子政策のために」と見るべきか、「一人っ子政策とは無関係に」と見るべきかはともかく、中国の出生率は急低下しており、子供は1人で十分だという家庭が増えている。世界で最も出生率が低い都市だと人口学者に指摘されている上海は、子づくりを奨励する活動を繰り返し行ってきたが、成果は上がっていない。

 地元紙のオリエンタル・モーニング・ポスト(東方早報)が上海市民を対象に最近行った調査によれば、2人以上の子供を持ちたいと答えた人の割合はわずか18.5%にとどまった。

一人っ子政策、4億人の出生を防止

 実は一人っ子政策が導入される前に、中国の出生率は既に半分になっていた。初産を遅くしたり、出産の間隔を長くしたりする政策がそれ以前に行われていたためだ。

 米ノースカロライナ大学に籍を置く中国人人口学者の蔡泳氏は、中国の出生率は1990年代前半に人口置換水準を下回ったと話しており、現在は女性1人当たり1.5人と推計している。

 中国の政府当局者は、一人っ子政策(20世紀に行われた最も極端な社会実験の1つ)のおかげで4億人の出生を防止できたとしている。4億人と言えば、欧州の総人口に近い水準だ。

 また、重い罰金を科したり中絶を強制したり、不妊手術をせざるを得ない状態に追い込んだりするなど、数々の残忍な手法を用いた一人っ子政策に反対する人々でさえ、この政策は恐らく、子だくさんよりも一人っ子の方が好まれる文化を多くの地域で醸成するのに一役買ったと話している。

一人っ子同士の結婚、子供は2人可能

 しかし、すべての社会実験がそうであるように、一人っ子政策も予期せぬ結果をもたらした。その1つが、政策制定によって守ろうとした経済の奇跡そのものを脅かしかねない労働力不足だ。労働者が少なすぎ、高齢者が多すぎるために、中国は高齢化の危機に直面していると人口学者は指摘する。

 中国は結婚の非常事態にも見舞われている。息子を好む中国の伝統に出産制限が重なって、男女比率の極端な偏りと花嫁不足をもたらしたからだ。中国政府は何年も前から政策の変更を議論しており、人口政策を直接担当する関係者は、政府が近く5つの省で制限をわずかに緩和すると考えている。

 もっとも、一人っ子政策には例外措置が多いため、多くの人口学者は既にこれを「1.5人の子供」政策と呼んでいる。彼らの試算では、政策の適用対象となっているのは、最大でも人口の60%程度だという。

 例えば、一人っ子の大半は、やはり一人っ子と結婚した場合、子供を2人持つことを認められている。農村部に住む夫婦は、第1子が女の子だった場合、2人目に挑戦することができる(伝統を重んじる地域では、名字を存続させるうえで男子は欠かせないと見なされているためだ)。少数民族は制約が少なく、障害児を持つ両親も次のチャンスを認められる。

厳格な省と例外認める省、出生率に差なし

 一人っ子政策はいまだに、時として残酷なやり方で強制されている。中国南部の都市アモイ(廈門)では最近、人口政策当局が妊娠8カ月目の女性に、致死注射で胎児を中絶させた。また、家族計画を担う当局には改革を阻止しようとする強固な既得権がある。

 だが、人口学者らの話では、多くの場合、市場が政府の仕事を肩代わりしているという。地球上のあらゆる地域と同様に、国民が豊かになり、都市部に移り住むようになると、子供の数が減るのだ。

 前出の蔡氏は、一人っ子政策を厳格に実施する江蘇省と、例外を認める近隣の浙江省の出生率を比較すると、政策がほとんど影響を及ぼしていないことが分かると言う。経済発展を受けて、両省の出生率はほぼ同水準に抑制されたのだという。

子供2人認めた県、出生率はむしろ低下

 山西省翼城県の住民は一人っ子政策を従順に守ってきたため、政府は25年前に、一定の制限を設けながら県民に子供を2人持つ実験を認めた。県内の女性は初産まで長い間待たねばならず、次の出産まで6年の間隔を置かねばならない。

 ところが意外なことに、翼城県の出生率は中国のその他地域よりも若干低いのが現状だ。ある報告書によれば、実験を行った25年間の人口増加率は20.7%で、中国全体の増加率を5ポイント近く下回っている。男女比率も正常な状態に戻り、女の子の捨て子が減ったという。

 「人は常に多くの子供を持ちたがるということが前提になっていた。だが実際、(翼城県の)人々は2人で終わりにしたし、中には1人でやめる人もいた」と蔡氏は言う。

 山西省の実験を設計した梁中堂氏は「一人っ子政策の撤廃はほとんど影響を及ぼさないだろう」と語る。「私は中国の人口政策を30年間研究してきたが、どんな産児制限政策にも効果は一切見られない。人々は自分たちの希望に沿って子供を生むものだ」

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